自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
新たな事件を知る者、知らない者
主人公名前変換
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「はぁ~~……くっそぉ……」
向日は深い溜め息と共に宛もなく昼休みの廊下をさまよっていた。
片手には紙パックの牛乳、もう片手にはパンがいくつか入ったビニール袋。
彼は昼ご飯を食べながら秋を探していたのだが、一向に見つかる気配がない。
朝から秋に謝罪をしようとしているのに朝練の時からなかなか話しかけるタイミングが得られなかった。
もしかしたら避けられていたのかもしれないが、このままではすっきりしない向日は昼休みの時間を利用して秋に謝るつもりで昼食用のパンを引っ提げて彼女のクラスに突撃するも、すでに秋はいない状態。
それからずっと秋を探しにあちこち探し回ったが、広い学園内に一人の人間を見つけるのは困難なことである。
すでに十分以上は走り回った。何度か教師に注意を受けたが、やり過ごす度に駆け回ったのであっという間に走る体力もなくなり、仕方なく廊下で一休みしながらの昼食を取っていた。
連絡先を交換していないので呼びかけることも出来ずにいるため、もうお手上げ状態。
「放課後の部活にワンチャンか……」
ただ秋に謝罪したいだけだというのになかなか上手くいかない現状に向日は「こうなるはずじゃなかったのに……」と胸の内で呟きながら廊下の窓を開けて、走り回った体温を少しでも下げるため外気の風を浴びようとした。しかし、こういう時に限って無風である。
「運悪すぎじゃん……」
ちぇっ、と唇を尖らせる彼は二階の窓からふと下に視線を向けた。
あ。と声が出る。それもそのはず、今までずっと探していた人物がすぐ下にいたのだ。
どうやら彼女は中庭で一人座って弁当を食べている様子。
「いた!」
普通ならば階段を駆け下りてすぐに秋の元へ飛んで行くだろう。しかし、向日は違った。
窓枠に足をかけて躊躇うことなく二階の窓から文字通り飛んで行ったのだ。
「よっ、と!」
「!?」
くるっと回転して着地すると、近くで座っていた秋はびくりと肩を跳ねさせ固まっていた。
向日は秋へと視線を向け、ズンズンと近づいていく。
「ようやく見つけたぜ、九条……」
「えっ? えっ?」
怒っている様子の向日に秋は戸惑いの声を上げる。少し怯える秋に向けて向日は大きく頭を下げた。
「九条……悪ぃ!」
「……え?」
「九条に嫌な思いをさせたこと、悪いって思ってる。そりゃ侑士に頼まれたからとはいえ、お前にとっては不愉快だったよな……」
「あ……ううん。向日は友達の協力をしただけだから悪くないよ。気にしないで」
あまりにもあっさりと許されたため「え」と今度は向日が戸惑いの声を上げた。
「……それだけか? 怒ってんじゃねぇのか?」
「え? お、怒ってないよっ。そう見えたの?」
「そりゃ、お前あからさまに避けてたし……今もこうやって隠れて一人で飯食ってるし……」
「これは……自責の念に駆られただけで、頭を冷やしてるっていうか……」
「? どういうことだ?」
「……向日は友達のために協力しただけなのに、そうとは知らず映画に誘ってくれたことで嬉しくて浮かれてたからちょっと恥ずかしくて……」
「別にお前が自己嫌悪に陥ることじゃねぇだろ? ……いや、喜んでくれたのはこっちも嬉しいけど」
責められることはあっても自分自身を責めるのはおかしいが、それだけ遊びに誘われたことが嬉しかったのだと思うと向日にも更なる罪の意識が芽生える。
「あー……だから、利用したのは悪いと思ってるけど、別に九条のことをダチとは思ってねぇわけじゃねーからなっ! 今回は侑士に頼まれたけど、次はあいつなんて関係なしで遊ぼうぜ! 俺も誘うから、だから浮かれていいんだよっ」
自分で言ってて何だか恥ずかしくなった。謝罪しに来たはずなのにいつの間にか励まして、友達だと言い聞かせて小っ恥ずかしい青春を送っている。
なんでこんなことになっているのかは分からないが、おそらく秋が真面目と優しさが過ぎるゆえに自分を責めていたからだろう。
秋は呆気に取られた顔を見せるが、すぐにくすりと笑みをこぼした。
「……ありがとう、向日。私達は友達のままなんだね?」
「たりめーだろ。……隣、座っていいか?」
「え? あ、うん。どうぞ」
許可をもらうと向日はドカッと膝を立てて芝生に座り込んだ。
秋はタオルを敷いて座っているようだが、向日はそこまでするほどではないため、地べたに尻をつけても気にしない。
「やっとゆっくり飯が食えるぜ」
「もしかして、私を探してて……?」
「まぁな」
「あ、ごめんね。わざわ━━」
「だからお前が気にすんなって。俺が早く謝りたかっただけなんだからよ」
ビニール袋から取り出した唐揚げパンをむしゃぶりつきながら、すぐに謝ろうとする秋に向日がそれ以上言わなくていいと言わんばかりに言葉を遮る。
「向日って優しいね」
「お前が言うなよ」
「私は全然そんなことないよ」
よく言うぜ。そう返せば「本当なんだけどな」と困り顔で笑った。
秋のレベルで優しくないのなら世の中優しくない人間しかいないだろう。そう説明してもきっと隣の人間は納得しないかもしれない。
「あ、そうだ。九条、連絡先交換しようぜ」
「えっ?」
「てっきり交換したもんだと思ってたから連絡出来なくて歯痒かったからよ」
テニス部のマネージャーでもあるし、友達でもあるのだからこれから何かと連絡を取るかもしれない。そう思ってスマートフォンを取り出したが、秋は信じられないというように焦りの表情を見せた。
「え、で、でも、その、いいのっ?」
「当たり前だっての。じゃなきゃわざわざ言わねぇって。……嫌だったか?」
もしかして遠回しに拒絶してるのかと思って確認してみると、秋はブンブンと力強く首を振り否定する。
「そんなことないよっ! お願いしますっ」
お弁当を傍らに置いて、秋も自身の携帯端末を手に取る。
メッセージアプリで互いに繋がると、秋は目を輝かせるくらいの勢いで向日に視線を向けた。
「ありがとう、向日っ。凄く嬉しいよ!」
「大袈裟な……」
たかが友達登録しただけだというのにこの喜びようである。
別に向日が初めての友達でもない。すでに麻美や遥といった他の友人と繋がっているはずなのになぜここまで……と、考える向日だったが、すぐに気づいた。
(俺が“憧れの人”ってやつだからか)
思えばファンだとか言っていたなと思い出した向日はやっぱり調子が狂うなと頭を搔く。
跡部のような過激なファンでもないし、周りに公言してる様子もないし、ただ静かに純粋に自身のアクロバティックを好きだと言ってくれたくらいなので向日の思っていたファンのイメージとはかけ離れていた。
けど、今は友達なのだからもっと対等でいてもらいたい向日としてはいまいち秋との距離が友達の距離とは違うなと考える。
「あ。遥の名前があるね。やっぱり二人は仲が良いんだね」
向日の友達登録一覧の中から遥の名を見つけた秋がそう呟く。
「まぁ、去年は同じクラスでよく話してたけど特別仲が良いってわけじゃねーな。ただ用がある時に連絡するだけだけど」
「名前で呼びあってるのに?」
「互いに名前の方が呼びやすいしな」
そこで向日はハッと思いついた。
「そうだ。九条も名前で呼び合わねぇか?」
「え、ええっ? い、いいのかな?」
「別に珍しいことじゃねぇだろ? っつーわけだから今日から秋って呼ぶぜ」
「あ、うんっ。えっと、じゃあ私も、岳人って呼ぶね」
恥ずかしげにしながらも喜びに満ちた笑みを浮かべる秋にどこか眩しさを覚えながらも向日は心の中で再び大袈裟な奴だなと思った。
向日は深い溜め息と共に宛もなく昼休みの廊下をさまよっていた。
片手には紙パックの牛乳、もう片手にはパンがいくつか入ったビニール袋。
彼は昼ご飯を食べながら秋を探していたのだが、一向に見つかる気配がない。
朝から秋に謝罪をしようとしているのに朝練の時からなかなか話しかけるタイミングが得られなかった。
もしかしたら避けられていたのかもしれないが、このままではすっきりしない向日は昼休みの時間を利用して秋に謝るつもりで昼食用のパンを引っ提げて彼女のクラスに突撃するも、すでに秋はいない状態。
それからずっと秋を探しにあちこち探し回ったが、広い学園内に一人の人間を見つけるのは困難なことである。
すでに十分以上は走り回った。何度か教師に注意を受けたが、やり過ごす度に駆け回ったのであっという間に走る体力もなくなり、仕方なく廊下で一休みしながらの昼食を取っていた。
連絡先を交換していないので呼びかけることも出来ずにいるため、もうお手上げ状態。
「放課後の部活にワンチャンか……」
ただ秋に謝罪したいだけだというのになかなか上手くいかない現状に向日は「こうなるはずじゃなかったのに……」と胸の内で呟きながら廊下の窓を開けて、走り回った体温を少しでも下げるため外気の風を浴びようとした。しかし、こういう時に限って無風である。
「運悪すぎじゃん……」
ちぇっ、と唇を尖らせる彼は二階の窓からふと下に視線を向けた。
あ。と声が出る。それもそのはず、今までずっと探していた人物がすぐ下にいたのだ。
どうやら彼女は中庭で一人座って弁当を食べている様子。
「いた!」
普通ならば階段を駆け下りてすぐに秋の元へ飛んで行くだろう。しかし、向日は違った。
窓枠に足をかけて躊躇うことなく二階の窓から文字通り飛んで行ったのだ。
「よっ、と!」
「!?」
くるっと回転して着地すると、近くで座っていた秋はびくりと肩を跳ねさせ固まっていた。
向日は秋へと視線を向け、ズンズンと近づいていく。
「ようやく見つけたぜ、九条……」
「えっ? えっ?」
怒っている様子の向日に秋は戸惑いの声を上げる。少し怯える秋に向けて向日は大きく頭を下げた。
「九条……悪ぃ!」
「……え?」
「九条に嫌な思いをさせたこと、悪いって思ってる。そりゃ侑士に頼まれたからとはいえ、お前にとっては不愉快だったよな……」
「あ……ううん。向日は友達の協力をしただけだから悪くないよ。気にしないで」
あまりにもあっさりと許されたため「え」と今度は向日が戸惑いの声を上げた。
「……それだけか? 怒ってんじゃねぇのか?」
「え? お、怒ってないよっ。そう見えたの?」
「そりゃ、お前あからさまに避けてたし……今もこうやって隠れて一人で飯食ってるし……」
「これは……自責の念に駆られただけで、頭を冷やしてるっていうか……」
「? どういうことだ?」
「……向日は友達のために協力しただけなのに、そうとは知らず映画に誘ってくれたことで嬉しくて浮かれてたからちょっと恥ずかしくて……」
「別にお前が自己嫌悪に陥ることじゃねぇだろ? ……いや、喜んでくれたのはこっちも嬉しいけど」
責められることはあっても自分自身を責めるのはおかしいが、それだけ遊びに誘われたことが嬉しかったのだと思うと向日にも更なる罪の意識が芽生える。
「あー……だから、利用したのは悪いと思ってるけど、別に九条のことをダチとは思ってねぇわけじゃねーからなっ! 今回は侑士に頼まれたけど、次はあいつなんて関係なしで遊ぼうぜ! 俺も誘うから、だから浮かれていいんだよっ」
自分で言ってて何だか恥ずかしくなった。謝罪しに来たはずなのにいつの間にか励まして、友達だと言い聞かせて小っ恥ずかしい青春を送っている。
なんでこんなことになっているのかは分からないが、おそらく秋が真面目と優しさが過ぎるゆえに自分を責めていたからだろう。
秋は呆気に取られた顔を見せるが、すぐにくすりと笑みをこぼした。
「……ありがとう、向日。私達は友達のままなんだね?」
「たりめーだろ。……隣、座っていいか?」
「え? あ、うん。どうぞ」
許可をもらうと向日はドカッと膝を立てて芝生に座り込んだ。
秋はタオルを敷いて座っているようだが、向日はそこまでするほどではないため、地べたに尻をつけても気にしない。
「やっとゆっくり飯が食えるぜ」
「もしかして、私を探してて……?」
「まぁな」
「あ、ごめんね。わざわ━━」
「だからお前が気にすんなって。俺が早く謝りたかっただけなんだからよ」
ビニール袋から取り出した唐揚げパンをむしゃぶりつきながら、すぐに謝ろうとする秋に向日がそれ以上言わなくていいと言わんばかりに言葉を遮る。
「向日って優しいね」
「お前が言うなよ」
「私は全然そんなことないよ」
よく言うぜ。そう返せば「本当なんだけどな」と困り顔で笑った。
秋のレベルで優しくないのなら世の中優しくない人間しかいないだろう。そう説明してもきっと隣の人間は納得しないかもしれない。
「あ、そうだ。九条、連絡先交換しようぜ」
「えっ?」
「てっきり交換したもんだと思ってたから連絡出来なくて歯痒かったからよ」
テニス部のマネージャーでもあるし、友達でもあるのだからこれから何かと連絡を取るかもしれない。そう思ってスマートフォンを取り出したが、秋は信じられないというように焦りの表情を見せた。
「え、で、でも、その、いいのっ?」
「当たり前だっての。じゃなきゃわざわざ言わねぇって。……嫌だったか?」
もしかして遠回しに拒絶してるのかと思って確認してみると、秋はブンブンと力強く首を振り否定する。
「そんなことないよっ! お願いしますっ」
お弁当を傍らに置いて、秋も自身の携帯端末を手に取る。
メッセージアプリで互いに繋がると、秋は目を輝かせるくらいの勢いで向日に視線を向けた。
「ありがとう、向日っ。凄く嬉しいよ!」
「大袈裟な……」
たかが友達登録しただけだというのにこの喜びようである。
別に向日が初めての友達でもない。すでに麻美や遥といった他の友人と繋がっているはずなのになぜここまで……と、考える向日だったが、すぐに気づいた。
(俺が“憧れの人”ってやつだからか)
思えばファンだとか言っていたなと思い出した向日はやっぱり調子が狂うなと頭を搔く。
跡部のような過激なファンでもないし、周りに公言してる様子もないし、ただ静かに純粋に自身のアクロバティックを好きだと言ってくれたくらいなので向日の思っていたファンのイメージとはかけ離れていた。
けど、今は友達なのだからもっと対等でいてもらいたい向日としてはいまいち秋との距離が友達の距離とは違うなと考える。
「あ。遥の名前があるね。やっぱり二人は仲が良いんだね」
向日の友達登録一覧の中から遥の名を見つけた秋がそう呟く。
「まぁ、去年は同じクラスでよく話してたけど特別仲が良いってわけじゃねーな。ただ用がある時に連絡するだけだけど」
「名前で呼びあってるのに?」
「互いに名前の方が呼びやすいしな」
そこで向日はハッと思いついた。
「そうだ。九条も名前で呼び合わねぇか?」
「え、ええっ? い、いいのかな?」
「別に珍しいことじゃねぇだろ? っつーわけだから今日から秋って呼ぶぜ」
「あ、うんっ。えっと、じゃあ私も、岳人って呼ぶね」
恥ずかしげにしながらも喜びに満ちた笑みを浮かべる秋にどこか眩しさを覚えながらも向日は心の中で再び大袈裟な奴だなと思った。