自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
例えるならそれは断罪イベント
主人公名前変換
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「西成先輩っ」
「えっ?」
昼休み、前の授業の片付けを終えた秋は持参したお弁当と共に教室を出ると、彼女の元に下級生の女子達がわらわらと集まってきた。
しかし、またもや遥と間違えられている。
「どうやって男子に媚びを売ってるんですかー?」
「テニス部の部員達も全員たらしこもうとしてるって本当なんです?」
「やっぱり生徒会長でもある跡部先輩を狙ったりするんですか?」
くすくすと嘲笑と共に投げかける下品な質問。
これを遥に投げかけられたらと思うと勘違いしているとはいえ自分に向けられて良かったかもしれない。
しかし、ちゃんと調べもしないで先輩相手でも怖気ずに突撃するのはある意味凄い。行動力があるのはいいことだけど、使い所が間違ってると指摘すべきか悩んでいたら女子達がまた口を開く。
「先輩聞いてます?」
「ねぇ、だんまりなんて酷くないですか?」
果たしてどちらが酷いのか。おそらく彼女達に罪悪感はないのだろう。不届き者を正す正義感だけで動いているに違いない。
しかし、その誤った正義感はただの自己満足でしかないだろう。
「ごめんね。人違いされてびっくりしただけだよ」
「しらばっくれても無駄ですよー。西成先輩が男を食い物にしてるってもう有名なんですから」
何を根拠に無駄だと言っているのだろう。生徒手帳を出せば一発だけど、もはやそれすらも偽造だのなんだのイチャモンをつけられかねない。
その時だった。
「馬鹿かお前ら。その人は西成さんじゃないぞ」
「日吉くん!」
そこに現れたのはテニス部部員である日吉だった。その彼が下級生達に向けて言葉を挟む。
え? という表情で互いの顔を見合う彼女達に日吉はさらに話を続けた。
「そもそもその人、副生徒会長の九条さんだ。会長の顔を知ってるなら副会長の顔ぐらい覚えとけ」
「言うじゃねーの、日吉」
「……跡部さん」
今度は会話中に名前が出た跡部本人まで出てきた。秋が彼の名を口にする前に女子達がキャーキャーと騒ぎ立てる。
「お前ら、どこでそんな根の葉もない噂を聞いたのか詳しい話を聞かせろ。来い」
氷帝学園の有名人でもある跡部に誘われたと歓喜する女子達が素直に「はい!」と返事をするが、どう見ても事情聴取として連れて行かれるようにしか見えない。
「邪魔したな、お前ら」
「あ、うん。ありがとう跡部」
「謝罪くらいさせたらどうなんですか?」
「俺に言われて謝る奴らの言葉なんざ響かねぇだろ」
跡部の言葉は一理ある。確かにと秋が頷けば日吉はフンと鼻を鳴らすだけだった。
「わざわざここまで足を運ぶなんてご苦労なこった。じゃあな」
そう告げて跡部は下級生を引き連れて秋達の前から去っていった。
ここまで足を運ぶなんて、という言葉はさっきの女子生徒達に向けてと思ったが、去り際に日吉へと視線を向けていたのでもしかして……と思い、秋は日吉へ目をやった。
「……」
おそらく秋の視線に気づいているはずなのに日吉は見向きもしない。むしろ目を合わせないようにしている。
「そういえば日吉くん、ここにはどうして?」
「……たまたまですけど」
「たまたま三年のクラスに?」
そう口にした時、秋はハッとした。もしかして聞いちゃいけないことだったのかもしれないと。
しかし、日吉は機嫌を悪くするどころか、そのような返しをされるような返答をした自身に非があると言いたげに自己嫌悪を抱いている様子。そして観念するように語り出した。
「……たまたま聞こえたんですよ。噂のテニス部のマネージャー西成遥に会ってからかってやろうみたいな話を。大人しそうな感じで男子に色目使ってるだのなんだのと。俺の知ってる西成さんの印象と全く違うし、人違いならその相手にいい迷惑だと思って来てみただけですよ」
「心配してくれたんだね、ありがとう。なんて言えば信じてくれるかなって考えてたから助け舟を出してくれて助かったよ」
「俺はただおかしな噂を立てられたくなかっただけです。外野に騒がれるのは鬱陶しいですので」
「それでも行動に移すのは凄いことだと思うよ」
何を言っても褒めるロボットなのかというくらいにっこりと微笑む秋に日吉はそれ以上何も言えなかったし言う気もなくなった。
「……昼飯を食べるので失礼します」
「うん、また部活でね」
逃げるように三年の教室を離れていく日吉に秋は見えなくなるまでその後ろ姿を見送った。
(日吉くんってひねくれた物言いするけどいい人だなぁ)
なんとなくそうではないかと察していたが、今回の件で秋の中での日吉はいい人だと認識された。
(別に俺は助けようとしたわけじゃなくて、人違いだと訂正しただけだ)
心の中でそう念じながら日吉はカフェテリアへと向かっていた。
つい数分前までそこに向かっていたはずなのにすれ違う女子達の話が耳に入ったせいで道草を食ってしまったのだ。
なんでも噂の本人に会ってみようというくだらない内容で一度足を止めたのがいけなかったのか、そのあと“男テニのマネージャーで大人しそうな子”という単語に反応してしまった。
うちのマネージャーで大人しそうな奴なんてたった一人しかいない。
日吉の中では九条秋のことだと推測したが、どうも下級生と思われる女子達の話を盗み聞きすると、その人物は西成遥と口にしている。
確かに遥についての噂が出回っていることは知っていたが、どういうわけか秋と勘違いされていることに疑問を抱いた。
噂というのは尾ひれがつくものだが、まさか人違いにまで至るとは思っていなかった日吉は気づけば下級生の後を追った。
彼女達の言う特徴ならば秋に突撃する可能性は十分にあるだろうし、その時は人違いな噂でテニス部の印象を悪くさせたくないので間に入るつもりだ。
以前、鳳が自分に関する噂を否定したように。
しかし、特徴違いなだけで噂の本人である遥に突撃した場合はどうするのか? その時は適当に三年のレギュラーに任せようと決めていた。
遥がそれを知れば『ヒヨってば酷いや!』と喚いていただろう。
結局、日吉の想像していた通りの間違った方の相手へと向かって行ったため日吉は助けに入ることになった。
本人は助けたと認めるつもりはないが結果的に秋を助けたことになる。
(そもそも俺が行かなくとも近くに跡部さんがいたみたいだし、そのままあの人に任せた方が良かったな……)
はた、とそこで思考を停止する。日吉の中では跡部とは尊敬すべき人間でもあれば超えるべき相手。そんな人物に頼ると思うとそれはそれで悔しい気持ちになる。
だったら彼より先に部活の邪魔になりそうな火種を察知した自分は凄いのではないかと自信を一瞬だけ持つが、彼女達に詳しい話を聞こうと跡部が動いていたことを思い出せばすぐにそのテンションも下がった。
「……っち」
悔しげに舌打ちするものの、秋に感謝されたのは悪いことではなかったので「まぁいい」と小さく呟くのだった。
「あれ? 日吉、なんかいいことでもあったの?」
歩いている途中、鳳と出くわした日吉だったが、出会い頭になぜか微笑ましげに笑いかけるので無性に腹立ち、軽くみぞおちに殴った。
「いたっ! ちょっ、なんで殴るの!?」
「お前が変なこと言うからだろ」
「別に変なことなんて……ただ日吉が笑ってたから聞いただけなのに」
「笑ってない」
「え? でも、さっき口元が」
「笑ってない」
睨みつけるように二度も否定すると鳳は納得しないまま大息をついた。
「日吉って頑固だよね」
「喧嘩売ってるのかお前は」
「そんなつもりないのに……あ、そうだ。日吉に話そうと思ってたんだけど、俺今度初めて回転寿司に行くんだっ」
突然話題を変えたかと思えば喜々とした表情で回転寿司に行くと報告され、日吉は適当に相槌を打った。
「俺が回転寿司に行ったことないって知った向日さん達に『あれを知らないなんて勿体ねぇぞ!』って言われて誘ってくれたんだ。日吉も行かない?」
「行かない」
はっきりと断ると鳳は分かりやすいくらいに残念そうな顔を見せる。
そもそも俺が行くとでも言うと思ったのか? と逆に聞き返したくなるが、うんと言われても面倒臭いので口にはしなかった。
「絶対楽しいと思うのに」
「騒々しいの間違いだろ」
「じゃあ、もし行きたくなったら言ってよ」
「……人の話を聞いてたか?」
「聞いてたけどもしかしたら考えが変わるかもしれないだろ?」
「変わらないな」
向日さん達、と言っていた時点で日吉はすでに関わりたくないのだ。
おそらく幼馴染みである芥川、宍戸は確定と思われる。絶対にうるさくて食事どころではなくなりそうだとそんな気がしてくる面子だ。
それに向日は何かと日吉のことを『ヒヨッコ、ヒヨッコ』と言ってくるので何度その言葉にカチンときたことか。
だから絶対に行きたくない誘いだった。そんな確固とした意志に鳳はさらに残念がった。
「えっ?」
昼休み、前の授業の片付けを終えた秋は持参したお弁当と共に教室を出ると、彼女の元に下級生の女子達がわらわらと集まってきた。
しかし、またもや遥と間違えられている。
「どうやって男子に媚びを売ってるんですかー?」
「テニス部の部員達も全員たらしこもうとしてるって本当なんです?」
「やっぱり生徒会長でもある跡部先輩を狙ったりするんですか?」
くすくすと嘲笑と共に投げかける下品な質問。
これを遥に投げかけられたらと思うと勘違いしているとはいえ自分に向けられて良かったかもしれない。
しかし、ちゃんと調べもしないで先輩相手でも怖気ずに突撃するのはある意味凄い。行動力があるのはいいことだけど、使い所が間違ってると指摘すべきか悩んでいたら女子達がまた口を開く。
「先輩聞いてます?」
「ねぇ、だんまりなんて酷くないですか?」
果たしてどちらが酷いのか。おそらく彼女達に罪悪感はないのだろう。不届き者を正す正義感だけで動いているに違いない。
しかし、その誤った正義感はただの自己満足でしかないだろう。
「ごめんね。人違いされてびっくりしただけだよ」
「しらばっくれても無駄ですよー。西成先輩が男を食い物にしてるってもう有名なんですから」
何を根拠に無駄だと言っているのだろう。生徒手帳を出せば一発だけど、もはやそれすらも偽造だのなんだのイチャモンをつけられかねない。
その時だった。
「馬鹿かお前ら。その人は西成さんじゃないぞ」
「日吉くん!」
そこに現れたのはテニス部部員である日吉だった。その彼が下級生達に向けて言葉を挟む。
え? という表情で互いの顔を見合う彼女達に日吉はさらに話を続けた。
「そもそもその人、副生徒会長の九条さんだ。会長の顔を知ってるなら副会長の顔ぐらい覚えとけ」
「言うじゃねーの、日吉」
「……跡部さん」
今度は会話中に名前が出た跡部本人まで出てきた。秋が彼の名を口にする前に女子達がキャーキャーと騒ぎ立てる。
「お前ら、どこでそんな根の葉もない噂を聞いたのか詳しい話を聞かせろ。来い」
氷帝学園の有名人でもある跡部に誘われたと歓喜する女子達が素直に「はい!」と返事をするが、どう見ても事情聴取として連れて行かれるようにしか見えない。
「邪魔したな、お前ら」
「あ、うん。ありがとう跡部」
「謝罪くらいさせたらどうなんですか?」
「俺に言われて謝る奴らの言葉なんざ響かねぇだろ」
跡部の言葉は一理ある。確かにと秋が頷けば日吉はフンと鼻を鳴らすだけだった。
「わざわざここまで足を運ぶなんてご苦労なこった。じゃあな」
そう告げて跡部は下級生を引き連れて秋達の前から去っていった。
ここまで足を運ぶなんて、という言葉はさっきの女子生徒達に向けてと思ったが、去り際に日吉へと視線を向けていたのでもしかして……と思い、秋は日吉へ目をやった。
「……」
おそらく秋の視線に気づいているはずなのに日吉は見向きもしない。むしろ目を合わせないようにしている。
「そういえば日吉くん、ここにはどうして?」
「……たまたまですけど」
「たまたま三年のクラスに?」
そう口にした時、秋はハッとした。もしかして聞いちゃいけないことだったのかもしれないと。
しかし、日吉は機嫌を悪くするどころか、そのような返しをされるような返答をした自身に非があると言いたげに自己嫌悪を抱いている様子。そして観念するように語り出した。
「……たまたま聞こえたんですよ。噂のテニス部のマネージャー西成遥に会ってからかってやろうみたいな話を。大人しそうな感じで男子に色目使ってるだのなんだのと。俺の知ってる西成さんの印象と全く違うし、人違いならその相手にいい迷惑だと思って来てみただけですよ」
「心配してくれたんだね、ありがとう。なんて言えば信じてくれるかなって考えてたから助け舟を出してくれて助かったよ」
「俺はただおかしな噂を立てられたくなかっただけです。外野に騒がれるのは鬱陶しいですので」
「それでも行動に移すのは凄いことだと思うよ」
何を言っても褒めるロボットなのかというくらいにっこりと微笑む秋に日吉はそれ以上何も言えなかったし言う気もなくなった。
「……昼飯を食べるので失礼します」
「うん、また部活でね」
逃げるように三年の教室を離れていく日吉に秋は見えなくなるまでその後ろ姿を見送った。
(日吉くんってひねくれた物言いするけどいい人だなぁ)
なんとなくそうではないかと察していたが、今回の件で秋の中での日吉はいい人だと認識された。
(別に俺は助けようとしたわけじゃなくて、人違いだと訂正しただけだ)
心の中でそう念じながら日吉はカフェテリアへと向かっていた。
つい数分前までそこに向かっていたはずなのにすれ違う女子達の話が耳に入ったせいで道草を食ってしまったのだ。
なんでも噂の本人に会ってみようというくだらない内容で一度足を止めたのがいけなかったのか、そのあと“男テニのマネージャーで大人しそうな子”という単語に反応してしまった。
うちのマネージャーで大人しそうな奴なんてたった一人しかいない。
日吉の中では九条秋のことだと推測したが、どうも下級生と思われる女子達の話を盗み聞きすると、その人物は西成遥と口にしている。
確かに遥についての噂が出回っていることは知っていたが、どういうわけか秋と勘違いされていることに疑問を抱いた。
噂というのは尾ひれがつくものだが、まさか人違いにまで至るとは思っていなかった日吉は気づけば下級生の後を追った。
彼女達の言う特徴ならば秋に突撃する可能性は十分にあるだろうし、その時は人違いな噂でテニス部の印象を悪くさせたくないので間に入るつもりだ。
以前、鳳が自分に関する噂を否定したように。
しかし、特徴違いなだけで噂の本人である遥に突撃した場合はどうするのか? その時は適当に三年のレギュラーに任せようと決めていた。
遥がそれを知れば『ヒヨってば酷いや!』と喚いていただろう。
結局、日吉の想像していた通りの間違った方の相手へと向かって行ったため日吉は助けに入ることになった。
本人は助けたと認めるつもりはないが結果的に秋を助けたことになる。
(そもそも俺が行かなくとも近くに跡部さんがいたみたいだし、そのままあの人に任せた方が良かったな……)
はた、とそこで思考を停止する。日吉の中では跡部とは尊敬すべき人間でもあれば超えるべき相手。そんな人物に頼ると思うとそれはそれで悔しい気持ちになる。
だったら彼より先に部活の邪魔になりそうな火種を察知した自分は凄いのではないかと自信を一瞬だけ持つが、彼女達に詳しい話を聞こうと跡部が動いていたことを思い出せばすぐにそのテンションも下がった。
「……っち」
悔しげに舌打ちするものの、秋に感謝されたのは悪いことではなかったので「まぁいい」と小さく呟くのだった。
「あれ? 日吉、なんかいいことでもあったの?」
歩いている途中、鳳と出くわした日吉だったが、出会い頭になぜか微笑ましげに笑いかけるので無性に腹立ち、軽くみぞおちに殴った。
「いたっ! ちょっ、なんで殴るの!?」
「お前が変なこと言うからだろ」
「別に変なことなんて……ただ日吉が笑ってたから聞いただけなのに」
「笑ってない」
「え? でも、さっき口元が」
「笑ってない」
睨みつけるように二度も否定すると鳳は納得しないまま大息をついた。
「日吉って頑固だよね」
「喧嘩売ってるのかお前は」
「そんなつもりないのに……あ、そうだ。日吉に話そうと思ってたんだけど、俺今度初めて回転寿司に行くんだっ」
突然話題を変えたかと思えば喜々とした表情で回転寿司に行くと報告され、日吉は適当に相槌を打った。
「俺が回転寿司に行ったことないって知った向日さん達に『あれを知らないなんて勿体ねぇぞ!』って言われて誘ってくれたんだ。日吉も行かない?」
「行かない」
はっきりと断ると鳳は分かりやすいくらいに残念そうな顔を見せる。
そもそも俺が行くとでも言うと思ったのか? と逆に聞き返したくなるが、うんと言われても面倒臭いので口にはしなかった。
「絶対楽しいと思うのに」
「騒々しいの間違いだろ」
「じゃあ、もし行きたくなったら言ってよ」
「……人の話を聞いてたか?」
「聞いてたけどもしかしたら考えが変わるかもしれないだろ?」
「変わらないな」
向日さん達、と言っていた時点で日吉はすでに関わりたくないのだ。
おそらく幼馴染みである芥川、宍戸は確定と思われる。絶対にうるさくて食事どころではなくなりそうだとそんな気がしてくる面子だ。
それに向日は何かと日吉のことを『ヒヨッコ、ヒヨッコ』と言ってくるので何度その言葉にカチンときたことか。
だから絶対に行きたくない誘いだった。そんな確固とした意志に鳳はさらに残念がった。