自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
円満解決
主人公名前変換
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朝練も終わり、学生服に着替える前に顔をさっぱりさせようと近くの手洗い場へやって来た宍戸は蛇口を捻り、冷たい水を顔に浴びせた。
その際、被っていた帽子を洗い場の傍らに置いていたのだが、突然強めの風が吹き、彼の帽子は飛ばされてしまう。
「あっ!」
やべっ! そう思って濡れた顔のまま手を伸ばそうとするがその手は宙を掻くだけ。
風は一瞬だけだったのですぐ近くに落ち、見失うことはなかった。宍戸は安堵の溜め息を吐き、落ちた帽子を拾うため近づくと彼より先にその帽子を拾う人物が現れる。
「……赤宮」
麻美であった。彼女は拾った帽子のつばを持ち、それを宍戸に「ほらよ」と言って差し出すと、驚きと戸惑いながらも宍戸は帽子を受け取る。
「悪ぃ、サンキュ」
また飛ばされないようにとすぐに帽子を後ろ向きにして被った。それで終わり、と思ったが麻美は何か用があるようで腕を組んで話をする態度を見せる……というよりジロジロと宍戸に視線を向けていた。
「な、なんだよ?」
「髪。さっぱりしたな」
「あぁ……軽くなった」
昨日までは後ろに結っていた長い髪。今ではそんな面影もないほど短くなった。
あれだけ大事で自慢にしていた髪だったが、切ってしまえば身も心も軽くなったような感覚を覚える。
それでも肩より長かったあの髪がないことに慣れず、今日だけでも何度かポニーテールを触ろうと手を伸ばしたりもした。
「秋から聞いたけど、好きだったんだろ。あの髪型」
「そう、だな。手入れとか結構欠かさずにやってたし。でも、それと引き換えにしてでも決意を見せたかったし、取り戻したかったからよ、レギュラーの座だけは絶対に」
「斬髪式が無駄にならなくて良かったな」
確かに自分は運が良かったのかもしれない。宍戸はそう思った。
監督である榊は宍戸を起用するつもりはなかっただろう。例え髪を切ったところでそれがどうしたと言われる可能性もあったはず。
しかし、跡部を初めとする秋や麻美が口添えしてくれたおかげで何とか帰ってくることが出来たこのポジション。
決して自分だけの力ではないと、またあの日の自分のように驕り高ぶってはいけないと宍戸は自戒する。
「それに私はそっちの髪型の方がすっきりしてていいと思うけど」
「えっ」
まさかあの麻美に褒められるとは。個人的にはやはり思い入れのある以前の髪が好きではあるが、褒められると悪い気はしないし、どこか照れくさくなった宍戸は顔を逸らしながら頬を掻いた。
「そ、そうか……」
ばっさりと短くしたあとはクラスメイトにも部員にも驚かれたし、別人みたいだとも言われた。かなりのイメチェンだとは思うが麻美含め周りの反応も悪くなかったし、しばらくはこのヘアスタイルでもいいかもしれねぇなと思ったのち、宍戸はあることを思い出す。
「あ……そういや長太郎から聞いたんだけどよ、特訓中にバテた俺にスポドリをくれたんだよな?」
2日前の夜。鳳と2週間に渡る猛特訓の最終日でもあったその日、倒れてバテた宍戸に鳳がドリンクを買いに走ったのだが、思いの外早く戻って来てスポーツ飲料水を手にしながら「赤宮さんが宍戸さんにと」と教えてくれた。
赤宮にこのことを知られたのが恥ずかしいという気持ちもあったが、飲み物をくれたことに礼を言わなければとずっと思っていたので、今がその時だと考える。
「あぁ、あれか」
「今さらだけどありがとな。監督を説得してくれた件といい、お前には借りがあるからよ、今度纏めて返すからな」
「その程度で借りを返すとかいらないんだけど」
「俺の気がすまねぇんだっての」
「そう。じゃあ、期待しないで待ってやる」
フッ、と小さく笑った瞬間、風が吹いて麻美の髪をなびく。
邪魔にならないように髪を耳にかけるその仕草は自然とこぼれる微笑みと相まって一枚絵のような美しさが際立った。
普段は眉間に皺を寄せたり固い表情をする麻美だから宍戸は思わず目が奪われる。少しだけ胸が跳ねたような感覚もした。
え、俺今もしかして……? と、思った矢先、麻美が口を開いた。
「下僕とはまだわだかまりがある感じか?」
「えっ!? あ、あー……まぁ、そうだな……」
会話がまだ続くとは思っていなかった宍戸は不意をつかれたように驚いては吃るも新たに抱える問題を麻美から切り出されて頭を抱える。
昨日、滝の幼馴染みである下僕こと遥が激昂したことを彼は気にしていたのだ。
滝とは昨夜電話で話をして抱えていたものをお互いに吐き出しすっきりした。相手もこの結果に不満はなく、何なら彼の思いを託されたくらいだ。
当人同士はわだかまりもなく終えたのだが、まさか滝の幼馴染みがキレるとは思わなかったので滝に遥のことを話すと、向こうから一度話をすると言ってくれた。
「授業後の部活の時にでも話し合うといいよ」と、話す滝の指示に従い、宍戸は放課後の部活まで遥に話しかけることはしないと決めて今に至る。
「午後の部活の時にでも一度話してみる予定だ」
「別に無理に関わらなくてもいいと思うけど」
「そういうわけにはいかねーって。騒ぎを起こした張本人としてちゃんとそこはケリつけておきたいしよ」
例え相手がもう二度と関わりたくないという結果になったとしても話し合いはしておかないといけない。出来れば認めてもらいたいが、そこは無理強いをするつもりはないし、理解してもらわなくてもいい。
ちゃんと向き合っておきたい宍戸が麻美にそう伝えると「ふーん」と彼女は呟いた。
「チャラついてると思ったけど結構真面目なんだな、あんた」
「別にそうじゃねーっての! っつーか、チャラついてるってなんだよっ?」
「髪の長い男なんて大体そんな奴ばっかだろ」
「偏見にも程があんだろ……」
髪の長い男がみんながみんなそうとは言わないだろうに。それでもチャラついているというイメージを払拭出来たのならいいけど……。
思うことは色々あった宍戸だが心の中でぼやくことに留めた。
その際、被っていた帽子を洗い場の傍らに置いていたのだが、突然強めの風が吹き、彼の帽子は飛ばされてしまう。
「あっ!」
やべっ! そう思って濡れた顔のまま手を伸ばそうとするがその手は宙を掻くだけ。
風は一瞬だけだったのですぐ近くに落ち、見失うことはなかった。宍戸は安堵の溜め息を吐き、落ちた帽子を拾うため近づくと彼より先にその帽子を拾う人物が現れる。
「……赤宮」
麻美であった。彼女は拾った帽子のつばを持ち、それを宍戸に「ほらよ」と言って差し出すと、驚きと戸惑いながらも宍戸は帽子を受け取る。
「悪ぃ、サンキュ」
また飛ばされないようにとすぐに帽子を後ろ向きにして被った。それで終わり、と思ったが麻美は何か用があるようで腕を組んで話をする態度を見せる……というよりジロジロと宍戸に視線を向けていた。
「な、なんだよ?」
「髪。さっぱりしたな」
「あぁ……軽くなった」
昨日までは後ろに結っていた長い髪。今ではそんな面影もないほど短くなった。
あれだけ大事で自慢にしていた髪だったが、切ってしまえば身も心も軽くなったような感覚を覚える。
それでも肩より長かったあの髪がないことに慣れず、今日だけでも何度かポニーテールを触ろうと手を伸ばしたりもした。
「秋から聞いたけど、好きだったんだろ。あの髪型」
「そう、だな。手入れとか結構欠かさずにやってたし。でも、それと引き換えにしてでも決意を見せたかったし、取り戻したかったからよ、レギュラーの座だけは絶対に」
「斬髪式が無駄にならなくて良かったな」
確かに自分は運が良かったのかもしれない。宍戸はそう思った。
監督である榊は宍戸を起用するつもりはなかっただろう。例え髪を切ったところでそれがどうしたと言われる可能性もあったはず。
しかし、跡部を初めとする秋や麻美が口添えしてくれたおかげで何とか帰ってくることが出来たこのポジション。
決して自分だけの力ではないと、またあの日の自分のように驕り高ぶってはいけないと宍戸は自戒する。
「それに私はそっちの髪型の方がすっきりしてていいと思うけど」
「えっ」
まさかあの麻美に褒められるとは。個人的にはやはり思い入れのある以前の髪が好きではあるが、褒められると悪い気はしないし、どこか照れくさくなった宍戸は顔を逸らしながら頬を掻いた。
「そ、そうか……」
ばっさりと短くしたあとはクラスメイトにも部員にも驚かれたし、別人みたいだとも言われた。かなりのイメチェンだとは思うが麻美含め周りの反応も悪くなかったし、しばらくはこのヘアスタイルでもいいかもしれねぇなと思ったのち、宍戸はあることを思い出す。
「あ……そういや長太郎から聞いたんだけどよ、特訓中にバテた俺にスポドリをくれたんだよな?」
2日前の夜。鳳と2週間に渡る猛特訓の最終日でもあったその日、倒れてバテた宍戸に鳳がドリンクを買いに走ったのだが、思いの外早く戻って来てスポーツ飲料水を手にしながら「赤宮さんが宍戸さんにと」と教えてくれた。
赤宮にこのことを知られたのが恥ずかしいという気持ちもあったが、飲み物をくれたことに礼を言わなければとずっと思っていたので、今がその時だと考える。
「あぁ、あれか」
「今さらだけどありがとな。監督を説得してくれた件といい、お前には借りがあるからよ、今度纏めて返すからな」
「その程度で借りを返すとかいらないんだけど」
「俺の気がすまねぇんだっての」
「そう。じゃあ、期待しないで待ってやる」
フッ、と小さく笑った瞬間、風が吹いて麻美の髪をなびく。
邪魔にならないように髪を耳にかけるその仕草は自然とこぼれる微笑みと相まって一枚絵のような美しさが際立った。
普段は眉間に皺を寄せたり固い表情をする麻美だから宍戸は思わず目が奪われる。少しだけ胸が跳ねたような感覚もした。
え、俺今もしかして……? と、思った矢先、麻美が口を開いた。
「下僕とはまだわだかまりがある感じか?」
「えっ!? あ、あー……まぁ、そうだな……」
会話がまだ続くとは思っていなかった宍戸は不意をつかれたように驚いては吃るも新たに抱える問題を麻美から切り出されて頭を抱える。
昨日、滝の幼馴染みである下僕こと遥が激昂したことを彼は気にしていたのだ。
滝とは昨夜電話で話をして抱えていたものをお互いに吐き出しすっきりした。相手もこの結果に不満はなく、何なら彼の思いを託されたくらいだ。
当人同士はわだかまりもなく終えたのだが、まさか滝の幼馴染みがキレるとは思わなかったので滝に遥のことを話すと、向こうから一度話をすると言ってくれた。
「授業後の部活の時にでも話し合うといいよ」と、話す滝の指示に従い、宍戸は放課後の部活まで遥に話しかけることはしないと決めて今に至る。
「午後の部活の時にでも一度話してみる予定だ」
「別に無理に関わらなくてもいいと思うけど」
「そういうわけにはいかねーって。騒ぎを起こした張本人としてちゃんとそこはケリつけておきたいしよ」
例え相手がもう二度と関わりたくないという結果になったとしても話し合いはしておかないといけない。出来れば認めてもらいたいが、そこは無理強いをするつもりはないし、理解してもらわなくてもいい。
ちゃんと向き合っておきたい宍戸が麻美にそう伝えると「ふーん」と彼女は呟いた。
「チャラついてると思ったけど結構真面目なんだな、あんた」
「別にそうじゃねーっての! っつーか、チャラついてるってなんだよっ?」
「髪の長い男なんて大体そんな奴ばっかだろ」
「偏見にも程があんだろ……」
髪の長い男がみんながみんなそうとは言わないだろうに。それでもチャラついているというイメージを払拭出来たのならいいけど……。
思うことは色々あった宍戸だが心の中でぼやくことに留めた。