自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
vol.11 気にすることない。俺は事実を言ったまでだ
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「審判。この試合、棄権します」
不動峰戦ダブルス2の試合の最中、不二がそう口にした。ざわつく会場。誰もが驚いただろう。しかしそうしなければいけなかった。
不動峰の石田が打つ強烈なフラットショットである波動球を不二の代わりに河村が打ち返したのだが、その代償はあまりにも大きかったのだ。
河村の腕が負傷してしまったのだから。
「何言ってるんだ!! まだやれる!! 最初のこの試合がどれだけ大事か……」
ただでさえ5-3で青学があと1ゲームを先取すればダブルス2を取れるのにここで棄権をしたくなかった河村が声を上げる。
青学の応援席ベンチでは焦りを抑えきれない秋が見つめた。彼の気持ちはよく分かるし、あと1ゲームさえ取れば勝ちだからそんな惜しいところで棄権をしたくないのだろう。
しかし河村に無理してほしくない気持ちが圧倒的に強かった。もし無理して続けて怪我が酷くなったら大変なのだ。それは不二も同じ気持ちなのだろう。
「大丈夫だから……ねっ」
残りの青学メンバーも後は任せろと言わんばかりの面持ちで河村を見つめる。
それに観念したのか、河村はラケットから手を離し、張っていた空気が抜けるように「ス、スマン。みんな……」と謝罪する。
「冷却スプレー!」
乾が声を上げる。それを聞いて秋が慌てて冷却スプレーを届けた。
「一応病院に行った方がいいね。骨にヒビが入ってるかも」
そう判断し、河村の負傷した手に冷却スプレーを吹きかけた。
「いってぇ~」
「ガマン」
「河村君……」
痛そうに顔を歪める河村を見るとやはり棄権をした方が懸命なのだと実感する。
「林、池田。河村を病院に」
「「了解っ」」
2年生の林と池田に河村を託される。けれど秋の中では心配が大きくなり、ハラハラした気持ちで河村の傍に近づいた彼女は乾に提案した。
「乾君、私も病院に付き添うよ」
「あぁ、それじゃあ頼もうかな。厄介になることもあるから場所を知る機会にもなるだろうし」
こくりと頷き、秋は後輩と共に河村を病院へ連れて行くことに。
「な、なんかこんな人数に送ってもらうのは申し訳ないよ……」
「なーに言ってんですかって! 先輩は今、腕を使わせるわけにはいかないから安静にしてもらわないと!」
「そうですって。補助が多いに越したことはないないし!」
「二人の言う通りだよ河村君。ちゃんと診てもらうまでは動かさない方がいいんだし」
「はは……ごめんね、九条さん。君まで付き添ってもらって」
「だって友達が怪我をしたら心配になるんだから当然のことだよ」
「ありがとう。林も池田もありがとう。世話になるよ」
「「とんでもないっ」」
こうして四人は病院へと向かうことになった。そんな様子を眺めていた手塚は静かに目を逸らす。そこへ不二が声をかけた。
「悪いね、手塚。大事な試合だっていうのに」
「気にするな、お前の判断は間違っていない」
「あと、九条さんを奪っちゃったことも」
「……何の話だ」
「そのままの意味だよ」
眉間に皺を寄せる手塚とにこやかな笑みを向ける不二。互いに何を考えているのか分からないまま無言の時間が続いたのち、手塚は「意味が分からん」と、ふいっと顔を逸らした。
不二は「それは残念」と微笑みながら次の試合の観戦準備をする。そんな彼を遠くから麻美が眺めているだなんてこの時の不二は知るよしもない。
「……棄権負けだと?」
女子のテニスコートから男子のテニスコートへとやって来た麻美はちょうど不二が試合棄権を宣言するところから見ていたが、その表情は納得出来なかった。
せっかく公式戦のダブルスで不二の実力が拝めると思ったのに勝ち負けどころか棄権するなんて麻美にとっては信じられない結果である。
勝負は勝つか負けるか。それが当たり前であり棄権負けなんて彼女の中では存在してはいけない敗北理由だ。
スコアボードを見ればあと1ゲームで勝てたところなのにそのチャンスを逃すなんて愚かな判断だ。
機嫌を損ねた麻美は舌打ちをして不二を睨みながら次の試合を観戦することにした。
不動峰戦ダブルス2の試合の最中、不二がそう口にした。ざわつく会場。誰もが驚いただろう。しかしそうしなければいけなかった。
不動峰の石田が打つ強烈なフラットショットである波動球を不二の代わりに河村が打ち返したのだが、その代償はあまりにも大きかったのだ。
河村の腕が負傷してしまったのだから。
「何言ってるんだ!! まだやれる!! 最初のこの試合がどれだけ大事か……」
ただでさえ5-3で青学があと1ゲームを先取すればダブルス2を取れるのにここで棄権をしたくなかった河村が声を上げる。
青学の応援席ベンチでは焦りを抑えきれない秋が見つめた。彼の気持ちはよく分かるし、あと1ゲームさえ取れば勝ちだからそんな惜しいところで棄権をしたくないのだろう。
しかし河村に無理してほしくない気持ちが圧倒的に強かった。もし無理して続けて怪我が酷くなったら大変なのだ。それは不二も同じ気持ちなのだろう。
「大丈夫だから……ねっ」
残りの青学メンバーも後は任せろと言わんばかりの面持ちで河村を見つめる。
それに観念したのか、河村はラケットから手を離し、張っていた空気が抜けるように「ス、スマン。みんな……」と謝罪する。
「冷却スプレー!」
乾が声を上げる。それを聞いて秋が慌てて冷却スプレーを届けた。
「一応病院に行った方がいいね。骨にヒビが入ってるかも」
そう判断し、河村の負傷した手に冷却スプレーを吹きかけた。
「いってぇ~」
「ガマン」
「河村君……」
痛そうに顔を歪める河村を見るとやはり棄権をした方が懸命なのだと実感する。
「林、池田。河村を病院に」
「「了解っ」」
2年生の林と池田に河村を託される。けれど秋の中では心配が大きくなり、ハラハラした気持ちで河村の傍に近づいた彼女は乾に提案した。
「乾君、私も病院に付き添うよ」
「あぁ、それじゃあ頼もうかな。厄介になることもあるから場所を知る機会にもなるだろうし」
こくりと頷き、秋は後輩と共に河村を病院へ連れて行くことに。
「な、なんかこんな人数に送ってもらうのは申し訳ないよ……」
「なーに言ってんですかって! 先輩は今、腕を使わせるわけにはいかないから安静にしてもらわないと!」
「そうですって。補助が多いに越したことはないないし!」
「二人の言う通りだよ河村君。ちゃんと診てもらうまでは動かさない方がいいんだし」
「はは……ごめんね、九条さん。君まで付き添ってもらって」
「だって友達が怪我をしたら心配になるんだから当然のことだよ」
「ありがとう。林も池田もありがとう。世話になるよ」
「「とんでもないっ」」
こうして四人は病院へと向かうことになった。そんな様子を眺めていた手塚は静かに目を逸らす。そこへ不二が声をかけた。
「悪いね、手塚。大事な試合だっていうのに」
「気にするな、お前の判断は間違っていない」
「あと、九条さんを奪っちゃったことも」
「……何の話だ」
「そのままの意味だよ」
眉間に皺を寄せる手塚とにこやかな笑みを向ける不二。互いに何を考えているのか分からないまま無言の時間が続いたのち、手塚は「意味が分からん」と、ふいっと顔を逸らした。
不二は「それは残念」と微笑みながら次の試合の観戦準備をする。そんな彼を遠くから麻美が眺めているだなんてこの時の不二は知るよしもない。
「……棄権負けだと?」
女子のテニスコートから男子のテニスコートへとやって来た麻美はちょうど不二が試合棄権を宣言するところから見ていたが、その表情は納得出来なかった。
せっかく公式戦のダブルスで不二の実力が拝めると思ったのに勝ち負けどころか棄権するなんて麻美にとっては信じられない結果である。
勝負は勝つか負けるか。それが当たり前であり棄権負けなんて彼女の中では存在してはいけない敗北理由だ。
スコアボードを見ればあと1ゲームで勝てたところなのにそのチャンスを逃すなんて愚かな判断だ。
機嫌を損ねた麻美は舌打ちをして不二を睨みながら次の試合を観戦することにした。