自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
ダークホースとの対戦
主人公名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
都大会準々決勝━━。
氷帝の相手は不動峰。無名校ということですでに部員達は勝ったも同然というような空気を漂わせていた。
跡部も同じ気持ちだったのか、不動峰との試合を見守ることなく樺地と共にどこかへと行ってしまう。
しかし、いざ試合を始めてみれば氷帝部員みんなが驚いた。
これまでの結果、ダブルス2小川・近林ペア4-6で敗北。ダブルス1海田・樫和ペア1-6で敗北となっている。
3回戦、4回戦共に準レギュラーとはいえ負けなしだったのにここに来て黒星を取ってしまった。しかもダブルス1に至っては1ゲームしか取れていないので惨敗である。
テニス部に携わるようになってまだ日の浅い秋でも今までの学校とは格段に強いと言える自信があった。
跡部がいない今、二試合共に負けた二組のダブルスに厳しい言葉を投げたのは正レギュラーである宍戸だ。
「お前ら自分達が氷帝の看板背負ってるの分かってんのか? 無名校ごときに何油断してんだよ。だからオマエら準レギュラーなんだよ」
「ちょっと宍戸……」
さすがにその言い方はないんじゃないかと秋が間に入ろうとしたが、すぐに準レギュラーの一人が口を開く。
「で、でもあいつら本当強えぇんだよ」
「負けといて言い訳か。ダセェな、激ダサだな」
「宍戸っ! そんな言い方は良くないよっ」
試合した人間の言葉を言い訳という一言で蹴るのがさすがに許せなかった秋は宍戸に強く言いつけるも、相手はギロリと彼女を睨んだ。その威圧感に秋は少しだけ怯んでしまう。
「たかがマネージャーが口出ししてんじゃねーよ!」
「っ!」
たかがマネージャー。その言葉に秋も一瞬頭に血が上る。
「どうしてそんな酷いことばかり言えるの!? 試合を終えたチームメイトに向けるにしても、マネージャーに向けるにしても言い方ってものがあるよね!?」
普段滅多なことで怒らない秋が声を大きく上げた。
まさかここまで反撃されるとは思っていなかった宍戸も目を丸くさせたがすぐにフンッとそっぽ向き、準レギュラー達に声をかける。
「とっとと向こうで休んでる跡部達を呼んでこいよ。「オレ達が負けてシングルス1・2にも試合させる事になりました」ってな」
「宍戸! 無視するの!?」
「女がでしゃばんなっつーの!」
「!」
怒鳴りつける宍戸に秋はびくりと身体を強ばらせた。さすがの宍戸もやり過ぎたと思ったようで「ヤベ……」と口を押さえながら秋から目を逸らす。
「……とにかく、お前はただ応援して見てりゃいいんだよ」
「……」
秋は顔を伏せた状態で宍戸の話に耳を傾けるが返事はしなかった。
「正レギュラーの実力を見せてやるよ。そうすりゃお前も俺の言いたいことが分かるからな」
そう告げると宍戸は試合に出るためコートへと向かった。二敗したとしても次の試合から全て勝利を収めたら問題ないと言わんばかりに。
とはいえ、秋はただ悔しくて悔しくて唇を噛み締めた。
マネージャーだから、女だからと馬鹿にされたようで腹立たしくもあったが、何よりも悲しかった。
一年の頃からずっと仲がいいとは言えるほどではないが、三年間同じクラスのよしみであることは間違いない。
友達、でなくても少なくとも腐れ縁の付き合いだったのに宍戸から出た言葉は秋が傷つくには十分だった。
たかがマネージャーであり、女。どこか差別的な言い方にも聞こえて秋は拳を強く握った。
(昔は……あんな感じじゃなかったのに)
思えば一年の頃から口が悪かったけど中身は悪い人間ではなかった。
弱い立場の人を守ったり、おかしいことはおかしいと言えたり、粗暴な態度だけど他人に優しい所はしっかりあったはず。
それなのに今の彼は昔とは変わってしまった。ここ最近は弱者を見下すような発言が多くなったし、自尊心が高くなっている様子。
跡部の影響も少しあるのかもしれないけど、正レギュラーという立場がさらに宍戸の態度を大きくさせたのだろう。
そんな彼をしっかり注意出来なかった自分自身にも腹立たしく思う秋はやがて自分の名前を呼ばれていることに気付く。
「━━さん。九条さん」
「あっ……ごめんなさい。どうしたの?」
ハッとして顔を上げるとそこには先ほど試合に出場していた樫和が申し訳なさそうな表情で彼女の名を呼んでいた。
「えっと、間に入ろうとしてくれてありがとう」
「あ、ううん。お節介なことしただけだから……」
「そこまでは思ってないけど……まぁ、宍戸の言うことも事実だからな……」
「そんなこと……!」
「ある。負けを言い訳するのは確かにダサいしさ。ここは勝者の言うことは絶対なんだよ」
「……」
氷帝のルールを思い出した秋はそれ以上かける言葉が思いつかなかった。どんなに感情で訴えても敗者が何を言っても意味がない。
それこそ試合に出ていない秋が言っても同じだろう。宍戸の言葉通り、たかがマネージャーが口を出してはいけないんだと胸が痛くなる。
試合コートへと目を向ければ宍戸が対戦相手を挑発するような言葉を発していた。どうやら相手が不動峰の部長であることは承知の上での発言である。
試合は宍戸が押しているように見えた。やはり正レギュラーだから準レギュラーとはまた動きが違う。
相手校の橘をネットに出させない猛然とした攻撃に橘も手も足も出ない……と思ったが状況は一変した。
押されていると思っていた橘はあっさりネット前に出て宍戸からポイントを決める。
それは偶然ではなく、1ゲームを取って、さらに2ゲーム、3ゲームと続き、宍戸は1ゲームを取ることもなく完敗した。手も足も出なかったのは宍戸の方だったようだ。
「ワリーな。15分で終わっちまった」
試合前に宍戸は20分で終わらせてやると相手に豪語した。その結果が対戦相手によりさらに5分早くゲームメイクされる。
さすがの秋も驚きを隠せなかった。態度は大きいけど、宍戸の実力は紛れもなく本物だったはず。それがこのような圧倒的な敗北を叩きつけるなんて思ってもみなかった。
「九州二強の一人……橘じゃねぇか」
「跡部っ」
準レギュラー達が呼びに行ったため、跡部が戻ってくると、相手校の部長のことを知っているのか少し驚いた様子で橘に視線を向けた。
「あんな奴がこの都大会に出てたなんて」
「九州って……元は九州にいた人なの?」
「あぁ、全国区の選手だ。あの頃と印象が違うから気付く奴も少ねぇだろ。っち、無名校だからってノーマークだったぜ。奴はそれを利用してこの三試合で勝ちを取りにきやがった」
「……凄い選手だってことはよく分かったよ。実力も、采配も」
予定通りにはいかなかった準々決勝。一試合も勝ち星を上げられず惨敗となり、応援をしていた部員達もブーイングする始末。
負けた原因はおそらく相手を見くびっていたからだろう。テニスの技術よりも何よりも無名校だからといって対戦相手のことをよく調べもせずに試合に臨んだ結果とも言える。
秋は悔しかった。まさかここで氷帝が敗退なんて━━。
「九条、勘違いすんなよ。まだ5位決定戦がある。そんなシケた面してんじゃねぇよ」
「5位決定戦……?」
「5位を決める戦いだ。それさえ勝ち残れば関東大会には行けるからな」
「そう、なんだ」
じゃあ、まだ氷帝は終わりじゃない。そう思うと安心はしたけど、気になることがある。
「宍戸は……どうなるの?」
「もちろんレギュラー落ちだ。あんな無様な試合を見せたんだ。正レギュラーのくせにな」
「……宍戸は部活停止されないためにテストだって頑張ったんだよ?」
「うちは敗者切り捨て方式だ。奴もそれを知っている」
「確かに宍戸は負けたけど、チーム全体の問題じゃないかな。みんなで相手を見くびらずしっかり対処すれば━━」
「個人で負けたのは奴だ。あいつが負けさえしなけりゃ俺達回ってきたんだからその責任を取るのは当然だろ? 正レギュラーなら尚更な」
「……」
無理だと分かっていたが、やはり跡部の考えは変わらなかった。それが今までやってきたルールだからこそ秋が決めることでもないし、口を挟むことも許されないので彼女は静かに口を閉ざした。
氷帝の相手は不動峰。無名校ということですでに部員達は勝ったも同然というような空気を漂わせていた。
跡部も同じ気持ちだったのか、不動峰との試合を見守ることなく樺地と共にどこかへと行ってしまう。
しかし、いざ試合を始めてみれば氷帝部員みんなが驚いた。
これまでの結果、ダブルス2小川・近林ペア4-6で敗北。ダブルス1海田・樫和ペア1-6で敗北となっている。
3回戦、4回戦共に準レギュラーとはいえ負けなしだったのにここに来て黒星を取ってしまった。しかもダブルス1に至っては1ゲームしか取れていないので惨敗である。
テニス部に携わるようになってまだ日の浅い秋でも今までの学校とは格段に強いと言える自信があった。
跡部がいない今、二試合共に負けた二組のダブルスに厳しい言葉を投げたのは正レギュラーである宍戸だ。
「お前ら自分達が氷帝の看板背負ってるの分かってんのか? 無名校ごときに何油断してんだよ。だからオマエら準レギュラーなんだよ」
「ちょっと宍戸……」
さすがにその言い方はないんじゃないかと秋が間に入ろうとしたが、すぐに準レギュラーの一人が口を開く。
「で、でもあいつら本当強えぇんだよ」
「負けといて言い訳か。ダセェな、激ダサだな」
「宍戸っ! そんな言い方は良くないよっ」
試合した人間の言葉を言い訳という一言で蹴るのがさすがに許せなかった秋は宍戸に強く言いつけるも、相手はギロリと彼女を睨んだ。その威圧感に秋は少しだけ怯んでしまう。
「たかがマネージャーが口出ししてんじゃねーよ!」
「っ!」
たかがマネージャー。その言葉に秋も一瞬頭に血が上る。
「どうしてそんな酷いことばかり言えるの!? 試合を終えたチームメイトに向けるにしても、マネージャーに向けるにしても言い方ってものがあるよね!?」
普段滅多なことで怒らない秋が声を大きく上げた。
まさかここまで反撃されるとは思っていなかった宍戸も目を丸くさせたがすぐにフンッとそっぽ向き、準レギュラー達に声をかける。
「とっとと向こうで休んでる跡部達を呼んでこいよ。「オレ達が負けてシングルス1・2にも試合させる事になりました」ってな」
「宍戸! 無視するの!?」
「女がでしゃばんなっつーの!」
「!」
怒鳴りつける宍戸に秋はびくりと身体を強ばらせた。さすがの宍戸もやり過ぎたと思ったようで「ヤベ……」と口を押さえながら秋から目を逸らす。
「……とにかく、お前はただ応援して見てりゃいいんだよ」
「……」
秋は顔を伏せた状態で宍戸の話に耳を傾けるが返事はしなかった。
「正レギュラーの実力を見せてやるよ。そうすりゃお前も俺の言いたいことが分かるからな」
そう告げると宍戸は試合に出るためコートへと向かった。二敗したとしても次の試合から全て勝利を収めたら問題ないと言わんばかりに。
とはいえ、秋はただ悔しくて悔しくて唇を噛み締めた。
マネージャーだから、女だからと馬鹿にされたようで腹立たしくもあったが、何よりも悲しかった。
一年の頃からずっと仲がいいとは言えるほどではないが、三年間同じクラスのよしみであることは間違いない。
友達、でなくても少なくとも腐れ縁の付き合いだったのに宍戸から出た言葉は秋が傷つくには十分だった。
たかがマネージャーであり、女。どこか差別的な言い方にも聞こえて秋は拳を強く握った。
(昔は……あんな感じじゃなかったのに)
思えば一年の頃から口が悪かったけど中身は悪い人間ではなかった。
弱い立場の人を守ったり、おかしいことはおかしいと言えたり、粗暴な態度だけど他人に優しい所はしっかりあったはず。
それなのに今の彼は昔とは変わってしまった。ここ最近は弱者を見下すような発言が多くなったし、自尊心が高くなっている様子。
跡部の影響も少しあるのかもしれないけど、正レギュラーという立場がさらに宍戸の態度を大きくさせたのだろう。
そんな彼をしっかり注意出来なかった自分自身にも腹立たしく思う秋はやがて自分の名前を呼ばれていることに気付く。
「━━さん。九条さん」
「あっ……ごめんなさい。どうしたの?」
ハッとして顔を上げるとそこには先ほど試合に出場していた樫和が申し訳なさそうな表情で彼女の名を呼んでいた。
「えっと、間に入ろうとしてくれてありがとう」
「あ、ううん。お節介なことしただけだから……」
「そこまでは思ってないけど……まぁ、宍戸の言うことも事実だからな……」
「そんなこと……!」
「ある。負けを言い訳するのは確かにダサいしさ。ここは勝者の言うことは絶対なんだよ」
「……」
氷帝のルールを思い出した秋はそれ以上かける言葉が思いつかなかった。どんなに感情で訴えても敗者が何を言っても意味がない。
それこそ試合に出ていない秋が言っても同じだろう。宍戸の言葉通り、たかがマネージャーが口を出してはいけないんだと胸が痛くなる。
試合コートへと目を向ければ宍戸が対戦相手を挑発するような言葉を発していた。どうやら相手が不動峰の部長であることは承知の上での発言である。
試合は宍戸が押しているように見えた。やはり正レギュラーだから準レギュラーとはまた動きが違う。
相手校の橘をネットに出させない猛然とした攻撃に橘も手も足も出ない……と思ったが状況は一変した。
押されていると思っていた橘はあっさりネット前に出て宍戸からポイントを決める。
それは偶然ではなく、1ゲームを取って、さらに2ゲーム、3ゲームと続き、宍戸は1ゲームを取ることもなく完敗した。手も足も出なかったのは宍戸の方だったようだ。
「ワリーな。15分で終わっちまった」
試合前に宍戸は20分で終わらせてやると相手に豪語した。その結果が対戦相手によりさらに5分早くゲームメイクされる。
さすがの秋も驚きを隠せなかった。態度は大きいけど、宍戸の実力は紛れもなく本物だったはず。それがこのような圧倒的な敗北を叩きつけるなんて思ってもみなかった。
「九州二強の一人……橘じゃねぇか」
「跡部っ」
準レギュラー達が呼びに行ったため、跡部が戻ってくると、相手校の部長のことを知っているのか少し驚いた様子で橘に視線を向けた。
「あんな奴がこの都大会に出てたなんて」
「九州って……元は九州にいた人なの?」
「あぁ、全国区の選手だ。あの頃と印象が違うから気付く奴も少ねぇだろ。っち、無名校だからってノーマークだったぜ。奴はそれを利用してこの三試合で勝ちを取りにきやがった」
「……凄い選手だってことはよく分かったよ。実力も、采配も」
予定通りにはいかなかった準々決勝。一試合も勝ち星を上げられず惨敗となり、応援をしていた部員達もブーイングする始末。
負けた原因はおそらく相手を見くびっていたからだろう。テニスの技術よりも何よりも無名校だからといって対戦相手のことをよく調べもせずに試合に臨んだ結果とも言える。
秋は悔しかった。まさかここで氷帝が敗退なんて━━。
「九条、勘違いすんなよ。まだ5位決定戦がある。そんなシケた面してんじゃねぇよ」
「5位決定戦……?」
「5位を決める戦いだ。それさえ勝ち残れば関東大会には行けるからな」
「そう、なんだ」
じゃあ、まだ氷帝は終わりじゃない。そう思うと安心はしたけど、気になることがある。
「宍戸は……どうなるの?」
「もちろんレギュラー落ちだ。あんな無様な試合を見せたんだ。正レギュラーのくせにな」
「……宍戸は部活停止されないためにテストだって頑張ったんだよ?」
「うちは敗者切り捨て方式だ。奴もそれを知っている」
「確かに宍戸は負けたけど、チーム全体の問題じゃないかな。みんなで相手を見くびらずしっかり対処すれば━━」
「個人で負けたのは奴だ。あいつが負けさえしなけりゃ俺達回ってきたんだからその責任を取るのは当然だろ? 正レギュラーなら尚更な」
「……」
無理だと分かっていたが、やはり跡部の考えは変わらなかった。それが今までやってきたルールだからこそ秋が決めることでもないし、口を挟むことも許されないので彼女は静かに口を閉ざした。