自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
取り返しがつかなくても諦めない男
主人公名前変換
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麻美は体力がある。運動能力も高い。そのためあちこちの運動部が彼女を欲して乱闘騒ぎになった過去もあるほどに。
マネージャーとなった今はその能力を持て余すのは勿体ないという跡部からの直々な頼みにより、球出し係を担うことになった。
レギュラー以外の部員を相手にするときは返しやすいように球出しをする。
準レギュラー以上の部員を相手にするときは逆に追い詰める勢いで高速の球出しを行う。
麻美としても絶対に打ち返せない球を打ってやると言わんばかりに遠慮がないのでまるで鬼コーチのようだった。
本日の鬼の球出しを一通り終わらせた麻美は水分補給をし、口元を手の甲で拭ってからとある人物の元へ向かう。
いつもより少しばかり動きが悪かったレギュラー、鳳長太郎の元へ。
「鳳。話がある」
休憩中の鳳は同級生である日吉と深刻そうに何か話をしていた様子だったが、麻美はお構いなしに二人の会話に割り込んだ。
「あ……赤宮さん」
「あんたさっきの球出しで全然打ち返せてなかっただろ。私は別に構わないけど、さすがにナメてんのか? ってレベルだろうが。一体どういうつもりだ?」
「話してる途中で割り込んで早々なんですか? あなたが言うんじゃなくて跡部部長に伝えるべきでは?」
「話しかけるなキノコ野郎」
「何度言っても理解を得られないなんてさぞかし残念な頭なんですね?」
「あぁ?」
いつものやり取りを繰り広げ、鼻で笑う日吉を睨んだ麻美が掴みかかろうとしたそのとき、鳳が慌てて口を出す。
「す、すみませんっ! 俺が全部悪いんです! ちょっと考えごとというか、気がかりなことがあって……」
麻美が日吉に手を出さないように理由を話しかけるが、どこか言いづらそうな雰囲気を出していた。
そんな後輩に意識を日吉から鳳へと戻した麻美が腕を組み、一言命令する。
「話せ」
「……あの、もしかしたら聞き間違いの可能性もあるので事実かどうかは分からないんですが……」
「勿体ぶるな。言え」
「鳳、俺に相談するよりこの人の方がまだ適任だろ。一応友人っていう括りだからな」
「なに? このキノコには話せて私には言えない内容なわけ?」
「あなたは一度眼科に行ったらどうですか?」
「視力はいいんだよ、喋るキノコのために誰が行くか」
「はぁ?」
今度は日吉が手を出すのではないかというほど麻美の前に詰め寄る。一触即発。このままでは確実に大変なことになると察した鳳は戸惑いながら悩みの種となる人物の名を口にした。
「あのっ、西成さんのことなんですっ」
「……遥だと?」
なんでそいつの名前が出るんだと言わんばかりの態度で眉間に皺を寄せた麻美に鳳は事情を説明した。
「実はお昼にカフェテリアに向かってる途中でブツブツ呟く女子生徒とすれ違ったんです」
その女子生徒は親指の爪を噛みながら俯き気味に歩いていた。そのため表情は見えなかったが、まるで危なげな呪文でも唱えているのかと思うほど何度も同じ言葉を繰り返していた。
様子がおかしいと思いながらもどこか恐ろしさを抱いた鳳は声をかけるのを躊躇ってしまい、その生徒とすれ違う。
その際、彼女の言葉が彼の耳に入った。
『西成遥……許さない……絶対に』
ぼそりと呟く言葉がまるで呪いのようで鳳は背筋が凍った。
よく分からないけど、ただごとではないと理解しつつもこれを本人に言うべきか悩んだ。小さく呟いていた言葉だし、もしかしたら聞き間違えの可能性だってある。
そうだとしたら遥にも、すれ違った女子にも失礼に当たるだろう。そう思うも「でも本当だったら?」ともしものことを考えると遥に注意を促すべきではと、ああだこうだと悩んでしまい、それが球出しのときにまで影響してしまった。
そして誰かの意見を聞いてみようと日吉にその話をしていたところで麻美が割って入ったというわけである。
そのことを聞いた麻美は軽く溜め息を吐き捨てた。
「分かった。私から奴に話しといてやるからもう気にすんな。っつーか、それくらいで影響受けるようなメンタルでどうすんだ? 少しはそっちも鍛えとけ」
「は、はいっ!」
「……また厄介事を起こさないでくださいよ。ようやく部室荒らしが解決したばかりなんですから」
「それをこっちのせいにするな。勝手に喧嘩売ってくる奴に言いやがれ」
「あの、赤宮さんっ。もし、何か困ったことがあれば俺もお手伝いしますからなんでも言ってください!」
いい人代表とも言える鳳の親切心に麻美と日吉は二人同時に大きな溜め息を吐き出した。
「だったらメンタルをもっと鍛えろ。もうすぐ大会も始まるってのに無様な姿見せんな」
「うっ……」
「鳳。お前、面倒事に首を突っ込むつもりか? 正レギュラーってのはそこまで余裕なんだな?」
「うぅ、そんなつもりじゃ……」
自分に出来ることなら、と提案したつもりが拒絶や嫌味で返ってくるとは思わずしょげてしまう鳳の姿は二人から見れば怒られて落ち込む大型犬にしか見えない。
「まぁ、手伝いはいいけど、また何か気づいたら私に教えてくれたらいい」
「! はいっ」
情報提供だけは許可を出すと、それが鳳にとっては人助けに繋がると考え、パッと明るくなった顔を上げて大きく頷いた。
麻美は思わず「犬……」と口にしそうになる。
「次はちゃんと動けよ」
そう伝えると麻美は二人の後輩の前から立ち去った。
「はい! ありがとうございます!」
(だからなんであんたが偉そうなんだ……)
鳳が嬉しそうな顔をするのと対照的に日吉は不服そうな顔をしていた。
麻美はそんな彼らの視線を気にすることなく、本日何度目かの溜め息をこぼす。
(あのトラブルメーカーめ……今度は何をしでかしやがった?)
マネージャーとなった今はその能力を持て余すのは勿体ないという跡部からの直々な頼みにより、球出し係を担うことになった。
レギュラー以外の部員を相手にするときは返しやすいように球出しをする。
準レギュラー以上の部員を相手にするときは逆に追い詰める勢いで高速の球出しを行う。
麻美としても絶対に打ち返せない球を打ってやると言わんばかりに遠慮がないのでまるで鬼コーチのようだった。
本日の鬼の球出しを一通り終わらせた麻美は水分補給をし、口元を手の甲で拭ってからとある人物の元へ向かう。
いつもより少しばかり動きが悪かったレギュラー、鳳長太郎の元へ。
「鳳。話がある」
休憩中の鳳は同級生である日吉と深刻そうに何か話をしていた様子だったが、麻美はお構いなしに二人の会話に割り込んだ。
「あ……赤宮さん」
「あんたさっきの球出しで全然打ち返せてなかっただろ。私は別に構わないけど、さすがにナメてんのか? ってレベルだろうが。一体どういうつもりだ?」
「話してる途中で割り込んで早々なんですか? あなたが言うんじゃなくて跡部部長に伝えるべきでは?」
「話しかけるなキノコ野郎」
「何度言っても理解を得られないなんてさぞかし残念な頭なんですね?」
「あぁ?」
いつものやり取りを繰り広げ、鼻で笑う日吉を睨んだ麻美が掴みかかろうとしたそのとき、鳳が慌てて口を出す。
「す、すみませんっ! 俺が全部悪いんです! ちょっと考えごとというか、気がかりなことがあって……」
麻美が日吉に手を出さないように理由を話しかけるが、どこか言いづらそうな雰囲気を出していた。
そんな後輩に意識を日吉から鳳へと戻した麻美が腕を組み、一言命令する。
「話せ」
「……あの、もしかしたら聞き間違いの可能性もあるので事実かどうかは分からないんですが……」
「勿体ぶるな。言え」
「鳳、俺に相談するよりこの人の方がまだ適任だろ。一応友人っていう括りだからな」
「なに? このキノコには話せて私には言えない内容なわけ?」
「あなたは一度眼科に行ったらどうですか?」
「視力はいいんだよ、喋るキノコのために誰が行くか」
「はぁ?」
今度は日吉が手を出すのではないかというほど麻美の前に詰め寄る。一触即発。このままでは確実に大変なことになると察した鳳は戸惑いながら悩みの種となる人物の名を口にした。
「あのっ、西成さんのことなんですっ」
「……遥だと?」
なんでそいつの名前が出るんだと言わんばかりの態度で眉間に皺を寄せた麻美に鳳は事情を説明した。
「実はお昼にカフェテリアに向かってる途中でブツブツ呟く女子生徒とすれ違ったんです」
その女子生徒は親指の爪を噛みながら俯き気味に歩いていた。そのため表情は見えなかったが、まるで危なげな呪文でも唱えているのかと思うほど何度も同じ言葉を繰り返していた。
様子がおかしいと思いながらもどこか恐ろしさを抱いた鳳は声をかけるのを躊躇ってしまい、その生徒とすれ違う。
その際、彼女の言葉が彼の耳に入った。
『西成遥……許さない……絶対に』
ぼそりと呟く言葉がまるで呪いのようで鳳は背筋が凍った。
よく分からないけど、ただごとではないと理解しつつもこれを本人に言うべきか悩んだ。小さく呟いていた言葉だし、もしかしたら聞き間違えの可能性だってある。
そうだとしたら遥にも、すれ違った女子にも失礼に当たるだろう。そう思うも「でも本当だったら?」ともしものことを考えると遥に注意を促すべきではと、ああだこうだと悩んでしまい、それが球出しのときにまで影響してしまった。
そして誰かの意見を聞いてみようと日吉にその話をしていたところで麻美が割って入ったというわけである。
そのことを聞いた麻美は軽く溜め息を吐き捨てた。
「分かった。私から奴に話しといてやるからもう気にすんな。っつーか、それくらいで影響受けるようなメンタルでどうすんだ? 少しはそっちも鍛えとけ」
「は、はいっ!」
「……また厄介事を起こさないでくださいよ。ようやく部室荒らしが解決したばかりなんですから」
「それをこっちのせいにするな。勝手に喧嘩売ってくる奴に言いやがれ」
「あの、赤宮さんっ。もし、何か困ったことがあれば俺もお手伝いしますからなんでも言ってください!」
いい人代表とも言える鳳の親切心に麻美と日吉は二人同時に大きな溜め息を吐き出した。
「だったらメンタルをもっと鍛えろ。もうすぐ大会も始まるってのに無様な姿見せんな」
「うっ……」
「鳳。お前、面倒事に首を突っ込むつもりか? 正レギュラーってのはそこまで余裕なんだな?」
「うぅ、そんなつもりじゃ……」
自分に出来ることなら、と提案したつもりが拒絶や嫌味で返ってくるとは思わずしょげてしまう鳳の姿は二人から見れば怒られて落ち込む大型犬にしか見えない。
「まぁ、手伝いはいいけど、また何か気づいたら私に教えてくれたらいい」
「! はいっ」
情報提供だけは許可を出すと、それが鳳にとっては人助けに繋がると考え、パッと明るくなった顔を上げて大きく頷いた。
麻美は思わず「犬……」と口にしそうになる。
「次はちゃんと動けよ」
そう伝えると麻美は二人の後輩の前から立ち去った。
「はい! ありがとうございます!」
(だからなんであんたが偉そうなんだ……)
鳳が嬉しそうな顔をするのと対照的に日吉は不服そうな顔をしていた。
麻美はそんな彼らの視線を気にすることなく、本日何度目かの溜め息をこぼす。
(あのトラブルメーカーめ……今度は何をしでかしやがった?)