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復活公式戦ダブルス1
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氷帝VS青学戦、第2試合ダブルス1が始まった。氷帝は正レギュラーに返り咲いた宍戸とその彼の特訓に付き合った鳳ペア。対する青学は乾貞治と海堂薫のペアである。
第1ゲームは鳳からのサービス。
「一……球……入……魂!!」
鳳の掛け声と共に放たれたサーブは瞬く間にポイントを決めた。レシーバーである乾は一歩も動けないほどの速球。
続いて海堂がレシーバーに回っても同様にサービスエースを取ることが出来た。二名共にボールに触れることが出来ない。そんな鳳のサーブに青学側は試合開始早々ざわついた。
しかし次のサーブでは二回連続サーブミスし、ダブルフォルトとなり青学側にポイントが入る。
「おっと、いけねっ。すみません、宍戸先輩」
「コントロールは相変わらずだな……」
まぁいい、と失点を責めることなく宍戸は鳳のミスを受け入れる。それが当たり前のように。
「でも今日調子いいっすよ」
その言葉通り再び鳳はサーブを打ち、相手の動く隙を与えないままポイントを得た。
「アレは樺地……お前くらいしか返せねーよな。おそらく今大会最速であろう鳳の必殺サーブ……」
「スカッドサーブ!」
うおおおおーー!! と騒ぐように盛り上げ役も担っているのか遥が大きな声を上げて鳳の得意技を口にする。
「それにしてもあんなスピードのサーブを返せるなんてかばっちさすが! かっこいい! 一生推す!!」
「ありがとう……ございます……」
ここぞとばかり樺地を褒めて好き好きオーラを漂わす遥に樺地は表情変わらぬままこくりと小さく頭を下げる。
「なぁ、遥。俺もスマッシュを無効化させる技あるんやけど」
「へー」
「……もうちょい会話広げてくれてもえぇんちゃう?」
会話に割って入り込む忍足に遥は冷めた様子で興味無い返事をする。さすがの忍足も心を閉ざしそうになった。
そうしている間にも、氷帝の応援は「サーブだけ!」と声を上げる。そして氷帝が1ゲームを決めることが出来るとさらに盛り上がった。
2ゲーム目のサーバーは乾。しかしここで前衛である海堂がベースラインまで下がっていた。そんな彼の行動に氷帝側は驚くも青学側は動揺はしていない。むしろ何をするのか理解している空気だ。
乾も特に咎めることはなくボールを打つ。彼のサーブもなかなかの高速だったが相手が悪かった。何せそのサーブを受けるのは鳳のスカッドサーブをその身に受け続けた宍戸なのだから。
その宍戸にとっては止まって見えるとも言える乾の高速サーブを打ち返すとその打球をまるで狙っていたと言わんばかりの海堂が返球する。
けれどそれはただのリターンではない。ネットを上部に超えるのではなくネットを支えるポールの外側を超えて相手側コートへと戻るショット。
まさかの打球に宍戸も鳳も手が出せなかった。それを後にブーメランスネイクショットということを知る。
「凄いね、青学の海堂くん」
氷帝のどよめく声が大きくなるのも頷ける。秋も海堂の技には素直に褒め、そのテクニックに拍手を向けたくなった。
「ね、ね、ね、萩っ! あれって反則じゃないの!? ポイントになるの!?」
「そうだね。ポール回しっていうれっきとした技だよ」
「マジかよ。あんなの打たれちゃたまったもんじゃないな。コートの外まで警戒しなきゃなんないってのか」
あの技でポイントになるのなら警戒しなければならない視野を広げないといけないだろう。そう思うとこの試合も上手くいくか麻美も心配になるがそんな彼女の言葉を否定するように跡部が口を開く。
「どの位置からでも打てるってわけじゃねぇ。そう心配することねぇよ」
「この試合も落としたら後はねぇってのに随分と余裕だな、ここの部長は」
「部長だからこそ余裕を見せるもんだろうが。慌てふためく奴が部長を担えると思えるか?」
「ああ言えばこう言う……」
舌打ちをした麻美は試合に目を戻すが、そこにはリストバンドを外してコートに落とす乾の姿があった。
しかしそのリストバンドはドスという鈍い音を立て、中に重りが入ってることを周囲に見せつける。
なんだよあれ。そう呟いたすぐあと、乾がサーブを打った。先ほど打った球とは違う音、違う速さ。明らかに威力が段違いに上がっていたそのボールに鳳は触れること出来ずポイントを取られてしまう。
それからも乾の超高速サーブに氷帝は手も足も出ない状況となり、先ほどの鳳によるスカッドサーブを受けた青学と同じ立場に立つことになった。
「萩之介、速度は?」
「192キロだって」
スピードガンを持ち、その数値を跡部に伝えると周りは驚きの声が上がる。
「ホンマかいな。大会ナンバー1やと思てた鳳とあんま変わらへんやん」
「くそくそ青学め」
「鳳くんのサーブは確か200キロ近いって話だよね……?」
「もはや200キロの速度がどのくらいの威力かあたしには理解出来ないよ……」
「車より速いと思っとけ」
麻美の例えを聞いて遥は震え上がった。つまりぶつかると死ぬのでは? という恐怖が芽生え、長太郎を怒らせないようにしようと心に決める。
すると跡部が辺りを見回し、誰かを探してる様子を見せた。どうやら正レギュラーの一人がこの場にいないようだ。
「ところでジローはどこへ行った?」
その言葉を聞いて秋も近くを見てみるが、金色髪のクラスメイトの姿はない。
そんな中、青学に敗れたことにまだ腹を立てている向日が強めの口調で声を荒らげた。
「あの野郎またどっかで寝てんじゃねーのか!? いつもそうだぜっ」
オーダー表にはダブルスのあとにシングルスの試合が控えている。
特にシングルス2、氷帝の出場メンバーは芥川なのでこのまま試合までに戻って来なければ不戦敗となってしまうだろう。それだけはどうしても避けたいので秋が探しに行こうかと跡部に申し出るつもりで口にしようとしたが。
「探してこい樺地」
「ウス……」
彼の忠実な従者がその役目を引き受けた。
「かばっちが行くならあたしも行くっ!」
「……好きにしろ」
遥が樺地と一緒に芥川を探しに行くことについて跡部はどこか呆れ気味な溜め息と共に彼女の好きにさせたため、遥は嬉々として樺地と共に芥川捜索に出かけた。
遥と樺地くんもいれば大丈夫かな。そう思った秋は芥川の捜索を二人に任せることにして引き続き試合を観戦することに決めた。
「せやったら俺も付き合うたる━━いだだだっ! 耳引っ張んなやアホッ!」
しかしここぞとばかりに遥の後を追おうとした忍足に滝が耳を引っ張り阻止する。そして忍足へとにっこりと笑いかけた。嫌みたっぷりの言葉と共に。
「忍足は観戦に集中しなよ。さっきの試合で負けた理由が分かるかもしれないからね」
「一言余計なやっちゃな……」
すでに遥と樺地はその場からいなくなり、滝のチクリとした言葉に思う所がないわけではない忍足は観念して宍戸と鳳の試合を観戦するのだった。
そして試合は一気に青学のペースになると思った最中、乾の超高速サーブよりも自分のサーブのスピードが上だと自信のある鳳は次の乾によるサーブは何とか返すことが出来た。
いや、返すより当てたという方が正しい。それでも相手のコートに入ればその威力はこの際関係ないだろう。
宍戸も返しさえすればいいと考え、再び返ってくるボールに向かって走り出した。
まるで瞬間移動の如くそのスピードは青学の面子を驚かせるには十分である。特に彼のテニスを少なからず知る者がいたらさらに驚いただろう。
レギュラー落ちする前の宍戸ならばそこまでの脚力はなかった。何故ならばそのダッシュ力は鳳との特訓で得たものだ。
宍戸はカウンターでの完璧なライジングショットを打つために早い一歩を踏み出す必要があった。球を拾うだけでは駄目だ。どんなに速い打球でも追いつき、攻めなければ勝てっこない。
己の武器でもあるライジング。バウンドして頂点に達するまでに打つことにより通常より速いリターンになるので相手の時間を与えなくさせたり、タイミングをずらすことが出来る。
そんな技を何度もどんな状況でも攻めに変えることが出来るならそれ相応の練習をしなければならない。それが鳳との特訓である。
鳳のスカッドサーブで慣れたのは何も目だけではなかった。それに追いつく身体の反応時間も強化されているのだ。
「……」
麻美は以前宍戸と鳳による夜の特訓を見たことがあるためその光景を思い出していた。
レギュラーから外されても這い上がるために傷だらけになろうともやめない宍戸の姿。
最初は無駄な悪足掻きだと思っていたが、滝に試合を挑んで勝利し、そして異例のレギュラー復帰。それだけのことをやってのけたのだから全国の座をかけたこのトーナメントに戻ってきた奴には勝ってもらわないと全てが無駄になる。
「宍戸、特訓の成果が出てるね」
「初めからその力を発揮してりゃ良かったのに勿体ない奴だな」
秋の言葉に棘のある言葉で返す麻美だったが、秋はくすりと笑いながら素直じゃないなぁと感じた。
言葉に反してその表情はどこか清々しいからだ。それだけ麻美は宍戸のこれまでの努力を認めているのだろう。
「お前ら二人のダブルスに勝っちまっただけのことはあるな」
「ぶっ、宍戸の野郎に油断してただけだぜっ!!」
先の試合のことをつつくように忍足と向日へ嘲笑を含めた視線を跡部が送る。その挑発にすぐ反応した向日が声を上げ、あんな試合まともにやるわけないだろと続けようとした。向日とは対照的に忍足は口にはしないがピクッと小さな反応を示す。
言い訳がましい向日の言葉に跡部は馬鹿にするように笑うと彼らに現実を突きつける。
「油断? だから負けんだよ! バーカ」
ちょうどその時、氷帝が2ゲームを取ったことを告げる審判の声が響いた。
「奴らには油断なんか微塵もない」
「それに関しては私も同感だな。あんたらよりあいつらの方がダブルスとして上じゃん」
「ぐっ……!」
「……」
跡部の言葉に同意する麻美に向日はこれ以上何も言えなかった。言い返せばその分惨めになる。虚しくなる。逆転負けした事実が強く突きつけられる。
くそっ、と言葉をこぼしながら向日は顔を逸らした。その様子をただ見てるだけしか出来なかった秋は憂い顔で彼の名を心の中で呟いた。
第1ゲームは鳳からのサービス。
「一……球……入……魂!!」
鳳の掛け声と共に放たれたサーブは瞬く間にポイントを決めた。レシーバーである乾は一歩も動けないほどの速球。
続いて海堂がレシーバーに回っても同様にサービスエースを取ることが出来た。二名共にボールに触れることが出来ない。そんな鳳のサーブに青学側は試合開始早々ざわついた。
しかし次のサーブでは二回連続サーブミスし、ダブルフォルトとなり青学側にポイントが入る。
「おっと、いけねっ。すみません、宍戸先輩」
「コントロールは相変わらずだな……」
まぁいい、と失点を責めることなく宍戸は鳳のミスを受け入れる。それが当たり前のように。
「でも今日調子いいっすよ」
その言葉通り再び鳳はサーブを打ち、相手の動く隙を与えないままポイントを得た。
「アレは樺地……お前くらいしか返せねーよな。おそらく今大会最速であろう鳳の必殺サーブ……」
「スカッドサーブ!」
うおおおおーー!! と騒ぐように盛り上げ役も担っているのか遥が大きな声を上げて鳳の得意技を口にする。
「それにしてもあんなスピードのサーブを返せるなんてかばっちさすが! かっこいい! 一生推す!!」
「ありがとう……ございます……」
ここぞとばかり樺地を褒めて好き好きオーラを漂わす遥に樺地は表情変わらぬままこくりと小さく頭を下げる。
「なぁ、遥。俺もスマッシュを無効化させる技あるんやけど」
「へー」
「……もうちょい会話広げてくれてもえぇんちゃう?」
会話に割って入り込む忍足に遥は冷めた様子で興味無い返事をする。さすがの忍足も心を閉ざしそうになった。
そうしている間にも、氷帝の応援は「サーブだけ!」と声を上げる。そして氷帝が1ゲームを決めることが出来るとさらに盛り上がった。
2ゲーム目のサーバーは乾。しかしここで前衛である海堂がベースラインまで下がっていた。そんな彼の行動に氷帝側は驚くも青学側は動揺はしていない。むしろ何をするのか理解している空気だ。
乾も特に咎めることはなくボールを打つ。彼のサーブもなかなかの高速だったが相手が悪かった。何せそのサーブを受けるのは鳳のスカッドサーブをその身に受け続けた宍戸なのだから。
その宍戸にとっては止まって見えるとも言える乾の高速サーブを打ち返すとその打球をまるで狙っていたと言わんばかりの海堂が返球する。
けれどそれはただのリターンではない。ネットを上部に超えるのではなくネットを支えるポールの外側を超えて相手側コートへと戻るショット。
まさかの打球に宍戸も鳳も手が出せなかった。それを後にブーメランスネイクショットということを知る。
「凄いね、青学の海堂くん」
氷帝のどよめく声が大きくなるのも頷ける。秋も海堂の技には素直に褒め、そのテクニックに拍手を向けたくなった。
「ね、ね、ね、萩っ! あれって反則じゃないの!? ポイントになるの!?」
「そうだね。ポール回しっていうれっきとした技だよ」
「マジかよ。あんなの打たれちゃたまったもんじゃないな。コートの外まで警戒しなきゃなんないってのか」
あの技でポイントになるのなら警戒しなければならない視野を広げないといけないだろう。そう思うとこの試合も上手くいくか麻美も心配になるがそんな彼女の言葉を否定するように跡部が口を開く。
「どの位置からでも打てるってわけじゃねぇ。そう心配することねぇよ」
「この試合も落としたら後はねぇってのに随分と余裕だな、ここの部長は」
「部長だからこそ余裕を見せるもんだろうが。慌てふためく奴が部長を担えると思えるか?」
「ああ言えばこう言う……」
舌打ちをした麻美は試合に目を戻すが、そこにはリストバンドを外してコートに落とす乾の姿があった。
しかしそのリストバンドはドスという鈍い音を立て、中に重りが入ってることを周囲に見せつける。
なんだよあれ。そう呟いたすぐあと、乾がサーブを打った。先ほど打った球とは違う音、違う速さ。明らかに威力が段違いに上がっていたそのボールに鳳は触れること出来ずポイントを取られてしまう。
それからも乾の超高速サーブに氷帝は手も足も出ない状況となり、先ほどの鳳によるスカッドサーブを受けた青学と同じ立場に立つことになった。
「萩之介、速度は?」
「192キロだって」
スピードガンを持ち、その数値を跡部に伝えると周りは驚きの声が上がる。
「ホンマかいな。大会ナンバー1やと思てた鳳とあんま変わらへんやん」
「くそくそ青学め」
「鳳くんのサーブは確か200キロ近いって話だよね……?」
「もはや200キロの速度がどのくらいの威力かあたしには理解出来ないよ……」
「車より速いと思っとけ」
麻美の例えを聞いて遥は震え上がった。つまりぶつかると死ぬのでは? という恐怖が芽生え、長太郎を怒らせないようにしようと心に決める。
すると跡部が辺りを見回し、誰かを探してる様子を見せた。どうやら正レギュラーの一人がこの場にいないようだ。
「ところでジローはどこへ行った?」
その言葉を聞いて秋も近くを見てみるが、金色髪のクラスメイトの姿はない。
そんな中、青学に敗れたことにまだ腹を立てている向日が強めの口調で声を荒らげた。
「あの野郎またどっかで寝てんじゃねーのか!? いつもそうだぜっ」
オーダー表にはダブルスのあとにシングルスの試合が控えている。
特にシングルス2、氷帝の出場メンバーは芥川なのでこのまま試合までに戻って来なければ不戦敗となってしまうだろう。それだけはどうしても避けたいので秋が探しに行こうかと跡部に申し出るつもりで口にしようとしたが。
「探してこい樺地」
「ウス……」
彼の忠実な従者がその役目を引き受けた。
「かばっちが行くならあたしも行くっ!」
「……好きにしろ」
遥が樺地と一緒に芥川を探しに行くことについて跡部はどこか呆れ気味な溜め息と共に彼女の好きにさせたため、遥は嬉々として樺地と共に芥川捜索に出かけた。
遥と樺地くんもいれば大丈夫かな。そう思った秋は芥川の捜索を二人に任せることにして引き続き試合を観戦することに決めた。
「せやったら俺も付き合うたる━━いだだだっ! 耳引っ張んなやアホッ!」
しかしここぞとばかりに遥の後を追おうとした忍足に滝が耳を引っ張り阻止する。そして忍足へとにっこりと笑いかけた。嫌みたっぷりの言葉と共に。
「忍足は観戦に集中しなよ。さっきの試合で負けた理由が分かるかもしれないからね」
「一言余計なやっちゃな……」
すでに遥と樺地はその場からいなくなり、滝のチクリとした言葉に思う所がないわけではない忍足は観念して宍戸と鳳の試合を観戦するのだった。
そして試合は一気に青学のペースになると思った最中、乾の超高速サーブよりも自分のサーブのスピードが上だと自信のある鳳は次の乾によるサーブは何とか返すことが出来た。
いや、返すより当てたという方が正しい。それでも相手のコートに入ればその威力はこの際関係ないだろう。
宍戸も返しさえすればいいと考え、再び返ってくるボールに向かって走り出した。
まるで瞬間移動の如くそのスピードは青学の面子を驚かせるには十分である。特に彼のテニスを少なからず知る者がいたらさらに驚いただろう。
レギュラー落ちする前の宍戸ならばそこまでの脚力はなかった。何故ならばそのダッシュ力は鳳との特訓で得たものだ。
宍戸はカウンターでの完璧なライジングショットを打つために早い一歩を踏み出す必要があった。球を拾うだけでは駄目だ。どんなに速い打球でも追いつき、攻めなければ勝てっこない。
己の武器でもあるライジング。バウンドして頂点に達するまでに打つことにより通常より速いリターンになるので相手の時間を与えなくさせたり、タイミングをずらすことが出来る。
そんな技を何度もどんな状況でも攻めに変えることが出来るならそれ相応の練習をしなければならない。それが鳳との特訓である。
鳳のスカッドサーブで慣れたのは何も目だけではなかった。それに追いつく身体の反応時間も強化されているのだ。
「……」
麻美は以前宍戸と鳳による夜の特訓を見たことがあるためその光景を思い出していた。
レギュラーから外されても這い上がるために傷だらけになろうともやめない宍戸の姿。
最初は無駄な悪足掻きだと思っていたが、滝に試合を挑んで勝利し、そして異例のレギュラー復帰。それだけのことをやってのけたのだから全国の座をかけたこのトーナメントに戻ってきた奴には勝ってもらわないと全てが無駄になる。
「宍戸、特訓の成果が出てるね」
「初めからその力を発揮してりゃ良かったのに勿体ない奴だな」
秋の言葉に棘のある言葉で返す麻美だったが、秋はくすりと笑いながら素直じゃないなぁと感じた。
言葉に反してその表情はどこか清々しいからだ。それだけ麻美は宍戸のこれまでの努力を認めているのだろう。
「お前ら二人のダブルスに勝っちまっただけのことはあるな」
「ぶっ、宍戸の野郎に油断してただけだぜっ!!」
先の試合のことをつつくように忍足と向日へ嘲笑を含めた視線を跡部が送る。その挑発にすぐ反応した向日が声を上げ、あんな試合まともにやるわけないだろと続けようとした。向日とは対照的に忍足は口にはしないがピクッと小さな反応を示す。
言い訳がましい向日の言葉に跡部は馬鹿にするように笑うと彼らに現実を突きつける。
「油断? だから負けんだよ! バーカ」
ちょうどその時、氷帝が2ゲームを取ったことを告げる審判の声が響いた。
「奴らには油断なんか微塵もない」
「それに関しては私も同感だな。あんたらよりあいつらの方がダブルスとして上じゃん」
「ぐっ……!」
「……」
跡部の言葉に同意する麻美に向日はこれ以上何も言えなかった。言い返せばその分惨めになる。虚しくなる。逆転負けした事実が強く突きつけられる。
くそっ、と言葉をこぼしながら向日は顔を逸らした。その様子をただ見てるだけしか出来なかった秋は憂い顔で彼の名を心の中で呟いた。