自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
恋を霞ませた魔法使い
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芥川と秋は一年の頃は互いにその存在を知っていた仲だった。
芥川と麻美が当時同じクラスだったため、秋が麻美の教室に行くと必ず机に突っ伏して寝てるか、麻美に叩き起されるか、の姿を多く見ていたので実際に会話を交わすことは少なかったけど、二年になってから話をする機会が多くなる。
麻美や宍戸を通じて二人は知り合い、友人まで発展するのはそう時間はかからなかった。
芥川にとって秋は甘やかしてくれる一人だったが、寝てる所を見つかる度に優しく起こしてくれたり、面倒を見てくれる彼女に芥川は交流をしていく内に惹かれていった。
一緒にいるのが心地良くて、雲に包まれるような優しさはずっと自分にだけ向けて欲しいと思っていたが、秋の性格上それは無理なんだろうなと考えながら胸に秘める独占欲は消せなかった。
そんなある日だった。制服が冬用に変わったばかりの時期、秋と一緒の時間を過ごしたいため、芥川は彼女に宿題を教えてとねだって放課後二人だけの時間を作ってもらったときのこと。
秋の教え方は的確で上手く、理解するのに時間はかからなかったので宿題はあっという間に終わってしまった。
「秋って凄いよな~。教え方完璧だCー!」
「そんなことないよ。ジローがしっかり勉強に向き合ってくれたからジローが凄いんだよ」
褒めても謙遜する秋に「そんなことないのに」と口にする。秋だからちゃんと話を聞くだけであって秋以外に教えてもらってもちんぷんかんぷんだろうし、眠気に襲われる可能性が大いにあった。
「秋に知らないことってないんじゃないかな?」
「そんなことないよ。私もまだまだ知らないことはいっぱいあるんだし」
「え~? 例えば?」
「人の心理的な行動とか?」
「難しそ~……」
「だよね。……実はね、私も今分からない気持ちがあって……」
「分からない気持ち?」
そんな感情の知らないことロボットみたいなことを言うなんて珍しい。秋に分からない気持ちなんてあるのだろうか。
そう不思議に思った芥川が秋の言葉を繰り返すと、彼女は少し躊躇いながらも話をした。
「……あのね、初めて会ったときが凄く衝撃的だったのか、その人に会う度に動悸がするの」
ぞわり、と胸騒ぎを覚えた芥川は嫌な予感を抱いた。
「それ……ってさ、その人が怖いとか?」
「ううん。恐怖とかじゃないの。とても頼りになるし、格好いいなって思うくらいだから。それで私なりに色々考えたんだけど……私、多分その人のことが好きなんじゃないかなって」
芥川が抱いた胸騒ぎは気のせいではなかった。少し頬を染めながら語る秋はその感情がなければ「可愛いなぁ~」って思うだけで終わっただろう。
しかも秋なりにその答えをもう出している。そんな彼女に芥川は胸に秘めておいた独占欲が黒く渦巻いて広がっていくのを感じた。
「……その相手って俺の知ってる奴?」
「え、うん……そうだね、ジローも知ってるよ」
「誰?」
どうしても知りたかった。知ってる相手なんて言われたら聞かずにはいられない。
しかし、秋は困り顔で「えっと……」と、口ごもっていた。さすがに好いている人物を簡単には教えてくれない様子。
「秋だってまだ恋なのか判断出来てないんでしょ? だったら俺も考えるから教えてよ。誰も言わないし!」
それらしい理由を告げて秋の口を割ろうとする。秋もその言葉を信じて少し考えたあと、小さく呟いた。
「向日……なの」
名前を口にした途端、淡く染っていた秋の顔はさらに赤く染まっていき、もはや答えなど分かりきっていた。
同時に芥川は胸が痛み、絶望を覚える。ズキズキと痛くて、初めて好きになった相手のことでこんなにも胸が痛むとは思わなかった。
(……顔に出しちゃダメだ)
俯いてその表情を秋に見せないようにする。秋といるんだから楽しい気持ちにならなきゃと無理やり感情をコントロールさせようとしたが、そんな芥川の様子に秋は心配になった。
「ジロー……? 大丈夫? 眠くなっちゃった?」
「ううん! まさか岳人とは思わなくてさっ」
勢いよく顔を上げ、笑顔を見せて何もないと秋に伝えると彼女は少しホッとした表情をする。
「じゃあさ、なんでそう思ったのか詳しい話聞かせてよ」
「う、うん。なんだか改めて話をするのはちょっと恥ずかしいけど……」
照れながらも秋は確信を得るために向日との出会いを語った。
芥川はただ黙って聞いて、もやもやした嫉妬と黒くなった独占欲が合わさり始める。
そして全て聞き終えた芥川は意を決して秋の気持ちの答えを口にした。
「秋……それは多分秋の考えるような好きじゃないんだよ」
「えっ?」
「だって岳人のアクロバットに一番感動したんでしょ? つまり憧れみたいなもんだよ。アイドルとかに向けるやつと一緒だって」
それはまだ判断しかねる向日への感情をねじ曲げることだった。
「そう、なの?」
「そうだって! それに誰かを好きになるってことはもっと強い気持ちになるんだよ。楽しいだけじゃなくって苦しくってしんどくて、酷い気持ちにもなることだってあるんだし。秋はそこまでじゃないでしょ?」
「……確かに、そうかも」
芥川の言葉に言いくるめられる秋は自覚しかけていた気持ちを自然と書き換えられていく。
少しずつ恋と呼ぶほどではないのだろうと思い始めて。
自分の言葉を信じてくれる秋に芥川は安堵を覚える。
(良かった……秋が自覚する前に止められて)
良心が痛むのは一瞬だった。秋に嘘をつくのは少なからず抵抗があったから。しかし、彼女に恋を認めさせることだけは絶対にしたくなかったし、その結果後悔はしていない自分がいる。
好きな相手が誰かを好きになる可能性は考えなかったわけじゃない。ただ、恋愛をしてる様子は見受けられなかったからまだ大丈夫だって思っていた。
その間に自分を好きになってくれたらいいな、なんて考えていたけど実際に秋が好意を向けたのは向日である。
ほぼ一目惚れと言っても過言ではないその出来事は芥川ではどうすることも出来ないが、目を逸らさせることには成功した。
まるで王子に恋をしたお姫様を魔法で恋心を奪ってしまった悪い魔法使いのようだと芥川は心の中で自嘲する。
「……」
そのやり取りを思い出した芥川は向日を羨ましく思いながら欠伸をひとつこぼして自身も体操着へと着替えに向かった。
芥川と麻美が当時同じクラスだったため、秋が麻美の教室に行くと必ず机に突っ伏して寝てるか、麻美に叩き起されるか、の姿を多く見ていたので実際に会話を交わすことは少なかったけど、二年になってから話をする機会が多くなる。
麻美や宍戸を通じて二人は知り合い、友人まで発展するのはそう時間はかからなかった。
芥川にとって秋は甘やかしてくれる一人だったが、寝てる所を見つかる度に優しく起こしてくれたり、面倒を見てくれる彼女に芥川は交流をしていく内に惹かれていった。
一緒にいるのが心地良くて、雲に包まれるような優しさはずっと自分にだけ向けて欲しいと思っていたが、秋の性格上それは無理なんだろうなと考えながら胸に秘める独占欲は消せなかった。
そんなある日だった。制服が冬用に変わったばかりの時期、秋と一緒の時間を過ごしたいため、芥川は彼女に宿題を教えてとねだって放課後二人だけの時間を作ってもらったときのこと。
秋の教え方は的確で上手く、理解するのに時間はかからなかったので宿題はあっという間に終わってしまった。
「秋って凄いよな~。教え方完璧だCー!」
「そんなことないよ。ジローがしっかり勉強に向き合ってくれたからジローが凄いんだよ」
褒めても謙遜する秋に「そんなことないのに」と口にする。秋だからちゃんと話を聞くだけであって秋以外に教えてもらってもちんぷんかんぷんだろうし、眠気に襲われる可能性が大いにあった。
「秋に知らないことってないんじゃないかな?」
「そんなことないよ。私もまだまだ知らないことはいっぱいあるんだし」
「え~? 例えば?」
「人の心理的な行動とか?」
「難しそ~……」
「だよね。……実はね、私も今分からない気持ちがあって……」
「分からない気持ち?」
そんな感情の知らないことロボットみたいなことを言うなんて珍しい。秋に分からない気持ちなんてあるのだろうか。
そう不思議に思った芥川が秋の言葉を繰り返すと、彼女は少し躊躇いながらも話をした。
「……あのね、初めて会ったときが凄く衝撃的だったのか、その人に会う度に動悸がするの」
ぞわり、と胸騒ぎを覚えた芥川は嫌な予感を抱いた。
「それ……ってさ、その人が怖いとか?」
「ううん。恐怖とかじゃないの。とても頼りになるし、格好いいなって思うくらいだから。それで私なりに色々考えたんだけど……私、多分その人のことが好きなんじゃないかなって」
芥川が抱いた胸騒ぎは気のせいではなかった。少し頬を染めながら語る秋はその感情がなければ「可愛いなぁ~」って思うだけで終わっただろう。
しかも秋なりにその答えをもう出している。そんな彼女に芥川は胸に秘めておいた独占欲が黒く渦巻いて広がっていくのを感じた。
「……その相手って俺の知ってる奴?」
「え、うん……そうだね、ジローも知ってるよ」
「誰?」
どうしても知りたかった。知ってる相手なんて言われたら聞かずにはいられない。
しかし、秋は困り顔で「えっと……」と、口ごもっていた。さすがに好いている人物を簡単には教えてくれない様子。
「秋だってまだ恋なのか判断出来てないんでしょ? だったら俺も考えるから教えてよ。誰も言わないし!」
それらしい理由を告げて秋の口を割ろうとする。秋もその言葉を信じて少し考えたあと、小さく呟いた。
「向日……なの」
名前を口にした途端、淡く染っていた秋の顔はさらに赤く染まっていき、もはや答えなど分かりきっていた。
同時に芥川は胸が痛み、絶望を覚える。ズキズキと痛くて、初めて好きになった相手のことでこんなにも胸が痛むとは思わなかった。
(……顔に出しちゃダメだ)
俯いてその表情を秋に見せないようにする。秋といるんだから楽しい気持ちにならなきゃと無理やり感情をコントロールさせようとしたが、そんな芥川の様子に秋は心配になった。
「ジロー……? 大丈夫? 眠くなっちゃった?」
「ううん! まさか岳人とは思わなくてさっ」
勢いよく顔を上げ、笑顔を見せて何もないと秋に伝えると彼女は少しホッとした表情をする。
「じゃあさ、なんでそう思ったのか詳しい話聞かせてよ」
「う、うん。なんだか改めて話をするのはちょっと恥ずかしいけど……」
照れながらも秋は確信を得るために向日との出会いを語った。
芥川はただ黙って聞いて、もやもやした嫉妬と黒くなった独占欲が合わさり始める。
そして全て聞き終えた芥川は意を決して秋の気持ちの答えを口にした。
「秋……それは多分秋の考えるような好きじゃないんだよ」
「えっ?」
「だって岳人のアクロバットに一番感動したんでしょ? つまり憧れみたいなもんだよ。アイドルとかに向けるやつと一緒だって」
それはまだ判断しかねる向日への感情をねじ曲げることだった。
「そう、なの?」
「そうだって! それに誰かを好きになるってことはもっと強い気持ちになるんだよ。楽しいだけじゃなくって苦しくってしんどくて、酷い気持ちにもなることだってあるんだし。秋はそこまでじゃないでしょ?」
「……確かに、そうかも」
芥川の言葉に言いくるめられる秋は自覚しかけていた気持ちを自然と書き換えられていく。
少しずつ恋と呼ぶほどではないのだろうと思い始めて。
自分の言葉を信じてくれる秋に芥川は安堵を覚える。
(良かった……秋が自覚する前に止められて)
良心が痛むのは一瞬だった。秋に嘘をつくのは少なからず抵抗があったから。しかし、彼女に恋を認めさせることだけは絶対にしたくなかったし、その結果後悔はしていない自分がいる。
好きな相手が誰かを好きになる可能性は考えなかったわけじゃない。ただ、恋愛をしてる様子は見受けられなかったからまだ大丈夫だって思っていた。
その間に自分を好きになってくれたらいいな、なんて考えていたけど実際に秋が好意を向けたのは向日である。
ほぼ一目惚れと言っても過言ではないその出来事は芥川ではどうすることも出来ないが、目を逸らさせることには成功した。
まるで王子に恋をしたお姫様を魔法で恋心を奪ってしまった悪い魔法使いのようだと芥川は心の中で自嘲する。
「……」
そのやり取りを思い出した芥川は向日を羨ましく思いながら欠伸をひとつこぼして自身も体操着へと着替えに向かった。