自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
vol.16 僕のことを少しは意識してるって自惚れてもいいんだね?
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都大会試合会場。いよいよ次の大会が始まるわけなんだけど、出場選手をエントリーするには選手全員揃わなければならない。それなのにエントリー締切時間の10時まであと少しだというのに越前君が来ないというハプニングがあった。
ハラハラしていたら大石君が越前君と連絡が取れたようで、何でも子供が産まれそうな妊婦さんを病院に連れて行ったようで遅れているそうだ。
なんて素晴らしい心がけなんだろう。大会があるというのに妊婦さんを助けてあげたなんて。
「良かった。越前君は人助けしてたんだね」
「いや、先輩。絶対嘘ッスから信じないでくださいよ」
ホッと胸を撫で下ろしていたら海堂君がぼそっと呟いた。けれどその内容は肯定しようとは思えなくて眉を下げてしまう。
「そんなの分からないよ。本当にそうだったのかもしれないし」
「九条先輩。あの遅刻魔を信じすぎるのもどうかと思いますけど」
「けど……」
確かに越前君は遅刻がないとは言えない子だ。でも鼻から否定するのも違うと思う。越前君が大石君にそう伝えていたのなら私はそれを信じる。
「……じゃあ、先輩が直接奴に聞いてみたらいいッスよ」
「え? うん」
どこか呆れるように海堂君が告げたその時、竜崎先生が堀尾君を越前君の代わりにエントリーすることを説明し、レギュラー達を引き連れた。
「あ。越前君っ! 良かった。試合までに来れたんだね」
「……ども」
無事にエントリーを終え、しばらくしてから学生服姿の越前君が姿を見せた。とにかく試合に間に合って良かったと安心する。
「妊婦さんは大丈夫そうだった?」
「え? あ、まぁ……」
「それにしても妊婦さんを助けるだなんて凄いよ。びっくりして対応が遅れちゃうかもしれないのに病院まで連れて行ったなんて私まで誇らしい気持ちになっちゃった」
「あぁ……いや、そっすね」
照れくさいのか、越前君は目を逸らした。でも褒めるべきところは褒めないと。彼はとても良いことをしたのだから。
「遥に頼んで校内新聞に取り上げてもらうように言ってみるよ」
「いや、ちょっ……! いいッス! そこまでのことじゃないんで!」
「謙遜しなくていいよ。他の生徒のお手本にもなる行動だもの。胸を張っていいから。ね?」
「ほんと、大丈夫。大丈夫ッス……その、嘘、なんで……」
「え?」
「……寝坊、なんで」
ということは……海堂君の言う通りだったってこと?
「越前君、嘘は駄目だよ? みんな心配するし、寝坊なら寝坊って言ってくれなきゃ」
「……ウィッス」
「子供が産まれそうな妊婦さんがいなかったのならそれはそれで安心したんだけどね。遭遇したら越前君のメンタルに関わるかもしれないし」
「……ッス。その、俺そろそろ行きます……」
「うん。行ってらっしゃい」
先輩として注意したから越前君もこれに懲りて次は嘘の理由を言わないといいな。そう思いながら越前君を見送ったあと、海堂君の元へ向かった。
「海堂君っ」
「? 何すか?」
今の海堂君は長袖のレギュラージャージに袖は通していない。何故なら越前君の代わりにエントリーに向かわせた堀尾君にその上着を貸したからだ。そんな彼は私が呼びかけたことに対して不思議そうに返事する。
「海堂君の言う通りだったよ」
「え」
「越前君の行動を褒めたんだけど、嘘だったって自白したの。あ、もちろん注意はしたよ」
「あぁ、やっぱりな……」
「海堂君の言い分を信じなくてごめんね」
海堂君の言うことが真実だったのに信じなかったのでしっかりと謝罪する。だからといって越前君の嘘は今回たまたまだったのかもしれないから次からは信じないというわけではない。
「別に先輩が謝ることじゃないんスけど」
「それでもだよ。でも、凄いね。海堂君は越前君のことよく知ってるんだね」
「……あいつの性格的に分かることッスよ。というか、別にそれを褒められても嬉しくないんスけど」
「そうなの?」
それだけ相手のことをよく見てる証拠だと思うのだけど、どうやら海堂君はそう思われたくはないらしい。
それからしばらくして手塚君の試合が始まった。今大会初めての手塚君の試合はやはり他校も興味津々らしく、ざわついていた。
誰も寄せつけないような完勝する彼を見て、改めて手塚君の強さを目の当たりにする。それでも越前君が言うには手塚君の強さはまだまだこんなものじゃないとのこと。
凄いなぁ、卓越した手塚君のテニスには思わず圧巻の溜め息が出てしまう。
そんな試合終わりの手塚君とフェンス越しではあるけど目が合ったのでにっこり笑って手を振ってみる。彼は応えるようにこくりと頷いた。手を振り返すとは思っていなかったけど、応えてくれたのは純粋に嬉しくドキリとしてしまった。
ハラハラしていたら大石君が越前君と連絡が取れたようで、何でも子供が産まれそうな妊婦さんを病院に連れて行ったようで遅れているそうだ。
なんて素晴らしい心がけなんだろう。大会があるというのに妊婦さんを助けてあげたなんて。
「良かった。越前君は人助けしてたんだね」
「いや、先輩。絶対嘘ッスから信じないでくださいよ」
ホッと胸を撫で下ろしていたら海堂君がぼそっと呟いた。けれどその内容は肯定しようとは思えなくて眉を下げてしまう。
「そんなの分からないよ。本当にそうだったのかもしれないし」
「九条先輩。あの遅刻魔を信じすぎるのもどうかと思いますけど」
「けど……」
確かに越前君は遅刻がないとは言えない子だ。でも鼻から否定するのも違うと思う。越前君が大石君にそう伝えていたのなら私はそれを信じる。
「……じゃあ、先輩が直接奴に聞いてみたらいいッスよ」
「え? うん」
どこか呆れるように海堂君が告げたその時、竜崎先生が堀尾君を越前君の代わりにエントリーすることを説明し、レギュラー達を引き連れた。
「あ。越前君っ! 良かった。試合までに来れたんだね」
「……ども」
無事にエントリーを終え、しばらくしてから学生服姿の越前君が姿を見せた。とにかく試合に間に合って良かったと安心する。
「妊婦さんは大丈夫そうだった?」
「え? あ、まぁ……」
「それにしても妊婦さんを助けるだなんて凄いよ。びっくりして対応が遅れちゃうかもしれないのに病院まで連れて行ったなんて私まで誇らしい気持ちになっちゃった」
「あぁ……いや、そっすね」
照れくさいのか、越前君は目を逸らした。でも褒めるべきところは褒めないと。彼はとても良いことをしたのだから。
「遥に頼んで校内新聞に取り上げてもらうように言ってみるよ」
「いや、ちょっ……! いいッス! そこまでのことじゃないんで!」
「謙遜しなくていいよ。他の生徒のお手本にもなる行動だもの。胸を張っていいから。ね?」
「ほんと、大丈夫。大丈夫ッス……その、嘘、なんで……」
「え?」
「……寝坊、なんで」
ということは……海堂君の言う通りだったってこと?
「越前君、嘘は駄目だよ? みんな心配するし、寝坊なら寝坊って言ってくれなきゃ」
「……ウィッス」
「子供が産まれそうな妊婦さんがいなかったのならそれはそれで安心したんだけどね。遭遇したら越前君のメンタルに関わるかもしれないし」
「……ッス。その、俺そろそろ行きます……」
「うん。行ってらっしゃい」
先輩として注意したから越前君もこれに懲りて次は嘘の理由を言わないといいな。そう思いながら越前君を見送ったあと、海堂君の元へ向かった。
「海堂君っ」
「? 何すか?」
今の海堂君は長袖のレギュラージャージに袖は通していない。何故なら越前君の代わりにエントリーに向かわせた堀尾君にその上着を貸したからだ。そんな彼は私が呼びかけたことに対して不思議そうに返事する。
「海堂君の言う通りだったよ」
「え」
「越前君の行動を褒めたんだけど、嘘だったって自白したの。あ、もちろん注意はしたよ」
「あぁ、やっぱりな……」
「海堂君の言い分を信じなくてごめんね」
海堂君の言うことが真実だったのに信じなかったのでしっかりと謝罪する。だからといって越前君の嘘は今回たまたまだったのかもしれないから次からは信じないというわけではない。
「別に先輩が謝ることじゃないんスけど」
「それでもだよ。でも、凄いね。海堂君は越前君のことよく知ってるんだね」
「……あいつの性格的に分かることッスよ。というか、別にそれを褒められても嬉しくないんスけど」
「そうなの?」
それだけ相手のことをよく見てる証拠だと思うのだけど、どうやら海堂君はそう思われたくはないらしい。
それからしばらくして手塚君の試合が始まった。今大会初めての手塚君の試合はやはり他校も興味津々らしく、ざわついていた。
誰も寄せつけないような完勝する彼を見て、改めて手塚君の強さを目の当たりにする。それでも越前君が言うには手塚君の強さはまだまだこんなものじゃないとのこと。
凄いなぁ、卓越した手塚君のテニスには思わず圧巻の溜め息が出てしまう。
そんな試合終わりの手塚君とフェンス越しではあるけど目が合ったのでにっこり笑って手を振ってみる。彼は応えるようにこくりと頷いた。手を振り返すとは思っていなかったけど、応えてくれたのは純粋に嬉しくドキリとしてしまった。