自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
見送りからの水着のチェック
主人公名前変換
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山吹中の遥の従兄妹に絡まれた。あいつに似てクソ面倒な奴だったな。腹立たしいから遥の奴を代わりにして頭を叩いた。
「唐突の暴力酷い! 今の時代はすぐに炎上ものだぞっ!」
「黙れ。厄介な従兄妹持ちやがって」
両頬を片手で掴んで凄んでやれば奴は「ひゃい……」と答える。
「麻美、遥も巻き込まれたんだからそんなこと言わないであげて。ほら、早く目的の水着を見に行こうよ。2階で水着のポップアップストアが出てるから」
ね? と秋に言われて仕方なく下僕を解放する。しかし秋も秋だ。あのオレンジ頭に絡まれてボディータッチまでされたのに無防備が過ぎる。あれじゃあの千石とかいう奴も調子に乗るし、もう少し身構えるように言ってやるべきか?
そんなふうに思案していたら二人は催事場となっている2階に向かい始めたので仕方なく後に続くことにした。
目的の場所へ辿り着けば右も左も水着ばかり。あとは水遊びのグッズとか帽子とか色々あったが、ほとんどが水着で占めている。男性物よりも女性物の方が圧倒的に多い。まぁ、種類があるんだから必然的にそうなるのか。だから客も女性ばっか。
遥だけが購入するのかと思って見ていたが、秋も一緒に楽しみながら見ているのでおそらくあいつもこれを機に購入するのかもしれない。
……浮かれてるな。完全に。海に行くからって。そういや、確かに授業以外でプールや海に行く機会はあんまなかったな、私ら。
だったら好きにしてやるか。水着選びは二人の自由にさせて私はそろそろどっかで休もう。
「おい、私は向こうで休憩するから終わったら声かけろ」
「えー? 麻美は水着買わないの?」
「家にある」
「一緒に見なくていいの? 麻美に似合いそうなのもいっぱいあるけど」
「結構。二人で好きにやって」
そう告げて水着を手にする二人の元を離れる。ちょうど近くに休憩出来そうなソファースペースが空いてたのでそこに腰掛け一息つく。
それにしても氷帝を破った青学の手塚が離脱とはな。さすがに向こうにとっては痛手だろうが、すでに敗退したうちには関係ないか。せっかく吉朗のいるルドルフを押し退けて関東大会に進んだってのに、1回戦敗退とはな。
……って、いつまで悔しがってんだかな。もう終わったことだし、考えを切り替えなきゃなんないのにもう一度大会に出られたらな、と考えてしまう。私が試合するわけでもないけど。
そりゃあ、油断負けする奴はいたけど、中には頑張った奴だっていたしな。
宍戸なんてドン底から這い上がってレギュラーの地位を取り戻しただけじゃなく、ちゃんと勝利をもぎ取った。本人はまだ満足した試合じゃなかったようだけど、勝ちは勝ちだ。それに付き合った鳳も良くやったしな。
跡部も手塚相手に勝ち星を得た。正直ヒヤッとしたが、試合自体は悪いものじゃなかったな。
「……」
そこでハッとする。なんで私が未練タラタラなんだと。終わってしまったものはどう転がっても覆らないってのに。
はぁ、と軽い溜め息を吐くと、ちょうどスマホから電話が入った。秋か遥か? と思って液晶画面にて相手を確認する。
……なんで跡部なんだよ。しかもビデオ通話だし。面倒臭いな。無視するか? けど、そのあとメッセージを連投されても腹立つし、用件だけ聞いてとっとと切る方が早いな。
そう判断して渋々とその通話に出ることにした。
「何の用だ」
『ほぅ。これは驚いた。まさか出るとは思わなかったぜ』
なんだよそれ。そっちがかけてきたのにまるで出るとは思わなかったみたいな態度しやがって。っつーか、跡部の後ろで見慣れた顔の何人かが映ってるし、さらには『マジかよ! なんで出るんだよっ!』とか『長太郎の一人勝ちやん』とか聞こえてくる。マジで何なんだよ。
『悪かったな。ビデオ通話にしたら赤宮が出るのか出ないのか馬鹿どもが勝手に賭けを始めてな』
「人を使って賭けにすんな」
『俺様は参加してねーよ。まぁ、ほとんどの奴ら出ないにジュース1本賭けてたみてぇだけどな。だが、結果は出るに賭けた鳳の一人勝ちだ』
なんで長太郎がそんな賭けに参加してんだよ。……あぁ、先輩命令か。可哀想な奴だな。まぁ、勝ったならいいんだろうけど。
「で? 用を言え」
『ミカエルから聞いた。家に帰らず寄り道してるそうじゃねーの』
「悪い?」
『んなこと言ってねーよ。噛みつくな。水着選びをしてるっつーから様子はどうだって聞いてんだよ』
「なんであんたにそんなプライベートのことまで報告しなきゃいけないわけ?」
『変な奴に絡まれたり逆に絡んでねぇか気になるからな』
「保護者か」
『この間も言ったがそうだっつっただろ』
保護者面すんな。そう悪態つこうとしたら急に跡部が映っていた画面が激しく揺れる。
『跡部跡部っ! 俺も話してぇ!』
そう言って画面はジローの顔を映す。眠りこけてる奴が珍しく起きてんのか。
『おっ! 麻美だ! んー? 秋はいねぇの?』
「秋は水着選び真っ只中だ」
『え~! 残念ー! 秋の顔見たかったのにさ~! ね、ね、今すぐ秋の所に行ってよ!』
「秋の邪魔をしたいのか。断る」
『きっびC~!』
本当、こいつの起きてる時のテンションはどうにかならんのか。頭が痛くなる。するとジローの横から向日が顔を見せた。
『赤宮、お前なんで電話に出たんだよ! 長太郎にジュースを奢る羽目になっただろ!』
「……あんた、私が近くにいないからってよくそんなことが言えるな?」
『げっ……べ、別に喧嘩売ってるとかじゃねーぞ! ただ純粋な疑問だっての!』
「ただの八つ当たりに思えるがまぁいい。次顔合わせた時覚えてやがれ」
『うげっ……宍戸パス!』
生意気を言う向日を睨めば、奴はまるで逃げるようにスマホを投げた。……それ跡部のだろうが。電気屋の息子なら大事にしろよ。
宙を舞うらしき景色を見せた画面は次に宍戸を映す。慌てて受け止めたようで「っべぇ……セーフ」という声がぼそりと聞こえ、スマホの向こうの奴と目が合った。
『よ、よぉ。赤宮はもう水着買ったのか?』
「別に買ってない。あるし」
『ん? じゃあ、九条と西成に付き合ってるだけなのか?』
「そうだ。だから今休憩してんだよ」
『あーだから電話も取れたのか』
「残念だったな。賭けに負けて」
『うっ……』
人で賭けをした罰だな。にやりと笑みを浮かべてやれば宍戸は顔を離して言葉に詰まった。
すると今度は長太郎が横からひょこっと覗き込む。そんな後輩に宍戸がスマホを渡したようだ。
『赤宮さんっ! お疲れ様ですっ』
「あぁ、長太郎か。一人勝ちなんだってな? やるじゃん」
『い、いえ、そんな! でも赤宮さんを不愉快にさせてしまってすみませんでした……』
「どうせ周りの奴らに言われて参加したんだろ。率先してやるタイプじゃないし」
『は、はい……でも、俺は赤宮さんが電話に出るって信じてましたっ。手が離せない限り先輩は電話を無視なんてしませんから!』
いや、する時はするけど。何を思ってそう信用するのか。相変わらず変なとこ純粋なんだよな。こいつ。
『鳳、俺にも代わってや』
『あ、はい。赤宮さん、忍足さんに代わりますね』
「は?」
関西弁の声が聞こえた。なんであいつに代わる必要があるんだよ。そう思ってすぐに画面は胡散臭い男を映し出した。
『なぁ、麻美。遥がどんな水着が買うんかこっそり教えてや』
「なんでだよ」
『色とか柄とかお揃いにしたいやん?』
「知るか。なんで私がわざわざあんたに教えなきゃなんないわけ?」
『俺が遥とお揃にしたいからや』
「却下だ。帰れ」
『冷たいわ……』
『忍足、貸して』
『え、ちょお……』
次から次へと忙しないな。今度は誰だと思えば意外にも滝だった。にこりと笑いながら手を振ってくる。
『やぁ、赤宮。実はお願いがあるんだけど』
「あんたがお願いとは珍しいな」
『そうかな? でも赤宮にしか頼めないからさ』
「何?」
『遥の選ぶ水着の露出を抑えるようにしてほしいなって』
それを聞いて大きな溜め息が出た。そういやそうか。こいつは遥の保護者だ。……面倒くせぇ。
「身の丈に合わないものはやめるようには言うが、それだけだ」
『充分だよ。ありがとう』
そう言うとどこからともなく『なんで滝の願いは聞くねん……』と声が聞こえたが聞こえないふりをした。
その後、滝は『どうぞ』と次の奴に代わり始める。そろそろ跡部に代われ。切りたいんだよこっちは。
『ウス。お疲れ様です……』
しかし跡部ではなく、その従者が顔を見せた。
「あぁ」
『……』
「……」
何も言わないのかよ。無口無表情だから仕方ないのか。代わったのならもう少し頑張れよ。
「それだけか?」
『……帰りは……気をつけてください』
「あぁ」
『……』
それだけか。本当に口数少ない奴だな。いつも遥の奴はどうやって話を繋いでんだ? 一人でベラベラ喋ってるだけか?
『……日吉に、代わります』
「『なんでだよ』」
くそっ! キノコとハモった! 向こうも同じことを思ったのか舌打ちしやがった。それすらも同じタイミングで。生意気な奴だ。
忌々しい奴の顔を映した瞬間、互いに嫌な表情を見せる。
「チェンジ」
『こっちの台詞ですけど』
「私しかいねぇだろ。その顔見てるだけでムカつくから早く消えろ」
『こっちだって好きであなたを見てるわけじゃないのですぐに消えますよ』
互いにフンッと鼻を鳴らすタイミングまで一緒だったから遠くの方でジローが『二人ってほんとは仲Eーっしょ?』とか言うからまたキノコと揃って「違う!」『違います!』と叫ぶ。おい、マジふざけんな。ハモるな。
早く跡部に代わりやがれ! さすがにそう言わざるを得なかったので催促すればやっと向こうのスマホの持ち主が姿を見せた。
『随分と熱烈なラブコールだな』
「ぶっ飛ばすぞ」
『冗談くらい流せるようにしな。まぁ、何だかんだ人気者じゃねーの、赤宮』
「秋と遥に用がある奴らもいたようだけどな」
『それはそれだろ。とはいえお前も二人と一緒に水着選びすりゃいいのによ。赤宮なら何でも着こなせるだろうし、ホルターネックやハイネックなんかいいんじゃねーの?』
「あんたの意見なんて聞いてないんだけど」
『そうかよ。ま、個人的な意見だ。決めるのはお前だから好きにしな。じゃあ、そろそろ切るぜ』
「はいはい」
そこでやっと通話を終了させた。はぁーと深くて大きな溜め息を吐き出す。何だかどっと疲れた。
そしていまだ水着を選んでる二人を見て、暇を持て余した私は腰を上げ、秋と遥の元へ向かう。買うかどうかは別として、ホルターネックとハイネックの水着へと目を通すことにした。
「唐突の暴力酷い! 今の時代はすぐに炎上ものだぞっ!」
「黙れ。厄介な従兄妹持ちやがって」
両頬を片手で掴んで凄んでやれば奴は「ひゃい……」と答える。
「麻美、遥も巻き込まれたんだからそんなこと言わないであげて。ほら、早く目的の水着を見に行こうよ。2階で水着のポップアップストアが出てるから」
ね? と秋に言われて仕方なく下僕を解放する。しかし秋も秋だ。あのオレンジ頭に絡まれてボディータッチまでされたのに無防備が過ぎる。あれじゃあの千石とかいう奴も調子に乗るし、もう少し身構えるように言ってやるべきか?
そんなふうに思案していたら二人は催事場となっている2階に向かい始めたので仕方なく後に続くことにした。
目的の場所へ辿り着けば右も左も水着ばかり。あとは水遊びのグッズとか帽子とか色々あったが、ほとんどが水着で占めている。男性物よりも女性物の方が圧倒的に多い。まぁ、種類があるんだから必然的にそうなるのか。だから客も女性ばっか。
遥だけが購入するのかと思って見ていたが、秋も一緒に楽しみながら見ているのでおそらくあいつもこれを機に購入するのかもしれない。
……浮かれてるな。完全に。海に行くからって。そういや、確かに授業以外でプールや海に行く機会はあんまなかったな、私ら。
だったら好きにしてやるか。水着選びは二人の自由にさせて私はそろそろどっかで休もう。
「おい、私は向こうで休憩するから終わったら声かけろ」
「えー? 麻美は水着買わないの?」
「家にある」
「一緒に見なくていいの? 麻美に似合いそうなのもいっぱいあるけど」
「結構。二人で好きにやって」
そう告げて水着を手にする二人の元を離れる。ちょうど近くに休憩出来そうなソファースペースが空いてたのでそこに腰掛け一息つく。
それにしても氷帝を破った青学の手塚が離脱とはな。さすがに向こうにとっては痛手だろうが、すでに敗退したうちには関係ないか。せっかく吉朗のいるルドルフを押し退けて関東大会に進んだってのに、1回戦敗退とはな。
……って、いつまで悔しがってんだかな。もう終わったことだし、考えを切り替えなきゃなんないのにもう一度大会に出られたらな、と考えてしまう。私が試合するわけでもないけど。
そりゃあ、油断負けする奴はいたけど、中には頑張った奴だっていたしな。
宍戸なんてドン底から這い上がってレギュラーの地位を取り戻しただけじゃなく、ちゃんと勝利をもぎ取った。本人はまだ満足した試合じゃなかったようだけど、勝ちは勝ちだ。それに付き合った鳳も良くやったしな。
跡部も手塚相手に勝ち星を得た。正直ヒヤッとしたが、試合自体は悪いものじゃなかったな。
「……」
そこでハッとする。なんで私が未練タラタラなんだと。終わってしまったものはどう転がっても覆らないってのに。
はぁ、と軽い溜め息を吐くと、ちょうどスマホから電話が入った。秋か遥か? と思って液晶画面にて相手を確認する。
……なんで跡部なんだよ。しかもビデオ通話だし。面倒臭いな。無視するか? けど、そのあとメッセージを連投されても腹立つし、用件だけ聞いてとっとと切る方が早いな。
そう判断して渋々とその通話に出ることにした。
「何の用だ」
『ほぅ。これは驚いた。まさか出るとは思わなかったぜ』
なんだよそれ。そっちがかけてきたのにまるで出るとは思わなかったみたいな態度しやがって。っつーか、跡部の後ろで見慣れた顔の何人かが映ってるし、さらには『マジかよ! なんで出るんだよっ!』とか『長太郎の一人勝ちやん』とか聞こえてくる。マジで何なんだよ。
『悪かったな。ビデオ通話にしたら赤宮が出るのか出ないのか馬鹿どもが勝手に賭けを始めてな』
「人を使って賭けにすんな」
『俺様は参加してねーよ。まぁ、ほとんどの奴ら出ないにジュース1本賭けてたみてぇだけどな。だが、結果は出るに賭けた鳳の一人勝ちだ』
なんで長太郎がそんな賭けに参加してんだよ。……あぁ、先輩命令か。可哀想な奴だな。まぁ、勝ったならいいんだろうけど。
「で? 用を言え」
『ミカエルから聞いた。家に帰らず寄り道してるそうじゃねーの』
「悪い?」
『んなこと言ってねーよ。噛みつくな。水着選びをしてるっつーから様子はどうだって聞いてんだよ』
「なんであんたにそんなプライベートのことまで報告しなきゃいけないわけ?」
『変な奴に絡まれたり逆に絡んでねぇか気になるからな』
「保護者か」
『この間も言ったがそうだっつっただろ』
保護者面すんな。そう悪態つこうとしたら急に跡部が映っていた画面が激しく揺れる。
『跡部跡部っ! 俺も話してぇ!』
そう言って画面はジローの顔を映す。眠りこけてる奴が珍しく起きてんのか。
『おっ! 麻美だ! んー? 秋はいねぇの?』
「秋は水着選び真っ只中だ」
『え~! 残念ー! 秋の顔見たかったのにさ~! ね、ね、今すぐ秋の所に行ってよ!』
「秋の邪魔をしたいのか。断る」
『きっびC~!』
本当、こいつの起きてる時のテンションはどうにかならんのか。頭が痛くなる。するとジローの横から向日が顔を見せた。
『赤宮、お前なんで電話に出たんだよ! 長太郎にジュースを奢る羽目になっただろ!』
「……あんた、私が近くにいないからってよくそんなことが言えるな?」
『げっ……べ、別に喧嘩売ってるとかじゃねーぞ! ただ純粋な疑問だっての!』
「ただの八つ当たりに思えるがまぁいい。次顔合わせた時覚えてやがれ」
『うげっ……宍戸パス!』
生意気を言う向日を睨めば、奴はまるで逃げるようにスマホを投げた。……それ跡部のだろうが。電気屋の息子なら大事にしろよ。
宙を舞うらしき景色を見せた画面は次に宍戸を映す。慌てて受け止めたようで「っべぇ……セーフ」という声がぼそりと聞こえ、スマホの向こうの奴と目が合った。
『よ、よぉ。赤宮はもう水着買ったのか?』
「別に買ってない。あるし」
『ん? じゃあ、九条と西成に付き合ってるだけなのか?』
「そうだ。だから今休憩してんだよ」
『あーだから電話も取れたのか』
「残念だったな。賭けに負けて」
『うっ……』
人で賭けをした罰だな。にやりと笑みを浮かべてやれば宍戸は顔を離して言葉に詰まった。
すると今度は長太郎が横からひょこっと覗き込む。そんな後輩に宍戸がスマホを渡したようだ。
『赤宮さんっ! お疲れ様ですっ』
「あぁ、長太郎か。一人勝ちなんだってな? やるじゃん」
『い、いえ、そんな! でも赤宮さんを不愉快にさせてしまってすみませんでした……』
「どうせ周りの奴らに言われて参加したんだろ。率先してやるタイプじゃないし」
『は、はい……でも、俺は赤宮さんが電話に出るって信じてましたっ。手が離せない限り先輩は電話を無視なんてしませんから!』
いや、する時はするけど。何を思ってそう信用するのか。相変わらず変なとこ純粋なんだよな。こいつ。
『鳳、俺にも代わってや』
『あ、はい。赤宮さん、忍足さんに代わりますね』
「は?」
関西弁の声が聞こえた。なんであいつに代わる必要があるんだよ。そう思ってすぐに画面は胡散臭い男を映し出した。
『なぁ、麻美。遥がどんな水着が買うんかこっそり教えてや』
「なんでだよ」
『色とか柄とかお揃いにしたいやん?』
「知るか。なんで私がわざわざあんたに教えなきゃなんないわけ?」
『俺が遥とお揃にしたいからや』
「却下だ。帰れ」
『冷たいわ……』
『忍足、貸して』
『え、ちょお……』
次から次へと忙しないな。今度は誰だと思えば意外にも滝だった。にこりと笑いながら手を振ってくる。
『やぁ、赤宮。実はお願いがあるんだけど』
「あんたがお願いとは珍しいな」
『そうかな? でも赤宮にしか頼めないからさ』
「何?」
『遥の選ぶ水着の露出を抑えるようにしてほしいなって』
それを聞いて大きな溜め息が出た。そういやそうか。こいつは遥の保護者だ。……面倒くせぇ。
「身の丈に合わないものはやめるようには言うが、それだけだ」
『充分だよ。ありがとう』
そう言うとどこからともなく『なんで滝の願いは聞くねん……』と声が聞こえたが聞こえないふりをした。
その後、滝は『どうぞ』と次の奴に代わり始める。そろそろ跡部に代われ。切りたいんだよこっちは。
『ウス。お疲れ様です……』
しかし跡部ではなく、その従者が顔を見せた。
「あぁ」
『……』
「……」
何も言わないのかよ。無口無表情だから仕方ないのか。代わったのならもう少し頑張れよ。
「それだけか?」
『……帰りは……気をつけてください』
「あぁ」
『……』
それだけか。本当に口数少ない奴だな。いつも遥の奴はどうやって話を繋いでんだ? 一人でベラベラ喋ってるだけか?
『……日吉に、代わります』
「『なんでだよ』」
くそっ! キノコとハモった! 向こうも同じことを思ったのか舌打ちしやがった。それすらも同じタイミングで。生意気な奴だ。
忌々しい奴の顔を映した瞬間、互いに嫌な表情を見せる。
「チェンジ」
『こっちの台詞ですけど』
「私しかいねぇだろ。その顔見てるだけでムカつくから早く消えろ」
『こっちだって好きであなたを見てるわけじゃないのですぐに消えますよ』
互いにフンッと鼻を鳴らすタイミングまで一緒だったから遠くの方でジローが『二人ってほんとは仲Eーっしょ?』とか言うからまたキノコと揃って「違う!」『違います!』と叫ぶ。おい、マジふざけんな。ハモるな。
早く跡部に代わりやがれ! さすがにそう言わざるを得なかったので催促すればやっと向こうのスマホの持ち主が姿を見せた。
『随分と熱烈なラブコールだな』
「ぶっ飛ばすぞ」
『冗談くらい流せるようにしな。まぁ、何だかんだ人気者じゃねーの、赤宮』
「秋と遥に用がある奴らもいたようだけどな」
『それはそれだろ。とはいえお前も二人と一緒に水着選びすりゃいいのによ。赤宮なら何でも着こなせるだろうし、ホルターネックやハイネックなんかいいんじゃねーの?』
「あんたの意見なんて聞いてないんだけど」
『そうかよ。ま、個人的な意見だ。決めるのはお前だから好きにしな。じゃあ、そろそろ切るぜ』
「はいはい」
そこでやっと通話を終了させた。はぁーと深くて大きな溜め息を吐き出す。何だかどっと疲れた。
そしていまだ水着を選んでる二人を見て、暇を持て余した私は腰を上げ、秋と遥の元へ向かう。買うかどうかは別として、ホルターネックとハイネックの水着へと目を通すことにした。