自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
取り返しがつかなくても諦めない男
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意見箱から回収した投書を手にして生徒会室に保管するためやって来た秋は先客がいることに気がついた。
「あ、樺地くん」
「……」
生徒会室のパソコン前に座って作業に取り掛かっていた同じ生徒会役員の樺地に声をかけると、彼はぺこりと頭を下げる。そんな樺地の元へ近づき、彼女は画面を見た。
「生徒会新聞の作成だね」
「ウス」
こくりと樺地が頷く。来月発行される生徒会新聞の完成は間もなくだった。
「樺地くんは本当になんでも出来るよね。手先は器用だし、要領も良くて新聞のデザインも凄くいいし」
「ありがとう……ございます」
大きな身体を持つ後輩は本当になんでもこなすので跡部が彼を頼る気持ちがよく分かる。生徒会副会長としての器も間違いなくあるだろう。
しかし、生徒会長である跡部が男子であるため、男女が偏らないためにも副生徒会長は女子でなければならなかった。それで跡部が指名したのは秋である。
もし、そのような決まりがなければおそらく副生徒会長は樺地だったかもしれないと秋は考えていた。
「自分は……九条さんが担当したときの生徒会新聞が読みやすくて、好きなので、参考にさせて……いただいています」
「え? そうなの?」
「ウス」
確かに秋も生徒会新聞を作成したことがある。全校生徒が見てもらえるように色々と試行錯誤を重ねて作ったものなので樺地の言葉はとても嬉しいものだった。
「見やすくて分かりやすい文章に……一緒に掲載する写真も、目を引きます……」
「ふふっ。ありがとう。樺地くんにそう言ってもらえて嬉しいよ」
嬉しそうに笑いながら秋は持っていた投書をファイリングした。次の会議のときにすぐに出せるように。
そういえば、と秋は樺地と二人で話す機会がないことに気づいた。いつも跡部もいることが多いので不思議な感覚である。
ならばと二人でしか話せない話題を振ってみようと彼女は考えた。
「ねぇ、樺地くん。ずっと聞きたかったんだけど、遥の言動で迷惑かけたりしてない?」
遥が樺地に想いを寄せているのは周知の事実。樺地にアタックするまでは浮いた話なんて一度も聞いていなかったし、遥自身からの恋愛事情も聞いたことがなかった。
それがある日突然「あたし、かばっちに惚れました!」と宣言されて、不愉快そうな顔をする麻美とは違い秋は驚きながらも事の経緯を尋ねた。
なんでも泣いていたところでハンカチを出して優しくしてくれたことが切っ掛けとのこと。
じゃあ、なんで泣いていたの? と聞くと「色々あって……」と言いづらそうに目を泳がせていた。
遥の恋は応援したいけど、まさかあそこまでオープンに猪突猛進なアピールをするとは思っていなかったから逆にその想い人に迷惑をかけているのではないかと秋は気掛かりだった。
「いえ……とんでもない、です。良く、していただいてます……」
四六時中無表情を貫いていると言っても過言ではない樺地の答えは本音なのか建前なのか秋には判断が難しい。
跡部なら分かるのかもしれないが、わざわざ彼に頼るのも申し訳ない。それならば本人が迷惑でなさそうならそれを信じることにした。
「それなら良かった。遥は樺地くんのことお気に入りみたいだからちょっと色々と激しいかもしれないけど、少し抑えてほしいときは言っていいからね。直接言いにくいなら私に伝えて。対応するから」
「ウス。ありがとう、ございます……でも、本当に大丈夫です……西成さんは……明るく、楽しい人です……」
(やっぱり樺地くんの表情を読み取るのは難しいかも……)
せめて遥に脈があるのかないのか知りたいところだったが、彼はいつもの表情で答えるので秋には見抜けなかった。
でも樺地は心根の優しい少年だということは秋にも分かることなので、お世辞は言っても嘘は言わないだろう。
(少なくとも遥を嫌ってるわけではないね)
悪い印象を与えていないのならあとは遥の頑張り次第なのだろうけど、彼女の場合頑張るというより頑張りが過ぎる上に愛情表現も大きい。
とにかくアタックやアピールが激しいのでもう少し抑えておくべきなのでは? と秋は思うが、自分も恋愛経験があるわけではないので説得力がないだろう。
出来れば遥のためにも恋が実るような情報でも引き出せたらいいのにと思うけど、なかなかに難しい。
やはりここは直球で聞くべきかなと意を決した秋は樺地にこう尋ねることにした。
「樺地くんは好きなタイプの子とかはいるの?」
「……?」
ゆっくり首を傾げる樺地は無言のままだった。一気に生徒会室が静まり返る。途端に秋は恥ずかしくなった。
そもそも秋はこんなことを聞くような性格ではないので自分らしくないことを尋ねたと若干後悔する。
「あ、ご、ごめんね。プライバシーなことなのに堂々と聞いちゃって……ちょっと気になったというか……」
「……。自分は……そのような質問の答えは、何も持ち合わせていません……すみません」
「謝らなくていいよ。特になしってことだよね? 別にそれは悪いことじゃないんだし、むしろ答えにくい質問だったのに答えてくれてありがとう」
好みのタイプが特にないというのなら決まった相手もいないという意味でもある。つまり遥でも恋人になれる可能性は少なからずあるのだと知り、秋はホッと胸を撫で下ろした。
「……あの、その質問は……今流行っているのでしょうか……?」
「え? ううん。そうじゃないと思うけど、どうして?」
「以前……西成さんにも、聞かれました……」
(……すでに調査済みだったんだね)
行動力が早いというかなんというか。それをもう少し勉学に励んでくれたら一番いいのになと考えながら結局遥のためになるようなことを何も得られなかったと少しだけ落胆してしまう。
「ごめんね……遥も失礼なことを聞いて……」
「いえ……」
樺地はゆっくり首を振ると「ですが……」と言葉を続けた。
「西成さんは……なぜ自分と沢山話をしてくれるのでしょうか……?」
その言葉を聞いた秋は少し固まってしまう。
もしかして彼は遥の愛情アピールに気づいていないというのだろうか? 確かに告白らしい告白はしていないように思えるけど、あそこまで熱心に好意を振り撒いているというのにその意味を知らないだなんて。
鈍感なのか、そのような感情を向けられ慣れていないせいでよく理解していないのか。分かることはただただ樺地が純粋だということだ。
「遥は……樺地くんのことが好きなんだよ……」
「自分も……好きです。跡部さんも、九条さんも、赤宮さんも……みんな、いい人です」
なるほど、これは手強そうだ。これでは遥一人でから回っているだけである。
秋はひっそりと胸の中で遥にエールを送った。
「あ、樺地くん」
「……」
生徒会室のパソコン前に座って作業に取り掛かっていた同じ生徒会役員の樺地に声をかけると、彼はぺこりと頭を下げる。そんな樺地の元へ近づき、彼女は画面を見た。
「生徒会新聞の作成だね」
「ウス」
こくりと樺地が頷く。来月発行される生徒会新聞の完成は間もなくだった。
「樺地くんは本当になんでも出来るよね。手先は器用だし、要領も良くて新聞のデザインも凄くいいし」
「ありがとう……ございます」
大きな身体を持つ後輩は本当になんでもこなすので跡部が彼を頼る気持ちがよく分かる。生徒会副会長としての器も間違いなくあるだろう。
しかし、生徒会長である跡部が男子であるため、男女が偏らないためにも副生徒会長は女子でなければならなかった。それで跡部が指名したのは秋である。
もし、そのような決まりがなければおそらく副生徒会長は樺地だったかもしれないと秋は考えていた。
「自分は……九条さんが担当したときの生徒会新聞が読みやすくて、好きなので、参考にさせて……いただいています」
「え? そうなの?」
「ウス」
確かに秋も生徒会新聞を作成したことがある。全校生徒が見てもらえるように色々と試行錯誤を重ねて作ったものなので樺地の言葉はとても嬉しいものだった。
「見やすくて分かりやすい文章に……一緒に掲載する写真も、目を引きます……」
「ふふっ。ありがとう。樺地くんにそう言ってもらえて嬉しいよ」
嬉しそうに笑いながら秋は持っていた投書をファイリングした。次の会議のときにすぐに出せるように。
そういえば、と秋は樺地と二人で話す機会がないことに気づいた。いつも跡部もいることが多いので不思議な感覚である。
ならばと二人でしか話せない話題を振ってみようと彼女は考えた。
「ねぇ、樺地くん。ずっと聞きたかったんだけど、遥の言動で迷惑かけたりしてない?」
遥が樺地に想いを寄せているのは周知の事実。樺地にアタックするまでは浮いた話なんて一度も聞いていなかったし、遥自身からの恋愛事情も聞いたことがなかった。
それがある日突然「あたし、かばっちに惚れました!」と宣言されて、不愉快そうな顔をする麻美とは違い秋は驚きながらも事の経緯を尋ねた。
なんでも泣いていたところでハンカチを出して優しくしてくれたことが切っ掛けとのこと。
じゃあ、なんで泣いていたの? と聞くと「色々あって……」と言いづらそうに目を泳がせていた。
遥の恋は応援したいけど、まさかあそこまでオープンに猪突猛進なアピールをするとは思っていなかったから逆にその想い人に迷惑をかけているのではないかと秋は気掛かりだった。
「いえ……とんでもない、です。良く、していただいてます……」
四六時中無表情を貫いていると言っても過言ではない樺地の答えは本音なのか建前なのか秋には判断が難しい。
跡部なら分かるのかもしれないが、わざわざ彼に頼るのも申し訳ない。それならば本人が迷惑でなさそうならそれを信じることにした。
「それなら良かった。遥は樺地くんのことお気に入りみたいだからちょっと色々と激しいかもしれないけど、少し抑えてほしいときは言っていいからね。直接言いにくいなら私に伝えて。対応するから」
「ウス。ありがとう、ございます……でも、本当に大丈夫です……西成さんは……明るく、楽しい人です……」
(やっぱり樺地くんの表情を読み取るのは難しいかも……)
せめて遥に脈があるのかないのか知りたいところだったが、彼はいつもの表情で答えるので秋には見抜けなかった。
でも樺地は心根の優しい少年だということは秋にも分かることなので、お世辞は言っても嘘は言わないだろう。
(少なくとも遥を嫌ってるわけではないね)
悪い印象を与えていないのならあとは遥の頑張り次第なのだろうけど、彼女の場合頑張るというより頑張りが過ぎる上に愛情表現も大きい。
とにかくアタックやアピールが激しいのでもう少し抑えておくべきなのでは? と秋は思うが、自分も恋愛経験があるわけではないので説得力がないだろう。
出来れば遥のためにも恋が実るような情報でも引き出せたらいいのにと思うけど、なかなかに難しい。
やはりここは直球で聞くべきかなと意を決した秋は樺地にこう尋ねることにした。
「樺地くんは好きなタイプの子とかはいるの?」
「……?」
ゆっくり首を傾げる樺地は無言のままだった。一気に生徒会室が静まり返る。途端に秋は恥ずかしくなった。
そもそも秋はこんなことを聞くような性格ではないので自分らしくないことを尋ねたと若干後悔する。
「あ、ご、ごめんね。プライバシーなことなのに堂々と聞いちゃって……ちょっと気になったというか……」
「……。自分は……そのような質問の答えは、何も持ち合わせていません……すみません」
「謝らなくていいよ。特になしってことだよね? 別にそれは悪いことじゃないんだし、むしろ答えにくい質問だったのに答えてくれてありがとう」
好みのタイプが特にないというのなら決まった相手もいないという意味でもある。つまり遥でも恋人になれる可能性は少なからずあるのだと知り、秋はホッと胸を撫で下ろした。
「……あの、その質問は……今流行っているのでしょうか……?」
「え? ううん。そうじゃないと思うけど、どうして?」
「以前……西成さんにも、聞かれました……」
(……すでに調査済みだったんだね)
行動力が早いというかなんというか。それをもう少し勉学に励んでくれたら一番いいのになと考えながら結局遥のためになるようなことを何も得られなかったと少しだけ落胆してしまう。
「ごめんね……遥も失礼なことを聞いて……」
「いえ……」
樺地はゆっくり首を振ると「ですが……」と言葉を続けた。
「西成さんは……なぜ自分と沢山話をしてくれるのでしょうか……?」
その言葉を聞いた秋は少し固まってしまう。
もしかして彼は遥の愛情アピールに気づいていないというのだろうか? 確かに告白らしい告白はしていないように思えるけど、あそこまで熱心に好意を振り撒いているというのにその意味を知らないだなんて。
鈍感なのか、そのような感情を向けられ慣れていないせいでよく理解していないのか。分かることはただただ樺地が純粋だということだ。
「遥は……樺地くんのことが好きなんだよ……」
「自分も……好きです。跡部さんも、九条さんも、赤宮さんも……みんな、いい人です」
なるほど、これは手強そうだ。これでは遥一人でから回っているだけである。
秋はひっそりと胸の中で遥にエールを送った。