自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
取り返しがつかなくても諦めない男
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「私達、よりを戻した方がいいと思うの」
(とんでもない現場に遭遇しちゃったなぁぁぁぁ!!)
遥は心の中で叫んだ。
どうしてこうなったのかというと、たったの数分前まで遡る。
教室で友人達と談笑していたのだが、トイレに行きたくなったので席を外し近くのお手洗に駆け込んだ。
しかし珍しく並んでいたので待つくらいなら別のトイレに行こうとあまり人のいなさそうな特別室近くの手洗い場へ向かう。
階段を駆け上がると、途中で誰かの話し声が聞こえて遥は思わず足を止めた。
小さめの声だったので人に聞かれたくない内容かもしれないと思いながらどうするべきかと悩みつつ、ゆっくり段を上がって目的の階へと到着する。
ふと、上の踊り場を見上げたら人影が見えてしまったので条件反射なのかバッと廊下の陰に隠れた。
一瞬見ただけなので確実ではないが二人の生徒がいたと思われる。
一人は女子生徒の後ろ姿だった。もう一人は分からないけど、女子生徒と対面していたからもしかしたらその人物は自分の存在に気づいたのかもしれないと冷や汗をかいた。
そこで冒頭の言葉へと続くわけだ。
(まさかの復縁現場に居合わせる!? しかもとっさにこっちの方に隠れちゃったけどトイレは反対の方だからあっちに行くためには階段の前を通らなきゃいけないわけで……もしそうしてうっかりあたしがいたことがバレると向こうも気まずいだろうし……マズったぞぉ)
遥は廊下の壁に隠れながらああだこうだ考えた。
さすがに復縁の話に水を差すわけにはいかないし、このまま話が終わるのを待つ方が賢明かもしれない。
「……なんでなん?」
もう一人の男子生徒の声が聞こえたが、聞き覚えのある方言と声に遥は「あれ?」と思った。
「だって侑士くん私と付き合ってから他の人と付き合わなくなったでしょ? もしかしたら私のこと気にしてるんじゃないかなって思って」
「あぁ……そういうことかいな。勘違いさせたら堪忍な。別にそういうの理由があるわけちゃうで」
(お し た り だ っ !)
壁に背中をつけながらずりずりと下がりしゃがみ込む。
よりにもよって忍足と前カノの復縁現場だなんてツイてないにもほどがある。
「どうして? そもそも私達喧嘩も何もしてなかったし、悪くない仲だったじゃない?」
(忍足のどこがいいのやら……)
はぁ、と小さく溜め息をつく。
昔は普通に友人として接してたはずなのにどうしてこんなことになったのだろう。
思えば忍足の『恋人ごっこ』を受け入れたせいである。
いつか誰かと付き合うための練習として、という名目で始めたものではあるけど忍足の女性関係のだらしなさは知っていた。
だからお互いに本気の恋愛にはならないだろうし、そもそも友人相手に手を出すほど彼女に飢えてるとは思っていなかった。
練習とはいえ学校で付き合ってるとは思われたくないので実際に恋人扱いをするのは学校以外で、と決めておく。
実際に忍足と付き合ってみるとやはり相手は手馴れているのがよく分かるし、上手くリードされていると自覚する。
さり気なく手を繋ぎ、並んで歩くときも当然のように道路側を立つ。ちょっと疲れてきたなと感じたらすぐにそれを察して休憩を取ってくれる。
恐らく彼氏としては完璧だったのかもしれない。その証拠に遥は何度か忍足の言動に胸の高鳴りを覚えていた。
この関係も悪くないかも、と思ったその矢先。
忍足との接触が目に見えて減ってきたのだ。
遊びに行けないのは残念だけど忙しいのだろう。それなら仕方ないなぁとぼんやり考えていたが、行く先々で彼が他の女子と仲良くイチャついてる現場を目撃するので遥は薄々感じていた。
(……なるほど、結局あたしもあいつの遊び道具だったというわけか)
あれだ。いわゆる趣向を変えてみたというやつだ。友人であるあたしのためという善意だと思ったのに結局新しい子が出来るまでの暇潰しだったのだろう。だったら最初からそう言って終わりにすれば良かったのに。なんだか裏切られた気がした。
現場を見れば見るほど虚しくなってきて感情がぐちゃぐちゃになっていく。
誰にも会いたくなくて人の来なさそうな裏庭へと逃げた遥は整理出来ない感情を落ち着かせようとその場でしゃがみ込む。
「うっ……うぅ……ぐすっ……」
ただのごっこ遊びだから表向きで忍足が誰といようと全く問題ないのだからこんなことを考えるのはおこがましい。
だけど、酷く傷ついた自分がいることを遥は自覚してしまう。
(あたし……忍足のこと、好きになっちゃってたのかも……)
だからこんなに胸が苦しくて泣きたくなるんだ。
そう理解したと同時に新しい恋人と仲良くしてる様子を思い出す。腹立たしくて悲しくて、楽しかった思い出は全部辛いものに変わっていく。
もう自分から終わりにするように伝えようと決心し、涙を手で拭っていたら目の前にハンカチを差し出された。
「?」
「……使って、ください……」
それが遥と樺地の出会いだった。
「……」
嫌なことを思い出したと同時に人生の転機ともいえる出来事も思い出した遥はにへっと顔を緩ませていた。
「どうしてなの!? 私の何が不満なのっ!?」
びくり。と遥の肩が跳ねた。どうやら女子生徒が忍足の言葉に納得出来ずに声を荒らげたようだ。
「何度も言うとるけど、自分は何も悪ないで。俺の気持ちの問題や。それに一番初めにも言うたやろ? 互いに本気にはならん後腐れのない関係しか築けへんって」
「じゃあどうして新しいお相手が今も出来ないの? 私のことを少しでも本気になったからじゃないの? だから今度は本気で私と付き合って━━」
「俺、好きな子おんねん」
(……あたしじゃありませんように)
忍足との関係を終わらせて以来、忍足が何かとアピールをしてくる。
(きっとあたしが関係を絶ったことで「自分おもろいやっちゃな?」という漫画とかでよくある感じに興味を抱かせたのだろうな。だからあいつもあたしを落とそうと躍起になってるんだ)
頭を悩ませる種のひとつとなる存在である忍足。また溜め息をひとつ漏らすと女子生徒がバタバタと階段を駆け下りたのか、足音が聞こえてきた。
終わったのかな? と思いつつもう少ししゃがみ込みながら息を殺すように待つことにする。
「いつまで隠れんぼしとるん?」
「ヒィッ!?」
すると音もなく忍足が遥の元へとやって来たため、心臓が飛び出るくらいの驚きを見せた。
「な、な、なんでっ!?」
「こっちに逃げるのが見えたからなぁ。でもちょうど良かったわ」
やはり見えていたのか。不覚。
うむむ、と小さく唸っていると突然目の前に紙切れを差し出された。よく見れば映画の前売りチケットのようだ。
「えっ」
「今度の休みに映画でも行かへん?」
「え、誰と?」
「俺と二人」
「嫌なのだが?」
「そないあからさまに嫌な顔せんでも……いや、嘘。嘘やって。岳人も一緒やし、もしかしたら岳人も友達誘うかもしれんから二人きりやない。ほんまやからっ、な?」
必死さが少しばかり感じられた。忍足と二人きりじゃないとしても彼と遊ぶのは恋人ごっこ以来である。
正直友人としても接したくないので気が進まないが友人であり悪友でもある岳人と一緒ならまだマシかなとも考えた。
「岳人と一緒なら……」
渋々チケットを受け取ると、どこかホッとした表情で忍足は「おおきにな」と礼を告げる。
その様子を遠巻きではあるが、先程の女子生徒が覗き見していたことに二人は気づかなかった。
(とんでもない現場に遭遇しちゃったなぁぁぁぁ!!)
遥は心の中で叫んだ。
どうしてこうなったのかというと、たったの数分前まで遡る。
教室で友人達と談笑していたのだが、トイレに行きたくなったので席を外し近くのお手洗に駆け込んだ。
しかし珍しく並んでいたので待つくらいなら別のトイレに行こうとあまり人のいなさそうな特別室近くの手洗い場へ向かう。
階段を駆け上がると、途中で誰かの話し声が聞こえて遥は思わず足を止めた。
小さめの声だったので人に聞かれたくない内容かもしれないと思いながらどうするべきかと悩みつつ、ゆっくり段を上がって目的の階へと到着する。
ふと、上の踊り場を見上げたら人影が見えてしまったので条件反射なのかバッと廊下の陰に隠れた。
一瞬見ただけなので確実ではないが二人の生徒がいたと思われる。
一人は女子生徒の後ろ姿だった。もう一人は分からないけど、女子生徒と対面していたからもしかしたらその人物は自分の存在に気づいたのかもしれないと冷や汗をかいた。
そこで冒頭の言葉へと続くわけだ。
(まさかの復縁現場に居合わせる!? しかもとっさにこっちの方に隠れちゃったけどトイレは反対の方だからあっちに行くためには階段の前を通らなきゃいけないわけで……もしそうしてうっかりあたしがいたことがバレると向こうも気まずいだろうし……マズったぞぉ)
遥は廊下の壁に隠れながらああだこうだ考えた。
さすがに復縁の話に水を差すわけにはいかないし、このまま話が終わるのを待つ方が賢明かもしれない。
「……なんでなん?」
もう一人の男子生徒の声が聞こえたが、聞き覚えのある方言と声に遥は「あれ?」と思った。
「だって侑士くん私と付き合ってから他の人と付き合わなくなったでしょ? もしかしたら私のこと気にしてるんじゃないかなって思って」
「あぁ……そういうことかいな。勘違いさせたら堪忍な。別にそういうの理由があるわけちゃうで」
(お し た り だ っ !)
壁に背中をつけながらずりずりと下がりしゃがみ込む。
よりにもよって忍足と前カノの復縁現場だなんてツイてないにもほどがある。
「どうして? そもそも私達喧嘩も何もしてなかったし、悪くない仲だったじゃない?」
(忍足のどこがいいのやら……)
はぁ、と小さく溜め息をつく。
昔は普通に友人として接してたはずなのにどうしてこんなことになったのだろう。
思えば忍足の『恋人ごっこ』を受け入れたせいである。
いつか誰かと付き合うための練習として、という名目で始めたものではあるけど忍足の女性関係のだらしなさは知っていた。
だからお互いに本気の恋愛にはならないだろうし、そもそも友人相手に手を出すほど彼女に飢えてるとは思っていなかった。
練習とはいえ学校で付き合ってるとは思われたくないので実際に恋人扱いをするのは学校以外で、と決めておく。
実際に忍足と付き合ってみるとやはり相手は手馴れているのがよく分かるし、上手くリードされていると自覚する。
さり気なく手を繋ぎ、並んで歩くときも当然のように道路側を立つ。ちょっと疲れてきたなと感じたらすぐにそれを察して休憩を取ってくれる。
恐らく彼氏としては完璧だったのかもしれない。その証拠に遥は何度か忍足の言動に胸の高鳴りを覚えていた。
この関係も悪くないかも、と思ったその矢先。
忍足との接触が目に見えて減ってきたのだ。
遊びに行けないのは残念だけど忙しいのだろう。それなら仕方ないなぁとぼんやり考えていたが、行く先々で彼が他の女子と仲良くイチャついてる現場を目撃するので遥は薄々感じていた。
(……なるほど、結局あたしもあいつの遊び道具だったというわけか)
あれだ。いわゆる趣向を変えてみたというやつだ。友人であるあたしのためという善意だと思ったのに結局新しい子が出来るまでの暇潰しだったのだろう。だったら最初からそう言って終わりにすれば良かったのに。なんだか裏切られた気がした。
現場を見れば見るほど虚しくなってきて感情がぐちゃぐちゃになっていく。
誰にも会いたくなくて人の来なさそうな裏庭へと逃げた遥は整理出来ない感情を落ち着かせようとその場でしゃがみ込む。
「うっ……うぅ……ぐすっ……」
ただのごっこ遊びだから表向きで忍足が誰といようと全く問題ないのだからこんなことを考えるのはおこがましい。
だけど、酷く傷ついた自分がいることを遥は自覚してしまう。
(あたし……忍足のこと、好きになっちゃってたのかも……)
だからこんなに胸が苦しくて泣きたくなるんだ。
そう理解したと同時に新しい恋人と仲良くしてる様子を思い出す。腹立たしくて悲しくて、楽しかった思い出は全部辛いものに変わっていく。
もう自分から終わりにするように伝えようと決心し、涙を手で拭っていたら目の前にハンカチを差し出された。
「?」
「……使って、ください……」
それが遥と樺地の出会いだった。
「……」
嫌なことを思い出したと同時に人生の転機ともいえる出来事も思い出した遥はにへっと顔を緩ませていた。
「どうしてなの!? 私の何が不満なのっ!?」
びくり。と遥の肩が跳ねた。どうやら女子生徒が忍足の言葉に納得出来ずに声を荒らげたようだ。
「何度も言うとるけど、自分は何も悪ないで。俺の気持ちの問題や。それに一番初めにも言うたやろ? 互いに本気にはならん後腐れのない関係しか築けへんって」
「じゃあどうして新しいお相手が今も出来ないの? 私のことを少しでも本気になったからじゃないの? だから今度は本気で私と付き合って━━」
「俺、好きな子おんねん」
(……あたしじゃありませんように)
忍足との関係を終わらせて以来、忍足が何かとアピールをしてくる。
(きっとあたしが関係を絶ったことで「自分おもろいやっちゃな?」という漫画とかでよくある感じに興味を抱かせたのだろうな。だからあいつもあたしを落とそうと躍起になってるんだ)
頭を悩ませる種のひとつとなる存在である忍足。また溜め息をひとつ漏らすと女子生徒がバタバタと階段を駆け下りたのか、足音が聞こえてきた。
終わったのかな? と思いつつもう少ししゃがみ込みながら息を殺すように待つことにする。
「いつまで隠れんぼしとるん?」
「ヒィッ!?」
すると音もなく忍足が遥の元へとやって来たため、心臓が飛び出るくらいの驚きを見せた。
「な、な、なんでっ!?」
「こっちに逃げるのが見えたからなぁ。でもちょうど良かったわ」
やはり見えていたのか。不覚。
うむむ、と小さく唸っていると突然目の前に紙切れを差し出された。よく見れば映画の前売りチケットのようだ。
「えっ」
「今度の休みに映画でも行かへん?」
「え、誰と?」
「俺と二人」
「嫌なのだが?」
「そないあからさまに嫌な顔せんでも……いや、嘘。嘘やって。岳人も一緒やし、もしかしたら岳人も友達誘うかもしれんから二人きりやない。ほんまやからっ、な?」
必死さが少しばかり感じられた。忍足と二人きりじゃないとしても彼と遊ぶのは恋人ごっこ以来である。
正直友人としても接したくないので気が進まないが友人であり悪友でもある岳人と一緒ならまだマシかなとも考えた。
「岳人と一緒なら……」
渋々チケットを受け取ると、どこかホッとした表情で忍足は「おおきにな」と礼を告げる。
その様子を遠巻きではあるが、先程の女子生徒が覗き見していたことに二人は気づかなかった。