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vol.17 君に格好悪い所は見せられないしさ
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ミクスド都大会。今回は無様だと言われないようにしてやる。前回のような好きにやって相方を振り回して、対戦相手に振り回されるようなことは絶対しない。
この間の地区大会ミクスドの部2位になったことを思い出す度にその悔しさをバネにし、いつかまた不動峰の橘兄妹を負かしてやると何度も誓う。そのために目先の試合だって絶対負けてなるものか。
「お? まーたルドルフとやり合うことになったんすね」
都大会ミクスドの部の初戦はつい先程男子の部で対戦したばかりのルドルフだった。桃城はトーナメント表を見て「へー」と呟く。
しかしまたあの、んふんふ言うデータ男の顔を見なきゃなんないのか。面倒だな。
「桃、赤宮。ちょうどいい。少しお前達に話しておきたいことがある」
そこへ乾の奴が話しかけてくる。試合前のアドバイスというやつか? 何。と問えば乾は何かを纏めてあるらしいノートを開いた。
「ルドルフとのミクスド試合でおそらくお前達の対戦相手になるであろう不二裕太、下梨誉ペアについてだけど」
「ツイストスピンショットに気をつけたらいいんすよね?」
「それもそうだが、下梨誉にも警戒しておく方がいい」
「あんたからわざわざそう言いに来るってことは強いわけ?」
それは腕が鳴るからいいけど。ハッと笑ってやれば乾は珍しく「それもそうなんだが……」と、どこかはっきりしないことを言う。
「下梨はどこかトリッキーなプレイスタイルで何をしでかすか分からないのもあるが、性格が少々、いやかなり個性的過ぎる。相手の神経を逆撫でにするのが得意というべきか、冷静さを失わせるような相手だ。おそらく対赤宮用に観月が用意したのだろう。だからメンタルを揺さぶられないように気をつけてくれ」
「随分と馬鹿にされたものだな。私を苛立たせて不動峰戦の時のようなプレイをさせるつもりか。そう何度もやらかすと思うなよ」
「それならば俺はこれ以上何も言うことはないよ。相手のペースに飲まれないようにしてくれたらそれで構わないさ」
パタン、とノートを閉じた奴は「それじゃあ健闘を祈るよ」と告げて去っていった。
「都大会初っ端からやりがいのある試合なりそうッスよね」
「どんな奴だろうと私らはいつも通りでやるぞ」
「ウィッス」
気合を入れ、都大会ミスクドの部1回戦の試合が始まる。桃城と共にコートへ向かい、ネットを挟んだ向こう側に立つルドルフの対戦相手に適当に挨拶をした……が、不二の弟の方が私のことを覚えていたようで「あ」と口にした。
「あんた、本当にミクスド出来る人だったんですか……」
「今気づいたわけ?」
「てか、兄貴とペアじゃないんすね」
「おい、なんであいつの名前が出てくんだよ」
「え? だってクラブで一緒に打ってたんですよね。ペア組んでるんじゃないんすか?」
「あいつをぶっ倒すために打ち合っただけだ」
勘違いされても困るからしっかりと説明しておく。私があいつとペアを組むわけがない。しかし、弟はあまり納得してなさそうな表情をしていた━━その時。裕太の隣に立つペアの相方が声を上げた。
「ちょっとちょっと! この誉ちゃんを差し置いて二人で会話しないでもらえます〜? というか、こんな美少女を無視すること自体有り得ないんですけど! この世の全てに愛されるヒロインとして生まれたこの私、下梨誉ちゃんに注目すべきじゃない!?」
……なんだ。何なんだこいつ。ウザったい話し方、頭に響く甲高い声、喧嘩を売る不愉快なその態度。全てにおいて関わりたくない面倒な人間だ。
「あ、もしかして今流行りの転生ヒロインとか思われちゃってますぅ? そんなんじゃありませんよー! 誉ちゃんは素でこうなんですっ! 生まれながらにして愛された少女で━━」
『そこ、試合を始めますよ』
「審判っ! 遮らないの!!」
頭が痛くなる。ひとまず離れようと自分のポジションへと向かった。桃城も同じことを思ったのか、私に耳打ちするようにぼそっと呟く。
「なんか、思ってたよりやばそうな相手ッスね」
「乾の言っていたことが理解出来るな……」
とりあえず試合に集中しよう。そう思って向こうのサーブを受けるためのレシーバーの位置に立つ。サーバーはあのトンチキ女だ。
「それじゃあ、早速誉ちゃんのスーパーサーブ見せてあげる。ビビって逃げるんじゃないわよ!」
「いいから早く打て」
いちいち癪に障る奴だ。ギュッとラケットを握り、奴のボールを迎え打つ準備を始める。ヒュッ、と下梨の持つボールはトスを上げた。思っていたよりも高い。だからどうした。そう思っていると、下梨はラケットを構えるのをやめた。
は? トスアップのやり直しか? と思って舌打ちをし、構えを解いたのもつかの間、そのまま奴はアンダーで打ってきやがった。
「っ!」
低いボールがサービスコートに入る。速くないサーブだったのに反応が遅れたせいでサービスエースを決められてしまった。
「くそっ……悪ィ、桃城っ。判断を誤った」
「1球くらい大丈夫ですって。……それに、向こうもそれを狙ってたっぽいですし」
下梨に目を向けたら奴はいやらしい笑みを浮かべてこちらを見る。
「あっは! こぉんなしょぼい方法で点を取られるなんて赤宮さんって案外チョロチョロのチョロなんですね~~! 超だっさぁい!」
イラッとした。確かに油断したこっちの落ち度ではあるが、腹立たしいことこの上ない。とにかく今は奴の言動は無視するしかないだろう。相手にするとさらに面倒だ。
レシーバーが桃城に変わると、今度は小細工なしのまともなサーブを打ってきた。桃城はそれを軽々と返し、ラリーを続けると裕太がツイストスピンショットのモーションに出る。
桃城は待ってましたと言わんばかりにツイストスピンショットを返した。越前との試合を見て奴なりに打ち返すイメトレをしていたのだろう。
「よっし!」
返せたことに満足したのか、桃城は笑顔でグッと拳を作る。打球は前衛に立つ下梨の横を狙った。距離からして下梨の手で届く範囲ではないし、裕太が打ち返さない限りこのポイントは貰ったも同然。
そのため裕太へと注視していた桃城だったが、意外なことに前衛の下梨が角度をつけて打ち返してきたため、コートの外へと逃げていく打球に桃城も反応出来ずポイントを決められる。
右利きの下梨ならボールに届かないと思ったのは桃城だけじゃなく私もだった。そこまでの脚力でもあったのかと思われたが、よく見れば下梨は左手でラケットを持っているじゃねぇか。
「……二刀流かよ」
「なーるほど。越前タイプなわけね」
確かに左手ならば打球に届くだろう。してやられた。咄嗟にラケットを持ち替えて返しやがったのか。その判断力も早い。両利きで瞬発力も高いのなら攻撃にしろ守備にしろ厄介だな。
この間の地区大会ミクスドの部2位になったことを思い出す度にその悔しさをバネにし、いつかまた不動峰の橘兄妹を負かしてやると何度も誓う。そのために目先の試合だって絶対負けてなるものか。
「お? まーたルドルフとやり合うことになったんすね」
都大会ミクスドの部の初戦はつい先程男子の部で対戦したばかりのルドルフだった。桃城はトーナメント表を見て「へー」と呟く。
しかしまたあの、んふんふ言うデータ男の顔を見なきゃなんないのか。面倒だな。
「桃、赤宮。ちょうどいい。少しお前達に話しておきたいことがある」
そこへ乾の奴が話しかけてくる。試合前のアドバイスというやつか? 何。と問えば乾は何かを纏めてあるらしいノートを開いた。
「ルドルフとのミクスド試合でおそらくお前達の対戦相手になるであろう不二裕太、下梨誉ペアについてだけど」
「ツイストスピンショットに気をつけたらいいんすよね?」
「それもそうだが、下梨誉にも警戒しておく方がいい」
「あんたからわざわざそう言いに来るってことは強いわけ?」
それは腕が鳴るからいいけど。ハッと笑ってやれば乾は珍しく「それもそうなんだが……」と、どこかはっきりしないことを言う。
「下梨はどこかトリッキーなプレイスタイルで何をしでかすか分からないのもあるが、性格が少々、いやかなり個性的過ぎる。相手の神経を逆撫でにするのが得意というべきか、冷静さを失わせるような相手だ。おそらく対赤宮用に観月が用意したのだろう。だからメンタルを揺さぶられないように気をつけてくれ」
「随分と馬鹿にされたものだな。私を苛立たせて不動峰戦の時のようなプレイをさせるつもりか。そう何度もやらかすと思うなよ」
「それならば俺はこれ以上何も言うことはないよ。相手のペースに飲まれないようにしてくれたらそれで構わないさ」
パタン、とノートを閉じた奴は「それじゃあ健闘を祈るよ」と告げて去っていった。
「都大会初っ端からやりがいのある試合なりそうッスよね」
「どんな奴だろうと私らはいつも通りでやるぞ」
「ウィッス」
気合を入れ、都大会ミスクドの部1回戦の試合が始まる。桃城と共にコートへ向かい、ネットを挟んだ向こう側に立つルドルフの対戦相手に適当に挨拶をした……が、不二の弟の方が私のことを覚えていたようで「あ」と口にした。
「あんた、本当にミクスド出来る人だったんですか……」
「今気づいたわけ?」
「てか、兄貴とペアじゃないんすね」
「おい、なんであいつの名前が出てくんだよ」
「え? だってクラブで一緒に打ってたんですよね。ペア組んでるんじゃないんすか?」
「あいつをぶっ倒すために打ち合っただけだ」
勘違いされても困るからしっかりと説明しておく。私があいつとペアを組むわけがない。しかし、弟はあまり納得してなさそうな表情をしていた━━その時。裕太の隣に立つペアの相方が声を上げた。
「ちょっとちょっと! この誉ちゃんを差し置いて二人で会話しないでもらえます〜? というか、こんな美少女を無視すること自体有り得ないんですけど! この世の全てに愛されるヒロインとして生まれたこの私、下梨誉ちゃんに注目すべきじゃない!?」
……なんだ。何なんだこいつ。ウザったい話し方、頭に響く甲高い声、喧嘩を売る不愉快なその態度。全てにおいて関わりたくない面倒な人間だ。
「あ、もしかして今流行りの転生ヒロインとか思われちゃってますぅ? そんなんじゃありませんよー! 誉ちゃんは素でこうなんですっ! 生まれながらにして愛された少女で━━」
『そこ、試合を始めますよ』
「審判っ! 遮らないの!!」
頭が痛くなる。ひとまず離れようと自分のポジションへと向かった。桃城も同じことを思ったのか、私に耳打ちするようにぼそっと呟く。
「なんか、思ってたよりやばそうな相手ッスね」
「乾の言っていたことが理解出来るな……」
とりあえず試合に集中しよう。そう思って向こうのサーブを受けるためのレシーバーの位置に立つ。サーバーはあのトンチキ女だ。
「それじゃあ、早速誉ちゃんのスーパーサーブ見せてあげる。ビビって逃げるんじゃないわよ!」
「いいから早く打て」
いちいち癪に障る奴だ。ギュッとラケットを握り、奴のボールを迎え打つ準備を始める。ヒュッ、と下梨の持つボールはトスを上げた。思っていたよりも高い。だからどうした。そう思っていると、下梨はラケットを構えるのをやめた。
は? トスアップのやり直しか? と思って舌打ちをし、構えを解いたのもつかの間、そのまま奴はアンダーで打ってきやがった。
「っ!」
低いボールがサービスコートに入る。速くないサーブだったのに反応が遅れたせいでサービスエースを決められてしまった。
「くそっ……悪ィ、桃城っ。判断を誤った」
「1球くらい大丈夫ですって。……それに、向こうもそれを狙ってたっぽいですし」
下梨に目を向けたら奴はいやらしい笑みを浮かべてこちらを見る。
「あっは! こぉんなしょぼい方法で点を取られるなんて赤宮さんって案外チョロチョロのチョロなんですね~~! 超だっさぁい!」
イラッとした。確かに油断したこっちの落ち度ではあるが、腹立たしいことこの上ない。とにかく今は奴の言動は無視するしかないだろう。相手にするとさらに面倒だ。
レシーバーが桃城に変わると、今度は小細工なしのまともなサーブを打ってきた。桃城はそれを軽々と返し、ラリーを続けると裕太がツイストスピンショットのモーションに出る。
桃城は待ってましたと言わんばかりにツイストスピンショットを返した。越前との試合を見て奴なりに打ち返すイメトレをしていたのだろう。
「よっし!」
返せたことに満足したのか、桃城は笑顔でグッと拳を作る。打球は前衛に立つ下梨の横を狙った。距離からして下梨の手で届く範囲ではないし、裕太が打ち返さない限りこのポイントは貰ったも同然。
そのため裕太へと注視していた桃城だったが、意外なことに前衛の下梨が角度をつけて打ち返してきたため、コートの外へと逃げていく打球に桃城も反応出来ずポイントを決められる。
右利きの下梨ならボールに届かないと思ったのは桃城だけじゃなく私もだった。そこまでの脚力でもあったのかと思われたが、よく見れば下梨は左手でラケットを持っているじゃねぇか。
「……二刀流かよ」
「なーるほど。越前タイプなわけね」
確かに左手ならば打球に届くだろう。してやられた。咄嗟にラケットを持ち替えて返しやがったのか。その判断力も早い。両利きで瞬発力も高いのなら攻撃にしろ守備にしろ厄介だな。