自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
それぞれのゴールデンウィーク
主人公名前変換
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(マジで成功しちまった……)
遥と忍足とはぐれてしまった秋と向日は横断歩道の信号待ちをしていた。
ここの信号は一度赤に変わると、次の歩行者ランプに切り替わるのは結構時間がかかる。
ハラハラする秋の隣で向日は少し不服そうに顔を顰めながら心の中で相棒のことを悪く言う。
それもそのはず、この分断は全て忍足が仕組んだことだったから。
それを提案されたのはつい先程。映画を終えて、それぞれお手洗いに行ったときまで遡る。
「頼む、岳人! 少しの間だけ遥と二人きりに出来る時間を作ってほしいねん!」
「はぁ? またお前変なこと考えてんのかよ」
手を洗ってる最中、また手を合わせてお願いのポーズをする忍足を横目に向日は軽く溜め息をこぼした。
「ちゃんと話し合いたいだけなんや。ただでさえ二人きりになるのも避けられとるから偶然を装わん限り難しそうやし。せやから九条さんを引き止めてほしいんや」
「九条を誘えっつったり、引き止めろっつったり、俺にも九条にも悪いと思えよな」
「そらもちろんそう思っとるよ。せやけど、遥と話を設けるためにはそこまでせなあかんねん。せめて一時間……いや、三十分でもえぇから時間が欲しいんや」
悪いと思いながらも頼み事の撤回をする様子がない忍足に向日は気が乗らないながら「しゃーねぇなぁ……」と呟いた。
「これ以上はしねぇからなっ」
「! おおきに、岳人。やっぱ自分は頼りになるわ」
「こういうときだけ調子いいよな、お前」
一応、部活仲間でもあり友人でもある忍足のために向日は一肌脱ぐことにした。もちろん、お礼として昼飯を奢ってもらうように要求する。
遥と秋を離すための計画は忍足が提案した。
向日は彼の作戦に従い、人通りの多い横断歩道でわざわざ秋を呼び止めて忍足に遥を任せる。
実行はしてみたものの、靴紐を縛る自分の元へ秋が心配そうに駆けてきたのでなんだか彼女に申し訳なく思った。
遥の姿が見えないのでおそらく相棒も成功したのだろう。わざとらしく丁寧に靴紐を結んで立ち上がれば信号はすでに赤へと変わり、上手く分断することに成功した。
「遥と忍足、先に行っちゃったね……」
「わ、わりぃ……まさかはぐれるとは思わなくてよ」
「ううん、向日は悪くないよ。連絡さえ取れたら合流出来るんだし」
「あぁ、そうだな。じゃあ俺が侑士に電話する」
このあとをどうするかは分からない。というか、三十分もの時間をどうやって秋を引き止めたらいいのか向日には分からないので指示を仰ぐためにも相方に電話を入れた。
「……出ねぇ」
しかし、相手は電話に出なかった。
「じゃあ、遥に連絡してみるね」
「あ……侑士からメッセが届いた」
電話には出ねぇくせにメッセージは飛ばせんのかよ、と思ったが届いた内容を確認してみることにした。
忍足からのメッセージは『一応、今からカフェレストランに行くつもりやけど、そっちでも落ち合う店を探す振りして時間を稼いでほしい』だった。
(無茶言いやがって……それが出来たら苦労しねーっつーの!)
わなわなと震えながら向日は盛大な溜め息を吐き出した。
「なんて書いてたの?」
「……とりあえず分かれて昼飯食えそうな店を探そうぜって」
「混んでる店が多いから手分けするってことだね」
「まぁ、そうだな」
ひとまずそういうことにしておいて時間を稼がねぇと。そう思いながら、歩行者ランプが青に変わったので二人は横断歩道を渡ることにした。
しかしこの先は飲食店の多いエリアなのでどこもここも満席という店はさすがにないだろう。普通に探せば三十分もかからずに店を見つけることだって可能だ。
向日はどうするかと悩みながら歩いていると、ふとある店が目に入った。
「おっ。初めて見る店じゃん」
そこには向日が初めて見るテイクアウトの唐揚げ専門店があった。新店舗らしく、看板にはニューオープンと書かれている。
「なぁ、九条。ちょっと寄っていいか?」
「ご飯前だけどいいの?」
「いいっていいって。小腹を満たすだけだし」
そう言って秋を連れて唐揚げ屋さんに向かった。テイクアウト専門店だから店は小さいけど、新しい店なので多少なりとも人だかりは出来ていた。
メニューも数える程しかないので回転も早い印象。そのため購入もすぐだった。
爪楊枝が刺さった揚げたての唐揚げを紙カップに入れてもらい、店をあとにする。
「見た目は美味そうじゃん」
「そうだね、いい匂いもするし」
「じゃあ、早速ひとつ……」
一口で食べられそうな大きさの唐揚げをひとつ口に含む。熱々なのではふはふと熱さに耐えながら食べてみると、中はジューシーで味付けも彼好みであった。
「うめぇ! これは俺が今まで食った唐揚げの中でもベスト10に入る勢いだぜ」
「向日は唐揚げが好きなの?」
「おう。家でも特別な日にはよく食うんだよ」
「じゃあ、ご馳走なんだね」
「そうだなー。白飯何杯でも食えるし! それにしても九条は買わなくて良かったのか? すげーうめーぞ」
「美味しそうだけど、そんなに食べられないかなって。お昼ご飯が食べられなくなりそうで」
少なくても五、六個は入っている唐揚げの量に秋は自分のお腹と相談した結果購入を断念した。
少食というわけではないが、今食べてしまうとあとが食べられなくなり、残してしまうと思ったため。
「それなら一個やるよ。それなら食えるだろ?」
「えっ」
爪楊枝は二本刺さっていたので使用していない方の爪楊枝で唐揚げをひとつ刺して、秋に差し出す。
突然目の前に渡される唐揚げに秋は戸惑った。
「わ、悪いよそれは……」
「一個くらいでやいやい言わねーって。ほら」
ずいっとさらに押し付けられる唐揚げに秋は「あ、ありがとう……」と言葉にして唐揚げをひとつ受け取った。
軽く立ち込める湯気を見て、まだ出来たてジューシーな状態だと分かると秋は一口齧ってみる。
口元を押さえながら咀嚼すると、向日が絶賛するのを理解したのか美味しさに目を大きくさせた。
「美味しい……!」
「だろ? これは食って正解だったな。っつーわけで店探しは侑士達に任せてこっちはゆっくりしとこうぜ」
唐揚げを食べている間は多少なりとも時間を潰せるので、店の近くで唐揚げを食べることに興じる。
しかし、秋は少し不安げな表情を見せた。
「……遥、大丈夫かな」
「ガキじゃあるまいし、ヘーキだろ」
「そうだけど、遥と忍足が一緒っていうのが気になって」
その言葉を聞いて向日はピタッと唐揚げを食べる手を止める。
……もしかして九条は侑士と遥とのことを知っているのか? いや、友達なら知ってる可能性もあるのか。それだとしたら長いこと秋を引き止めるのは難しそうだと向日は悩んだ。
「……向日は知ってる? 遥と忍足の間に何があったか」
「へ?」
「あの二人、前は普通に仲が良かったのになんか今は違うでしょ? 向日なら何か知ってるかなって」
「あー……」
なるほど。確かに以前の二人の仲を知っていると、今の遥と忍足の様子は違和感でしかない。
「遥、何があったのか教えてくれなくて……絶対に何かあるはずなのになぜか頑ななの。友達だから相談に乗りたいのに、私では頼りにならないのかなって……」
憂い顔の秋の声は段々と小さくなり、ぽつりとずっと思っていたことを呟いた。
(遥の奴、隠すならもっと上手く隠せよな)
何を思って隠してるかは知らないが向日も忍足からの話しか聞いていないため、全容を知っているわけじゃない。
「俺も詳しくは知らねぇけど、友達だから言い難いこともあるんじゃねぇの? やっぱりそういうのは当事者から話を聞くべきだろうし、俺から話すのはなんかちげーだろうし」
「……そうだね。麻美にも言われたけど、何もないって言う遥に無理やり聞くのは良くないからいつか話してくれるのを待つよ。でも、やっぱり頼ってほしいって言うのが本音なんだけど」
苦笑する秋の表情はまだ暗いまま。よほど友達のことが気にかかる様子なので向日は優しい奴だなとぼんやり考えた。
「その内話してくれんじゃね? あいつ隠し事苦手だし、いつか口を滑らすって」
「そうだといいなぁ」
「まぁ、侑士と二人きりなのが心配なのも分かるけど、あいつ一応遥に対しては真面目に考えてるっぽいし、少しだけ信用してくんねぇか?」
さすがに悪いようにはしないはず。あと少しだけ時間を潰したらちゃんと合流するから辛抱してほしい。そう願いながら秋を説得する。
「……向日は友達思いなんだね。分かった、ちょっとだけ信じてみるよ」
不安げな表情からようやく小さな笑みを見せる秋を見て向日は少しだけ胸を撫で下ろす。ずっと暗い顔のままだとさすがに引き離してしまったことに罪悪感を抱いてしまうので。
とはいえ、友達思いだと言われると少しむず痒く感じる。
「友達思いってのは九条だろ。俺はいつも侑士にお願いばっかされる立場だっての」
「お願いされるのはそれだけ頼りになるってことだし、聞いてくれる向日もやっぱり友達思いなんだよ」
ふふ、と笑いながら再度友達思いだと口にする秋に向日は唐揚げを頬張りながら「調子狂うな……」と思った。
そこへ向日のスマートフォンに着信が入った。もしかしてと思い、相手を確認すると忍足の名が表示されたので急いで電話に出た。
「もしもし? 侑士、もう合流出来んのか?」
『あぁ……出来るんやけど、ちょっと色々と問題があってな……とりあえず来てくれるか?』
相方の声に覇気がない。これは確実に何かあったな。
遥との話し合いとやらは上手くいかなかったんだろうなと考え、忍足が指定する店に向かうことにした。
遥と忍足とはぐれてしまった秋と向日は横断歩道の信号待ちをしていた。
ここの信号は一度赤に変わると、次の歩行者ランプに切り替わるのは結構時間がかかる。
ハラハラする秋の隣で向日は少し不服そうに顔を顰めながら心の中で相棒のことを悪く言う。
それもそのはず、この分断は全て忍足が仕組んだことだったから。
それを提案されたのはつい先程。映画を終えて、それぞれお手洗いに行ったときまで遡る。
「頼む、岳人! 少しの間だけ遥と二人きりに出来る時間を作ってほしいねん!」
「はぁ? またお前変なこと考えてんのかよ」
手を洗ってる最中、また手を合わせてお願いのポーズをする忍足を横目に向日は軽く溜め息をこぼした。
「ちゃんと話し合いたいだけなんや。ただでさえ二人きりになるのも避けられとるから偶然を装わん限り難しそうやし。せやから九条さんを引き止めてほしいんや」
「九条を誘えっつったり、引き止めろっつったり、俺にも九条にも悪いと思えよな」
「そらもちろんそう思っとるよ。せやけど、遥と話を設けるためにはそこまでせなあかんねん。せめて一時間……いや、三十分でもえぇから時間が欲しいんや」
悪いと思いながらも頼み事の撤回をする様子がない忍足に向日は気が乗らないながら「しゃーねぇなぁ……」と呟いた。
「これ以上はしねぇからなっ」
「! おおきに、岳人。やっぱ自分は頼りになるわ」
「こういうときだけ調子いいよな、お前」
一応、部活仲間でもあり友人でもある忍足のために向日は一肌脱ぐことにした。もちろん、お礼として昼飯を奢ってもらうように要求する。
遥と秋を離すための計画は忍足が提案した。
向日は彼の作戦に従い、人通りの多い横断歩道でわざわざ秋を呼び止めて忍足に遥を任せる。
実行はしてみたものの、靴紐を縛る自分の元へ秋が心配そうに駆けてきたのでなんだか彼女に申し訳なく思った。
遥の姿が見えないのでおそらく相棒も成功したのだろう。わざとらしく丁寧に靴紐を結んで立ち上がれば信号はすでに赤へと変わり、上手く分断することに成功した。
「遥と忍足、先に行っちゃったね……」
「わ、わりぃ……まさかはぐれるとは思わなくてよ」
「ううん、向日は悪くないよ。連絡さえ取れたら合流出来るんだし」
「あぁ、そうだな。じゃあ俺が侑士に電話する」
このあとをどうするかは分からない。というか、三十分もの時間をどうやって秋を引き止めたらいいのか向日には分からないので指示を仰ぐためにも相方に電話を入れた。
「……出ねぇ」
しかし、相手は電話に出なかった。
「じゃあ、遥に連絡してみるね」
「あ……侑士からメッセが届いた」
電話には出ねぇくせにメッセージは飛ばせんのかよ、と思ったが届いた内容を確認してみることにした。
忍足からのメッセージは『一応、今からカフェレストランに行くつもりやけど、そっちでも落ち合う店を探す振りして時間を稼いでほしい』だった。
(無茶言いやがって……それが出来たら苦労しねーっつーの!)
わなわなと震えながら向日は盛大な溜め息を吐き出した。
「なんて書いてたの?」
「……とりあえず分かれて昼飯食えそうな店を探そうぜって」
「混んでる店が多いから手分けするってことだね」
「まぁ、そうだな」
ひとまずそういうことにしておいて時間を稼がねぇと。そう思いながら、歩行者ランプが青に変わったので二人は横断歩道を渡ることにした。
しかしこの先は飲食店の多いエリアなのでどこもここも満席という店はさすがにないだろう。普通に探せば三十分もかからずに店を見つけることだって可能だ。
向日はどうするかと悩みながら歩いていると、ふとある店が目に入った。
「おっ。初めて見る店じゃん」
そこには向日が初めて見るテイクアウトの唐揚げ専門店があった。新店舗らしく、看板にはニューオープンと書かれている。
「なぁ、九条。ちょっと寄っていいか?」
「ご飯前だけどいいの?」
「いいっていいって。小腹を満たすだけだし」
そう言って秋を連れて唐揚げ屋さんに向かった。テイクアウト専門店だから店は小さいけど、新しい店なので多少なりとも人だかりは出来ていた。
メニューも数える程しかないので回転も早い印象。そのため購入もすぐだった。
爪楊枝が刺さった揚げたての唐揚げを紙カップに入れてもらい、店をあとにする。
「見た目は美味そうじゃん」
「そうだね、いい匂いもするし」
「じゃあ、早速ひとつ……」
一口で食べられそうな大きさの唐揚げをひとつ口に含む。熱々なのではふはふと熱さに耐えながら食べてみると、中はジューシーで味付けも彼好みであった。
「うめぇ! これは俺が今まで食った唐揚げの中でもベスト10に入る勢いだぜ」
「向日は唐揚げが好きなの?」
「おう。家でも特別な日にはよく食うんだよ」
「じゃあ、ご馳走なんだね」
「そうだなー。白飯何杯でも食えるし! それにしても九条は買わなくて良かったのか? すげーうめーぞ」
「美味しそうだけど、そんなに食べられないかなって。お昼ご飯が食べられなくなりそうで」
少なくても五、六個は入っている唐揚げの量に秋は自分のお腹と相談した結果購入を断念した。
少食というわけではないが、今食べてしまうとあとが食べられなくなり、残してしまうと思ったため。
「それなら一個やるよ。それなら食えるだろ?」
「えっ」
爪楊枝は二本刺さっていたので使用していない方の爪楊枝で唐揚げをひとつ刺して、秋に差し出す。
突然目の前に渡される唐揚げに秋は戸惑った。
「わ、悪いよそれは……」
「一個くらいでやいやい言わねーって。ほら」
ずいっとさらに押し付けられる唐揚げに秋は「あ、ありがとう……」と言葉にして唐揚げをひとつ受け取った。
軽く立ち込める湯気を見て、まだ出来たてジューシーな状態だと分かると秋は一口齧ってみる。
口元を押さえながら咀嚼すると、向日が絶賛するのを理解したのか美味しさに目を大きくさせた。
「美味しい……!」
「だろ? これは食って正解だったな。っつーわけで店探しは侑士達に任せてこっちはゆっくりしとこうぜ」
唐揚げを食べている間は多少なりとも時間を潰せるので、店の近くで唐揚げを食べることに興じる。
しかし、秋は少し不安げな表情を見せた。
「……遥、大丈夫かな」
「ガキじゃあるまいし、ヘーキだろ」
「そうだけど、遥と忍足が一緒っていうのが気になって」
その言葉を聞いて向日はピタッと唐揚げを食べる手を止める。
……もしかして九条は侑士と遥とのことを知っているのか? いや、友達なら知ってる可能性もあるのか。それだとしたら長いこと秋を引き止めるのは難しそうだと向日は悩んだ。
「……向日は知ってる? 遥と忍足の間に何があったか」
「へ?」
「あの二人、前は普通に仲が良かったのになんか今は違うでしょ? 向日なら何か知ってるかなって」
「あー……」
なるほど。確かに以前の二人の仲を知っていると、今の遥と忍足の様子は違和感でしかない。
「遥、何があったのか教えてくれなくて……絶対に何かあるはずなのになぜか頑ななの。友達だから相談に乗りたいのに、私では頼りにならないのかなって……」
憂い顔の秋の声は段々と小さくなり、ぽつりとずっと思っていたことを呟いた。
(遥の奴、隠すならもっと上手く隠せよな)
何を思って隠してるかは知らないが向日も忍足からの話しか聞いていないため、全容を知っているわけじゃない。
「俺も詳しくは知らねぇけど、友達だから言い難いこともあるんじゃねぇの? やっぱりそういうのは当事者から話を聞くべきだろうし、俺から話すのはなんかちげーだろうし」
「……そうだね。麻美にも言われたけど、何もないって言う遥に無理やり聞くのは良くないからいつか話してくれるのを待つよ。でも、やっぱり頼ってほしいって言うのが本音なんだけど」
苦笑する秋の表情はまだ暗いまま。よほど友達のことが気にかかる様子なので向日は優しい奴だなとぼんやり考えた。
「その内話してくれんじゃね? あいつ隠し事苦手だし、いつか口を滑らすって」
「そうだといいなぁ」
「まぁ、侑士と二人きりなのが心配なのも分かるけど、あいつ一応遥に対しては真面目に考えてるっぽいし、少しだけ信用してくんねぇか?」
さすがに悪いようにはしないはず。あと少しだけ時間を潰したらちゃんと合流するから辛抱してほしい。そう願いながら秋を説得する。
「……向日は友達思いなんだね。分かった、ちょっとだけ信じてみるよ」
不安げな表情からようやく小さな笑みを見せる秋を見て向日は少しだけ胸を撫で下ろす。ずっと暗い顔のままだとさすがに引き離してしまったことに罪悪感を抱いてしまうので。
とはいえ、友達思いだと言われると少しむず痒く感じる。
「友達思いってのは九条だろ。俺はいつも侑士にお願いばっかされる立場だっての」
「お願いされるのはそれだけ頼りになるってことだし、聞いてくれる向日もやっぱり友達思いなんだよ」
ふふ、と笑いながら再度友達思いだと口にする秋に向日は唐揚げを頬張りながら「調子狂うな……」と思った。
そこへ向日のスマートフォンに着信が入った。もしかしてと思い、相手を確認すると忍足の名が表示されたので急いで電話に出た。
「もしもし? 侑士、もう合流出来んのか?」
『あぁ……出来るんやけど、ちょっと色々と問題があってな……とりあえず来てくれるか?』
相方の声に覇気がない。これは確実に何かあったな。
遥との話し合いとやらは上手くいかなかったんだろうなと考え、忍足が指定する店に向かうことにした。