自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
シングルス2とその合間に出会った入院中の少年
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『……総合病院前~』
「ハッ……!」
バスのアナウンスを聞いて、こっくりこっくりと頭を前後に揺らしていた遥は瞬時に目覚め、急いで目的地へと降り立つ。
愛する樺地に付き添うため追いかけたが、途中で捕まることなく竜崎に連れられた彼は一足早く病院に向かったあとだったため、遥もバスに飛び乗った。
座席に着きしばらくしてから昨日作った応援うちわのせいなのか、睡眠時間が足りなかった彼女はつい船を漕ぐようにうとうととしてしまったわけである。
……降りる停留所の名前を確認せず遥は病院という名だけを頼りに颯爽と降り、そのまま目の前に聳え立つ病院へと走ったのだ。
「えっ!? ここ、大竹総合病院じゃないんですかっ!?」
受付でつい声を上げてしまった遥は慌てて口元を両手で押さえると対応した看護師は笑い堪えつつ答えた。
「こちらは金井総合病院です」
「うっそん……」
「大竹総合病院はー……都内の病院ですね。こちらは神奈川県の病院となりますが」
「神奈川……」
優しい看護師に調べてもらい、いつの間にか神奈川に足を踏み込んでいたことを知ると遥は寝ぼけていた自分を恨んだ。
バスそのものを間違えたのか、目的の停留所を過ぎてしまったのかは分からないが、ただ分かることは急いで樺地の元へ向かうことである。
「ちょうど近くに大竹総合病院前に向かう停留所がございますのでそちらに乗れば着きますよ」
受付の看護師はどうやらそこまで調べてくれたようでかなり気が利いていて遥は「優しい……」と、じーんと感動していた。
「あっ、ありがとうございます! すぐそこに向かいますっ!」
「お待ちください。すぐに停留所の地図を用意しますので」
「そこまでっ!?」
「停留所がいくつかあるのでややこしいんです」
そう伝えると受付担当はすぐに地図を取り出した。手書きの地図をコピーしたものなので普段から停留所間違いが多々あると思われる。
「うわ、思ったよりいっぱい……」
「行けそうですか?」
「頑張ります……」
ぐぬぬ、と唸りながらも今度こそ目的地に辿り着かねばと考える遥の元へ患者らしき人物が近づいた。
「それなら俺が案内しますよ」
パジャマにカーディガンを羽織り、波立つ深海の髪の少年がにこりと笑いながら声をかける。
「あら、幸村くん。今日は動けるの?」
「はい。気分がいいので」
「でも、外出許可は出てないわよね?」
「バス停までですから。それ以上は離れませんよ」
「じゃあ、すぐに戻ってきてね」
「はい。……じゃあ、行こっか」
「へ? あ、うん……?」
なぜか案内を買って出た患者に戸惑いながらも遥は彼と共に病院を出た。
「なんかごめんねー。わざわざ付き添ってもらっちゃって」
「いいや、こっちこそ無理やり付いてきたものだし。少しでも外に出る理由があって嬉しいくらいだからね」
どこか儚げな少年は外を歩けることに喜んでいるように見えた。
「外、出られないの? そんなに辛い病気?」
「まぁ、うん。免疫系の病気でね……。一応屋上は出られるんだけどあまり院内から出る身ではなくてね」
「えっ、じゃあ付き添いもダメなのではっ?」
「本来は、かな。でも一応許しは得たしね。ところで君は違う病院に向かってたんだよね? お見舞いかな?」
「そう! そうなの! お見舞い、というか付き添い予定だったんだけどね!」
遥は事の経緯を語った。テニスで負傷した愛しの後輩の容態が心配で心配で、と勢いのままに。
「……実は俺もね、やってたんだ、テニス。今はこんな状態だから出来ないんだけど……」
「そーなんだっ。じゃあ、早く元気になってテニス出来るようになりたいよね」
「そうだね。仲間達もよく見舞いに来てくれてさ。プレッシャーも感じるけど……手術に成功するかどうか不安でね」
手術をするほどとは思っていなかったので遥はそこまで深刻な病気なのかと考えながらバス停まで案内する彼に何とか元気づけてもらおうと口を開く。
「とにかく楽しいこと考えようよ。どちらにせよ手術を受けるなら不安より無事に終わってやりたいことや楽しみにしてることを考える方が一番いいと思うなっ。手術中もそれで乗りきっちゃおうよ!」
「……」
「まぁ、初めて会う人の他人事のようなことしか言えないんだけどさっ。それでも前向きの方が楽しいよ! ポジティブにいこ!」
ぐっ、拳を握って元気づけてみる遥に少年は小さく笑った。
「ははっ。確かにそうだね。……でも手術中は麻酔を打つから難しいかもしれないけど心持ちくらいは前向きでいないといけないね」
「そうそう。あとは他人にいっぱい甘えとくといいよ」
「分かった。それならお言葉に甘えて━━」
その瞬間、少年は口元に手を押えて激しく咳き込んだ。遥も突然のことで驚き「だ、大丈夫っ!?」と背中を撫でるが、咳は収まる気配がない。
「一旦病院に戻ろっ!」
もうすぐでバス停に到着するはずだったが、一大事だと判断した遥は彼の手を取り、まだ相手が歩けるうちに病院へと連れ戻したのだった。
病院へ連れて戻ると、少年の容態を見た看護師達がバタバタと慌ただしくなり、遥もただ事じゃないのだと察する。
案内役を買って出てくれた少年はすぐに病院の人間に託し、遥は彼の様子が気になりながらもどうすることも出来なかったため、諦めてバス停へと向かった。
「ハッ……!」
バスのアナウンスを聞いて、こっくりこっくりと頭を前後に揺らしていた遥は瞬時に目覚め、急いで目的地へと降り立つ。
愛する樺地に付き添うため追いかけたが、途中で捕まることなく竜崎に連れられた彼は一足早く病院に向かったあとだったため、遥もバスに飛び乗った。
座席に着きしばらくしてから昨日作った応援うちわのせいなのか、睡眠時間が足りなかった彼女はつい船を漕ぐようにうとうととしてしまったわけである。
……降りる停留所の名前を確認せず遥は病院という名だけを頼りに颯爽と降り、そのまま目の前に聳え立つ病院へと走ったのだ。
「えっ!? ここ、大竹総合病院じゃないんですかっ!?」
受付でつい声を上げてしまった遥は慌てて口元を両手で押さえると対応した看護師は笑い堪えつつ答えた。
「こちらは金井総合病院です」
「うっそん……」
「大竹総合病院はー……都内の病院ですね。こちらは神奈川県の病院となりますが」
「神奈川……」
優しい看護師に調べてもらい、いつの間にか神奈川に足を踏み込んでいたことを知ると遥は寝ぼけていた自分を恨んだ。
バスそのものを間違えたのか、目的の停留所を過ぎてしまったのかは分からないが、ただ分かることは急いで樺地の元へ向かうことである。
「ちょうど近くに大竹総合病院前に向かう停留所がございますのでそちらに乗れば着きますよ」
受付の看護師はどうやらそこまで調べてくれたようでかなり気が利いていて遥は「優しい……」と、じーんと感動していた。
「あっ、ありがとうございます! すぐそこに向かいますっ!」
「お待ちください。すぐに停留所の地図を用意しますので」
「そこまでっ!?」
「停留所がいくつかあるのでややこしいんです」
そう伝えると受付担当はすぐに地図を取り出した。手書きの地図をコピーしたものなので普段から停留所間違いが多々あると思われる。
「うわ、思ったよりいっぱい……」
「行けそうですか?」
「頑張ります……」
ぐぬぬ、と唸りながらも今度こそ目的地に辿り着かねばと考える遥の元へ患者らしき人物が近づいた。
「それなら俺が案内しますよ」
パジャマにカーディガンを羽織り、波立つ深海の髪の少年がにこりと笑いながら声をかける。
「あら、幸村くん。今日は動けるの?」
「はい。気分がいいので」
「でも、外出許可は出てないわよね?」
「バス停までですから。それ以上は離れませんよ」
「じゃあ、すぐに戻ってきてね」
「はい。……じゃあ、行こっか」
「へ? あ、うん……?」
なぜか案内を買って出た患者に戸惑いながらも遥は彼と共に病院を出た。
「なんかごめんねー。わざわざ付き添ってもらっちゃって」
「いいや、こっちこそ無理やり付いてきたものだし。少しでも外に出る理由があって嬉しいくらいだからね」
どこか儚げな少年は外を歩けることに喜んでいるように見えた。
「外、出られないの? そんなに辛い病気?」
「まぁ、うん。免疫系の病気でね……。一応屋上は出られるんだけどあまり院内から出る身ではなくてね」
「えっ、じゃあ付き添いもダメなのではっ?」
「本来は、かな。でも一応許しは得たしね。ところで君は違う病院に向かってたんだよね? お見舞いかな?」
「そう! そうなの! お見舞い、というか付き添い予定だったんだけどね!」
遥は事の経緯を語った。テニスで負傷した愛しの後輩の容態が心配で心配で、と勢いのままに。
「……実は俺もね、やってたんだ、テニス。今はこんな状態だから出来ないんだけど……」
「そーなんだっ。じゃあ、早く元気になってテニス出来るようになりたいよね」
「そうだね。仲間達もよく見舞いに来てくれてさ。プレッシャーも感じるけど……手術に成功するかどうか不安でね」
手術をするほどとは思っていなかったので遥はそこまで深刻な病気なのかと考えながらバス停まで案内する彼に何とか元気づけてもらおうと口を開く。
「とにかく楽しいこと考えようよ。どちらにせよ手術を受けるなら不安より無事に終わってやりたいことや楽しみにしてることを考える方が一番いいと思うなっ。手術中もそれで乗りきっちゃおうよ!」
「……」
「まぁ、初めて会う人の他人事のようなことしか言えないんだけどさっ。それでも前向きの方が楽しいよ! ポジティブにいこ!」
ぐっ、拳を握って元気づけてみる遥に少年は小さく笑った。
「ははっ。確かにそうだね。……でも手術中は麻酔を打つから難しいかもしれないけど心持ちくらいは前向きでいないといけないね」
「そうそう。あとは他人にいっぱい甘えとくといいよ」
「分かった。それならお言葉に甘えて━━」
その瞬間、少年は口元に手を押えて激しく咳き込んだ。遥も突然のことで驚き「だ、大丈夫っ!?」と背中を撫でるが、咳は収まる気配がない。
「一旦病院に戻ろっ!」
もうすぐでバス停に到着するはずだったが、一大事だと判断した遥は彼の手を取り、まだ相手が歩けるうちに病院へと連れ戻したのだった。
病院へ連れて戻ると、少年の容態を見た看護師達がバタバタと慌ただしくなり、遥もただ事じゃないのだと察する。
案内役を買って出てくれた少年はすぐに病院の人間に託し、遥は彼の様子が気になりながらもどうすることも出来なかったため、諦めてバス停へと向かった。