自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
恋を霞ませた魔法使い
主人公名前変換
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「知らない内に解決したな……」
昼間の跡部による校内放送が終えてすぐのこと。食堂では宍戸、芥川、向日、忍足が近くにいたため共に昼食を取ることになった。
席について早々、宍戸が例の話題を口にする。
「もう犯人を捕まえただなんて、さっすが跡部だCー!」
「けど、誰が犯人かは言わなかったよな? 俺らにはちゃんと教えてくれんのか?」
腕を組みながらどこか腑に落ちない様子の向日。そんな彼の言葉を聞いて、ダブルスでは相方を務める忍足がぼんやりと考えた。
(多分、あの子やろうなぁ……)
遥と共に容疑者の外見として疑わしい水瀬を見た忍足だったので、そこから今日までスピード解決を思えば何となく想像出来た。
とはいえ、目の前の仲間にそれを言い触らすような浅はかなことは考えていない。
更生の余地があると言っていたのならここで噂になるようなことを言えば本人に迷惑がかかるだろう。
(いや、こっちは迷惑かけられまくったんやけどな……)
はは、と一人乾いた笑いをする。なんで被害者が加害者の迷惑まで考えなあかんのやろか、とも思うが結局忍足も水瀬が犯人というのは直接聞いたわけではないため、疑わしくとも好き勝手に話す内容ではないと胸に秘めることにした。
「それより、俺も含めてやけど自分らちゃんと日吉に謝らんとあかんで?」
「あー……だな」
「日吉には悪いことしたしね~」
「ぐっ……しゃーねぇなぁっ」
忍足の言葉により三人がそれぞれの反応を示す。向日に至っては生意気な二年に頭を下げるのが嫌なのか悔しげではあったが、疑った事実は変わりないので渋々と忍足の言い分を飲むことにする。
「……お。噂をすればあそこにおるで」
忍足の視線と同じ方向へ三人も向けると、少し離れた席に一人で弁当を食べる日吉を発見した。
すると、何人かの男子生徒が日吉の周りを囲む。よく見ると彼らは同じテニス部の準レギュラーの面子だ。
「なぁ、日吉。犯人が見つかったって話だけどお咎めなしなのか聞いてる?」
「……」
日吉は昼食の手を止め、心の中で深く溜め息をついた。第一声にそれかよと言わんばかりの態度を出すも、部活仲間はそんなことを気にすることなく話し続ける。
「そもそも名前を明かさないってどういうことなんだろな。もしかして部長の知り合いが犯人だから庇ってるとか?」
「やっぱりマネージャーの自作自演説だったり?」
「だったら辞めさせるだろ」
「けど、部長が連れて来たから今更犯人だって言い出せないんじゃね? 信用問題に関わるし」
ああだこうだと勝手に推測する部員達に日吉は苛立ち始める。
そもそも彼らは同じ部活の準レギュラーであり、マネージャー在籍反対派の仲間だけであって友人などではない。
「日吉、一度部長に交渉してみたらどうだ? 疑われたから自分だけでも真犯人を知りたいって言えば教えてもらえるだろ?」
その会話は忍足達にも届いていた。四人は互いに顔を見合わせてひそひそと話す。
「あいつら、よくそんな話を周りに聞こえる声で話すよな?」
「日吉から真犯人の情報を貰おうって魂胆が見え見えだな、激ダサすぎだろ」
「でも、日吉が一番疑われたのはホントじゃん? 跡部も日吉にならってコソッと教えてくれたりするんじゃないかなー」
「跡部がそんなことで口を割るとは思わんけどな……とりあえず日吉がなんて答えるか様子見や」
返答によってはまた跡部に知らせることになるだろうと四人は考えながら再び日吉達へと視線を向ける。
「なんで俺がわざわざそんなことしなきゃならないんだ?」
「なんでって気にならねぇの? お前が部室荒らしの犯人に仕立てられたのによ」
不思議そうに尋ねる一人の部員の言葉を聞いて、日吉は持っていた箸を強くテーブルに叩きつけるように置く。
バン! という大きな音に周りの男子達はビクッと肩を跳ねさせた。
「お前らもすぐに俺を疑ってたくせに犯人に仕立てられただと?」
「いや、あれは……」
監視カメラの件で部員達のほとんどが日吉を怪しんでいた。髪型が似ていたという理由で。今、日吉の周りにいる準レギュラー達もそうだったため、彼に指摘されたことに口ごもってしまう。
「俺からするとお前達も犯人に仕立てた一員なんだよ。なのによく普通に話しかけて来れるよな? 面の皮が厚くて感服するぜ」
ハッ。と見下すように笑う日吉に彼を囲んでいた男子部員達はバツ悪そうに「わ、わりぃ……」「ごめんな……」と謝罪の言葉を口にする。
「分かればいいんだよ。それにお前らに何も話すことはないし、俺は昼飯の途中だ。さっさとどっか行け」
そう告げると、仲間達は気まずそうに日吉から離れて行った。
ふぅ、と息を吐いてようやく中断していた昼食の続きを始める。
「……」
弁当のおかずを口にしながら日吉は数日前のことを思い出す。たった数日とはいえ、疑いの目を沢山向けられた体験は一生忘れることがないだろう。
不愉快で、腹も立ち、居心地も悪かった。違うと言って信じてもらえなくて本当に罪人にでもなった気分。
それでも僅かながら自分を信じてくれた人間がいたのもまた事実だ。
(あいつらに礼だけでも言っておくか……)
脳裏に過ぎるのは同じ二年生のテニス部員である鳳と樺地。
正レギュラーであり、その地位は準レギュラーの日吉よりも上だというのに二人は彼の潔白を最後まで信じていた。
鳳に至ってはあちこちで「日吉はそんなことする人間じゃないよ」と言い回っていたのを噂で聞いたので、逆に恥ずかしい思いもしたが、彼なりに日吉のためになる行動をした結果なのだと思うとそれを無下にすることは出来ない。
そして同時に一人のマネージャーの存在も思い出した。
監視カメラを見るまでは日吉と同じく疑惑の目を向けられた九条秋。もちろん、日吉も最初は彼女が犯人、またはマネージャーが皆グルになったのだと思っていた。
例え犯人ではなくても厄介事の原因は間違いなくマネージャーの存在なのでこれを機にさっさとマネージャー制度を廃止してくれたらいいと考えていたのに、まさか自分が巻き込まれるとは思ってもみなかった。
マネージャーの存在を一番反対していた自分が疑われてマネージャー達もさぞかし気分がいいだろうとひねくれた思考だった日吉。
しかし、秋と二人で話して少しだけその考えは変わった。自分の訴えを信じると言っていた彼女の言動は嘘偽りもない。信じると言った秋を信じてもいいと思った。
(あれが、生徒会副会長……生徒会長である跡部さんの代理をこなせる人……)
副会長の座につく上に跡部からの信頼も厚い。しかし、跡部の影に隠れることがほとんどだから正直そこまでの人には見えなかった。
だからこそ罪人だと疑われている人間の前でも、決めつけずに対話する秋の器の大きさには日吉も驚かされた。
その場の雰囲気や感情に流されないというか、自分の感情よりも相手の感情を尊重するように見受けられる。
(まぁ……悪い人じゃなさそうだな)
少しだけ秋の人間性を認めた日吉は一人で小さく笑みを浮かべた。
「や、やべぇよ日吉の奴っ! ニヤッて笑ってやがる! ぜってー自分を疑った奴に復讐する顔だぜ!」
「お、落ち着きぃや岳人。とりあえず謝りに行こ。な?」
「ぐか~……」
「って、おい! ジロー! 寝てんじゃねぇよ!」
日吉の思考まで読めない四人はなぜか一人でほくそ笑む様子の彼を見て悪い笑顔だと思ったらしく、疑った謝罪を早くしなければと誓い合った。
昼間の跡部による校内放送が終えてすぐのこと。食堂では宍戸、芥川、向日、忍足が近くにいたため共に昼食を取ることになった。
席について早々、宍戸が例の話題を口にする。
「もう犯人を捕まえただなんて、さっすが跡部だCー!」
「けど、誰が犯人かは言わなかったよな? 俺らにはちゃんと教えてくれんのか?」
腕を組みながらどこか腑に落ちない様子の向日。そんな彼の言葉を聞いて、ダブルスでは相方を務める忍足がぼんやりと考えた。
(多分、あの子やろうなぁ……)
遥と共に容疑者の外見として疑わしい水瀬を見た忍足だったので、そこから今日までスピード解決を思えば何となく想像出来た。
とはいえ、目の前の仲間にそれを言い触らすような浅はかなことは考えていない。
更生の余地があると言っていたのならここで噂になるようなことを言えば本人に迷惑がかかるだろう。
(いや、こっちは迷惑かけられまくったんやけどな……)
はは、と一人乾いた笑いをする。なんで被害者が加害者の迷惑まで考えなあかんのやろか、とも思うが結局忍足も水瀬が犯人というのは直接聞いたわけではないため、疑わしくとも好き勝手に話す内容ではないと胸に秘めることにした。
「それより、俺も含めてやけど自分らちゃんと日吉に謝らんとあかんで?」
「あー……だな」
「日吉には悪いことしたしね~」
「ぐっ……しゃーねぇなぁっ」
忍足の言葉により三人がそれぞれの反応を示す。向日に至っては生意気な二年に頭を下げるのが嫌なのか悔しげではあったが、疑った事実は変わりないので渋々と忍足の言い分を飲むことにする。
「……お。噂をすればあそこにおるで」
忍足の視線と同じ方向へ三人も向けると、少し離れた席に一人で弁当を食べる日吉を発見した。
すると、何人かの男子生徒が日吉の周りを囲む。よく見ると彼らは同じテニス部の準レギュラーの面子だ。
「なぁ、日吉。犯人が見つかったって話だけどお咎めなしなのか聞いてる?」
「……」
日吉は昼食の手を止め、心の中で深く溜め息をついた。第一声にそれかよと言わんばかりの態度を出すも、部活仲間はそんなことを気にすることなく話し続ける。
「そもそも名前を明かさないってどういうことなんだろな。もしかして部長の知り合いが犯人だから庇ってるとか?」
「やっぱりマネージャーの自作自演説だったり?」
「だったら辞めさせるだろ」
「けど、部長が連れて来たから今更犯人だって言い出せないんじゃね? 信用問題に関わるし」
ああだこうだと勝手に推測する部員達に日吉は苛立ち始める。
そもそも彼らは同じ部活の準レギュラーであり、マネージャー在籍反対派の仲間だけであって友人などではない。
「日吉、一度部長に交渉してみたらどうだ? 疑われたから自分だけでも真犯人を知りたいって言えば教えてもらえるだろ?」
その会話は忍足達にも届いていた。四人は互いに顔を見合わせてひそひそと話す。
「あいつら、よくそんな話を周りに聞こえる声で話すよな?」
「日吉から真犯人の情報を貰おうって魂胆が見え見えだな、激ダサすぎだろ」
「でも、日吉が一番疑われたのはホントじゃん? 跡部も日吉にならってコソッと教えてくれたりするんじゃないかなー」
「跡部がそんなことで口を割るとは思わんけどな……とりあえず日吉がなんて答えるか様子見や」
返答によってはまた跡部に知らせることになるだろうと四人は考えながら再び日吉達へと視線を向ける。
「なんで俺がわざわざそんなことしなきゃならないんだ?」
「なんでって気にならねぇの? お前が部室荒らしの犯人に仕立てられたのによ」
不思議そうに尋ねる一人の部員の言葉を聞いて、日吉は持っていた箸を強くテーブルに叩きつけるように置く。
バン! という大きな音に周りの男子達はビクッと肩を跳ねさせた。
「お前らもすぐに俺を疑ってたくせに犯人に仕立てられただと?」
「いや、あれは……」
監視カメラの件で部員達のほとんどが日吉を怪しんでいた。髪型が似ていたという理由で。今、日吉の周りにいる準レギュラー達もそうだったため、彼に指摘されたことに口ごもってしまう。
「俺からするとお前達も犯人に仕立てた一員なんだよ。なのによく普通に話しかけて来れるよな? 面の皮が厚くて感服するぜ」
ハッ。と見下すように笑う日吉に彼を囲んでいた男子部員達はバツ悪そうに「わ、わりぃ……」「ごめんな……」と謝罪の言葉を口にする。
「分かればいいんだよ。それにお前らに何も話すことはないし、俺は昼飯の途中だ。さっさとどっか行け」
そう告げると、仲間達は気まずそうに日吉から離れて行った。
ふぅ、と息を吐いてようやく中断していた昼食の続きを始める。
「……」
弁当のおかずを口にしながら日吉は数日前のことを思い出す。たった数日とはいえ、疑いの目を沢山向けられた体験は一生忘れることがないだろう。
不愉快で、腹も立ち、居心地も悪かった。違うと言って信じてもらえなくて本当に罪人にでもなった気分。
それでも僅かながら自分を信じてくれた人間がいたのもまた事実だ。
(あいつらに礼だけでも言っておくか……)
脳裏に過ぎるのは同じ二年生のテニス部員である鳳と樺地。
正レギュラーであり、その地位は準レギュラーの日吉よりも上だというのに二人は彼の潔白を最後まで信じていた。
鳳に至ってはあちこちで「日吉はそんなことする人間じゃないよ」と言い回っていたのを噂で聞いたので、逆に恥ずかしい思いもしたが、彼なりに日吉のためになる行動をした結果なのだと思うとそれを無下にすることは出来ない。
そして同時に一人のマネージャーの存在も思い出した。
監視カメラを見るまでは日吉と同じく疑惑の目を向けられた九条秋。もちろん、日吉も最初は彼女が犯人、またはマネージャーが皆グルになったのだと思っていた。
例え犯人ではなくても厄介事の原因は間違いなくマネージャーの存在なのでこれを機にさっさとマネージャー制度を廃止してくれたらいいと考えていたのに、まさか自分が巻き込まれるとは思ってもみなかった。
マネージャーの存在を一番反対していた自分が疑われてマネージャー達もさぞかし気分がいいだろうとひねくれた思考だった日吉。
しかし、秋と二人で話して少しだけその考えは変わった。自分の訴えを信じると言っていた彼女の言動は嘘偽りもない。信じると言った秋を信じてもいいと思った。
(あれが、生徒会副会長……生徒会長である跡部さんの代理をこなせる人……)
副会長の座につく上に跡部からの信頼も厚い。しかし、跡部の影に隠れることがほとんどだから正直そこまでの人には見えなかった。
だからこそ罪人だと疑われている人間の前でも、決めつけずに対話する秋の器の大きさには日吉も驚かされた。
その場の雰囲気や感情に流されないというか、自分の感情よりも相手の感情を尊重するように見受けられる。
(まぁ……悪い人じゃなさそうだな)
少しだけ秋の人間性を認めた日吉は一人で小さく笑みを浮かべた。
「や、やべぇよ日吉の奴っ! ニヤッて笑ってやがる! ぜってー自分を疑った奴に復讐する顔だぜ!」
「お、落ち着きぃや岳人。とりあえず謝りに行こ。な?」
「ぐか~……」
「って、おい! ジロー! 寝てんじゃねぇよ!」
日吉の思考まで読めない四人はなぜか一人でほくそ笑む様子の彼を見て悪い笑顔だと思ったらしく、疑った謝罪を早くしなければと誓い合った。