自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
誘われる休日と注意喚起と変わらない面子
主人公名前変換
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『話がある。昼飯を一緒に食うぞ』
と、麻美が秋と遥にメッセージアプリで伝えたのは昼休憩が始まってすぐのことだった。
秋も遥も麻美から話があると言って集合をかけるのは珍しいと思いながら食堂へと向かった。
「最近喧嘩吹っかけられたか?」
「え、なんすか麻美さん。唐突に物騒なんだけど……」
カフェテリアにて三人が円卓席に座る。
本日の昼食は麻美が食堂のボンゴレビアンコ。秋がお弁当持参。そして遥は食堂のきつねうどんであった。
それぞれ食事に手をつけていると、パスタをフォークで巻く麻美が二人を呼び出した本題に入る。
しかし、彼女の言葉の意味が分からない遥が嫌な予感を抱いたのか、箸を持つ手の動きを止めた。
「いいから答えろ」
「私は特にないよ。きっと麻美が心配するようなことはないかな」
詳しい説明をしないものの、おそらく麻美なりに何か心配事があるのかもしれないと考えた秋が先に答えた。
秋が答えたので遥もよく分からないまま麻美の質問に返事をすることに決める。
「あたしもないよー」
「本当か?」
「え、そこ疑うのっ!?」
「麻美、何かあったの? 言いづらいことなら無理には聞かないけど、私達にも関係があるなら教えてくれないかな?」
「別に言いづらいことではないけど、ただまた面倒事が起きそうな気がしてな……」
はぁ、と溜め息混じりに答える麻美は前日に鳳から聞かされた話を二人にも伝えた。
遥への恨み言を並べる女子生徒の存在を。
その話を聞いてまさか自分の名が出てくるとは思わなかったのか、遥はまるで怪談話を聞かされたかのような青い表情へ変わっていく。
「え、いや、ちょっと、なんであたし!?」
「知るか。またあんたが何かしらやらかしたんだろ」
「いやいやいや! 濡れ衣よぉ! あたしは人に恨まれるようなことは一切合切やっておりませぬわ! こんないい子ちゃんな遥さんがなんで恨まれるのっ!?」
「だから知るかって言ってんだろ」
「まぁ……今はマネージャーになったからもしかしたら部員との距離が近くなって嫉妬してる可能性があるかもね」
よく跡部ファンの子達からの嫌な視線を受けている秋が言うのだから説得力はある。
そんな秋の言葉にどこか自虐的要素を感じたのか、麻美は目を伏せながら慰めるように優しく秋の肩を叩いた。
遥に至っては彼女に同情の視線を向けながら「あたしの油揚げあげるね……」と油揚げを白ご飯の上に乗せられる。
本音を言えば油揚げは別にいらないのだけど、返すわけにもいかないので苦笑しながら受け取ることにした。
しかし、秋はただ可能性を述べただけで自虐のつもりもないため、なぜ二人に優しくされるのかは分からないままである。
「とにかく下僕は警戒しとけ。そして喧嘩を売られたら私を呼べ」
「麻美やっさしー! ドキドキしちゃうー!」
キャッ。と茶化す遥の態度にイラッとした麻美はボンゴレビアンコに入っていた貝の殻を遥の額に目掛けて勢いよく投げた。
「おごっ!」
「麻美、食べ物で遊んじゃ駄目だよ。遥も真面目な話の途中で茶化さないの」
「遊んでない。天罰だ」
「ひぃん……天が下す罰をなぜ麻美が……」
「私が偉いからに決まってんだろ」
「横暴だ! 俺様何様麻美様っ!!」
「二人とも、話を脱線させないで」
いつものやり取りにいつもの通り仲裁に入る秋。
さすがにこの話を逸らせるわけにはいかないので再び話を戻すことに努めた。
「念のために聞くけど、遥は最近女子を妬かせるような言動はしてない?」
「……えーと、あたしはいつでもかばっちにフォーリンラブしてるからなぁ。もしかしたらかばっちのガチ恋勢がっ!?」
「寝言は寝て言え」
「起きてますっ!!」
「どちらかと言うと過激なのは跡部景吾ファンの子達なんだけどね。ほら、遥は今跡部と同じクラスでもあるから」
「なるへそ」
「あとはあいつじゃね? 忍足。あいつ関係の女も面倒なのが多そうだし」
「んぐっ!」
うどんをちゅるんと啜った遥は突然の忍足の名前を聞いて、驚きに喉を詰まらせた。
胸元をドンドンと叩く遥に秋が慌てて水の入ったコップを差し出すと、それを手に取り一気に飲み干した。
「ぶはっ! し、死ぬかと思った……」
「遥、大丈夫?」
「な、なんとか……」
「大袈裟な反応だな。心当たりでもあんのか?」
「いや、心当たりっていうかなんというか……」
「確かに、忍足は遥に好意を寄せてるみたいだしね……」
秋の呟きに遥は冷や汗を流しながらブンブンと勢いよく首を横に振った。
彼女は否定しているが、秋や麻美からしてみると忍足が遥に絡む様子を部活中に何度も目撃している。その言動は誰がどう見ても遥のことを好きだとよく分かるものだった。
「……ねぇ、遥は何も言わないけど、遥と忍足って何かあったの?」
秋の問いかけに遥はドキリとしたが、苦笑いしながら答えた。
「な、何もないよ! 何もない!」
「でも、私の知る限りでは去年は二人とも普通に接してたはずなのに……」
「ほん、とに……何もないんだよ……」
目を逸らしながら躊躇うように否定を続ける遥の姿はどう見ても何もないわけには見えなかった。
「遥……」
「秋、何もないならもういいだろ」
「でも……」
「いつもならあんたが止める役割なんだから私にその役割をさせるな」
麻美の言う通りだった。いつもなら麻美が無理やりにでも遥の口を割ろうとし、秋が宥めるのだが今回はその立場が逆であった。
「ごめんね、麻美。遥も無理やり聞こうとしてごめんね」
「い、いいんだよっ。気にしないさ! あたしと忍足の間には何もないのだ!」
秋はただ本気で遥のことが心配だったのだろう。だから麻美は秋を怒ることはしない。元々彼女には甘いというのもあるが。
しかし、秋の気持ちもよく分かる。むしろ本当はずっと前から問いただしたい話題でもあったのだから。
遥と忍足。この二人に何かあったことは間違いないと麻美も考えていた。
ふしだらな女性関係を築いていた忍足が突然人が変わったかのように遥へ一途なアピールを始めた時期と、その忍足の好意に恐怖でも感じているのか遥が何かと彼を避け出した時期は一緒なのだ。何もないという方がおかしいくらいである。
とはいえ、遥が頑なに口を閉ざそうとする上、触れたくなさそうな雰囲気だったので麻美は仕方ないと思いながらこのときばかりは遥の肩を持つことにした……のだが。
「でも、遥……今度一緒に映画行くんだよね?」
「は?」
避けているはずの相手と映画に行くという話題を耳にし、さすがの麻美も「忍足のこと嫌いなんじゃねーのかよ」という目を遥に向けた。
「いや、あたしは断ったんだ! でも、二人きりじゃないし、岳人も行くって言うから仕方なく……」
つまり押しに負けたということか、と溜め息を吐きながら麻美は頭痛がするとでも言いたげに額に手を当てる。
「……おい、下僕。もし忍足の策略で二人きりになったらどうするつもりだ?」
「うぅ……」
忍足の女たらし案件が過去にある限り、友人である遥にもその毒牙がかかるかもしれない。もう少し危機感を持てと言いつけようとしたところで秋が口を開く。
「大丈夫だよ。私も一緒に映画に行くから」
「え?」
「は?」
「向日に誘われたの。だから当日は私もいるよ」
にっこりと笑う秋に遥はみるみると明るい表情をさせた。
「ほんと!? 秋がいるなら安心だ! 楽しみー!」
「……向日に誘われただと?」
「うん、そうだよ」
(なんか怪しいな……)
「あ。麻美も一緒に行く? 『愛と風とカーテンと』っていう映画なんだけど」
「興味ないからいい」
「えー? 麻美も行こうよー」
「好みじゃないから行く気もない」
自分の好きそうなジャンルなら誘いに乗ったが、さすがに趣味じゃない映画を観に行くほどの優しさは持ち合わせていなかった。
「そっか。残念だけど、遥のことは任せて」
「あぁ」
「……ちょっと大袈裟なのでは?」
「あんたが忍足と変な距離感でいるせいであいつ絡みの女に何かしら狙われる可能性が高くなってんだろうが」
「ぴえん……」
何も言い返せずにただ小さく鳴き声のようなものを呟く遥だった。
(とりあえず注意は促したし、少しは危機感くらい持てるだろ)
まさか映画に行くとは思わなかったが、忍足については秋に丸投げすることに決めた。
麻美が警戒するのは鳳が見たという遥に恨みを持つ女子生徒だ。
彼女の様子は尋常ではなかったとのことなので当分は遥を監視するべきだろうと考えた麻美は結局厄介事が増えたなと胸の中で呟いた。
と、麻美が秋と遥にメッセージアプリで伝えたのは昼休憩が始まってすぐのことだった。
秋も遥も麻美から話があると言って集合をかけるのは珍しいと思いながら食堂へと向かった。
「最近喧嘩吹っかけられたか?」
「え、なんすか麻美さん。唐突に物騒なんだけど……」
カフェテリアにて三人が円卓席に座る。
本日の昼食は麻美が食堂のボンゴレビアンコ。秋がお弁当持参。そして遥は食堂のきつねうどんであった。
それぞれ食事に手をつけていると、パスタをフォークで巻く麻美が二人を呼び出した本題に入る。
しかし、彼女の言葉の意味が分からない遥が嫌な予感を抱いたのか、箸を持つ手の動きを止めた。
「いいから答えろ」
「私は特にないよ。きっと麻美が心配するようなことはないかな」
詳しい説明をしないものの、おそらく麻美なりに何か心配事があるのかもしれないと考えた秋が先に答えた。
秋が答えたので遥もよく分からないまま麻美の質問に返事をすることに決める。
「あたしもないよー」
「本当か?」
「え、そこ疑うのっ!?」
「麻美、何かあったの? 言いづらいことなら無理には聞かないけど、私達にも関係があるなら教えてくれないかな?」
「別に言いづらいことではないけど、ただまた面倒事が起きそうな気がしてな……」
はぁ、と溜め息混じりに答える麻美は前日に鳳から聞かされた話を二人にも伝えた。
遥への恨み言を並べる女子生徒の存在を。
その話を聞いてまさか自分の名が出てくるとは思わなかったのか、遥はまるで怪談話を聞かされたかのような青い表情へ変わっていく。
「え、いや、ちょっと、なんであたし!?」
「知るか。またあんたが何かしらやらかしたんだろ」
「いやいやいや! 濡れ衣よぉ! あたしは人に恨まれるようなことは一切合切やっておりませぬわ! こんないい子ちゃんな遥さんがなんで恨まれるのっ!?」
「だから知るかって言ってんだろ」
「まぁ……今はマネージャーになったからもしかしたら部員との距離が近くなって嫉妬してる可能性があるかもね」
よく跡部ファンの子達からの嫌な視線を受けている秋が言うのだから説得力はある。
そんな秋の言葉にどこか自虐的要素を感じたのか、麻美は目を伏せながら慰めるように優しく秋の肩を叩いた。
遥に至っては彼女に同情の視線を向けながら「あたしの油揚げあげるね……」と油揚げを白ご飯の上に乗せられる。
本音を言えば油揚げは別にいらないのだけど、返すわけにもいかないので苦笑しながら受け取ることにした。
しかし、秋はただ可能性を述べただけで自虐のつもりもないため、なぜ二人に優しくされるのかは分からないままである。
「とにかく下僕は警戒しとけ。そして喧嘩を売られたら私を呼べ」
「麻美やっさしー! ドキドキしちゃうー!」
キャッ。と茶化す遥の態度にイラッとした麻美はボンゴレビアンコに入っていた貝の殻を遥の額に目掛けて勢いよく投げた。
「おごっ!」
「麻美、食べ物で遊んじゃ駄目だよ。遥も真面目な話の途中で茶化さないの」
「遊んでない。天罰だ」
「ひぃん……天が下す罰をなぜ麻美が……」
「私が偉いからに決まってんだろ」
「横暴だ! 俺様何様麻美様っ!!」
「二人とも、話を脱線させないで」
いつものやり取りにいつもの通り仲裁に入る秋。
さすがにこの話を逸らせるわけにはいかないので再び話を戻すことに努めた。
「念のために聞くけど、遥は最近女子を妬かせるような言動はしてない?」
「……えーと、あたしはいつでもかばっちにフォーリンラブしてるからなぁ。もしかしたらかばっちのガチ恋勢がっ!?」
「寝言は寝て言え」
「起きてますっ!!」
「どちらかと言うと過激なのは跡部景吾ファンの子達なんだけどね。ほら、遥は今跡部と同じクラスでもあるから」
「なるへそ」
「あとはあいつじゃね? 忍足。あいつ関係の女も面倒なのが多そうだし」
「んぐっ!」
うどんをちゅるんと啜った遥は突然の忍足の名前を聞いて、驚きに喉を詰まらせた。
胸元をドンドンと叩く遥に秋が慌てて水の入ったコップを差し出すと、それを手に取り一気に飲み干した。
「ぶはっ! し、死ぬかと思った……」
「遥、大丈夫?」
「な、なんとか……」
「大袈裟な反応だな。心当たりでもあんのか?」
「いや、心当たりっていうかなんというか……」
「確かに、忍足は遥に好意を寄せてるみたいだしね……」
秋の呟きに遥は冷や汗を流しながらブンブンと勢いよく首を横に振った。
彼女は否定しているが、秋や麻美からしてみると忍足が遥に絡む様子を部活中に何度も目撃している。その言動は誰がどう見ても遥のことを好きだとよく分かるものだった。
「……ねぇ、遥は何も言わないけど、遥と忍足って何かあったの?」
秋の問いかけに遥はドキリとしたが、苦笑いしながら答えた。
「な、何もないよ! 何もない!」
「でも、私の知る限りでは去年は二人とも普通に接してたはずなのに……」
「ほん、とに……何もないんだよ……」
目を逸らしながら躊躇うように否定を続ける遥の姿はどう見ても何もないわけには見えなかった。
「遥……」
「秋、何もないならもういいだろ」
「でも……」
「いつもならあんたが止める役割なんだから私にその役割をさせるな」
麻美の言う通りだった。いつもなら麻美が無理やりにでも遥の口を割ろうとし、秋が宥めるのだが今回はその立場が逆であった。
「ごめんね、麻美。遥も無理やり聞こうとしてごめんね」
「い、いいんだよっ。気にしないさ! あたしと忍足の間には何もないのだ!」
秋はただ本気で遥のことが心配だったのだろう。だから麻美は秋を怒ることはしない。元々彼女には甘いというのもあるが。
しかし、秋の気持ちもよく分かる。むしろ本当はずっと前から問いただしたい話題でもあったのだから。
遥と忍足。この二人に何かあったことは間違いないと麻美も考えていた。
ふしだらな女性関係を築いていた忍足が突然人が変わったかのように遥へ一途なアピールを始めた時期と、その忍足の好意に恐怖でも感じているのか遥が何かと彼を避け出した時期は一緒なのだ。何もないという方がおかしいくらいである。
とはいえ、遥が頑なに口を閉ざそうとする上、触れたくなさそうな雰囲気だったので麻美は仕方ないと思いながらこのときばかりは遥の肩を持つことにした……のだが。
「でも、遥……今度一緒に映画行くんだよね?」
「は?」
避けているはずの相手と映画に行くという話題を耳にし、さすがの麻美も「忍足のこと嫌いなんじゃねーのかよ」という目を遥に向けた。
「いや、あたしは断ったんだ! でも、二人きりじゃないし、岳人も行くって言うから仕方なく……」
つまり押しに負けたということか、と溜め息を吐きながら麻美は頭痛がするとでも言いたげに額に手を当てる。
「……おい、下僕。もし忍足の策略で二人きりになったらどうするつもりだ?」
「うぅ……」
忍足の女たらし案件が過去にある限り、友人である遥にもその毒牙がかかるかもしれない。もう少し危機感を持てと言いつけようとしたところで秋が口を開く。
「大丈夫だよ。私も一緒に映画に行くから」
「え?」
「は?」
「向日に誘われたの。だから当日は私もいるよ」
にっこりと笑う秋に遥はみるみると明るい表情をさせた。
「ほんと!? 秋がいるなら安心だ! 楽しみー!」
「……向日に誘われただと?」
「うん、そうだよ」
(なんか怪しいな……)
「あ。麻美も一緒に行く? 『愛と風とカーテンと』っていう映画なんだけど」
「興味ないからいい」
「えー? 麻美も行こうよー」
「好みじゃないから行く気もない」
自分の好きそうなジャンルなら誘いに乗ったが、さすがに趣味じゃない映画を観に行くほどの優しさは持ち合わせていなかった。
「そっか。残念だけど、遥のことは任せて」
「あぁ」
「……ちょっと大袈裟なのでは?」
「あんたが忍足と変な距離感でいるせいであいつ絡みの女に何かしら狙われる可能性が高くなってんだろうが」
「ぴえん……」
何も言い返せずにただ小さく鳴き声のようなものを呟く遥だった。
(とりあえず注意は促したし、少しは危機感くらい持てるだろ)
まさか映画に行くとは思わなかったが、忍足については秋に丸投げすることに決めた。
麻美が警戒するのは鳳が見たという遥に恨みを持つ女子生徒だ。
彼女の様子は尋常ではなかったとのことなので当分は遥を監視するべきだろうと考えた麻美は結局厄介事が増えたなと胸の中で呟いた。