自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
取り返しがつかなくても諦めない男
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例えるなら彼女は太陽だ。眩しいくらいに明るくて、その光を求めるかのように彼女の周りには絶えず人が集う。もちろん彼女の性格あってのものだろう。
コミュニケーション力が高いが、どこか抜けていてたまにとんちんかんなことも言い出す。しかしそれが愛嬌あっていいと言う人間も少なくはない。
西成遥はいわゆる陽キャと呼ばれる人種である。
(今日も遥は人気者やなぁ……)
用があって三年A組のクラスへとやって来た忍足は入口を覗き、目的の人物を探した。
いや、探すまでもなくすぐ見つかったのだが、同級生に囲まれて和気あいあいと話をしている目的の人物こと遥を見て彼は「さて、どうしたもんかな」と考える。
ポケットには映画のチケットがあり、今度の休みにでも一緒にどうや? とお誘いするためであった。しかしその誘いたい相手が沢山の生徒と談笑をしているので入り込めない。
あの輪の中に入って誘うほど空気が読めない男とは思われたくないし、元々この誘いを飲んでくれる確率は極めて低いと考えているため、他人に誘いを断られるのを見られたくはない。
(……前はよう遊んでくれてんけどなぁ)
彼の言う前とは昨年のこと。
忍足と遥が初めて顔を合わせたのは二年の頃だ。当時、彼女と同じクラスだった向日と遥は良くも悪くも友達という関係で席も隣同士だった。
そんなある日、向日のクラスに訪れた忍足が親しげに話をする二人を見つけてこう声をかけた。
「えっ。岳人彼女出来たん?」
「「それはない」」
向日と遥が同時に否定する。めっちゃ仲えぇやんと忍足も思わずにはいられなかった。
「多分友人」として紹介された遥だったが、そのときは軽く初めましてと挨拶を交わした程度。
その後、向日のクラスに遊びに行く度に遥と会話をすることも多くなり、忍足も友人と呼べるくらいの関係を築いた。
当時、付き合っていた相手を飽きたら取っかえ引っ変えしていた忍足は遥には惹かれなかった。正直に言えば好みではなかったから。だからなのか、友人として接する分にはとても楽しかったし、遥もそういう目で見ていないので気楽ではあった。
他の友人達と一緒に遊びに行くことも少なくはなかったし、友達として同じ時を過ごせば過ごすほど忍足の中である欲求が生まれた。
もっと俺に笑いかけてくれたらえぇのに。もっと一緒に過ごせたらえぇのに。もっと俺と話してくれたらえぇのに。
その欲求がおかしいと気づいたときにはもう遅かった。どうしようもなかった。止められなかった。
ようやくそれが映画や本でよく見る恋に落ちたあとの気持ちだということに忍足は初めて知った。
恋を理解すると今まで付き合っていた相手との関係は全く恋愛感情なんてなかったことがよく分かる。
どの相手も見た目は好みだったのにすぐに飽きてしまった。それもそのはず本当に恋愛として育んでいなかったからだ。
自覚すると遥に対する欲求はさらに増してしまう。それならばと忍足はすぐに行動に出た。
「え? 恋人として付き合う? あたしと忍足が?」
「ほら、遥って誰とも付き合ったことないやん? そのための練習相手として俺とかどないやろう思うて」
「つまり、恋人ごっこってこと?」
「そういうことやな」
告白━━ではなかった。
忍足の女癖の悪さは遥もとうの昔に知っているので告白したところで呆れられ、友人という関係さえもなくなってしまうと恐れた結果である。
素直に告白出来るほどの勇気もなければ信用される自信もなかった。
だったら恋人ごっこという疑似恋愛を通しつつ、こちらに意識を向けさせよう。そう考えた忍足なりの作戦だった。
「えー……でも好きでもないのに付き合うってのはちょっとなぁ。いつものように他の子と遊びなよー」
「俺のためやなく遥のためやって。何事も経験やと思ってくれたらえぇやん。仮に遥が誰かと付き合うようになってグダグダしたら困るやろ? そのための勉強ってことで、な?」
「うーん……ピンとこないけどもし彼氏が出来て初デートで失敗したら嫌だもんね。……じゃあ、みんなに内緒でってことなら……いい、のかな?」
その言葉を聞いて忍足は心の中で小さくガッツポーズをした。
今はまだそれでいい。恋人ごっことはいえ執着してしまうほどの相手を手に入れたのだ。いずれ本当の恋仲にさせるつもりだからきっかけさえ出来たらそれでいい。
こうして忍足は遥相手に恋人の真似事をするようになった。
しかし遥の要望で周りには内緒で、という誓約があるため学校では恋人のように振る舞えないので非常に歯痒いことである。
それでも忍足は休日を利用してデートをしたり、手を繋いでみたり、恋人らしいことを少しずつ行っていく。
忍足から見ても遥も満更じゃない様子だった。慣れないことに戸惑いながらも頬を赤らめてはにかむ姿はポーカーフェイスと言われた表情を崩されてしまいそうな破壊力さえあった。
本当の恋人になるのも時間の問題だろう。そう思った矢先、忍足は取り返しのつかないことをしでかす。
最初はとても些細な理由だった。嫉妬に駆られる遥が見たい。そう思ったのが始まりだった。
少しでも自身と同じような執着を遥にもしてほしい。その考えの結果、忍足はわざと遥の前で他の女子とイチャついてみることにした。
取っかえ引っ変え付き合っていた子達はみんな、他の女子と二人で話をしていただけで妬いていた。
あの頃はヤキモチを焼くやなんて面倒やなぁと思っていたけど、今では妬かせたくて妬かせたくて仕方ない。
けれど遥の反応は非常に冷めていた。見せつけるように他の子とスキンシップを取ってみたり、遥との距離を置いてみたり、何をやっても遥からのアクションもなければ反応もない。
おかしいなと思ったが、それらが逆効果だと気づいたのは恋人ごっこ開始から二ヶ月後、遥から疑似恋愛関係の停止を求められたときだった。
「え? なんやて?」
「だからこのお付き合いもどきをもうやめよっかって話。忍足も飽きてきてるでしょ? だからもうこっちはいいから他の子と遊びなよ」
「俺は別に飽きたわけやなくて……」
妬いてほしいから、なんて言えたらどれだけ気が楽だろうか。しかしそう言えるわけはないので言い淀む。
「それに忍足といるの面白くないし。あたしには忍足とは合わないんだよね」
淡々と話す遥の言葉が胸に突き刺さる。
そこでようやく自分の非に気づくがすでに手遅れだった。
忍足の経験上、これはもう駄目な展開だと言うことも分かりきっていたが、それで諦めるような執着心ならばとっくに飽きて自ら終わりにしていただろう。
結局、それ以上は何を言っても言い訳になってしまうと思い、彼女の望みを受け入れた。
恋人ごっこすらもなくなってしまい、人としての信用も得られなくなってしまい、自業自得とはいえあまりにも愚かなことをしたと思う。
(……思い出したらめっちゃしんどいわ)
後悔でしかない遥との苦い思い出が蘇り、忍足の心臓が痛む。
そんな経験を経て以降、忍足は女子に手を出すのをきっぱりやめて遥にアプローチを始める日々を送る。
しかし失われた信用を取り戻すのは難しく、避けられるばかり。
それだけでなく遥に好きな相手も出来てしまったので彼女と結ばれるのがさらに遠のいてしまった。
(少し人減ってきたな……そろそろ呼び出してもえぇやろ)
やらかした過ちを思い出していたら教室にいる遥の周りにいた生徒が少々減っていることに気づく。
数える程の人数になったのであれくらいなら遥を呼んでも許されるだろう。そう思って入口から彼女の名を呼ぼうとしたとき。
「侑士くん。ちょっといいかな?」
背後から自分を呼ぶ声が聞こえた。
せっかくデートに誘おうとしたとこやったのに……と思うも顔には出さない忍足は呼ばれた方へと振り返る。そこには同学年の女子生徒が立っていた。
軽くウェーブがかかった長い茶髪。妖艶に微笑む表情にモデルのようなスタイルの美女。
「……なんや?」
「少し二人だけで話がしたいの。そんなに時間は取らせないから」
ね? とお願いをされたが、二人で話がしたい時点で人前で出来ない話なのは分かりきっていたし、時間がかからないわけがない。
それより何よりその女子生徒はかつて遥を妬かせたいために利用した子だった。
コミュニケーション力が高いが、どこか抜けていてたまにとんちんかんなことも言い出す。しかしそれが愛嬌あっていいと言う人間も少なくはない。
西成遥はいわゆる陽キャと呼ばれる人種である。
(今日も遥は人気者やなぁ……)
用があって三年A組のクラスへとやって来た忍足は入口を覗き、目的の人物を探した。
いや、探すまでもなくすぐ見つかったのだが、同級生に囲まれて和気あいあいと話をしている目的の人物こと遥を見て彼は「さて、どうしたもんかな」と考える。
ポケットには映画のチケットがあり、今度の休みにでも一緒にどうや? とお誘いするためであった。しかしその誘いたい相手が沢山の生徒と談笑をしているので入り込めない。
あの輪の中に入って誘うほど空気が読めない男とは思われたくないし、元々この誘いを飲んでくれる確率は極めて低いと考えているため、他人に誘いを断られるのを見られたくはない。
(……前はよう遊んでくれてんけどなぁ)
彼の言う前とは昨年のこと。
忍足と遥が初めて顔を合わせたのは二年の頃だ。当時、彼女と同じクラスだった向日と遥は良くも悪くも友達という関係で席も隣同士だった。
そんなある日、向日のクラスに訪れた忍足が親しげに話をする二人を見つけてこう声をかけた。
「えっ。岳人彼女出来たん?」
「「それはない」」
向日と遥が同時に否定する。めっちゃ仲えぇやんと忍足も思わずにはいられなかった。
「多分友人」として紹介された遥だったが、そのときは軽く初めましてと挨拶を交わした程度。
その後、向日のクラスに遊びに行く度に遥と会話をすることも多くなり、忍足も友人と呼べるくらいの関係を築いた。
当時、付き合っていた相手を飽きたら取っかえ引っ変えしていた忍足は遥には惹かれなかった。正直に言えば好みではなかったから。だからなのか、友人として接する分にはとても楽しかったし、遥もそういう目で見ていないので気楽ではあった。
他の友人達と一緒に遊びに行くことも少なくはなかったし、友達として同じ時を過ごせば過ごすほど忍足の中である欲求が生まれた。
もっと俺に笑いかけてくれたらえぇのに。もっと一緒に過ごせたらえぇのに。もっと俺と話してくれたらえぇのに。
その欲求がおかしいと気づいたときにはもう遅かった。どうしようもなかった。止められなかった。
ようやくそれが映画や本でよく見る恋に落ちたあとの気持ちだということに忍足は初めて知った。
恋を理解すると今まで付き合っていた相手との関係は全く恋愛感情なんてなかったことがよく分かる。
どの相手も見た目は好みだったのにすぐに飽きてしまった。それもそのはず本当に恋愛として育んでいなかったからだ。
自覚すると遥に対する欲求はさらに増してしまう。それならばと忍足はすぐに行動に出た。
「え? 恋人として付き合う? あたしと忍足が?」
「ほら、遥って誰とも付き合ったことないやん? そのための練習相手として俺とかどないやろう思うて」
「つまり、恋人ごっこってこと?」
「そういうことやな」
告白━━ではなかった。
忍足の女癖の悪さは遥もとうの昔に知っているので告白したところで呆れられ、友人という関係さえもなくなってしまうと恐れた結果である。
素直に告白出来るほどの勇気もなければ信用される自信もなかった。
だったら恋人ごっこという疑似恋愛を通しつつ、こちらに意識を向けさせよう。そう考えた忍足なりの作戦だった。
「えー……でも好きでもないのに付き合うってのはちょっとなぁ。いつものように他の子と遊びなよー」
「俺のためやなく遥のためやって。何事も経験やと思ってくれたらえぇやん。仮に遥が誰かと付き合うようになってグダグダしたら困るやろ? そのための勉強ってことで、な?」
「うーん……ピンとこないけどもし彼氏が出来て初デートで失敗したら嫌だもんね。……じゃあ、みんなに内緒でってことなら……いい、のかな?」
その言葉を聞いて忍足は心の中で小さくガッツポーズをした。
今はまだそれでいい。恋人ごっことはいえ執着してしまうほどの相手を手に入れたのだ。いずれ本当の恋仲にさせるつもりだからきっかけさえ出来たらそれでいい。
こうして忍足は遥相手に恋人の真似事をするようになった。
しかし遥の要望で周りには内緒で、という誓約があるため学校では恋人のように振る舞えないので非常に歯痒いことである。
それでも忍足は休日を利用してデートをしたり、手を繋いでみたり、恋人らしいことを少しずつ行っていく。
忍足から見ても遥も満更じゃない様子だった。慣れないことに戸惑いながらも頬を赤らめてはにかむ姿はポーカーフェイスと言われた表情を崩されてしまいそうな破壊力さえあった。
本当の恋人になるのも時間の問題だろう。そう思った矢先、忍足は取り返しのつかないことをしでかす。
最初はとても些細な理由だった。嫉妬に駆られる遥が見たい。そう思ったのが始まりだった。
少しでも自身と同じような執着を遥にもしてほしい。その考えの結果、忍足はわざと遥の前で他の女子とイチャついてみることにした。
取っかえ引っ変え付き合っていた子達はみんな、他の女子と二人で話をしていただけで妬いていた。
あの頃はヤキモチを焼くやなんて面倒やなぁと思っていたけど、今では妬かせたくて妬かせたくて仕方ない。
けれど遥の反応は非常に冷めていた。見せつけるように他の子とスキンシップを取ってみたり、遥との距離を置いてみたり、何をやっても遥からのアクションもなければ反応もない。
おかしいなと思ったが、それらが逆効果だと気づいたのは恋人ごっこ開始から二ヶ月後、遥から疑似恋愛関係の停止を求められたときだった。
「え? なんやて?」
「だからこのお付き合いもどきをもうやめよっかって話。忍足も飽きてきてるでしょ? だからもうこっちはいいから他の子と遊びなよ」
「俺は別に飽きたわけやなくて……」
妬いてほしいから、なんて言えたらどれだけ気が楽だろうか。しかしそう言えるわけはないので言い淀む。
「それに忍足といるの面白くないし。あたしには忍足とは合わないんだよね」
淡々と話す遥の言葉が胸に突き刺さる。
そこでようやく自分の非に気づくがすでに手遅れだった。
忍足の経験上、これはもう駄目な展開だと言うことも分かりきっていたが、それで諦めるような執着心ならばとっくに飽きて自ら終わりにしていただろう。
結局、それ以上は何を言っても言い訳になってしまうと思い、彼女の望みを受け入れた。
恋人ごっこすらもなくなってしまい、人としての信用も得られなくなってしまい、自業自得とはいえあまりにも愚かなことをしたと思う。
(……思い出したらめっちゃしんどいわ)
後悔でしかない遥との苦い思い出が蘇り、忍足の心臓が痛む。
そんな経験を経て以降、忍足は女子に手を出すのをきっぱりやめて遥にアプローチを始める日々を送る。
しかし失われた信用を取り戻すのは難しく、避けられるばかり。
それだけでなく遥に好きな相手も出来てしまったので彼女と結ばれるのがさらに遠のいてしまった。
(少し人減ってきたな……そろそろ呼び出してもえぇやろ)
やらかした過ちを思い出していたら教室にいる遥の周りにいた生徒が少々減っていることに気づく。
数える程の人数になったのであれくらいなら遥を呼んでも許されるだろう。そう思って入口から彼女の名を呼ぼうとしたとき。
「侑士くん。ちょっといいかな?」
背後から自分を呼ぶ声が聞こえた。
せっかくデートに誘おうとしたとこやったのに……と思うも顔には出さない忍足は呼ばれた方へと振り返る。そこには同学年の女子生徒が立っていた。
軽くウェーブがかかった長い茶髪。妖艶に微笑む表情にモデルのようなスタイルの美女。
「……なんや?」
「少し二人だけで話がしたいの。そんなに時間は取らせないから」
ね? とお願いをされたが、二人で話がしたい時点で人前で出来ない話なのは分かりきっていたし、時間がかからないわけがない。
それより何よりその女子生徒はかつて遥を妬かせたいために利用した子だった。