自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
新たな事件を知る者、知らない者
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滝萩之介と西成遥は幼馴染みである。
所謂、母親同士の仲が良くて家もお隣だったので二人は赤子からの長い付き合いであった。
ゴールデンウィークも終わり、再び日常が始まる朝。滝は朝練のため日本家屋である自宅を出て、格子戸の和風門から姿を現す。
そして一般の一戸建て住宅である隣の遥の家へと向かった。
遥がテニス部のマネージャーになったのはいいのだが、朝に弱くて朝練はたまに遅刻をするため、滝は今日から遥を迎えに行き、共に学校へ向かうことになっていた。
幼い頃からずっと遥の面倒を見る役だったが、その役目を疎ましく思うことはなく、むしろいつだって自分が遥の世話を焼いていたいと願っていた。
遥の家の前に辿り着くと滝は玄関を見て絶句する。
「なに、これ……」
玄関の扉には沢山の紙が貼られていた。
『ブス』『性悪』『身の程知らず』『死ネ』『消えろ』
並ぶ言葉は憎しみがこもっているかのような怒り狂った書き方だ。
滝も思わず息を飲むほど負のオーラが漂っていたが、すぐにハッと我に返り貼り紙を剥がし始めた。
このままでは遥だけでなく、家族や近所の目に触れてしまうと考え、急いで全て剥がして自身の鞄の中に詰め込んだ。
(なんて陰湿なんだ……)
誰にも見られていないことを祈るばかりだが、あまりにも酷い行為である。
はぁ、と溜め息をひとつ漏らすが、目的を果たすためインターホンを押そうとしたその時だった。
ガチャリ。
「あり?」
「!」
今まさに呼び出そうとした人物が出て来たので滝は驚いた。
「萩だ! おはよー! ナイスタイミングだったねー」
「あ、うん。おはよう」
明るく挨拶をする遥に挨拶を返す。どうやらこの様子だと貼り紙のことは知らないだろう。そう思った滝は彼女が誹謗中傷の貼り紙を見ずにすんで良かったとひとまず安心する。
「朝練に間に合わせるために今日から萩が迎えに来るから頑張って起きたんだよ」
「偉いね。ずっと続くならもっと凄いけど」
「うっ……ど、どうかなぁ」
おそらく今日はたまたま起きることが出来たのだろう。
毎日朝練に間に合わせることが出来たならこうして迎えに行くことはないはずだ。でも、一緒に登校出来るなら滝にとっても嬉しいことである。
少し前まではいくら家が隣同士とはいえ、テニス部に入部した滝とどこにも所属していなかった遥は登下校を共にすることはあまりなかった。
「例え寝過ごしても俺が迎えに行くんだからもう朝練に遅刻はさせないよ」
「なんとも頼もしい……」
それくらいお安い御用だよ。と、返して遥と共に学校へと向かう。
「そういえば萩が跡部と一緒に行ったメンドラだっけ? あれどうだった?」
「メットガラだね。うん、楽しかったよ。世界的に有名なスターもいたし、沢山のデザイナーが発表する作品の場だからどれも華やかで価値のある時間だったね」
「いいなー! 楽しそうー!」
「遥は映画だったんでしょ? 楽しかった?」
「えっ? あー……映画はあまり好みじゃなかったんだけど、楽しかった、かな? あはは」
歯切れの悪い物言いに滝はすぐに彼女が何かを隠していることに気づいた。
元より分かりやすい性格の遥ではあるが、そんな彼女と十何年もの付き合いをしているので滝はすぐに彼女の嘘を見破る。
「……何かあったの?」
「な、何も! 何もないよ!」
ぶんぶんと勢いよく首を横に振るが、声が裏返ったり、冷や汗を流したり不自然すぎる様子に何かあったと言っているようなものだった。
━━あぁ、なんでこの子は俺に隠し事をするのか。
そう口に出来たらどれだけ楽だろうか。滝はそう思いながらも結局は内に秘めることしか出来なかった。
別に隠し事が悪いことではないけど、昔はなんでも話してくれたからとても寂しく思う。
大好きな幼馴染みが遠くなるのを日に日に感じながらも滝は静かに遥の頭を撫でた。
「?」
「何かあったらいつでも聞くからね」
「うむ!」
ぽんぽんと撫でると遥はにっこり笑いながら大きく頷いた。
この笑顔が好きだから曇らせたくないし、守りたい。だから何かあれば助けになりたいし、相談にだって乗りたい。
何があったのか教えてもらえないのは歯痒いが、彼女の心の拠り所でありたいので無理やり問いただすことはせず見守ることに決める。
学校に到着した二人はそれぞれ着替えるために一旦別れた。
滝は正レギュラー部室に入ると、すでに何名かがユニフォームへと着替えていて挨拶を交わしながらそのまま部長である跡部の元へと向かう。
「おはよう、跡部」
「あぁ、おはよう萩之介。どうした?」
「話があるんだ。時間作れる?」
普段穏やかな男の真剣な表情。それを見た跡部は何やら只事ではなさそうだと感じた。
「急ぎか?」
「今日中に耳を入れてくれたら嬉しいかな」
「なら昼休みに生徒会室でどうだ?」
「うん、ありがとう」
そこで会話を切り上げた滝は自身のロッカーへ向かい、着替えを始めた。
ちょうど二人の会話を聞いていた宍戸が自慢の髪をしっかりと結び直しながら不思議そうに尋ねる。
「どうしたんだ?」
「跡部に相談したいことがあってね」
「あいつに相談ってことはよっぽどのことか」
「うん」
「まぁ、大体のことなら跡部に任せりゃ解決するだろうな」
「そうだといいな。……いや、そうでないと困るんだ」
「……そんな深刻なことか? 大丈夫か、お前?」
「俺は大丈夫だよ。ただ、心配なだけ」
「あんま考え込むなよ。そういう時は動いて発散だぜ」
「ふふっ。宍戸らしいけどそれもそうだね。ありがとう」
元気づけようとしている宍戸の意を酌み、礼を告げると宍戸はどこか恥ずかしげにふいっと顔を背けた。
昼休みに生徒会室では跡部と滝がテーブルを挟みながら座っていた。
そのテーブルの上には短文ではあるが、中傷文が書かれた紙が何枚も並べられている。それを見た跡部は眉間に皺を寄せた。
「今朝、遥を迎えに行ったら彼女の家の扉に貼られていたんだ。この言葉の内容はきっと遥に宛てられたものだと思う」
「幼稚な手口だな。本人はどんな様子だ?」
「多分、俺が最初に発見したから遥も家族も見ていないんだろうね。普段通りだったよ」
「そうか。……しかし、またあいつ絡みか。あのトラブルメーカーめ」
はぁ、と溜め息をを吐きながら跡部は椅子に凭れかかる。
前回の部室荒らしも犯人の動機は遥にあった。そして今回もまだ犯人の目的は分からないが遥を狙っているのは間違いない。
「それ、赤宮や九条達にも言えるんじゃない?」
「あながち間違いじゃねぇが、赤宮は火種を大きくし、九条は巻き込まれるタイプだ。西成は火種を作る奴だから全ての元凶でもある」
「あぁ……」
フォローを入れるつもりだったが、跡部の言葉に納得してしまった滝はそれ以上擁護する言葉は出なかった。
「とにかく、うちの部に支障が出たら困るからこの案件は俺が預かっておく。また何かあれば報告頼むぜ」
「うん、ありがとう。俺の方でも探ってみるよ」
あぁ。そう返事をすると滝は生徒会室を出て行った。
跡部はただ一人テーブルに並べられた貼り紙を見ながら筆跡鑑定でも出すかと考え、自身のスマートフォンを取り出して手配を始めた。
所謂、母親同士の仲が良くて家もお隣だったので二人は赤子からの長い付き合いであった。
ゴールデンウィークも終わり、再び日常が始まる朝。滝は朝練のため日本家屋である自宅を出て、格子戸の和風門から姿を現す。
そして一般の一戸建て住宅である隣の遥の家へと向かった。
遥がテニス部のマネージャーになったのはいいのだが、朝に弱くて朝練はたまに遅刻をするため、滝は今日から遥を迎えに行き、共に学校へ向かうことになっていた。
幼い頃からずっと遥の面倒を見る役だったが、その役目を疎ましく思うことはなく、むしろいつだって自分が遥の世話を焼いていたいと願っていた。
遥の家の前に辿り着くと滝は玄関を見て絶句する。
「なに、これ……」
玄関の扉には沢山の紙が貼られていた。
『ブス』『性悪』『身の程知らず』『死ネ』『消えろ』
並ぶ言葉は憎しみがこもっているかのような怒り狂った書き方だ。
滝も思わず息を飲むほど負のオーラが漂っていたが、すぐにハッと我に返り貼り紙を剥がし始めた。
このままでは遥だけでなく、家族や近所の目に触れてしまうと考え、急いで全て剥がして自身の鞄の中に詰め込んだ。
(なんて陰湿なんだ……)
誰にも見られていないことを祈るばかりだが、あまりにも酷い行為である。
はぁ、と溜め息をひとつ漏らすが、目的を果たすためインターホンを押そうとしたその時だった。
ガチャリ。
「あり?」
「!」
今まさに呼び出そうとした人物が出て来たので滝は驚いた。
「萩だ! おはよー! ナイスタイミングだったねー」
「あ、うん。おはよう」
明るく挨拶をする遥に挨拶を返す。どうやらこの様子だと貼り紙のことは知らないだろう。そう思った滝は彼女が誹謗中傷の貼り紙を見ずにすんで良かったとひとまず安心する。
「朝練に間に合わせるために今日から萩が迎えに来るから頑張って起きたんだよ」
「偉いね。ずっと続くならもっと凄いけど」
「うっ……ど、どうかなぁ」
おそらく今日はたまたま起きることが出来たのだろう。
毎日朝練に間に合わせることが出来たならこうして迎えに行くことはないはずだ。でも、一緒に登校出来るなら滝にとっても嬉しいことである。
少し前まではいくら家が隣同士とはいえ、テニス部に入部した滝とどこにも所属していなかった遥は登下校を共にすることはあまりなかった。
「例え寝過ごしても俺が迎えに行くんだからもう朝練に遅刻はさせないよ」
「なんとも頼もしい……」
それくらいお安い御用だよ。と、返して遥と共に学校へと向かう。
「そういえば萩が跡部と一緒に行ったメンドラだっけ? あれどうだった?」
「メットガラだね。うん、楽しかったよ。世界的に有名なスターもいたし、沢山のデザイナーが発表する作品の場だからどれも華やかで価値のある時間だったね」
「いいなー! 楽しそうー!」
「遥は映画だったんでしょ? 楽しかった?」
「えっ? あー……映画はあまり好みじゃなかったんだけど、楽しかった、かな? あはは」
歯切れの悪い物言いに滝はすぐに彼女が何かを隠していることに気づいた。
元より分かりやすい性格の遥ではあるが、そんな彼女と十何年もの付き合いをしているので滝はすぐに彼女の嘘を見破る。
「……何かあったの?」
「な、何も! 何もないよ!」
ぶんぶんと勢いよく首を横に振るが、声が裏返ったり、冷や汗を流したり不自然すぎる様子に何かあったと言っているようなものだった。
━━あぁ、なんでこの子は俺に隠し事をするのか。
そう口に出来たらどれだけ楽だろうか。滝はそう思いながらも結局は内に秘めることしか出来なかった。
別に隠し事が悪いことではないけど、昔はなんでも話してくれたからとても寂しく思う。
大好きな幼馴染みが遠くなるのを日に日に感じながらも滝は静かに遥の頭を撫でた。
「?」
「何かあったらいつでも聞くからね」
「うむ!」
ぽんぽんと撫でると遥はにっこり笑いながら大きく頷いた。
この笑顔が好きだから曇らせたくないし、守りたい。だから何かあれば助けになりたいし、相談にだって乗りたい。
何があったのか教えてもらえないのは歯痒いが、彼女の心の拠り所でありたいので無理やり問いただすことはせず見守ることに決める。
学校に到着した二人はそれぞれ着替えるために一旦別れた。
滝は正レギュラー部室に入ると、すでに何名かがユニフォームへと着替えていて挨拶を交わしながらそのまま部長である跡部の元へと向かう。
「おはよう、跡部」
「あぁ、おはよう萩之介。どうした?」
「話があるんだ。時間作れる?」
普段穏やかな男の真剣な表情。それを見た跡部は何やら只事ではなさそうだと感じた。
「急ぎか?」
「今日中に耳を入れてくれたら嬉しいかな」
「なら昼休みに生徒会室でどうだ?」
「うん、ありがとう」
そこで会話を切り上げた滝は自身のロッカーへ向かい、着替えを始めた。
ちょうど二人の会話を聞いていた宍戸が自慢の髪をしっかりと結び直しながら不思議そうに尋ねる。
「どうしたんだ?」
「跡部に相談したいことがあってね」
「あいつに相談ってことはよっぽどのことか」
「うん」
「まぁ、大体のことなら跡部に任せりゃ解決するだろうな」
「そうだといいな。……いや、そうでないと困るんだ」
「……そんな深刻なことか? 大丈夫か、お前?」
「俺は大丈夫だよ。ただ、心配なだけ」
「あんま考え込むなよ。そういう時は動いて発散だぜ」
「ふふっ。宍戸らしいけどそれもそうだね。ありがとう」
元気づけようとしている宍戸の意を酌み、礼を告げると宍戸はどこか恥ずかしげにふいっと顔を背けた。
昼休みに生徒会室では跡部と滝がテーブルを挟みながら座っていた。
そのテーブルの上には短文ではあるが、中傷文が書かれた紙が何枚も並べられている。それを見た跡部は眉間に皺を寄せた。
「今朝、遥を迎えに行ったら彼女の家の扉に貼られていたんだ。この言葉の内容はきっと遥に宛てられたものだと思う」
「幼稚な手口だな。本人はどんな様子だ?」
「多分、俺が最初に発見したから遥も家族も見ていないんだろうね。普段通りだったよ」
「そうか。……しかし、またあいつ絡みか。あのトラブルメーカーめ」
はぁ、と溜め息をを吐きながら跡部は椅子に凭れかかる。
前回の部室荒らしも犯人の動機は遥にあった。そして今回もまだ犯人の目的は分からないが遥を狙っているのは間違いない。
「それ、赤宮や九条達にも言えるんじゃない?」
「あながち間違いじゃねぇが、赤宮は火種を大きくし、九条は巻き込まれるタイプだ。西成は火種を作る奴だから全ての元凶でもある」
「あぁ……」
フォローを入れるつもりだったが、跡部の言葉に納得してしまった滝はそれ以上擁護する言葉は出なかった。
「とにかく、うちの部に支障が出たら困るからこの案件は俺が預かっておく。また何かあれば報告頼むぜ」
「うん、ありがとう。俺の方でも探ってみるよ」
あぁ。そう返事をすると滝は生徒会室を出て行った。
跡部はただ一人テーブルに並べられた貼り紙を見ながら筆跡鑑定でも出すかと考え、自身のスマートフォンを取り出して手配を始めた。