自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
それぞれのゴールデンウィーク
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映画を観に行くと約束したその当日。遥は必死に走っていた。
なぜなら待ち合わせ時間ギリギリだからである。
急いだおかげでなんとか待ち合わせ場所の映画館が入っている商業施設の前へと到着した遥は息を切らしながらすでに集まっていた三人へと目を向ける。
「え、へへ……ギリギリセーフ……」
「バーカ。もう一分過ぎてんぞ」
向日がスマートフォンの時間を遥に見せつけると、彼女は「げっ」と声に出す。
「遥、走ると危ないから遅れそうなら前もって連絡しなきゃ」
「いやぁ……間に合うかなぁ、って思って……」
秋が小さく溜め息をついて軽く注意をする。少しの遅れなら気にしない秋ではあるが、遥は遅刻癖が少なからずあるのでどうにかならないものかとよく頭を悩ませた。
「はぁ……走ったら喉乾いちゃったな……」
「ま、そうやと思うて水買うといたで」
軽く顎に流れる汗を拭う遥の前にペットボトルの水が差し出された。その相手は本日の危険人物、忍足侑士だ。
「あ……ありがと……」
躊躇いながらもその水を受け取り、水分を求める身体のためにもぐびっと勢いよく飲んだ。
麻美だったらいらないと突っぱねていただろうな、と考えながらも関わりたくない相手の施しを受けても良かったのか今になって悩み始める。
「じゃあ、そろそろ行かない?」
腕時計の時間を確認した秋の一言により、四人は大型商業施設へと入る。
映画館のフロアまで移動し、上映時間には十分に間に合うのでパンフレットを買う者もいれば、映画のお供としてポップコーンを買う者もいた。
「チケット発券しといたで。これが自分らの席な」
忍足が先にチケットを発券し、残りの三人に手渡ししていく。ごく自然に。
しかし、すでに忍足は『遥との距離を縮める大作戦』を始めていた。
その名の通り、信頼はゼロ、心の距離は測り切れないほど遠くなった遥との距離を縮めるための作戦。
最初は遅刻するのを予想していたため、予め飲料水を用意し、気の利く男を演出する。
そして今渡したチケットももちろん意味がある。発券したチケットにはすでに座席番号が書かれてあるので上手いこと隣に座れる番号を遥に渡したのだ。
何も疑うことなく、ポップコーンを抱えたまま受け取った遥を見た忍足は心でガッツポーズをする。
「ほな、行こか」
「おう」
「楽しみだね、遥」
「あたしはレジャーレンジャー対お面ライダーの方が気になるんだけどなぁ」
四人は入場口へ行き、係の人にチケットをもぎってもらったあと自分達の観るべき映画のスクリーンへと向かう。
少し薄暗いシアター内に足を踏み入れ、確保した席には迷うことなく辿り着き、四人は着席した。
(よし、これで隣は遥が━━)
ちらり、と忍足が横目で見ると「え」と思わず声が出た。それもそのはず、遥が座るはずだった席にはなぜか秋の姿があったからだ。
そんな彼の戸惑いの声が聞こえたのか、秋が不思議そうに忍足に視線を向ける。
「忍足? どうかした?」
「あ……いや、俺の隣は九条さんやったんかって思うてな……」
「うん。ここだよ、ほら」
頷いた秋は自身のチケットを忍足に見せた。そこには間違いなく遥に渡したはずの座席番号が書かれている。
そう、間違いなく遥に手渡したはず。間違えて渡すといったそんな凡ミスは絶対にしない。
ならばどうして? そう考える忍足はひとつだけ思い当たることがあった。
それは入場時にチケットをスタッフに見せるときだ。
あのときは忍足が先頭で入ったが、ちょうど後ろでは秋の声が聞こえた。
『遥、ポップコーンを持ちながらだと危ないから私が遥の分のチケットも渡しておくよ』
遥に気遣う秋の声をはっきりと。
(さっきのアレかいなっ)
おそらくあのとき、遥からチケットを受け取り一緒に提示したのだろう。そして返されたチケットを遥に渡すときに入れ替わったと考える。
そのため、座席は忍足、秋、遥、向日という並びになってしまった。
これでは映画の終盤で軽く手に触れるなどのアピールが出来やしない。
はぁ、と心の中で溜め息を漏らし、残念がる姿を表に出さないようポーカーフェイスを徹底する。
「……」
そんな忍足の様子を盗み見しながら秋は反対隣の遥に目を向ける。どうやら向日にポップコーンを取られてご立腹のようだ。
(……とっさにチケットを交換したけど、遥は気づいてないみたいで良かった)
忍足が一枚ずつ手渡しをするのでもしかしたら、と思った秋は念のために遥と自身のチケットをさりげなく交換した。
その結果、忍足は隣の席を気にしていたのか戸惑いの声を上げたのでやっぱりそういうことだったんだねと納得する。
ただ、表情に変化は見られなかったのでもしかしたら勘違いだったのかもと思ってしまうが、わざわざ本人に尋ねてまで判明することではない。
遥は普段通りだし、今のところ何も問題はなさそうなので秋は一人胸を撫で下ろす。
しかし、秋は忍足のことをあまり知らない。人物としてはいい意味でも悪い意味でも有名ではあるが言葉を交わすことはそんなになかった。
向日や遥と話している現場はよく目撃していたからこそ、急に忍足への態度がよそよそしくなった遥と、距離を縮めようとする忍足の間に何かあったのだとすぐに気がついた。
(でも、話してくれないんだよね……遥は)
なぜかは分からないけど、何もないと言って理由を話してくれないことに秋はもやもやしていた。
友達なのに、相談もしてくれないのかな、と。
「ちょっ、岳人! またあたしのポップコーン食べたでしょ!」
「美味かったからな」
「これ、あたしのっ!」
(……それにしても仲がいいなぁ、二人は)
遥と向日のやり取りを微笑ましく思うのと同時に、向日と仲良しな遥を羨ましく感じた秋はただただ二人の様子を見つめる。
そして上映時間丁度に映画は始まった。
なぜなら待ち合わせ時間ギリギリだからである。
急いだおかげでなんとか待ち合わせ場所の映画館が入っている商業施設の前へと到着した遥は息を切らしながらすでに集まっていた三人へと目を向ける。
「え、へへ……ギリギリセーフ……」
「バーカ。もう一分過ぎてんぞ」
向日がスマートフォンの時間を遥に見せつけると、彼女は「げっ」と声に出す。
「遥、走ると危ないから遅れそうなら前もって連絡しなきゃ」
「いやぁ……間に合うかなぁ、って思って……」
秋が小さく溜め息をついて軽く注意をする。少しの遅れなら気にしない秋ではあるが、遥は遅刻癖が少なからずあるのでどうにかならないものかとよく頭を悩ませた。
「はぁ……走ったら喉乾いちゃったな……」
「ま、そうやと思うて水買うといたで」
軽く顎に流れる汗を拭う遥の前にペットボトルの水が差し出された。その相手は本日の危険人物、忍足侑士だ。
「あ……ありがと……」
躊躇いながらもその水を受け取り、水分を求める身体のためにもぐびっと勢いよく飲んだ。
麻美だったらいらないと突っぱねていただろうな、と考えながらも関わりたくない相手の施しを受けても良かったのか今になって悩み始める。
「じゃあ、そろそろ行かない?」
腕時計の時間を確認した秋の一言により、四人は大型商業施設へと入る。
映画館のフロアまで移動し、上映時間には十分に間に合うのでパンフレットを買う者もいれば、映画のお供としてポップコーンを買う者もいた。
「チケット発券しといたで。これが自分らの席な」
忍足が先にチケットを発券し、残りの三人に手渡ししていく。ごく自然に。
しかし、すでに忍足は『遥との距離を縮める大作戦』を始めていた。
その名の通り、信頼はゼロ、心の距離は測り切れないほど遠くなった遥との距離を縮めるための作戦。
最初は遅刻するのを予想していたため、予め飲料水を用意し、気の利く男を演出する。
そして今渡したチケットももちろん意味がある。発券したチケットにはすでに座席番号が書かれてあるので上手いこと隣に座れる番号を遥に渡したのだ。
何も疑うことなく、ポップコーンを抱えたまま受け取った遥を見た忍足は心でガッツポーズをする。
「ほな、行こか」
「おう」
「楽しみだね、遥」
「あたしはレジャーレンジャー対お面ライダーの方が気になるんだけどなぁ」
四人は入場口へ行き、係の人にチケットをもぎってもらったあと自分達の観るべき映画のスクリーンへと向かう。
少し薄暗いシアター内に足を踏み入れ、確保した席には迷うことなく辿り着き、四人は着席した。
(よし、これで隣は遥が━━)
ちらり、と忍足が横目で見ると「え」と思わず声が出た。それもそのはず、遥が座るはずだった席にはなぜか秋の姿があったからだ。
そんな彼の戸惑いの声が聞こえたのか、秋が不思議そうに忍足に視線を向ける。
「忍足? どうかした?」
「あ……いや、俺の隣は九条さんやったんかって思うてな……」
「うん。ここだよ、ほら」
頷いた秋は自身のチケットを忍足に見せた。そこには間違いなく遥に渡したはずの座席番号が書かれている。
そう、間違いなく遥に手渡したはず。間違えて渡すといったそんな凡ミスは絶対にしない。
ならばどうして? そう考える忍足はひとつだけ思い当たることがあった。
それは入場時にチケットをスタッフに見せるときだ。
あのときは忍足が先頭で入ったが、ちょうど後ろでは秋の声が聞こえた。
『遥、ポップコーンを持ちながらだと危ないから私が遥の分のチケットも渡しておくよ』
遥に気遣う秋の声をはっきりと。
(さっきのアレかいなっ)
おそらくあのとき、遥からチケットを受け取り一緒に提示したのだろう。そして返されたチケットを遥に渡すときに入れ替わったと考える。
そのため、座席は忍足、秋、遥、向日という並びになってしまった。
これでは映画の終盤で軽く手に触れるなどのアピールが出来やしない。
はぁ、と心の中で溜め息を漏らし、残念がる姿を表に出さないようポーカーフェイスを徹底する。
「……」
そんな忍足の様子を盗み見しながら秋は反対隣の遥に目を向ける。どうやら向日にポップコーンを取られてご立腹のようだ。
(……とっさにチケットを交換したけど、遥は気づいてないみたいで良かった)
忍足が一枚ずつ手渡しをするのでもしかしたら、と思った秋は念のために遥と自身のチケットをさりげなく交換した。
その結果、忍足は隣の席を気にしていたのか戸惑いの声を上げたのでやっぱりそういうことだったんだねと納得する。
ただ、表情に変化は見られなかったのでもしかしたら勘違いだったのかもと思ってしまうが、わざわざ本人に尋ねてまで判明することではない。
遥は普段通りだし、今のところ何も問題はなさそうなので秋は一人胸を撫で下ろす。
しかし、秋は忍足のことをあまり知らない。人物としてはいい意味でも悪い意味でも有名ではあるが言葉を交わすことはそんなになかった。
向日や遥と話している現場はよく目撃していたからこそ、急に忍足への態度がよそよそしくなった遥と、距離を縮めようとする忍足の間に何かあったのだとすぐに気がついた。
(でも、話してくれないんだよね……遥は)
なぜかは分からないけど、何もないと言って理由を話してくれないことに秋はもやもやしていた。
友達なのに、相談もしてくれないのかな、と。
「ちょっ、岳人! またあたしのポップコーン食べたでしょ!」
「美味かったからな」
「これ、あたしのっ!」
(……それにしても仲がいいなぁ、二人は)
遥と向日のやり取りを微笑ましく思うのと同時に、向日と仲良しな遥を羨ましく感じた秋はただただ二人の様子を見つめる。
そして上映時間丁度に映画は始まった。