自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
シングルス2とその合間に出会った入院中の少年
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氷帝VS青学シングルス2の試合が始まって早々のこと。青学不二からのサービスだがそれは普通のサーブではなかった。
上へと投げるトスではなく、下へ落として打つアンダーサーブ。それで意表を突いたつもりかと騒ぐ氷帝部員は構わず芥川を応援する。
「その打球消えるよ」
不二のその言葉の意味は誰も分からなかった。
芥川も不二のアンダーサーブを返そうとラケットを振ったが、ラケット面に球は当たることはなくスカッと空振りしてしまう。それはただのミスとは言えなかったし、芥川もちゃんと打球を捉えていたはずだった。
「何なんだ、今の不二のサーブは?」
「ボールが手元で……」
静まり返るコート。誰もが目を疑うような瞬間を目の当たりにしたから仕方ないだろう。
芥川の元へと向かっていた不二のサーブは打とうとした芥川の前から消えてしまったのだから。
「消えた?」
その瞬間、会場は驚きと歓喜の声に包まれる。たった1球で不二の実力を見せつけたようなものだった。
芥川は消えたボールを見つけるとどういう状況であそこに転がったのか不思議で仕方なかった。そしてみるみるうちに彼の眼は大きくなる。
「マジマジすっげーっ! 今の見た? おいおい跡部すっげーじゃんアイツ!」
「言ったろジロー。寝てたのか?」
「俺もうワクワクしてきたっ!!」
芥川慈郎、覚醒である。
一気に目の冴えた彼は審判に促されコートへと戻った。
「ジロー先輩起きちゃいましたね」
「あーあ、賑やかになっちまうぜ」
まるでそれを分かっていたような口振りである。青学の天才と呼ばれる不二をシングルス2に持ってくると読んでいた跡部は、不二には芥川が適任だと考えたためのオーダーだった。
「あいつのオンオフはどうにかならないわけ? あまりにも極端だろ」
「それがジローらしいからありのままのジローを受け止めてあげてよ」
はぁ、と溜め息を吐き捨てる麻美とは対照的に秋はくすくすと笑いながらテンションを上げる芥川を見守っていた。
「せいぜいつまらない試合しないようにしてもらいたいですね」
そこへ煽るような準レギュラーの声に麻美と秋は声の主である日吉へと目を向ける。
「日吉くん……」
「陰気な奴は相変わらずジメジメとうざったいな」
「ムラのある人間に大事な試合を託す方がどうかと思いますけど」
「ジローはちゃんと実力があるから任されてるんだよ」
「じゃあ、俺は実力がないから任されないと?」
「言われなくても分かったこと聞いてんなよ、キノコが」
「おつむの弱いあなたには聞いてませんけど?」
「あ?」
「ふ、二人ともっ」
またも始まる麻美と日吉の言い合い。互いに火花を散らすのはある意味行ってよしに次ぐ氷帝名物として認定されてもおかしくはない。
とはいえ喧嘩は良くないと秋は二人の間に入って何とか宥めようとする。
「麻美はジローに期待してるし、日吉くんもジローを応援したいだけなんだよ」
「違う」
「違います」
二人の声が揃う。本当は仲がいいんじゃないかな、と思わずにはいられないほどぴったりである。
「……とにかく今はジローを応援しよう。二人が争っても何もならないし、結果に影響は出ないんだもの」
眉を下げながら困ったように説得する秋に麻美と日吉はすぐに口を噤んだ。
ひとまず言い合いが止まったようでホッと安心した秋は最後にと日吉に目を向ける。
「あと、私は日吉くんの実力がないなんて思ってないよ」
「……」
「今回、日吉くんは補欠に入ってるんだよ。オーダーに組まれてるのにそんなこと思えないよ」
「所詮は補欠じゃないですか。出番なんてないに等しい」
ハンッと鼻で笑う日吉は秋を睨む。そんな年下の彼の瞳に怖じけることなく秋は首を横に振った。
「出番があるかないか、じゃないんだよ。もしものことがあった時、誰がその座に相応しいか、じゃないかな。補欠と言っても誰でもいいわけじゃない。オーダーを考えるのは跡部と榊先生だし、彼らもいい加減な気持ちでオーダーを組んでるんじゃないって日吉くんも分かるはずだよ」
「……」
「日吉くんは今、準レギュラーの中でも一番正レギュラーに近い存在なんだよ。だから自信持ってほしいな」
「━━」
そう微笑む秋に日吉は言葉を失った。いや、言葉を口にしようと思ったが頭が真っ白になったのだ。そしてふいっと顔を背けた彼は秋から距離を取った席へと座った。
突然避けられたと感じた秋が慌てる。
「え、えっ、私何か気に障ること言っちゃった……?」
「どうでもいい」
日吉の態度、反応、この世で一番どうでもいいと心底思った麻美は呆れた表情で舌打ちをする。
「あ、謝った方がいいのかな……」
「心当たりないならいいだろ。菌糸類に人間様が頭を下げる必要はない」
「麻美、その言い方やめてあげてよ……」
「……おい、お前ら日吉を怒らせたのか? なんか向こうですげー舌打ちしてたぞ」
マネージャー二人の元に宍戸が近寄り声をかける。どうやら離れてすぐに舌打ちしたのが気になり二人に尋ねた様子。
「知らん。あのキノコが勝手に舌打ちしたんだろ」
「やっぱり私が日吉くんを怒らせちゃったんだ……」
「? まぁ、何も突っかかってこねーなら向こうは気にしてねぇか、自分に非があると思って苛立ってるだけかもしんねーけど」
「だったらそうなんだろ。そもそも秋に非があるわけないし」
「いや、俺は知らねーけど……」
一体どうしたのかと日吉のことが気にかかる秋だったが、試合は続いているため今は芥川の試合を観戦することに決めた。
上へと投げるトスではなく、下へ落として打つアンダーサーブ。それで意表を突いたつもりかと騒ぐ氷帝部員は構わず芥川を応援する。
「その打球消えるよ」
不二のその言葉の意味は誰も分からなかった。
芥川も不二のアンダーサーブを返そうとラケットを振ったが、ラケット面に球は当たることはなくスカッと空振りしてしまう。それはただのミスとは言えなかったし、芥川もちゃんと打球を捉えていたはずだった。
「何なんだ、今の不二のサーブは?」
「ボールが手元で……」
静まり返るコート。誰もが目を疑うような瞬間を目の当たりにしたから仕方ないだろう。
芥川の元へと向かっていた不二のサーブは打とうとした芥川の前から消えてしまったのだから。
「消えた?」
その瞬間、会場は驚きと歓喜の声に包まれる。たった1球で不二の実力を見せつけたようなものだった。
芥川は消えたボールを見つけるとどういう状況であそこに転がったのか不思議で仕方なかった。そしてみるみるうちに彼の眼は大きくなる。
「マジマジすっげーっ! 今の見た? おいおい跡部すっげーじゃんアイツ!」
「言ったろジロー。寝てたのか?」
「俺もうワクワクしてきたっ!!」
芥川慈郎、覚醒である。
一気に目の冴えた彼は審判に促されコートへと戻った。
「ジロー先輩起きちゃいましたね」
「あーあ、賑やかになっちまうぜ」
まるでそれを分かっていたような口振りである。青学の天才と呼ばれる不二をシングルス2に持ってくると読んでいた跡部は、不二には芥川が適任だと考えたためのオーダーだった。
「あいつのオンオフはどうにかならないわけ? あまりにも極端だろ」
「それがジローらしいからありのままのジローを受け止めてあげてよ」
はぁ、と溜め息を吐き捨てる麻美とは対照的に秋はくすくすと笑いながらテンションを上げる芥川を見守っていた。
「せいぜいつまらない試合しないようにしてもらいたいですね」
そこへ煽るような準レギュラーの声に麻美と秋は声の主である日吉へと目を向ける。
「日吉くん……」
「陰気な奴は相変わらずジメジメとうざったいな」
「ムラのある人間に大事な試合を託す方がどうかと思いますけど」
「ジローはちゃんと実力があるから任されてるんだよ」
「じゃあ、俺は実力がないから任されないと?」
「言われなくても分かったこと聞いてんなよ、キノコが」
「おつむの弱いあなたには聞いてませんけど?」
「あ?」
「ふ、二人ともっ」
またも始まる麻美と日吉の言い合い。互いに火花を散らすのはある意味行ってよしに次ぐ氷帝名物として認定されてもおかしくはない。
とはいえ喧嘩は良くないと秋は二人の間に入って何とか宥めようとする。
「麻美はジローに期待してるし、日吉くんもジローを応援したいだけなんだよ」
「違う」
「違います」
二人の声が揃う。本当は仲がいいんじゃないかな、と思わずにはいられないほどぴったりである。
「……とにかく今はジローを応援しよう。二人が争っても何もならないし、結果に影響は出ないんだもの」
眉を下げながら困ったように説得する秋に麻美と日吉はすぐに口を噤んだ。
ひとまず言い合いが止まったようでホッと安心した秋は最後にと日吉に目を向ける。
「あと、私は日吉くんの実力がないなんて思ってないよ」
「……」
「今回、日吉くんは補欠に入ってるんだよ。オーダーに組まれてるのにそんなこと思えないよ」
「所詮は補欠じゃないですか。出番なんてないに等しい」
ハンッと鼻で笑う日吉は秋を睨む。そんな年下の彼の瞳に怖じけることなく秋は首を横に振った。
「出番があるかないか、じゃないんだよ。もしものことがあった時、誰がその座に相応しいか、じゃないかな。補欠と言っても誰でもいいわけじゃない。オーダーを考えるのは跡部と榊先生だし、彼らもいい加減な気持ちでオーダーを組んでるんじゃないって日吉くんも分かるはずだよ」
「……」
「日吉くんは今、準レギュラーの中でも一番正レギュラーに近い存在なんだよ。だから自信持ってほしいな」
「━━」
そう微笑む秋に日吉は言葉を失った。いや、言葉を口にしようと思ったが頭が真っ白になったのだ。そしてふいっと顔を背けた彼は秋から距離を取った席へと座った。
突然避けられたと感じた秋が慌てる。
「え、えっ、私何か気に障ること言っちゃった……?」
「どうでもいい」
日吉の態度、反応、この世で一番どうでもいいと心底思った麻美は呆れた表情で舌打ちをする。
「あ、謝った方がいいのかな……」
「心当たりないならいいだろ。菌糸類に人間様が頭を下げる必要はない」
「麻美、その言い方やめてあげてよ……」
「……おい、お前ら日吉を怒らせたのか? なんか向こうですげー舌打ちしてたぞ」
マネージャー二人の元に宍戸が近寄り声をかける。どうやら離れてすぐに舌打ちしたのが気になり二人に尋ねた様子。
「知らん。あのキノコが勝手に舌打ちしたんだろ」
「やっぱり私が日吉くんを怒らせちゃったんだ……」
「? まぁ、何も突っかかってこねーなら向こうは気にしてねぇか、自分に非があると思って苛立ってるだけかもしんねーけど」
「だったらそうなんだろ。そもそも秋に非があるわけないし」
「いや、俺は知らねーけど……」
一体どうしたのかと日吉のことが気にかかる秋だったが、試合は続いているため今は芥川の試合を観戦することに決めた。