自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
大会前の休日
主人公名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
書店にて中学生用の問題集を買った秋は一休みしようとゆっくり出来そうなカフェを探した。
駅近や有名なチェーン店などは休日ゆえに人が多いので見送り、もう少し足を伸ばしてみようと範囲を広げると、ようやく入れそうな店を見つける。
今時の綺麗さよりレトロ感漂う骨頂店にも見えるカフェは外観だけでなく内観も同じような雰囲気だった。
店前の看板にはブックカフェと書かれていて本が読めるカフェのようだ。
静かな感じなのでここにしようと店の扉を開けて店員に席へと案内される。
店内の電気の数は少なめではあるけど暗い感じではなく、席数はそこまで多くはなさそう。
少し古い匂いが漂うが、店の作りもあれば使い古された本の匂いもあるのかもしれない。
そんな店の奥には大きな本棚があり、そこにはずらりと数多くの本が収納されていた。
(ジャンルは色々だけど、どれも古い物ばかりだね)
歴史物、ファンタジー物、図鑑、詩集、色々なタイトルが並ぶがどれも共通するのは古い本であった。まるで古本屋さんのような並びで新作の本は全くない。
せっかくなので一冊手に取ってみようと、気になるタイトルの本を本棚から抜いた。
秋が選んだのは恋愛をテーマにした短編集。数多くの著作者が集結した一冊である。
早速席へと戻り、紅茶を注文すると秋は本を開いた。
短編集なだけあって読みやすくて、書く人によって幸せな気持ちで終わる話もあれば胸を締め付けられるよう悲しい結末の話もあり、ついつい引き込まれてしまう。
しばらくして届いた紅茶の存在を忘れかけた秋は一旦本を閉じて紅茶を手に取った。
一口飲んでホッとした秋は改めて店内を見回す。静かで過ごしやすくて一人客も多い印象を受ける。
(……あれ?)
ふと隣の席に目を向けて見ればそこには部活で見慣れた人物がいた。
後輩である準レギュラーの日吉若。見間違えるはずなく、間違いなく彼が隣の席に座って本を耽読していた。
どうやら見たところ彼も一人な様子。
最初からいたのか、読書に夢中になっている間に来店したのか秋には分からないがまさかこんなに近くにいるとは思ってもみなかった。
(読書に夢中だし、声をかけるのも悪いかな……)
本当は声をかけてみたかったけど、邪魔をするのも気が引けるのでそのままにしようかなと考えたとき、日吉は本を閉じて秋に目を合わせた。
「……何か?」
「あっ、気付いてたの?」
「そりゃあ、視線を感じたら誰でも気づきますよ」
小さく溜め息を吐きながら本をテーブルに置く日吉に秋は慌てて謝罪をした。
「ご、ごめんね。読書の邪魔をする気はなかったんだけど……」
「いいですよ、別に。区切りのいい所だったので」
「何を読んでたの?」
日吉が読んでいた本が気になる秋は裏表紙しか見えないので尋ねてみた。本の色合いは薄黒い感じでどんな内容なのかも判断出来ないものだ。
「気になりますか?」
確認するように質問で返されてしまった秋はもしかして聞いてはいけなかったのかなと思いながらもすでに尋ねてしまったのでこくりと頷いた。
「気になるけど、もし日吉くんが詮索してほしくなかったら無理には聞かないよ」
「怪奇小説です」
(教えてくれた……)
まさか教えてくれるとは思わなかったが、それよりも日吉の表情があまり見ない小さな笑みを見せるので秋は本よりもそちらの方が気になった。
「なんだか嬉しそうだね。日吉くんはホラーとか好きなの?」
「嫌いではないです。そういう九条さんはどうなんですか?」
「私は苦手ではないけど得意でもないかな。恐怖心って結構心に残るような感じがして、抜けきらない時があるから」
「へぇ……それは興味深いですね。でしたら一度読んでみてはいかがですか?」
スッと本を差し出された秋は日吉のからかうような笑みに戸惑いながらもそれを受け取った。
相手の態度から見て怖がらせようとしている可能性は非常に高く、自信を持って手渡された本の表紙もどこかおどろおどろしいもの。
「ありがとう……結構怖いのかな?」
「著名作家達のアンソロジーなので話は上手いと思います」
「そうなんだ……」
つまり日吉にとっては恐怖心を擽られる評価があるということだろう。読めないわけではないが、こんなにも推されると逆に読むのを躊躇ってしまいそうであるが好奇心がないわけではない。
せっかく薦めてくれたのなら一章だけでも見ておこうかな。そう思ってぺラッと表紙を捲ると申し訳なさそうな表情の店員が二人に話しかけた。
「ご歓談中失礼します。よろしければお二人で一緒の席にしていただくことは可能でしょうか? ただいま満席となっていまして、次のお客様がお待ちいただいてるんです」
「あ、そうなんですね。えっと私は大丈夫だけど日吉くんは……」
ちらり、と日吉に目を向ける。さすがに同席までは許してくれないかもしれないのでここは自分が席を空けて退店しようと考えた秋だったが、相手からは意外な返事をされた。
「俺も構いませんよ」
「えっ? いいの? 読書の邪魔にならない?」
「それよりも俺としてはその本の感想が聞きたいので」
ニヤリと人の悪い顔で笑う日吉を見て秋は作り笑いをしながら「そうなんだ……」と答える。
「じゃあ、私がこっちの席に移ります」
「ご協力ありがとうございますっ」
秋が荷物を持ち、隣の日吉と向かい合わせになって座った。店員は彼女の飲みかけだった紅茶を運び再び秋の前へと置く。
「後ほどアイスをサービスさせていただきます」
「そこまでしていただかなくても……」
「いえ、お願いをしたのはこちらの方ですし、それにささやかなものなので」
「分かりました、ありがとうございます」
店員の言葉に甘え、お礼の品としてバニラアイスを二人は提供された。ミルク感が強くてサービスで食べてもいいのか疑ってしまうほど美味である。
その間も秋は日吉に薦められた怪奇小説に目を通した。
日吉はただ黙ってまるで監視するかのように秋を見つめるのだが、時折その視線が気になって集中出来なくなる。
しかし、読み進めていけばその視線も気にならないほど読書に没頭した。
グロテスクなものだったらどうしようと思ったが、そんなことはなく不気味で不思議で背筋をぞくりとさせるような話はあっという間に一章を読み終える。
「凄いね……これ」
「でしょう?」
にんまりと口端を上げて笑う日吉はそれだけの言葉では満足出来なかった。
「怖かったですか?」
「そうだね。勢いで怖がらせるものとは違って小さな恐怖が散りばめられてる感じなのに最後の気味の悪さが残るのはちょっと驚いたかな」
「……結構平気そうですね」
何が、と問うまでもない返事に秋は「怖かったよ?」と今一度小説の感想を簡潔に答える。
「もっと怖がるのかと思ってましたので」
「うーん……私の想像力が低いから作品の細部までは想像出来なかったのかも」
「文字だから、ですか。では映像や体験型はどうですか?」
「映画やお化け屋敷みたいなものならってことかな? あまり機会がないから私も分からないけど、小説よりはハッキリしてる分怖さはあるかもしれないね」
「なるほど……参考になりました」
「そう……?」
何の参考になったのかはあえて聞かないことにした秋だったが、いつも仏頂面ばかりしている彼の活き活きとしている姿はあまり見ないため彼女自身も嬉しくなる。
「今度機会があれば映画か肝試しでもしましょうか」
「えっ?」
まさかの発言。相手が相手なので社交辞令とかではなく、本当に行く機会を窺っているのだろうと思ったが、すぐに日吉は「あ」と呟いた。
「やはり二人だと跡部さんにまずいですか? 人数がいれば大丈夫か……」
え? なぜそこで跡部の名前が出てくるのか?
理由を告げることなく顎に手を添えてぶつぶつと呟く日吉に秋は何のことか分からず本人に確かめる。
「日吉くん、跡部にまずいってどういうこと?」
「……彼女が後輩とはいえ異性と二人で約束を取り付けるのはさすがの跡部さんも不満に思うんじゃないんですか?」
「えっ! ま、待って! 私は別に跡部と付き合ってるわけじゃないよっ」
ぶんぶんと首を横に振ってすぐさま否定する秋。なぜ勘違いをされたのか分からないけど、跡部と秋の間にそんな事実は一切ない。
「そうなんですか?」
「うん。跡部とは友達ではあるけど、彼女とかじゃないよ」
それは意外だと言いたげに瞬きを繰り返す日吉はしばらく黙ったのち口を開いた。
「俺はてっきりそうだと思っていましたが。跡部さんは何かとあなたと話をしているようですし、副生徒会長も跡部さんからの指名でしたよね?」
「マネージャー業については大体私に話が回るかな。副生徒会長についてはたまたまだよ。それ以上の意味はないし、仮に恋仲だとしても跡部は部活や生徒会に私情を持ち込まないはずだから」
確かに他の女子生徒に比べると跡部と関わることが多いのは間違いない。だから彼のファンクラブメンバーから妬まれるのも多いことを秋はしっかり理解している。
もちろん日吉のように勘違いする人も少なくなく、それゆえに贔屓されていると感じる者も存在した。
しかし、跡部は人の能力を重視する人間なので不相応な地位に誰かを置くことはしない。
秋にとって跡部とはそういう男だと信じているし、それだけ自分の能力を買って副生徒会長に任命してくれたのだと。
「……では、俺があなたを誘うこと自体は問題ないということですね?」
「え? あ、うん。そうだね」
「なるほど。では、今度先輩が凄く怖がっていただけるようなものをお探ししますね」
悪い笑みを浮かべる日吉に秋は若干の不安を覚えながらも張り付いた笑顔のままとりあえず頷くことしか出来なかった。
(日吉くん……人を怖がらせるのが好きなのかな……)
駅近や有名なチェーン店などは休日ゆえに人が多いので見送り、もう少し足を伸ばしてみようと範囲を広げると、ようやく入れそうな店を見つける。
今時の綺麗さよりレトロ感漂う骨頂店にも見えるカフェは外観だけでなく内観も同じような雰囲気だった。
店前の看板にはブックカフェと書かれていて本が読めるカフェのようだ。
静かな感じなのでここにしようと店の扉を開けて店員に席へと案内される。
店内の電気の数は少なめではあるけど暗い感じではなく、席数はそこまで多くはなさそう。
少し古い匂いが漂うが、店の作りもあれば使い古された本の匂いもあるのかもしれない。
そんな店の奥には大きな本棚があり、そこにはずらりと数多くの本が収納されていた。
(ジャンルは色々だけど、どれも古い物ばかりだね)
歴史物、ファンタジー物、図鑑、詩集、色々なタイトルが並ぶがどれも共通するのは古い本であった。まるで古本屋さんのような並びで新作の本は全くない。
せっかくなので一冊手に取ってみようと、気になるタイトルの本を本棚から抜いた。
秋が選んだのは恋愛をテーマにした短編集。数多くの著作者が集結した一冊である。
早速席へと戻り、紅茶を注文すると秋は本を開いた。
短編集なだけあって読みやすくて、書く人によって幸せな気持ちで終わる話もあれば胸を締め付けられるよう悲しい結末の話もあり、ついつい引き込まれてしまう。
しばらくして届いた紅茶の存在を忘れかけた秋は一旦本を閉じて紅茶を手に取った。
一口飲んでホッとした秋は改めて店内を見回す。静かで過ごしやすくて一人客も多い印象を受ける。
(……あれ?)
ふと隣の席に目を向けて見ればそこには部活で見慣れた人物がいた。
後輩である準レギュラーの日吉若。見間違えるはずなく、間違いなく彼が隣の席に座って本を耽読していた。
どうやら見たところ彼も一人な様子。
最初からいたのか、読書に夢中になっている間に来店したのか秋には分からないがまさかこんなに近くにいるとは思ってもみなかった。
(読書に夢中だし、声をかけるのも悪いかな……)
本当は声をかけてみたかったけど、邪魔をするのも気が引けるのでそのままにしようかなと考えたとき、日吉は本を閉じて秋に目を合わせた。
「……何か?」
「あっ、気付いてたの?」
「そりゃあ、視線を感じたら誰でも気づきますよ」
小さく溜め息を吐きながら本をテーブルに置く日吉に秋は慌てて謝罪をした。
「ご、ごめんね。読書の邪魔をする気はなかったんだけど……」
「いいですよ、別に。区切りのいい所だったので」
「何を読んでたの?」
日吉が読んでいた本が気になる秋は裏表紙しか見えないので尋ねてみた。本の色合いは薄黒い感じでどんな内容なのかも判断出来ないものだ。
「気になりますか?」
確認するように質問で返されてしまった秋はもしかして聞いてはいけなかったのかなと思いながらもすでに尋ねてしまったのでこくりと頷いた。
「気になるけど、もし日吉くんが詮索してほしくなかったら無理には聞かないよ」
「怪奇小説です」
(教えてくれた……)
まさか教えてくれるとは思わなかったが、それよりも日吉の表情があまり見ない小さな笑みを見せるので秋は本よりもそちらの方が気になった。
「なんだか嬉しそうだね。日吉くんはホラーとか好きなの?」
「嫌いではないです。そういう九条さんはどうなんですか?」
「私は苦手ではないけど得意でもないかな。恐怖心って結構心に残るような感じがして、抜けきらない時があるから」
「へぇ……それは興味深いですね。でしたら一度読んでみてはいかがですか?」
スッと本を差し出された秋は日吉のからかうような笑みに戸惑いながらもそれを受け取った。
相手の態度から見て怖がらせようとしている可能性は非常に高く、自信を持って手渡された本の表紙もどこかおどろおどろしいもの。
「ありがとう……結構怖いのかな?」
「著名作家達のアンソロジーなので話は上手いと思います」
「そうなんだ……」
つまり日吉にとっては恐怖心を擽られる評価があるということだろう。読めないわけではないが、こんなにも推されると逆に読むのを躊躇ってしまいそうであるが好奇心がないわけではない。
せっかく薦めてくれたのなら一章だけでも見ておこうかな。そう思ってぺラッと表紙を捲ると申し訳なさそうな表情の店員が二人に話しかけた。
「ご歓談中失礼します。よろしければお二人で一緒の席にしていただくことは可能でしょうか? ただいま満席となっていまして、次のお客様がお待ちいただいてるんです」
「あ、そうなんですね。えっと私は大丈夫だけど日吉くんは……」
ちらり、と日吉に目を向ける。さすがに同席までは許してくれないかもしれないのでここは自分が席を空けて退店しようと考えた秋だったが、相手からは意外な返事をされた。
「俺も構いませんよ」
「えっ? いいの? 読書の邪魔にならない?」
「それよりも俺としてはその本の感想が聞きたいので」
ニヤリと人の悪い顔で笑う日吉を見て秋は作り笑いをしながら「そうなんだ……」と答える。
「じゃあ、私がこっちの席に移ります」
「ご協力ありがとうございますっ」
秋が荷物を持ち、隣の日吉と向かい合わせになって座った。店員は彼女の飲みかけだった紅茶を運び再び秋の前へと置く。
「後ほどアイスをサービスさせていただきます」
「そこまでしていただかなくても……」
「いえ、お願いをしたのはこちらの方ですし、それにささやかなものなので」
「分かりました、ありがとうございます」
店員の言葉に甘え、お礼の品としてバニラアイスを二人は提供された。ミルク感が強くてサービスで食べてもいいのか疑ってしまうほど美味である。
その間も秋は日吉に薦められた怪奇小説に目を通した。
日吉はただ黙ってまるで監視するかのように秋を見つめるのだが、時折その視線が気になって集中出来なくなる。
しかし、読み進めていけばその視線も気にならないほど読書に没頭した。
グロテスクなものだったらどうしようと思ったが、そんなことはなく不気味で不思議で背筋をぞくりとさせるような話はあっという間に一章を読み終える。
「凄いね……これ」
「でしょう?」
にんまりと口端を上げて笑う日吉はそれだけの言葉では満足出来なかった。
「怖かったですか?」
「そうだね。勢いで怖がらせるものとは違って小さな恐怖が散りばめられてる感じなのに最後の気味の悪さが残るのはちょっと驚いたかな」
「……結構平気そうですね」
何が、と問うまでもない返事に秋は「怖かったよ?」と今一度小説の感想を簡潔に答える。
「もっと怖がるのかと思ってましたので」
「うーん……私の想像力が低いから作品の細部までは想像出来なかったのかも」
「文字だから、ですか。では映像や体験型はどうですか?」
「映画やお化け屋敷みたいなものならってことかな? あまり機会がないから私も分からないけど、小説よりはハッキリしてる分怖さはあるかもしれないね」
「なるほど……参考になりました」
「そう……?」
何の参考になったのかはあえて聞かないことにした秋だったが、いつも仏頂面ばかりしている彼の活き活きとしている姿はあまり見ないため彼女自身も嬉しくなる。
「今度機会があれば映画か肝試しでもしましょうか」
「えっ?」
まさかの発言。相手が相手なので社交辞令とかではなく、本当に行く機会を窺っているのだろうと思ったが、すぐに日吉は「あ」と呟いた。
「やはり二人だと跡部さんにまずいですか? 人数がいれば大丈夫か……」
え? なぜそこで跡部の名前が出てくるのか?
理由を告げることなく顎に手を添えてぶつぶつと呟く日吉に秋は何のことか分からず本人に確かめる。
「日吉くん、跡部にまずいってどういうこと?」
「……彼女が後輩とはいえ異性と二人で約束を取り付けるのはさすがの跡部さんも不満に思うんじゃないんですか?」
「えっ! ま、待って! 私は別に跡部と付き合ってるわけじゃないよっ」
ぶんぶんと首を横に振ってすぐさま否定する秋。なぜ勘違いをされたのか分からないけど、跡部と秋の間にそんな事実は一切ない。
「そうなんですか?」
「うん。跡部とは友達ではあるけど、彼女とかじゃないよ」
それは意外だと言いたげに瞬きを繰り返す日吉はしばらく黙ったのち口を開いた。
「俺はてっきりそうだと思っていましたが。跡部さんは何かとあなたと話をしているようですし、副生徒会長も跡部さんからの指名でしたよね?」
「マネージャー業については大体私に話が回るかな。副生徒会長についてはたまたまだよ。それ以上の意味はないし、仮に恋仲だとしても跡部は部活や生徒会に私情を持ち込まないはずだから」
確かに他の女子生徒に比べると跡部と関わることが多いのは間違いない。だから彼のファンクラブメンバーから妬まれるのも多いことを秋はしっかり理解している。
もちろん日吉のように勘違いする人も少なくなく、それゆえに贔屓されていると感じる者も存在した。
しかし、跡部は人の能力を重視する人間なので不相応な地位に誰かを置くことはしない。
秋にとって跡部とはそういう男だと信じているし、それだけ自分の能力を買って副生徒会長に任命してくれたのだと。
「……では、俺があなたを誘うこと自体は問題ないということですね?」
「え? あ、うん。そうだね」
「なるほど。では、今度先輩が凄く怖がっていただけるようなものをお探ししますね」
悪い笑みを浮かべる日吉に秋は若干の不安を覚えながらも張り付いた笑顔のままとりあえず頷くことしか出来なかった。
(日吉くん……人を怖がらせるのが好きなのかな……)