自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
因縁をつけられるマネージャー達
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「す、すみません、九条先輩! お時間ありますかっ?」
ちょうど同じ頃、トイレから出てきて教室に戻ろとした秋の元に後輩と思わしき女子生徒から声をかけられた。
「? どうしたの?」
「あの、あの、助けてほしくて……っ」
「詳しい話を聞かせてくれる?」
「じ、実は迷い猫が……その、とにかく来ていただけませんかっ? 見たら分かりますので! 助けてください!」
おどおどしながらも、歯切れの悪い要件に首を傾げる秋だが、助けてと言われると邪険には出来ない。
「分かった。案内して」
後輩に連れられ、秋は裏庭へと案内された。
その途中、秋は疑問に思った。迷い猫と言っていたけど、ただの生徒に助けを求めるより教師に助けを乞う方が大人で頼りがいもあるし、効率的なのではないかと。
しかし、そう気づいた頃にはもう手遅れだった。
「いらっしゃい、九条秋」
人気のない裏庭には昨日の跡部ファンクラブのメンバー達が待ち構えていた。昨日の面子よりも多い人数で。
秋を案内した後輩の女子はそのまま秋を置いて逃げ去っていった。
これは罠だった。今更気づいても遅いと後悔する秋だったが、こうなれば説得するしかないと考える。
「こんな回りくどいやり方で呼び出してまでどのようなお話をするんですか?」
「何よ、男テニのマネージャーになったからって偉そうにしないでくれない?」
「ただでさえ副生徒会長で跡部様に近いくせにさらにマネージャーに入部だなんてあの方を狙ってるとしか思えないんだけど! あんたなんか跡部様に相手されるわけないんだから!」
「相手にされないなら何も問題ないわけですし、そのままでもいいのでは?」
「跡部様に迷惑かけてるってこと分からないわけ!? 神経が図太いにもほどがあるじゃない! だから私達がこうやってあんたに教えて跡部様達の練習の妨げにならないためにもマネージャーを辞めてって言ってるのよ!」
「そのような話は全部跡部にお願いしてもらっていいですか? 入部を許したのも彼ですし、マネージャーについての話も跡部に通すようにと言われています」
「そんなの信じられるわけないじゃない! そうやって跡部様のお手を煩わせるのもどうかしてるわ! さっさと辞めたら跡部様だって快適に部活に励むことが出来るのよ!」
何を言って反感を買ってしまう。分かっていたとはいえ、何も聞く耳を持たなければ説得も無意味である。
「私は頼まれたからマネージャーを引き受けただけです。もちろん足を引っ張るつもりもなければ邪魔をするつもりもありません。それに引き受けた仕事を途中で投げ出すことの方が跡部に迷惑がかかりますので、彼から退部を求めない限り私も退部するつもりはないです」
強い意志を持ってはっきりと彼女達に伝えた。自分だけのことなら退部も考えたかもしれない。
麻美と遥という友人達が関わるものだから、二人のためにも簡単に判断はしなかった。
優柔不断でもある彼女だが、その分こう決めたものは譲らない頑固な所もある。
しかし、そんな秋の強い意志はファンクラブの女子達の顔を顰めさせる。
そしてパンッと乾いた音が響いた。秋の頬が叩かれた音だ。
「……」
「いい気にならないで。何様のつもりなの?」
「跡部様をつけ回してキモいんだけど!」
諦めてくれると淡い期待を抱いていたけど、向こうの人数が多い分強気なのだろう。
もういっそのこと逃げるしかないのかもしれない。話も通じないし、理解も得られないのならば和解も出来ないと考える。
「おい! お前ら何やってんだ!」
そんなときだった。頭上から声が聞こえる。みんながいっせいに上を見上げると、なんと三階の窓枠から足をかけて飛び降りる生徒がいた。
「よっ、と」
綺麗に着地するほどの身軽さ。その正体は向日だった。
すぐに秋の前に立ち、彼女の盾になるような姿に秋は戸惑った。
「む、向日っ、あんな上から飛び降りるなんて危ないよっ!」
「何言ってんだ。あのくらいの高さなんてことねーっての。それより危ないのはお前の方だろ! ……ったく、なんだよお前ら。寄って集って一人を虐めてんのか?」
「虐めてなんかいないわ!」
「こいつの顔を叩いただろーが! こっちは見てたんだっつーの!」
「立場を分からせただけよ!」
人に見られたくないから裏庭まで秋を連れてこさせた女子生徒達だったが、誰かに見つかったときのことまで考えていなかったのか、糾弾を受けるファンクラブのメンバーはまずいと言いたげに互いに顔を見合せ、戸惑っている様子だった。
「ふーん。立場を分からせただけ、か」
そこへ、麻美が姿を現した。三階から向日が飛び降りた現場は騒然としていて、何があったのか上から見下ろす生徒も多くて、それを見つけた麻美がみんなの視線の先にいる秋を発見し、急いで彼女の元へと駆けつけた。汗ひとつかくことなく。
「麻美っ」
「じゃあ、私もあんたらの立場を分からせてやる。うちの秋に喧嘩を吹っ掛けたんだから私に喧嘩を売ってるも同然だ」
拳を鳴らしながら麻美は彼女達の元へ近づく。怒り爆発だというのは誰が見ても明らかに。
そんな麻美から逃げ出す女子生徒もいれば足が竦む女子生徒もいる。
麻美は秋の顔を引っぱたいた女子目掛け、握り拳を構えた。
「麻美、駄目!」
彼女が自分のせいで暴力を振るってはいけない。そう思って制止の声を上げると、麻美は舌打ちをして、その女子生徒の胸ぐらを掴んだ。
「ひっ!」
「あんたら二度と私らの前に現れるな。その顔を潰されたくなかったらな」
涙を滲ませながらこくこくと頷くのを確認すると、麻美は荒々しく手を離し、ファンクラブの女子生徒を見逃した。
良かった、と秋が安心するのとは違って麻美の鬱憤は晴れない。
「九条、大丈夫か?」
「あ……うん。ありがとう、向日。麻美も手を出さないでくれてありがとう」
「お人好しも過ぎるとただの馬鹿だ」
不服そうに腕を組みながら伝える麻美ではあるが全て秋を心配しての発言だということを彼女も理解している。
「うん。もちろんこのまま見逃すつもりはないよ。ちゃんと跡部に報告するし、先生にも報告する。あとはそっちに任せるから」
「それでも甘いんだよ。あのアマには一発殴ってやってもいいんだからな」
なんなら私が代わりに殴ってやるのに。そう呟く麻美に向日は「相変わらずおっかねぇ奴……」と心の中で吐き捨てる。
「駄目だよ。そんなことしたらマネージャーをクビにされちゃう」
「別に私はそれでもいいけど。元々やるつもりはなかったし」
「三人一緒で活動出来る上にたった一年だけなんだよ? 私は楽しくマネージャー業をこなしたいの。それに途中で投げ出すのは私も嫌だし、麻美だって暴力を振るって退部だなんてことになったら、マネージャー反対派のみんなに笑われちゃうよ」
そう言われた麻美の中で準レギュラーの日吉の顔を思い浮かべた。
嫌みったらしく「ほら、やっぱりあなたには無理でしたねぇ?」と馬鹿にするような笑みを向けられると思うと彼女の中で苛立ちの感情が増していく。
「……あのキノコが喜ぶと思うと腹立たしいな」
「だからぎゃふんと言わせるためにも麻美も余計な手出しはやめようね」
「必要ならいいんだな?」
「正当防衛以外はやめてね……」
「それより九条、頬んとこ赤くなってっから冷やした方がいいぞ」
向日が秋の頬が腫れていることを指摘すると、彼女は驚きながらもビンタされた頬に手を当てる。
手を当てるとなんとなくジンジンとしているのが分かった。向日の言う通り早く患部を冷やさなければならない。
「そ、そうだね。ちょっと保健室に行ってくるよ」
「おう」
急ぐように麻美と向日の前をあとにする秋は自分の顔が変だったりしないだろうかと心配すると同時に空から降ってきた向日の姿を思い出す。
勢いよく降りる様子はまるで鳥のようであり、天使のようでもあった。
そんな平均的な男子の身長よりも低い向日だったが、自分の前に立つその後ろ姿はずっと頼もしく感じたことを思い出し秋の頬は赤く染まる。
彼女は痛みのせいなのだろうと考えながら保健室へと向かった。
ちょうど同じ頃、トイレから出てきて教室に戻ろとした秋の元に後輩と思わしき女子生徒から声をかけられた。
「? どうしたの?」
「あの、あの、助けてほしくて……っ」
「詳しい話を聞かせてくれる?」
「じ、実は迷い猫が……その、とにかく来ていただけませんかっ? 見たら分かりますので! 助けてください!」
おどおどしながらも、歯切れの悪い要件に首を傾げる秋だが、助けてと言われると邪険には出来ない。
「分かった。案内して」
後輩に連れられ、秋は裏庭へと案内された。
その途中、秋は疑問に思った。迷い猫と言っていたけど、ただの生徒に助けを求めるより教師に助けを乞う方が大人で頼りがいもあるし、効率的なのではないかと。
しかし、そう気づいた頃にはもう手遅れだった。
「いらっしゃい、九条秋」
人気のない裏庭には昨日の跡部ファンクラブのメンバー達が待ち構えていた。昨日の面子よりも多い人数で。
秋を案内した後輩の女子はそのまま秋を置いて逃げ去っていった。
これは罠だった。今更気づいても遅いと後悔する秋だったが、こうなれば説得するしかないと考える。
「こんな回りくどいやり方で呼び出してまでどのようなお話をするんですか?」
「何よ、男テニのマネージャーになったからって偉そうにしないでくれない?」
「ただでさえ副生徒会長で跡部様に近いくせにさらにマネージャーに入部だなんてあの方を狙ってるとしか思えないんだけど! あんたなんか跡部様に相手されるわけないんだから!」
「相手にされないなら何も問題ないわけですし、そのままでもいいのでは?」
「跡部様に迷惑かけてるってこと分からないわけ!? 神経が図太いにもほどがあるじゃない! だから私達がこうやってあんたに教えて跡部様達の練習の妨げにならないためにもマネージャーを辞めてって言ってるのよ!」
「そのような話は全部跡部にお願いしてもらっていいですか? 入部を許したのも彼ですし、マネージャーについての話も跡部に通すようにと言われています」
「そんなの信じられるわけないじゃない! そうやって跡部様のお手を煩わせるのもどうかしてるわ! さっさと辞めたら跡部様だって快適に部活に励むことが出来るのよ!」
何を言って反感を買ってしまう。分かっていたとはいえ、何も聞く耳を持たなければ説得も無意味である。
「私は頼まれたからマネージャーを引き受けただけです。もちろん足を引っ張るつもりもなければ邪魔をするつもりもありません。それに引き受けた仕事を途中で投げ出すことの方が跡部に迷惑がかかりますので、彼から退部を求めない限り私も退部するつもりはないです」
強い意志を持ってはっきりと彼女達に伝えた。自分だけのことなら退部も考えたかもしれない。
麻美と遥という友人達が関わるものだから、二人のためにも簡単に判断はしなかった。
優柔不断でもある彼女だが、その分こう決めたものは譲らない頑固な所もある。
しかし、そんな秋の強い意志はファンクラブの女子達の顔を顰めさせる。
そしてパンッと乾いた音が響いた。秋の頬が叩かれた音だ。
「……」
「いい気にならないで。何様のつもりなの?」
「跡部様をつけ回してキモいんだけど!」
諦めてくれると淡い期待を抱いていたけど、向こうの人数が多い分強気なのだろう。
もういっそのこと逃げるしかないのかもしれない。話も通じないし、理解も得られないのならば和解も出来ないと考える。
「おい! お前ら何やってんだ!」
そんなときだった。頭上から声が聞こえる。みんながいっせいに上を見上げると、なんと三階の窓枠から足をかけて飛び降りる生徒がいた。
「よっ、と」
綺麗に着地するほどの身軽さ。その正体は向日だった。
すぐに秋の前に立ち、彼女の盾になるような姿に秋は戸惑った。
「む、向日っ、あんな上から飛び降りるなんて危ないよっ!」
「何言ってんだ。あのくらいの高さなんてことねーっての。それより危ないのはお前の方だろ! ……ったく、なんだよお前ら。寄って集って一人を虐めてんのか?」
「虐めてなんかいないわ!」
「こいつの顔を叩いただろーが! こっちは見てたんだっつーの!」
「立場を分からせただけよ!」
人に見られたくないから裏庭まで秋を連れてこさせた女子生徒達だったが、誰かに見つかったときのことまで考えていなかったのか、糾弾を受けるファンクラブのメンバーはまずいと言いたげに互いに顔を見合せ、戸惑っている様子だった。
「ふーん。立場を分からせただけ、か」
そこへ、麻美が姿を現した。三階から向日が飛び降りた現場は騒然としていて、何があったのか上から見下ろす生徒も多くて、それを見つけた麻美がみんなの視線の先にいる秋を発見し、急いで彼女の元へと駆けつけた。汗ひとつかくことなく。
「麻美っ」
「じゃあ、私もあんたらの立場を分からせてやる。うちの秋に喧嘩を吹っ掛けたんだから私に喧嘩を売ってるも同然だ」
拳を鳴らしながら麻美は彼女達の元へ近づく。怒り爆発だというのは誰が見ても明らかに。
そんな麻美から逃げ出す女子生徒もいれば足が竦む女子生徒もいる。
麻美は秋の顔を引っぱたいた女子目掛け、握り拳を構えた。
「麻美、駄目!」
彼女が自分のせいで暴力を振るってはいけない。そう思って制止の声を上げると、麻美は舌打ちをして、その女子生徒の胸ぐらを掴んだ。
「ひっ!」
「あんたら二度と私らの前に現れるな。その顔を潰されたくなかったらな」
涙を滲ませながらこくこくと頷くのを確認すると、麻美は荒々しく手を離し、ファンクラブの女子生徒を見逃した。
良かった、と秋が安心するのとは違って麻美の鬱憤は晴れない。
「九条、大丈夫か?」
「あ……うん。ありがとう、向日。麻美も手を出さないでくれてありがとう」
「お人好しも過ぎるとただの馬鹿だ」
不服そうに腕を組みながら伝える麻美ではあるが全て秋を心配しての発言だということを彼女も理解している。
「うん。もちろんこのまま見逃すつもりはないよ。ちゃんと跡部に報告するし、先生にも報告する。あとはそっちに任せるから」
「それでも甘いんだよ。あのアマには一発殴ってやってもいいんだからな」
なんなら私が代わりに殴ってやるのに。そう呟く麻美に向日は「相変わらずおっかねぇ奴……」と心の中で吐き捨てる。
「駄目だよ。そんなことしたらマネージャーをクビにされちゃう」
「別に私はそれでもいいけど。元々やるつもりはなかったし」
「三人一緒で活動出来る上にたった一年だけなんだよ? 私は楽しくマネージャー業をこなしたいの。それに途中で投げ出すのは私も嫌だし、麻美だって暴力を振るって退部だなんてことになったら、マネージャー反対派のみんなに笑われちゃうよ」
そう言われた麻美の中で準レギュラーの日吉の顔を思い浮かべた。
嫌みったらしく「ほら、やっぱりあなたには無理でしたねぇ?」と馬鹿にするような笑みを向けられると思うと彼女の中で苛立ちの感情が増していく。
「……あのキノコが喜ぶと思うと腹立たしいな」
「だからぎゃふんと言わせるためにも麻美も余計な手出しはやめようね」
「必要ならいいんだな?」
「正当防衛以外はやめてね……」
「それより九条、頬んとこ赤くなってっから冷やした方がいいぞ」
向日が秋の頬が腫れていることを指摘すると、彼女は驚きながらもビンタされた頬に手を当てる。
手を当てるとなんとなくジンジンとしているのが分かった。向日の言う通り早く患部を冷やさなければならない。
「そ、そうだね。ちょっと保健室に行ってくるよ」
「おう」
急ぐように麻美と向日の前をあとにする秋は自分の顔が変だったりしないだろうかと心配すると同時に空から降ってきた向日の姿を思い出す。
勢いよく降りる様子はまるで鳥のようであり、天使のようでもあった。
そんな平均的な男子の身長よりも低い向日だったが、自分の前に立つその後ろ姿はずっと頼もしく感じたことを思い出し秋の頬は赤く染まる。
彼女は痛みのせいなのだろうと考えながら保健室へと向かった。