自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
復活公式戦ダブルス1
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試合は海堂がキレたことにより一人でがむしゃらにプレイを始めた。
鳳のサーブを返せない、宍戸のライジングカウンターも返せない。一人でずっと走り続けてもゲームは5-0で氷帝が有利。青学はもう後がなかった。
「あと1ゲームだな」
「勝てる……よね。ここまで来たならあと1ゲームだもの」
氷帝の応援も熱が入る。余程のことでもない限り引っくり返されることはないだろう。
「ここで逆転負けでもされたらお笑いものですけどね」
そんな麻美と秋の会話に割り込むように今まで黙っていた男が口を開く。今大会補欠としてエントリーされた日吉であった。
「さすが陰湿な奴は言うことが違うな」
「嫌みを言うのはそちらも得意なはずでしょう?」
「水を差すような奴とは違うんだよ」
「人のこと言えないくせに。随分と肩を持ってるように見えますが、あなたでも信じることが出来たんですね」
「は? 馬鹿にしてんのかこの毒キノコが」
「何度訂正しても学習しないんですから。早く病院に行ってください。不愉快ですので」
「ふ、二人ともこんな時まで喧嘩しないのっ」
麻美と日吉は互いのことで口を開けば必ず喧嘩に発展してしまう。
いつものこととはいえ、大事な試合中にもそれを見せるのは周りの仲間達の士気にも関わる、そう考えた秋が二人の仲裁役を買って出るが、麻美と日吉はフンと互いに鼻を鳴らしてそっぽを向くだけ。
ひとまず口論を止めることは出来たので秋も軽く溜め息をつきながらそれで妥協する。元よりこの二人は互いに謝罪することなどないのだから。
しかし、試合の流れが変わり始めた。あと1ゲームで氷帝の勝ちだというのにここにきて青学の動きが変わったのだ。青学、というより乾個人の動きと言える。
まるでそこに打つと分かるような発言と共にリターンをし、ネットを超えないことが分かったような言葉、そして海堂にはベストショットを打つために指示を出す。
全て読まれたような乾の発言、それは彼がデータを収集していたことを示すもの。
まぐれなどではない。その証拠に青学はあっという間に1ゲームを奪ったのだ。
「……おい、跡部。一体どういうことだ」
もうすぐ勝てるというのにどういう悪足掻きだ。そう言いたげな麻美が苛立ちを抑えられない声で跡部に説明を求める。
跡部はというと顔を顰めるのが早い奴だなと半ば呆れながらも彼女のためにその説明を始めた。
「見ての通りだ。奴は相手のプレイスタイル、性格などから攻撃パターンを予測する青学の頭脳 である乾のデータテニスだ」
「それじゃあ今までずっと乾くんが動かなかったのはこっちのデータを取っていたってこと……?」
「そういうことだ」
「アカンやろあれは? たった3ゲームで大した観察力や」
「嫌なテニスやりやがるぜ」
乾の動きの変化は氷帝ダブルス2も驚かせる。そして何も動かないままジッと観察されるのはどこかいい気もしなかった。
「しかし乾がデータを収集している間3ゲーム、全てのボールに執念で喰らいついていた海堂。奴のスタミナが無ければ奴らの反撃は無かった!」
「……っち」
そう断言する跡部に麻美は舌打ちをする。そして胸の中で嫌な予感が渦巻いていた。
『ゲーム青学2-5!!』
『ゲーム青学3-5!!』
麻美のその予感は当たっていた。続く第7ゲーム、第8ゲームも青学が制する。
あと1ゲームなのになぜ取れない? イライラする麻美は腕を組みながら人差し指を何度もトントンと動かし、眉間に皺を寄せる。背後から見れば彼女の静かな怒りのオーラは禍々しく他の部員達を怯えさせた。
まさかこのままさっきみたいな逆転負けをするんじゃないだろうな? そんな予感さえも麻美の脳裏に過ぎる。
ふざけるなよ、またそんな無様な姿を私に見せるのか。連敗なんて私が許すわけないだろ。
「……」
負けるかもしれないという焦り。負けるかもしれないという苛立ち。しかし次のゲームは鳳からのサーブだと知り、麻美は一瞬の希望が見えた。
そう、彼らはまだ鳳のスカッドサーブに触れることすら出来ていない。氷帝の応援団も勝ったも同然だと湧き上がる。
麻美も同様のことを考えて僅かに口角が上がった。
しかしここにきて緊張からなのか鳳のサーブがネットを超えない失敗ばかり続き、0-30と相手側にポイントが入ってしまう。
「……長太郎、こんな大事な時に緊張してやがるのか」
「いや、違う……。そんな癖まで見抜くとは……恐るべし乾」
「癖だと?」
「見ろ。乾の奴、ワザとリターンの位置を通常よりかなり左に寄り、鳳に右サイドを意識させ狙わせてやがる」
「右サイドを狙う長太郎の右手首をコネる癖があるせいでネットになってしまう……彼はそこまで見抜いてるみたいだね。うん、やるねー」
「スカッドサーブは完璧じゃないってか」
「そういうこった。あいつの今後の課題だ」
ならばまだ長太郎には伸び代があるだろう。しかしそれよりも今はこの試合をどうにかして勝つしかない。すでにダブルフォルト続きで0-40と次ダブルフォルトになればまた青学に1ゲームを取られてしまう。
頼みの鳳のサービスゲームを取られるのはさすがに痛い。まだ精神的にも弱い部分がある鳳にとってこのプレッシャーはかなりの重石になるだろう。彼の表情がそれを物語る。
氷帝部員もスカッドが通用しないなんて、と弱気な言葉を口にする始末。
「はぁ……はぁ……」
鳳も内心焦っていた。何よりも自信があった自分のスカッドサーブがここにきて破られるなんて……。
レギュラーの座を射止めた武器でもあるスカッド。コントロールがまだまだなのは鳳自身がよく分かっていた。決まれば歓声が上がるのに決まらなければノーコンだと笑われる。技が決まらなければ意味がないのだ。
「……」
ちらり、と鳳は氷帝側の観戦席に目を向けた。そこには険しい表情でこちらを見る麻美の姿が目に入る。
(赤宮……さん……)
まずい。もしまたダブルフォルトをしてしまったら格好悪い姿を見られるだけじゃなく、青学に自分のサービスゲームを取られることになり幻滅されるんじゃ……?
焦りと不安と緊張で心臓がドクン、ドクンと負の鐘を鳴らす。
震える手で胸をギュッと掴む。そんな鳳の元へ宍戸がボールを持って声をかけた。
「長太郎、意識するな。オープンスペースに入れようとしなくていい。正面に打っちまえ!」
不安に飲まれそうになる鳳とは違い、宍戸にはそんな色が微塵もなかった。頼りになる先輩の言葉に鳳は自分を取り戻したかのように「はいっ」と返事をし、彼からテニスボールを受け取る。
再び自信を取り戻した鳳が宍戸のアドバイス通りのサーブを放った。今度はしっかりネットを超えて相手のコートへ入る。これでポイントが入る━━と、思ったが海堂が意地で返球する。
さすがの氷帝ダブルス1も驚きを隠せなかった。まぐれなのか、それとも鳳の体力が落ちてそれがスピードにも影響したのか。それは分からないがラリーを止めるわけにはいかなかった。
けれどここで海堂のあの技が披露する。ポール回しことブーメランスネイクだ。今まではダブルスコートに叩きつけていたその打球はシングルスコートに入った。
それは氷帝にとってありがたい球である。シングルスコートに入ったため、宍戸の足で追いつける距離となったから。
宍戸の執念で追いつき、海堂のブーメランスネイクを返したが勢い余って倒れ込む。ここが正念場だろう。
乾は鳳の性格を考慮し、データに基づいてポイントが決まるコースを狙い打とうとした。しかしそんな彼の裏をついた鳳が走り出す。その判断は正しかったが、乾は雄叫びを上げながらギリギリでスマッシュのコースを変えたのだ。
さすがに鳳もそこには辿り着けず、乾のスマッシュは決まってしまい、4-5とまた青学が点を取る。鳳のサービスゲームが取られたことはやはり痛手であった。
「くそっ……良いところだったのに」
「鳳くん、宍戸……あともう少しだけ頑張って……」
詰まった息を吐き出すように麻美が嘆息を漏らす。その隣では秋が祈るように手を組みながら彼らの勝利を願っていた。
「……」
その様子を横目で見た向日は気に食わないといった表情で小さく舌打ちする。そんな相棒の態度に気づいた忍足が口を開いた。
「どないしたんや岳人? まだ苛立ちが治まらんのか?」
「あぁ、そうだよくそっ!」
「……ふーん、難儀やなぁ」
忍足は向日と秋を交互に見つめながらそう呟いた。
その頃試合コートでは何やら問題があったのか乾が審判に話しかけていた。
どうやら先ほどの乾のスマッシュはアウトだったと自己申告したのだ。審判が直々に確認し、スマッシュしたボールの痕跡を見つける。間違いなくコートからはみ出た所にその痕跡があったのだ。
こうして青学のゲームは取り消しになり、15-40からの再開となった。
そして最終的に6-3という結果で氷帝が勝利した。
「やった……! 麻美、宍戸と鳳くんがやってくれたよ!」
「あぁ、ヒヤヒヤさせやがって……」
秋が飛び跳ねるように喜び、麻美の手を握る。麻美も無駄にハラハラしたせいか安堵の笑みと溜め息をついた。
氷帝側の喜びの声が辺りに飛び交う。それなのに向日の耳には秋の声しか耳に入らなかった。氷帝が勝って嬉しいはずなのに嬉しくない。むしろ悔しい気持ちさえある。
なんか、ムカつく。そう思ってケッと悪態ついた。誰に? それが分からないから向日は余計にムカムカした。
俺が勝ってたら俺の時もああやって喜んでくれたのか……?
もしものことを考えたところで分かるわけない。ただ分かるのは今の秋の喜びの表情も声も気持ちも何もかも自分には向けられていないことだ。
(あー……くっそ、ムカつく)
鳳のサーブを返せない、宍戸のライジングカウンターも返せない。一人でずっと走り続けてもゲームは5-0で氷帝が有利。青学はもう後がなかった。
「あと1ゲームだな」
「勝てる……よね。ここまで来たならあと1ゲームだもの」
氷帝の応援も熱が入る。余程のことでもない限り引っくり返されることはないだろう。
「ここで逆転負けでもされたらお笑いものですけどね」
そんな麻美と秋の会話に割り込むように今まで黙っていた男が口を開く。今大会補欠としてエントリーされた日吉であった。
「さすが陰湿な奴は言うことが違うな」
「嫌みを言うのはそちらも得意なはずでしょう?」
「水を差すような奴とは違うんだよ」
「人のこと言えないくせに。随分と肩を持ってるように見えますが、あなたでも信じることが出来たんですね」
「は? 馬鹿にしてんのかこの毒キノコが」
「何度訂正しても学習しないんですから。早く病院に行ってください。不愉快ですので」
「ふ、二人ともこんな時まで喧嘩しないのっ」
麻美と日吉は互いのことで口を開けば必ず喧嘩に発展してしまう。
いつものこととはいえ、大事な試合中にもそれを見せるのは周りの仲間達の士気にも関わる、そう考えた秋が二人の仲裁役を買って出るが、麻美と日吉はフンと互いに鼻を鳴らしてそっぽを向くだけ。
ひとまず口論を止めることは出来たので秋も軽く溜め息をつきながらそれで妥協する。元よりこの二人は互いに謝罪することなどないのだから。
しかし、試合の流れが変わり始めた。あと1ゲームで氷帝の勝ちだというのにここにきて青学の動きが変わったのだ。青学、というより乾個人の動きと言える。
まるでそこに打つと分かるような発言と共にリターンをし、ネットを超えないことが分かったような言葉、そして海堂にはベストショットを打つために指示を出す。
全て読まれたような乾の発言、それは彼がデータを収集していたことを示すもの。
まぐれなどではない。その証拠に青学はあっという間に1ゲームを奪ったのだ。
「……おい、跡部。一体どういうことだ」
もうすぐ勝てるというのにどういう悪足掻きだ。そう言いたげな麻美が苛立ちを抑えられない声で跡部に説明を求める。
跡部はというと顔を顰めるのが早い奴だなと半ば呆れながらも彼女のためにその説明を始めた。
「見ての通りだ。奴は相手のプレイスタイル、性格などから攻撃パターンを予測する青学の
「それじゃあ今までずっと乾くんが動かなかったのはこっちのデータを取っていたってこと……?」
「そういうことだ」
「アカンやろあれは? たった3ゲームで大した観察力や」
「嫌なテニスやりやがるぜ」
乾の動きの変化は氷帝ダブルス2も驚かせる。そして何も動かないままジッと観察されるのはどこかいい気もしなかった。
「しかし乾がデータを収集している間3ゲーム、全てのボールに執念で喰らいついていた海堂。奴のスタミナが無ければ奴らの反撃は無かった!」
「……っち」
そう断言する跡部に麻美は舌打ちをする。そして胸の中で嫌な予感が渦巻いていた。
『ゲーム青学2-5!!』
『ゲーム青学3-5!!』
麻美のその予感は当たっていた。続く第7ゲーム、第8ゲームも青学が制する。
あと1ゲームなのになぜ取れない? イライラする麻美は腕を組みながら人差し指を何度もトントンと動かし、眉間に皺を寄せる。背後から見れば彼女の静かな怒りのオーラは禍々しく他の部員達を怯えさせた。
まさかこのままさっきみたいな逆転負けをするんじゃないだろうな? そんな予感さえも麻美の脳裏に過ぎる。
ふざけるなよ、またそんな無様な姿を私に見せるのか。連敗なんて私が許すわけないだろ。
「……」
負けるかもしれないという焦り。負けるかもしれないという苛立ち。しかし次のゲームは鳳からのサーブだと知り、麻美は一瞬の希望が見えた。
そう、彼らはまだ鳳のスカッドサーブに触れることすら出来ていない。氷帝の応援団も勝ったも同然だと湧き上がる。
麻美も同様のことを考えて僅かに口角が上がった。
しかしここにきて緊張からなのか鳳のサーブがネットを超えない失敗ばかり続き、0-30と相手側にポイントが入ってしまう。
「……長太郎、こんな大事な時に緊張してやがるのか」
「いや、違う……。そんな癖まで見抜くとは……恐るべし乾」
「癖だと?」
「見ろ。乾の奴、ワザとリターンの位置を通常よりかなり左に寄り、鳳に右サイドを意識させ狙わせてやがる」
「右サイドを狙う長太郎の右手首をコネる癖があるせいでネットになってしまう……彼はそこまで見抜いてるみたいだね。うん、やるねー」
「スカッドサーブは完璧じゃないってか」
「そういうこった。あいつの今後の課題だ」
ならばまだ長太郎には伸び代があるだろう。しかしそれよりも今はこの試合をどうにかして勝つしかない。すでにダブルフォルト続きで0-40と次ダブルフォルトになればまた青学に1ゲームを取られてしまう。
頼みの鳳のサービスゲームを取られるのはさすがに痛い。まだ精神的にも弱い部分がある鳳にとってこのプレッシャーはかなりの重石になるだろう。彼の表情がそれを物語る。
氷帝部員もスカッドが通用しないなんて、と弱気な言葉を口にする始末。
「はぁ……はぁ……」
鳳も内心焦っていた。何よりも自信があった自分のスカッドサーブがここにきて破られるなんて……。
レギュラーの座を射止めた武器でもあるスカッド。コントロールがまだまだなのは鳳自身がよく分かっていた。決まれば歓声が上がるのに決まらなければノーコンだと笑われる。技が決まらなければ意味がないのだ。
「……」
ちらり、と鳳は氷帝側の観戦席に目を向けた。そこには険しい表情でこちらを見る麻美の姿が目に入る。
(赤宮……さん……)
まずい。もしまたダブルフォルトをしてしまったら格好悪い姿を見られるだけじゃなく、青学に自分のサービスゲームを取られることになり幻滅されるんじゃ……?
焦りと不安と緊張で心臓がドクン、ドクンと負の鐘を鳴らす。
震える手で胸をギュッと掴む。そんな鳳の元へ宍戸がボールを持って声をかけた。
「長太郎、意識するな。オープンスペースに入れようとしなくていい。正面に打っちまえ!」
不安に飲まれそうになる鳳とは違い、宍戸にはそんな色が微塵もなかった。頼りになる先輩の言葉に鳳は自分を取り戻したかのように「はいっ」と返事をし、彼からテニスボールを受け取る。
再び自信を取り戻した鳳が宍戸のアドバイス通りのサーブを放った。今度はしっかりネットを超えて相手のコートへ入る。これでポイントが入る━━と、思ったが海堂が意地で返球する。
さすがの氷帝ダブルス1も驚きを隠せなかった。まぐれなのか、それとも鳳の体力が落ちてそれがスピードにも影響したのか。それは分からないがラリーを止めるわけにはいかなかった。
けれどここで海堂のあの技が披露する。ポール回しことブーメランスネイクだ。今まではダブルスコートに叩きつけていたその打球はシングルスコートに入った。
それは氷帝にとってありがたい球である。シングルスコートに入ったため、宍戸の足で追いつける距離となったから。
宍戸の執念で追いつき、海堂のブーメランスネイクを返したが勢い余って倒れ込む。ここが正念場だろう。
乾は鳳の性格を考慮し、データに基づいてポイントが決まるコースを狙い打とうとした。しかしそんな彼の裏をついた鳳が走り出す。その判断は正しかったが、乾は雄叫びを上げながらギリギリでスマッシュのコースを変えたのだ。
さすがに鳳もそこには辿り着けず、乾のスマッシュは決まってしまい、4-5とまた青学が点を取る。鳳のサービスゲームが取られたことはやはり痛手であった。
「くそっ……良いところだったのに」
「鳳くん、宍戸……あともう少しだけ頑張って……」
詰まった息を吐き出すように麻美が嘆息を漏らす。その隣では秋が祈るように手を組みながら彼らの勝利を願っていた。
「……」
その様子を横目で見た向日は気に食わないといった表情で小さく舌打ちする。そんな相棒の態度に気づいた忍足が口を開いた。
「どないしたんや岳人? まだ苛立ちが治まらんのか?」
「あぁ、そうだよくそっ!」
「……ふーん、難儀やなぁ」
忍足は向日と秋を交互に見つめながらそう呟いた。
その頃試合コートでは何やら問題があったのか乾が審判に話しかけていた。
どうやら先ほどの乾のスマッシュはアウトだったと自己申告したのだ。審判が直々に確認し、スマッシュしたボールの痕跡を見つける。間違いなくコートからはみ出た所にその痕跡があったのだ。
こうして青学のゲームは取り消しになり、15-40からの再開となった。
そして最終的に6-3という結果で氷帝が勝利した。
「やった……! 麻美、宍戸と鳳くんがやってくれたよ!」
「あぁ、ヒヤヒヤさせやがって……」
秋が飛び跳ねるように喜び、麻美の手を握る。麻美も無駄にハラハラしたせいか安堵の笑みと溜め息をついた。
氷帝側の喜びの声が辺りに飛び交う。それなのに向日の耳には秋の声しか耳に入らなかった。氷帝が勝って嬉しいはずなのに嬉しくない。むしろ悔しい気持ちさえある。
なんか、ムカつく。そう思ってケッと悪態ついた。誰に? それが分からないから向日は余計にムカムカした。
俺が勝ってたら俺の時もああやって喜んでくれたのか……?
もしものことを考えたところで分かるわけない。ただ分かるのは今の秋の喜びの表情も声も気持ちも何もかも自分には向けられていないことだ。
(あー……くっそ、ムカつく)