自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
取り返しがつかなくても諦めない男
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「頼むわ、岳人! この通りやっ」
時を同じくして別のコートで休憩を取る向日は、顔の前で手を合わせるダブルスの相方から懇願を受けていた。
「なんで俺を巻き込むんだよ」
不機嫌そうに忍足に伝えた。なぜなら『遥と映画デートするために岳人をダシに使うてしもうてん。せやから一緒に映画に行ってくれへんか?』と言われたから。
元クラスメイトで悪友のような関係である遥と友人の忍足が映画に行こうが何をしようが勝手ではあるが、自分の名を勝手に使われたあげく、ダシにしたと言われたらいくら仲がいい相手でも向日も頭にくるものがある。
そのため向日は腕を組みながら不服そうに忍足を睨みつけた。
「……遥と、一緒の時間を過ごしたいねん」
正直に一言で理由を語る忍足は藁にもすがる思いだったのか自嘲するような薄ら笑いを見せた。
「自業自得とはいえ、遊びに誘うことすら拒絶されて挽回する余地もないんや。せめてマイナスの関係は解消したいねん」
「……」
いつものポーカーフェイスはどうしたんだよ。そう言ってやろうかと思ったが、忍足は見栄を張ることなく言葉に偽りはなかったので口にするのをやめた。
忍足と遥の関係について向日は知っていた。
関係を終えてすぐに猛アピールを始めた忍足に遥は「忍足をどうにかして!」と相方の向日に苦情を言ったのが始まりだ。
そのときはどういうことか分からず、そのまま忍足に伝えると長々と彼に事情を説明され、同じ男としても軽蔑したくなるような話に向日はめちゃくちゃに引いていた。
とはいえ、遥のおかげと言うべきなのか、忍足のふしだらな女性問題はきっぱりとなくなったのは良かったと思う気持ちもある。
……なぜ、侑士の本気になった相手が遥なのかは一生理解出来ないけど。
そう思いながら「ほんま頼むわ、岳人」と言う男の姿を見て盛大な溜め息を吐き出した。
「ったく、しょーがねぇな。なんか奢れよなー」
「ほんまか? おおきにな。恩に着るわ、岳人」
「今回だけだかんなっ」
「もちろんやって。あれやったら岳人も気になる子おったら連れて来てえぇんやで」
「いねーよ!」
「なんや、ノリの悪いやっちゃな。でももう一人くらい欲しいとこやねんな。遥が当日ドタキャンせぇへんためにも……」
「ドタキャンされる可能性まで考えてんのかよ……」
どんだけ嫌われてんだよ。まぁ、それだけのことはしてるけど。
そんな呆れた視線を忍足に向けていると、相手はもうひとつの頼みを向日に伝えた。
「せやから遥と仲のえぇ麻美か九条さんを誘ってくれへんか?」
「はあ? なんで俺が誘うんだよ。侑士が誘えばいいだろ」
「そんなことしたらまた遥に勘違いされてまうやん」
「すでにやらかしてんだから今更だろ」
「なぁ~頼むわ岳人~。自分だけが頼りなんやって」
「気持ち悪ィ声で言うな! あーくそっ! OKするんじゃなかったぜ!」
一度頼みを聞いたせいで忍足が調子に乗っていると気づいた向日はもう一生こいつの頼みは聞いてやんねぇ! と心に誓った。
「っつーか、赤宮はぜってー無理。そんなの死にに行くようなもんだろ」
「せやったら九条さんか?」
「そうだなー……九条ならまだ誘いやすくはあるけど。っつーか、断られたらもう知らねーからな」
「わかっとるって」
「映画も侑士の奢りなんだよな?」
「そのつもりや。お願いしとる立場やし」
「よし。それで何を観るんだ?」
「『愛と風とカーテンと』ってやつや」
「……」
タイトルを聞いて向日は嫌そうな顔をした。なぜならば『愛と風とカーテンと』とは切なくも甘いラブロマンス邦画である。向日の趣味ではない。
そうだ。そうだった。こいつはそういう映画が好きな奴だった。
今更気づいても遅いが、嫌だと駄々を捏ねるほど子どもではない。ただ不満だけは口にしたい。
「せめて派手なアクション系が良かったぜ……」
「この映画に出とる女優さんの演技がえぇねん」
「あーはいはい。今はそういう語りは聞きたくねーよ」
おそらく語らせたら長くなる。そういうのはせめて映画が終わってから勝手にやってくれと思いながら麻美の怒号による休憩終わりのかけ声が響いた。
(……そもそも、九条が俺の誘いに乗るとは思わねぇけど)
秋とは顔見知りではあるが友人かと問われたらまだそこまでの仲ではない。
彼女のような真面目なタイプは向日の交遊関係で見てもあまりいない存在である。
だから普通の友人と同じように軽い気持ちで遊びに誘っても大丈夫なのか気がかりであった。
むしろそこまで親しいわけではないから引かれる可能性がありそうなので向日は悩む。
そして忍足の頼みを聞き入れたことを再度後悔した。
時を同じくして別のコートで休憩を取る向日は、顔の前で手を合わせるダブルスの相方から懇願を受けていた。
「なんで俺を巻き込むんだよ」
不機嫌そうに忍足に伝えた。なぜなら『遥と映画デートするために岳人をダシに使うてしもうてん。せやから一緒に映画に行ってくれへんか?』と言われたから。
元クラスメイトで悪友のような関係である遥と友人の忍足が映画に行こうが何をしようが勝手ではあるが、自分の名を勝手に使われたあげく、ダシにしたと言われたらいくら仲がいい相手でも向日も頭にくるものがある。
そのため向日は腕を組みながら不服そうに忍足を睨みつけた。
「……遥と、一緒の時間を過ごしたいねん」
正直に一言で理由を語る忍足は藁にもすがる思いだったのか自嘲するような薄ら笑いを見せた。
「自業自得とはいえ、遊びに誘うことすら拒絶されて挽回する余地もないんや。せめてマイナスの関係は解消したいねん」
「……」
いつものポーカーフェイスはどうしたんだよ。そう言ってやろうかと思ったが、忍足は見栄を張ることなく言葉に偽りはなかったので口にするのをやめた。
忍足と遥の関係について向日は知っていた。
関係を終えてすぐに猛アピールを始めた忍足に遥は「忍足をどうにかして!」と相方の向日に苦情を言ったのが始まりだ。
そのときはどういうことか分からず、そのまま忍足に伝えると長々と彼に事情を説明され、同じ男としても軽蔑したくなるような話に向日はめちゃくちゃに引いていた。
とはいえ、遥のおかげと言うべきなのか、忍足のふしだらな女性問題はきっぱりとなくなったのは良かったと思う気持ちもある。
……なぜ、侑士の本気になった相手が遥なのかは一生理解出来ないけど。
そう思いながら「ほんま頼むわ、岳人」と言う男の姿を見て盛大な溜め息を吐き出した。
「ったく、しょーがねぇな。なんか奢れよなー」
「ほんまか? おおきにな。恩に着るわ、岳人」
「今回だけだかんなっ」
「もちろんやって。あれやったら岳人も気になる子おったら連れて来てえぇんやで」
「いねーよ!」
「なんや、ノリの悪いやっちゃな。でももう一人くらい欲しいとこやねんな。遥が当日ドタキャンせぇへんためにも……」
「ドタキャンされる可能性まで考えてんのかよ……」
どんだけ嫌われてんだよ。まぁ、それだけのことはしてるけど。
そんな呆れた視線を忍足に向けていると、相手はもうひとつの頼みを向日に伝えた。
「せやから遥と仲のえぇ麻美か九条さんを誘ってくれへんか?」
「はあ? なんで俺が誘うんだよ。侑士が誘えばいいだろ」
「そんなことしたらまた遥に勘違いされてまうやん」
「すでにやらかしてんだから今更だろ」
「なぁ~頼むわ岳人~。自分だけが頼りなんやって」
「気持ち悪ィ声で言うな! あーくそっ! OKするんじゃなかったぜ!」
一度頼みを聞いたせいで忍足が調子に乗っていると気づいた向日はもう一生こいつの頼みは聞いてやんねぇ! と心に誓った。
「っつーか、赤宮はぜってー無理。そんなの死にに行くようなもんだろ」
「せやったら九条さんか?」
「そうだなー……九条ならまだ誘いやすくはあるけど。っつーか、断られたらもう知らねーからな」
「わかっとるって」
「映画も侑士の奢りなんだよな?」
「そのつもりや。お願いしとる立場やし」
「よし。それで何を観るんだ?」
「『愛と風とカーテンと』ってやつや」
「……」
タイトルを聞いて向日は嫌そうな顔をした。なぜならば『愛と風とカーテンと』とは切なくも甘いラブロマンス邦画である。向日の趣味ではない。
そうだ。そうだった。こいつはそういう映画が好きな奴だった。
今更気づいても遅いが、嫌だと駄々を捏ねるほど子どもではない。ただ不満だけは口にしたい。
「せめて派手なアクション系が良かったぜ……」
「この映画に出とる女優さんの演技がえぇねん」
「あーはいはい。今はそういう語りは聞きたくねーよ」
おそらく語らせたら長くなる。そういうのはせめて映画が終わってから勝手にやってくれと思いながら麻美の怒号による休憩終わりのかけ声が響いた。
(……そもそも、九条が俺の誘いに乗るとは思わねぇけど)
秋とは顔見知りではあるが友人かと問われたらまだそこまでの仲ではない。
彼女のような真面目なタイプは向日の交遊関係で見てもあまりいない存在である。
だから普通の友人と同じように軽い気持ちで遊びに誘っても大丈夫なのか気がかりであった。
むしろそこまで親しいわけではないから引かれる可能性がありそうなので向日は悩む。
そして忍足の頼みを聞き入れたことを再度後悔した。