自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
始まりはマネージャー勧誘
主人公名前変換
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「━━と、いうわけだ。うちにマネージャーをつけることになった」
テニス部の部室に集められた現在の正レギュラー達は跡部からの話を聞いて一瞬言葉を失った。
「……今更マネージャーっつってもなぁ。本当に必要か?」
「まぁ、確かに俺達も一年の頃は雑用しての下積み時代があったのにそれを認めちまうと今年の新入部員すっげー優遇じゃね?」
不満げに口にしたのは長い髪が自慢の宍戸亮と赤みがかったおかっぱ頭が特徴の向日岳人。
中学生最後の年ということもあり、今更マネージャーを引き入れての部活動は慣れない気がしてやりづらいと感じたのだろう。
「えー? いいじゃん! マネージャー! だって俺らが選んでいーんでしょ!?」
「うわっ! ジロー! お前さっきまで寝てたのにいつの間にっ!?」
急に明るい声と共に大きく賛成したのは芥川慈郎だった。
部室に集合したばかりの時は眠りに落ちていたため、後輩の樺地崇弘に抱えられた状態だったのに、向日の気づかない内に覚醒状態となっていた。
「ねーねー跡部~! 俺、マネージャーにしたい子いるんだけど!」
「あぁ、あいつか。あいつとは俺もよく関わってるし、問題ないだろう。いいぜ」
「わーい! やっりぃ~!! 跡部サイコー! カッチョEー!!」
あいつとは誰のことか。残りのレギュラー達がそう思いながら喜びに飛び跳ねる芥川を見ると、宍戸がぽそっと「跡部ってジローにはなんか甘いよな……」と呟き、それに同意した向日もうんうんと頷く。
興味ないことにはひたすら寝ていることが多い彼があんなにもテンション高くしている上に跡部もあっさりと許可を出すのだから一体誰を連れてくるのか、その場の誰もが気になった。
「じゃあ、ジローの言うその子ともう一人くらいマネージャーを決めなきゃいけないってことだよね?」
顎に指を添えながら小首を傾げ、サラサラな髪を揺らしながら確認を取る滝萩之介に跡部は「あぁ」と答える。
「監督は数人ほどと言っていたからな。あと一人か二人は欲しいところだ。……が、一人はすでに決まってる」
そんな部長の言葉に他のメンバーが意外だと言うように少しざわついた。
「おぉ。跡部のお眼鏡にかなう子やなんて気になるなぁ。誰なん?」
興味津々といった様子で尋ねる低い関西弁と丸眼鏡をかけた忍足侑士に彼は勿体ぶることなくその名を口にした。
「赤宮麻美だ」
その名前を聞いた瞬間、場の空気が凍りついた。
冷や汗を流す者もいれば苦笑いする者もいる。ただ一人を除いては。
「あの……すみません。その、赤宮さんって方は何か問題があるんですか?」
高身長に似合わずおずおずと手を挙げた二年生の鳳長太郎だけはその名を聞いてもピンとこなかった。
「そうか、長太郎は二年だから知らねーのか」
「すみません、宍戸さん……」
「いや、謝ることじゃねーだろ。むしろ知らない方が幸せというか……」
「でもよ、あいつのヤベー話は学年関係なくね? むしろ跡部に負けず劣らず有名だと思うけどな。なぁ、長太郎は聞いたことねーか? 運動部逆道場破りとか氷帝学園女子生徒誘拐未遂事件」
「逆道場破りはなんとなく聞いたことがあります。確か、運動部の各主将達がある女子生徒の身体能力を自分の部活で発揮してほしいために勧誘したんですよね?」
鳳はそのまま自分が知っている範囲で語った。
運動能力が高い赤宮麻美を我が部に入部させようとしている運動部の部長が多いのだが、何度勧誘しても彼女は断ってばかり。
そんな日々に麻美は嫌気が差したある日、こう告げたそうだ。
『あんたらまとめてかかってこい。一人でも私を組み敷けば入ってやる』
と豪語し、各運動部の部員総出したそうだ。それだけでなくなぜか男子までいたのだが、その理由は「男装してでもうちに入部してほしい」という、とんちんかんなものから「女子達に頼まれた」というもはや不正では? という理由で腕に自信のある者達が沢山集まった。
それでも彼女は不機嫌ながらもそれを咎めることはしなかった。優しいから、というわけではない。
『全員ぶちのめせば二度と私を勧誘するなよ』
そう言ってボキボキと拳を鳴らした当時二年生の女子生徒はたった一人で大勢に立ち向かうのだが、そのとき対峙した者達は彼女の背後に般若が見えて震え上がったという。
結果はその女子生徒、赤宮麻美の一人勝ちだった。
誰一人彼女を組み敷くことなく、全員彼女の手と足のみで地面に倒れてしまった。
それを見ていた外野はまるで屍累々だと言って非常に怯えていたそうだ。
以来、麻美を部活に勧誘する者はいなくなった。
あのような目にあった者達はそのときの恐怖が勝って誘いたくても誘えない状態だ。
「いや……あれはほんとないよな」
「俺は漫画見てるみてーで面白かったけどなー!」
「って、見てたのかよっ!?」
遠い目をする向日と違っていまだにテンションが高い芥川が当時を再現するように拳を突き出したり蹴り上げたり見せてくるのだが、その光景を見ていたことの方が驚いたのか宍戸がそこにツッコミを入れる。
「えっと……ちなみに氷帝学園女子生徒誘拐未遂事件って言うのは? そっちは初耳でして……」
「あれは俺が直接見たけど凄かったよ」
苦笑いで当時のことを思い出す滝だったが、鳳にしてみれば麻美よりも誘拐という物騒なワードの方が恐ろしく感じた。
氷帝学園女子生徒誘拐未遂事件とは薄暗くなった冬の下校中にそれは起きた。
二年に進級する前だったので当時は一年である赤宮麻美は数少ない友達との帰宅中、あろうことか彼女の目の前でその友達が男達に捕まり、車の中へと引き込まれてしまう。
普通ならば気が動転する光景のはずなのに麻美はすぐに動きだした。
その早い反応のおかげで車道と歩道の間にある防護柵を乗り越え、ドアを閉めようとするのを阻止して無理やり開けて車に乗り込むと、ナイフを持つ男達に怯むことなくボコボコにしたそうだ。
こうして誘拐は未遂に終わり、巻き込まれた女子生徒も怪我なく無事に救出することが出来た。
一通り話を聞いてみれば事件を阻止した勇敢な話にも聞こえるが、後日、麻美は「どさくさに紛れてついでに車の破壊も出来るだけしてきた」と言っていたのだからその破壊衝動に震える者も少なくはない。
「一度暴れると手がつけられないんだよね、彼女」
「……なんだか、色々と凄そうですね」
もはや作り話なのではないかという数々の話に鳳も少し心配になりつつあった。
そんな彼の隣では忍足が目元を手で覆い、深い溜め息を吐き出す。
「なんだよ、侑士。もしかして、あいつに告ったことを思い出してんのか?」
「……マジかよ。お前よく生きてるな」
「いや……ほんま、やめて。若気の至りやねん……」
「忍足、今も若いじゃ~ん!」
当時、忍足は二年生で取っかえ引っ変えいつも違う女子を彼女にするという悪い癖があった。
今はとある事情によりその癖はなくなったのだが、その頃は麻美の数ある噂を聞いて、興味本位と見た目のレベルも高かったため冗談半分、本気半分で彼女に告白してみたところ、回し蹴りを食らってしまった。
それを思い出した忍足はそのときの痛みと後先考えずに手を出そうとしたことを恥じて居た堪れなくなる。
「っつーか、そもそも跡部もなんで赤宮をマネージャーにするんだよ! あんなのが来たらたまったもんじゃねーし!」
「その前に引き受けてくれないんじゃないかな? スカウトしても断られると思うけど。もしくはその逆道場破りみたいな条件を出してくる可能性もあるし」
向日と滝が跡部に尋ねた。自分達の部のマネージャーになりたい人間はごまんといる自覚はあるが、麻美は絶対にマネージャーにはならない自信があったから。
天上天下唯我独尊のような麻美は元より異性に興味はないし、マネージャー業のような奉仕活動をするイメージが全く湧かないからだ。
自己中心的で常に喧嘩腰。口も悪く、態度もでかくて横暴。売られた喧嘩は買うし、やられる前にやる。
基本的に他人に興味がないので余程のことがなければ自ら手を出すことがないだけまだマシとも言えるだろう。
そんな彼女だからこそ、マネージャーを務めることなんて有り得ない。
「そもそも俺が決めたわけじゃねぇ。教師側からの意向だ」
「ゲッ。マジかよ……っつーか、誰があいつを勧誘するんだ? 先に言っとくが俺は嫌だかんなっ!」
先生達からの決定では抗えないと悟った向日は麻美がマネージャー業を引き受ける以前にスカウト役を拒絶する。
「安心しろ。赤宮の件は俺に任せな」
部長の頼もしい言葉により他の部員達はホッと安心する。
「なぁなぁ、跡部と麻美、どっちが折れるんだろーなっ?」
「……どうだろうな」
芥川が興味津々に宍戸に尋ねるが、宍戸は彼が麻美のことを名前呼びにする度胸と無邪気さが逆に羨ましく思った。
「では、その赤宮さんと芥川さんが誘うもう一人の方で決定、ですかね?」
「あ~ちょい待ち長太郎。俺も誘いたい子がおんねん」
「ジローに続き侑士もかよ」
「ほう? 忍足、お前は誰を連れて来るつもりだ?」
「跡部のよう知っとる子や。自分、クラス一緒やから見たらわかるやろ」
「なんでジローも忍足も名前言わねぇんだよ。こっちはわかんねーんだからな」
「反対されたないからや」
「反対されるような奴なのかよ」
宍戸がジト目で忍足を睨むと、彼は痛くも痒くもないと言った様子で企み顔で微笑んだ。
そんな忍足が勧誘したい生徒を跡部は誰か察したのか、軽く溜め息をつく。
「……あいつか。あいつは色々と気になるが……」
ちらりと跡部が樺地を横目で見る。樺地はというと、そんな視線も気にすることなく、いつものように静かに無表情で話を聞いていた。
「まあいい。こっちの交渉の出しに使うから何がなんでも引き入れろ。そしてちゃんと面倒も見ておけ。いいな?」
「任せとき」
(そんな拾ってきた犬猫みたいに言われるなんて……)
鳳がハラハラしながらその会話を聞くが、近くにいる滝に至っては少し気になることがあるのか考えごとをしていた。
(……嫌な予感がする)
テニス部の部室に集められた現在の正レギュラー達は跡部からの話を聞いて一瞬言葉を失った。
「……今更マネージャーっつってもなぁ。本当に必要か?」
「まぁ、確かに俺達も一年の頃は雑用しての下積み時代があったのにそれを認めちまうと今年の新入部員すっげー優遇じゃね?」
不満げに口にしたのは長い髪が自慢の宍戸亮と赤みがかったおかっぱ頭が特徴の向日岳人。
中学生最後の年ということもあり、今更マネージャーを引き入れての部活動は慣れない気がしてやりづらいと感じたのだろう。
「えー? いいじゃん! マネージャー! だって俺らが選んでいーんでしょ!?」
「うわっ! ジロー! お前さっきまで寝てたのにいつの間にっ!?」
急に明るい声と共に大きく賛成したのは芥川慈郎だった。
部室に集合したばかりの時は眠りに落ちていたため、後輩の樺地崇弘に抱えられた状態だったのに、向日の気づかない内に覚醒状態となっていた。
「ねーねー跡部~! 俺、マネージャーにしたい子いるんだけど!」
「あぁ、あいつか。あいつとは俺もよく関わってるし、問題ないだろう。いいぜ」
「わーい! やっりぃ~!! 跡部サイコー! カッチョEー!!」
あいつとは誰のことか。残りのレギュラー達がそう思いながら喜びに飛び跳ねる芥川を見ると、宍戸がぽそっと「跡部ってジローにはなんか甘いよな……」と呟き、それに同意した向日もうんうんと頷く。
興味ないことにはひたすら寝ていることが多い彼があんなにもテンション高くしている上に跡部もあっさりと許可を出すのだから一体誰を連れてくるのか、その場の誰もが気になった。
「じゃあ、ジローの言うその子ともう一人くらいマネージャーを決めなきゃいけないってことだよね?」
顎に指を添えながら小首を傾げ、サラサラな髪を揺らしながら確認を取る滝萩之介に跡部は「あぁ」と答える。
「監督は数人ほどと言っていたからな。あと一人か二人は欲しいところだ。……が、一人はすでに決まってる」
そんな部長の言葉に他のメンバーが意外だと言うように少しざわついた。
「おぉ。跡部のお眼鏡にかなう子やなんて気になるなぁ。誰なん?」
興味津々といった様子で尋ねる低い関西弁と丸眼鏡をかけた忍足侑士に彼は勿体ぶることなくその名を口にした。
「赤宮麻美だ」
その名前を聞いた瞬間、場の空気が凍りついた。
冷や汗を流す者もいれば苦笑いする者もいる。ただ一人を除いては。
「あの……すみません。その、赤宮さんって方は何か問題があるんですか?」
高身長に似合わずおずおずと手を挙げた二年生の鳳長太郎だけはその名を聞いてもピンとこなかった。
「そうか、長太郎は二年だから知らねーのか」
「すみません、宍戸さん……」
「いや、謝ることじゃねーだろ。むしろ知らない方が幸せというか……」
「でもよ、あいつのヤベー話は学年関係なくね? むしろ跡部に負けず劣らず有名だと思うけどな。なぁ、長太郎は聞いたことねーか? 運動部逆道場破りとか氷帝学園女子生徒誘拐未遂事件」
「逆道場破りはなんとなく聞いたことがあります。確か、運動部の各主将達がある女子生徒の身体能力を自分の部活で発揮してほしいために勧誘したんですよね?」
鳳はそのまま自分が知っている範囲で語った。
運動能力が高い赤宮麻美を我が部に入部させようとしている運動部の部長が多いのだが、何度勧誘しても彼女は断ってばかり。
そんな日々に麻美は嫌気が差したある日、こう告げたそうだ。
『あんたらまとめてかかってこい。一人でも私を組み敷けば入ってやる』
と豪語し、各運動部の部員総出したそうだ。それだけでなくなぜか男子までいたのだが、その理由は「男装してでもうちに入部してほしい」という、とんちんかんなものから「女子達に頼まれた」というもはや不正では? という理由で腕に自信のある者達が沢山集まった。
それでも彼女は不機嫌ながらもそれを咎めることはしなかった。優しいから、というわけではない。
『全員ぶちのめせば二度と私を勧誘するなよ』
そう言ってボキボキと拳を鳴らした当時二年生の女子生徒はたった一人で大勢に立ち向かうのだが、そのとき対峙した者達は彼女の背後に般若が見えて震え上がったという。
結果はその女子生徒、赤宮麻美の一人勝ちだった。
誰一人彼女を組み敷くことなく、全員彼女の手と足のみで地面に倒れてしまった。
それを見ていた外野はまるで屍累々だと言って非常に怯えていたそうだ。
以来、麻美を部活に勧誘する者はいなくなった。
あのような目にあった者達はそのときの恐怖が勝って誘いたくても誘えない状態だ。
「いや……あれはほんとないよな」
「俺は漫画見てるみてーで面白かったけどなー!」
「って、見てたのかよっ!?」
遠い目をする向日と違っていまだにテンションが高い芥川が当時を再現するように拳を突き出したり蹴り上げたり見せてくるのだが、その光景を見ていたことの方が驚いたのか宍戸がそこにツッコミを入れる。
「えっと……ちなみに氷帝学園女子生徒誘拐未遂事件って言うのは? そっちは初耳でして……」
「あれは俺が直接見たけど凄かったよ」
苦笑いで当時のことを思い出す滝だったが、鳳にしてみれば麻美よりも誘拐という物騒なワードの方が恐ろしく感じた。
氷帝学園女子生徒誘拐未遂事件とは薄暗くなった冬の下校中にそれは起きた。
二年に進級する前だったので当時は一年である赤宮麻美は数少ない友達との帰宅中、あろうことか彼女の目の前でその友達が男達に捕まり、車の中へと引き込まれてしまう。
普通ならば気が動転する光景のはずなのに麻美はすぐに動きだした。
その早い反応のおかげで車道と歩道の間にある防護柵を乗り越え、ドアを閉めようとするのを阻止して無理やり開けて車に乗り込むと、ナイフを持つ男達に怯むことなくボコボコにしたそうだ。
こうして誘拐は未遂に終わり、巻き込まれた女子生徒も怪我なく無事に救出することが出来た。
一通り話を聞いてみれば事件を阻止した勇敢な話にも聞こえるが、後日、麻美は「どさくさに紛れてついでに車の破壊も出来るだけしてきた」と言っていたのだからその破壊衝動に震える者も少なくはない。
「一度暴れると手がつけられないんだよね、彼女」
「……なんだか、色々と凄そうですね」
もはや作り話なのではないかという数々の話に鳳も少し心配になりつつあった。
そんな彼の隣では忍足が目元を手で覆い、深い溜め息を吐き出す。
「なんだよ、侑士。もしかして、あいつに告ったことを思い出してんのか?」
「……マジかよ。お前よく生きてるな」
「いや……ほんま、やめて。若気の至りやねん……」
「忍足、今も若いじゃ~ん!」
当時、忍足は二年生で取っかえ引っ変えいつも違う女子を彼女にするという悪い癖があった。
今はとある事情によりその癖はなくなったのだが、その頃は麻美の数ある噂を聞いて、興味本位と見た目のレベルも高かったため冗談半分、本気半分で彼女に告白してみたところ、回し蹴りを食らってしまった。
それを思い出した忍足はそのときの痛みと後先考えずに手を出そうとしたことを恥じて居た堪れなくなる。
「っつーか、そもそも跡部もなんで赤宮をマネージャーにするんだよ! あんなのが来たらたまったもんじゃねーし!」
「その前に引き受けてくれないんじゃないかな? スカウトしても断られると思うけど。もしくはその逆道場破りみたいな条件を出してくる可能性もあるし」
向日と滝が跡部に尋ねた。自分達の部のマネージャーになりたい人間はごまんといる自覚はあるが、麻美は絶対にマネージャーにはならない自信があったから。
天上天下唯我独尊のような麻美は元より異性に興味はないし、マネージャー業のような奉仕活動をするイメージが全く湧かないからだ。
自己中心的で常に喧嘩腰。口も悪く、態度もでかくて横暴。売られた喧嘩は買うし、やられる前にやる。
基本的に他人に興味がないので余程のことがなければ自ら手を出すことがないだけまだマシとも言えるだろう。
そんな彼女だからこそ、マネージャーを務めることなんて有り得ない。
「そもそも俺が決めたわけじゃねぇ。教師側からの意向だ」
「ゲッ。マジかよ……っつーか、誰があいつを勧誘するんだ? 先に言っとくが俺は嫌だかんなっ!」
先生達からの決定では抗えないと悟った向日は麻美がマネージャー業を引き受ける以前にスカウト役を拒絶する。
「安心しろ。赤宮の件は俺に任せな」
部長の頼もしい言葉により他の部員達はホッと安心する。
「なぁなぁ、跡部と麻美、どっちが折れるんだろーなっ?」
「……どうだろうな」
芥川が興味津々に宍戸に尋ねるが、宍戸は彼が麻美のことを名前呼びにする度胸と無邪気さが逆に羨ましく思った。
「では、その赤宮さんと芥川さんが誘うもう一人の方で決定、ですかね?」
「あ~ちょい待ち長太郎。俺も誘いたい子がおんねん」
「ジローに続き侑士もかよ」
「ほう? 忍足、お前は誰を連れて来るつもりだ?」
「跡部のよう知っとる子や。自分、クラス一緒やから見たらわかるやろ」
「なんでジローも忍足も名前言わねぇんだよ。こっちはわかんねーんだからな」
「反対されたないからや」
「反対されるような奴なのかよ」
宍戸がジト目で忍足を睨むと、彼は痛くも痒くもないと言った様子で企み顔で微笑んだ。
そんな忍足が勧誘したい生徒を跡部は誰か察したのか、軽く溜め息をつく。
「……あいつか。あいつは色々と気になるが……」
ちらりと跡部が樺地を横目で見る。樺地はというと、そんな視線も気にすることなく、いつものように静かに無表情で話を聞いていた。
「まあいい。こっちの交渉の出しに使うから何がなんでも引き入れろ。そしてちゃんと面倒も見ておけ。いいな?」
「任せとき」
(そんな拾ってきた犬猫みたいに言われるなんて……)
鳳がハラハラしながらその会話を聞くが、近くにいる滝に至っては少し気になることがあるのか考えごとをしていた。
(……嫌な予感がする)