自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
悪意ある噂
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翌日の朝練のこと。その日はいつもより男子テニス部を見物する生徒が多く感じた。
元々、朝練は観覧する人は多くないのだが、今日は誰の目から見てもいつもとは違うと思える。
(男女共に増えてる……見たところ下級生が多いみたいだけど)
理由は分からないけど、男子テニス部は人気なのでたまたま見物生徒が増えることもあるのだろう。
一年生のフォームチェックをしてる最中、ぐるっと見回しながらそう考えた秋の元に滝が近づいた。
「今朝は人が多いね」
「そうだね。なんでかは分からないけど、レギュラー達目当てかな?」
「それもあるだろうけど、なんだろう……違和感というか、不快感があるというか……」
「不快感……?」
少し濁すような滝の発言。おそらく不快感という言葉の方が本音だと感じた秋が聞き返す。
「嘲笑してる感じがしてね。俺に、とかではなく特定の相手に向けられてるようでいい気分にはなれなくて」
確かに耳を澄ませばクスクスと密めくような声が聞こえてくる。部員目当てならば黄色い歓声が上がるはずなのにせせら笑いなのはなぜなのか。
「まぁ、気のせいならいいんだけどね。俺が勝手に気になっていただけだから九条まで気にすることないよ」
「ううん。滝の言う通り、なんだか様子がおかしいのは感じるから少し気にしてみるよ」
「……うん。でも何か気づいたら俺や他の頼りになる相手に相談しなよ」
「ありがとう。そうするよ」
そう伝えると滝は小さく笑いかけ「それじゃあ、そろそろ戻るよ」と告げて秋の前から去った。
おそらく滝は秋に注意を促したのだろう。なんとなく彼女はそのように感じた。
滝から悪意があると言わんばかりの見物人の様子を聞いて秋もようやく気づいたのだ。
なぜか自分に視線を向けられているということに。
別に悪意を向けられることが初めてではない。悲しいことによくあると言えばあるのだけど、今回は少しばかり違った。
いつもならば憎しみのこもった目で陰口を叩かれるのだが、今回は好奇な目でせせら笑いを受けているのだ。どちらにせよ気分のいいものではないが。
(なんだろう……)
きょろきょろとフェンス外の人達に目を向けて見る。やはり沢山の視線を感じた。
そんな時、遠くから打ち込まれたテニスボールが大きく跳ねながら秋の横を通り過ぎ、少しずつ跳躍する力がなくなったボールはフェンスの隅へと転がっていった。
「秋~! そのボール取って~!」
遥が秋の元へ走りながら声を上げた。
ボール拾いに専念する遥のため、秋はフェンスまで転がったボールを取りに行く。
しかし、嫌な視線を向ける見物人達に近づくことでもあるので気が進まなかったが、気にしていない振りをしてボールを拾い上げた。
「あれが男たらしの西成遥?」
「そうでしょ。だって見るからにぶりっ子な感じじゃん? 異性みんなに媚びてそ~」
その言葉を聞いておかしいと感じた秋は目の前のフェンスを挟む女子生徒達へと視線を向けた。
明らかにその二人の女子は秋を見ながら口にしていた。彼女達だけではなく、周りにいた生徒達もそうである。
ただ、不思議なのはなぜか遥と勘違いされているということだ。
秋は副生徒会長なので跡部というほどではないが、それなりに認知度はある。少なくとも同学年で知らない者はほとんどいないだろう。
そうなると彼女達は下級生と思われる。さらに幼さが残る顔立ちやまだ真新しい制服などを見ると一年生という線が強いだろう。
おそらく目の前の少女達に同調するように笑う人達のほとんども新入生だと秋は考えた。
「ねー! 西成せんぱ~い! 今まで何人の男をたらしこんだんですか~?」
「ちょっとーそういうこと聞いちゃ悪いよ~」
からかうように、小馬鹿にするかのように笑う彼女達はなぜ秋を遥と間違えているかは分からないが見た目で判断したのならそれはそれで秋にとって傷つくものだった。
しかし、それ以上に友人に対する中傷を聞いて黙ってはいられない。
「初めまして。私、九条秋と言います。貴方達一年生だよね? 誰と勘違いしてるか知らないけど、ここには元気で明るい西成遥はいても“男たらしをするような西成遥”って子はいないはずだけど」
にっこりと笑って真実を告げる。西成遥は存在するが、そんな悪意ある噂の西成遥は存在しないため、優しく諭すように伝えると、女子生徒達は「あ、あれ?」と戸惑う様子を見せ始める。
「人違いしてたのっ?」
「だ、だってテニス部のマネージャーって言ってたし、この人の方がそれっぽいじゃん!」
ひそひそと話し始めるが、もちろん秋には丸聞こえである。さすがに本人を前にして失礼な子達だなぁと思わずにはいられない。
「貴方達、名前とクラスを教えてくれる? さっきから失礼なことばかりだからどういうつもりなのか話し合いをしたいの」
「あ、いや、それは……」
「私達ちょっと勘違いしちゃったみたいで……その、すみませんでした!」
じりじりと後退りをする彼女達は自分達に非がある自覚が芽生えたらしく、脱兎の如く逃げ出した。
本気で話し合いが出来るとは思ってはいなかったが、噂の出処などの詳しい話は聞くべきだったかもしれないと考え、逃げられてしまったことに己の詰めが甘かったと感じた秋は小さな嘆息を漏らす。
その後、いつまで経ってもボールを持ってきてくれないことを不思議に思った遥が秋の元へ駆け寄るが、他の下級生達に本物の遥へと不愉快な視線を向けられないようにすぐに彼女を連れてその場から離れた。
元々、朝練は観覧する人は多くないのだが、今日は誰の目から見てもいつもとは違うと思える。
(男女共に増えてる……見たところ下級生が多いみたいだけど)
理由は分からないけど、男子テニス部は人気なのでたまたま見物生徒が増えることもあるのだろう。
一年生のフォームチェックをしてる最中、ぐるっと見回しながらそう考えた秋の元に滝が近づいた。
「今朝は人が多いね」
「そうだね。なんでかは分からないけど、レギュラー達目当てかな?」
「それもあるだろうけど、なんだろう……違和感というか、不快感があるというか……」
「不快感……?」
少し濁すような滝の発言。おそらく不快感という言葉の方が本音だと感じた秋が聞き返す。
「嘲笑してる感じがしてね。俺に、とかではなく特定の相手に向けられてるようでいい気分にはなれなくて」
確かに耳を澄ませばクスクスと密めくような声が聞こえてくる。部員目当てならば黄色い歓声が上がるはずなのにせせら笑いなのはなぜなのか。
「まぁ、気のせいならいいんだけどね。俺が勝手に気になっていただけだから九条まで気にすることないよ」
「ううん。滝の言う通り、なんだか様子がおかしいのは感じるから少し気にしてみるよ」
「……うん。でも何か気づいたら俺や他の頼りになる相手に相談しなよ」
「ありがとう。そうするよ」
そう伝えると滝は小さく笑いかけ「それじゃあ、そろそろ戻るよ」と告げて秋の前から去った。
おそらく滝は秋に注意を促したのだろう。なんとなく彼女はそのように感じた。
滝から悪意があると言わんばかりの見物人の様子を聞いて秋もようやく気づいたのだ。
なぜか自分に視線を向けられているということに。
別に悪意を向けられることが初めてではない。悲しいことによくあると言えばあるのだけど、今回は少しばかり違った。
いつもならば憎しみのこもった目で陰口を叩かれるのだが、今回は好奇な目でせせら笑いを受けているのだ。どちらにせよ気分のいいものではないが。
(なんだろう……)
きょろきょろとフェンス外の人達に目を向けて見る。やはり沢山の視線を感じた。
そんな時、遠くから打ち込まれたテニスボールが大きく跳ねながら秋の横を通り過ぎ、少しずつ跳躍する力がなくなったボールはフェンスの隅へと転がっていった。
「秋~! そのボール取って~!」
遥が秋の元へ走りながら声を上げた。
ボール拾いに専念する遥のため、秋はフェンスまで転がったボールを取りに行く。
しかし、嫌な視線を向ける見物人達に近づくことでもあるので気が進まなかったが、気にしていない振りをしてボールを拾い上げた。
「あれが男たらしの西成遥?」
「そうでしょ。だって見るからにぶりっ子な感じじゃん? 異性みんなに媚びてそ~」
その言葉を聞いておかしいと感じた秋は目の前のフェンスを挟む女子生徒達へと視線を向けた。
明らかにその二人の女子は秋を見ながら口にしていた。彼女達だけではなく、周りにいた生徒達もそうである。
ただ、不思議なのはなぜか遥と勘違いされているということだ。
秋は副生徒会長なので跡部というほどではないが、それなりに認知度はある。少なくとも同学年で知らない者はほとんどいないだろう。
そうなると彼女達は下級生と思われる。さらに幼さが残る顔立ちやまだ真新しい制服などを見ると一年生という線が強いだろう。
おそらく目の前の少女達に同調するように笑う人達のほとんども新入生だと秋は考えた。
「ねー! 西成せんぱ~い! 今まで何人の男をたらしこんだんですか~?」
「ちょっとーそういうこと聞いちゃ悪いよ~」
からかうように、小馬鹿にするかのように笑う彼女達はなぜ秋を遥と間違えているかは分からないが見た目で判断したのならそれはそれで秋にとって傷つくものだった。
しかし、それ以上に友人に対する中傷を聞いて黙ってはいられない。
「初めまして。私、九条秋と言います。貴方達一年生だよね? 誰と勘違いしてるか知らないけど、ここには元気で明るい西成遥はいても“男たらしをするような西成遥”って子はいないはずだけど」
にっこりと笑って真実を告げる。西成遥は存在するが、そんな悪意ある噂の西成遥は存在しないため、優しく諭すように伝えると、女子生徒達は「あ、あれ?」と戸惑う様子を見せ始める。
「人違いしてたのっ?」
「だ、だってテニス部のマネージャーって言ってたし、この人の方がそれっぽいじゃん!」
ひそひそと話し始めるが、もちろん秋には丸聞こえである。さすがに本人を前にして失礼な子達だなぁと思わずにはいられない。
「貴方達、名前とクラスを教えてくれる? さっきから失礼なことばかりだからどういうつもりなのか話し合いをしたいの」
「あ、いや、それは……」
「私達ちょっと勘違いしちゃったみたいで……その、すみませんでした!」
じりじりと後退りをする彼女達は自分達に非がある自覚が芽生えたらしく、脱兎の如く逃げ出した。
本気で話し合いが出来るとは思ってはいなかったが、噂の出処などの詳しい話は聞くべきだったかもしれないと考え、逃げられてしまったことに己の詰めが甘かったと感じた秋は小さな嘆息を漏らす。
その後、いつまで経ってもボールを持ってきてくれないことを不思議に思った遥が秋の元へ駆け寄るが、他の下級生達に本物の遥へと不愉快な視線を向けられないようにすぐに彼女を連れてその場から離れた。