自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
新たな事件を知る者、知らない者
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「━━以上だ。頼む」
電話を終え、テーブルに広がる悪意の塊を集めようと手を伸ばしたその時、生徒会室の扉が開いた。
役員には本日使用するから立ち入らないことを予め伝えていたので生徒会のメンバーではないだろう。緊急事態でもない限り。
「跡部。やっぱりここか」
どうやら来客は赤宮麻美だった。言葉から察するに跡部に用があるように見える。
「珍しいな、お前が俺を探してるとはよ。用があるなら連絡したら良かったじゃねぇか」
「返事を待つのがダルい」
「探し回る方が時間を割くだろ」
「昼休みは大体生徒会室にいるってことは知ってんだよ。それで来たらビンゴだから時間は全く割いてない」
「そうかよ。で、用件はなんだ?」
まさか世間話に来たわけじゃねぇだろ。そう思って麻美に尋ねると、彼女はズカズカと生徒会室に入り、椅子に座り始めた。
そしてテーブルの貼り紙に気づいた麻美は怪訝な表情を露わにする。
「なんだこれは?」
「あぁ……気にしなくていい」
「気にするなっつっても気になる言葉が目に入るんだけど?」
そう言って麻美は一枚の紙を手にする。その紙に書かれた言葉は『身の程知らず』だった。
「あんたに身の程知らずと言う人間はこの学校にはそうそういやしないだろ。つまり、この紙切れは跡部に宛てた物じゃないことくらいは分かる。別の誰かが相談に来て証拠品としてあんたが預かったってとこだろうな。あと、これは直感だけど私らに関係することだろ」
淡々と話す麻美に跡部はどうするかと頭を悩ませた。
確かに同じマネージャーである遥に関することだが、本人すら気づいていない案件を麻美に伝えていいものかどうか。
それだけならまだしも、あの麻美だ。もしかしたらブチ切れて誰彼構わず手を出すのではないかという不安もある。
「……まだ情報が足りないから何とも言えねぇな」
「なら、分かったらすぐに教えろ」
「了解。それでそっちの用件は?」
「忍足と向日をレギュラーから外せ」
何を言い出すのかと思えば。相手が遥や宍戸なら何の冗談だと言えたのだろうが、相手は泣く子も黙る赤宮麻美だ。わざわざ足を運んで冗談を言うような人間ではない。
あの二人が何をやらかしたのかは知らないが、麻美が不機嫌オーラを背後に漂わせているので余程のことをしでかしたのかもしれない。
「まず事の経緯を話してみろ」
「忍足がうちの下僕に付きまとい、向日は片棒を担いだ。何なら退部でもいい。やれ」
「命令じゃねーか」
「当たり前だ。お願いしてるわけじゃないんだよ、こっちは」
跡部は深い溜め息を吐いた。
そんな我儘を聞けるわけがないし、普通は氷帝のトップである跡部に命令なんて言えない。言えるわけがない。
だが、赤宮麻美なら話は別だ。彼女に普通なんて通じない。自己中心的な彼女には。
もし、別世界に彼女がいたならラスボスとも言える悪の存在になっていただろう。
「悪いがその程度で退部だのレギュラー外しだの出来ねぇよ」
「は? その程度だと?」
跡部の言葉が気に入らず、青筋を立てる麻美は目の前の男を睨むが、跡部は痛くも痒くもなかった。
「忍足が西成に付きまとってんのは今更だろ。それで向日が片棒だのなんだのって言うが犯罪でもねぇことで処遇出来るわけないだろ」
「下僕が馬鹿なのをいいことにあの駄眼鏡が弄んだんだろうが!」
バン! と片手でテーブルを叩きながら怒鳴る麻美は真剣そのものだった。
毎日繰り広げる麻美による遥への鉄拳制裁などは一見仲が悪いように見えるが、二人なりのコミュニケーションだ。
それだけ仲が良い証拠なので麻美も友人のためにと真剣になるのも道理である。とはいえ、秋に比べるとやはり言動や扱いが酷いのも事実。
「赤宮。友達思いなのはいいことだが、うちはテニス部だ。レギュラーの座は実力で手に入れるものであって気に入らねぇから外すことはしねぇ。よっぽどのことじゃなければな」
「よっぽどのことじゃないだと? さっきから擁護ばっかしやがって……!」
「あのな、部員の恋愛ごとで部長の俺がやいやい言うわけにはいかねぇだろ。当事者である西成が直接マネージャー業に支障をきたすっつーなら俺も無視するわけにはいかないがな」
「私の話だと信用がないって言いたいわけ?」
「そうは言ってねぇ。ただ当人でもない奴の言葉を聞いてすぐに従うような考えなしの男が部の頂点に立てると思うか?」
「……」
跡部の言うことは間違いではないから腹立たしい。そう思う麻美は小さく舌打ちをした。
「そう不服そうな顔をするな。忍足には俺からも釘を刺しておく」
自覚があるのかないのかは分からないが、珍しく麻美が頼ってきたのだから少しくらいは彼女の訴えは聞き入れておきたい。
しかも自分のことではなく友人のために動くのだ。跡部にしてみてもそんな彼女の行動に少なからず悪い印象はない。
「それで百歩譲ったつもりか?」
「本当だったら突っぱねても仕方ねぇ案件だぜ。だが、これでも友人のため直談判に来たお前の気持ちを酌んでやったんだ」
「っち。その程度で私が納得すると思うなよ」
もう用はないと言いたげに席を立つ麻美は生徒会室の扉に手をかけると、跡部が彼女の名を呼ぶ。
「赤宮。また何かあれば言いに来い」
「……」
跡部に一瞥した麻美はフンと鼻を鳴らしてそのまま立ち去った。
どう受け取ったのかは本人にしか分からないだろうが、否定もしなければ悪態もつかないところを見ると悪い反応ではないだろう。
ゴールデンウィーク前には周りに頼ることや相談をすることを麻美に伝えたことがある。
その時の麻美は反発していたが、今回話に来た切っ掛けになったのかもしれない。
まぁ、麻美からすると相談ではなく、命令しに来たつもりだろうが、対話を試みるだけでもいい変化ではないだろうか。しかも無理やり従わせるといった強制的手段はとっていない。
(やはりあいつは人と関わりを持つべきだな)
狂犬だの阿修羅だの色々と彼女を比喩する言葉は沢山聞いているが話せない奴ではない。言うことを聞くかどうかは別として。
どういう理由であれ多少なりとも頼ったことは間違いないだろう。
昨年から麻美に接触し続けた効果かは分からないが、関わりを持つことにより麻美自身も少しずつ警戒が薄くなったのかもしれない。
「まったく、手のかかる女だぜ」
そう口にはするものの、晴れやかな微笑を浮かべながらその口元は緩んでいた。
電話を終え、テーブルに広がる悪意の塊を集めようと手を伸ばしたその時、生徒会室の扉が開いた。
役員には本日使用するから立ち入らないことを予め伝えていたので生徒会のメンバーではないだろう。緊急事態でもない限り。
「跡部。やっぱりここか」
どうやら来客は赤宮麻美だった。言葉から察するに跡部に用があるように見える。
「珍しいな、お前が俺を探してるとはよ。用があるなら連絡したら良かったじゃねぇか」
「返事を待つのがダルい」
「探し回る方が時間を割くだろ」
「昼休みは大体生徒会室にいるってことは知ってんだよ。それで来たらビンゴだから時間は全く割いてない」
「そうかよ。で、用件はなんだ?」
まさか世間話に来たわけじゃねぇだろ。そう思って麻美に尋ねると、彼女はズカズカと生徒会室に入り、椅子に座り始めた。
そしてテーブルの貼り紙に気づいた麻美は怪訝な表情を露わにする。
「なんだこれは?」
「あぁ……気にしなくていい」
「気にするなっつっても気になる言葉が目に入るんだけど?」
そう言って麻美は一枚の紙を手にする。その紙に書かれた言葉は『身の程知らず』だった。
「あんたに身の程知らずと言う人間はこの学校にはそうそういやしないだろ。つまり、この紙切れは跡部に宛てた物じゃないことくらいは分かる。別の誰かが相談に来て証拠品としてあんたが預かったってとこだろうな。あと、これは直感だけど私らに関係することだろ」
淡々と話す麻美に跡部はどうするかと頭を悩ませた。
確かに同じマネージャーである遥に関することだが、本人すら気づいていない案件を麻美に伝えていいものかどうか。
それだけならまだしも、あの麻美だ。もしかしたらブチ切れて誰彼構わず手を出すのではないかという不安もある。
「……まだ情報が足りないから何とも言えねぇな」
「なら、分かったらすぐに教えろ」
「了解。それでそっちの用件は?」
「忍足と向日をレギュラーから外せ」
何を言い出すのかと思えば。相手が遥や宍戸なら何の冗談だと言えたのだろうが、相手は泣く子も黙る赤宮麻美だ。わざわざ足を運んで冗談を言うような人間ではない。
あの二人が何をやらかしたのかは知らないが、麻美が不機嫌オーラを背後に漂わせているので余程のことをしでかしたのかもしれない。
「まず事の経緯を話してみろ」
「忍足がうちの下僕に付きまとい、向日は片棒を担いだ。何なら退部でもいい。やれ」
「命令じゃねーか」
「当たり前だ。お願いしてるわけじゃないんだよ、こっちは」
跡部は深い溜め息を吐いた。
そんな我儘を聞けるわけがないし、普通は氷帝のトップである跡部に命令なんて言えない。言えるわけがない。
だが、赤宮麻美なら話は別だ。彼女に普通なんて通じない。自己中心的な彼女には。
もし、別世界に彼女がいたならラスボスとも言える悪の存在になっていただろう。
「悪いがその程度で退部だのレギュラー外しだの出来ねぇよ」
「は? その程度だと?」
跡部の言葉が気に入らず、青筋を立てる麻美は目の前の男を睨むが、跡部は痛くも痒くもなかった。
「忍足が西成に付きまとってんのは今更だろ。それで向日が片棒だのなんだのって言うが犯罪でもねぇことで処遇出来るわけないだろ」
「下僕が馬鹿なのをいいことにあの駄眼鏡が弄んだんだろうが!」
バン! と片手でテーブルを叩きながら怒鳴る麻美は真剣そのものだった。
毎日繰り広げる麻美による遥への鉄拳制裁などは一見仲が悪いように見えるが、二人なりのコミュニケーションだ。
それだけ仲が良い証拠なので麻美も友人のためにと真剣になるのも道理である。とはいえ、秋に比べるとやはり言動や扱いが酷いのも事実。
「赤宮。友達思いなのはいいことだが、うちはテニス部だ。レギュラーの座は実力で手に入れるものであって気に入らねぇから外すことはしねぇ。よっぽどのことじゃなければな」
「よっぽどのことじゃないだと? さっきから擁護ばっかしやがって……!」
「あのな、部員の恋愛ごとで部長の俺がやいやい言うわけにはいかねぇだろ。当事者である西成が直接マネージャー業に支障をきたすっつーなら俺も無視するわけにはいかないがな」
「私の話だと信用がないって言いたいわけ?」
「そうは言ってねぇ。ただ当人でもない奴の言葉を聞いてすぐに従うような考えなしの男が部の頂点に立てると思うか?」
「……」
跡部の言うことは間違いではないから腹立たしい。そう思う麻美は小さく舌打ちをした。
「そう不服そうな顔をするな。忍足には俺からも釘を刺しておく」
自覚があるのかないのかは分からないが、珍しく麻美が頼ってきたのだから少しくらいは彼女の訴えは聞き入れておきたい。
しかも自分のことではなく友人のために動くのだ。跡部にしてみてもそんな彼女の行動に少なからず悪い印象はない。
「それで百歩譲ったつもりか?」
「本当だったら突っぱねても仕方ねぇ案件だぜ。だが、これでも友人のため直談判に来たお前の気持ちを酌んでやったんだ」
「っち。その程度で私が納得すると思うなよ」
もう用はないと言いたげに席を立つ麻美は生徒会室の扉に手をかけると、跡部が彼女の名を呼ぶ。
「赤宮。また何かあれば言いに来い」
「……」
跡部に一瞥した麻美はフンと鼻を鳴らしてそのまま立ち去った。
どう受け取ったのかは本人にしか分からないだろうが、否定もしなければ悪態もつかないところを見ると悪い反応ではないだろう。
ゴールデンウィーク前には周りに頼ることや相談をすることを麻美に伝えたことがある。
その時の麻美は反発していたが、今回話に来た切っ掛けになったのかもしれない。
まぁ、麻美からすると相談ではなく、命令しに来たつもりだろうが、対話を試みるだけでもいい変化ではないだろうか。しかも無理やり従わせるといった強制的手段はとっていない。
(やはりあいつは人と関わりを持つべきだな)
狂犬だの阿修羅だの色々と彼女を比喩する言葉は沢山聞いているが話せない奴ではない。言うことを聞くかどうかは別として。
どういう理由であれ多少なりとも頼ったことは間違いないだろう。
昨年から麻美に接触し続けた効果かは分からないが、関わりを持つことにより麻美自身も少しずつ警戒が薄くなったのかもしれない。
「まったく、手のかかる女だぜ」
そう口にはするものの、晴れやかな微笑を浮かべながらその口元は緩んでいた。