自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
円満解決
主人公名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……」
宍戸がレギュラー復帰した翌朝、いつもより早く起きていつもより早く家を出た遥は滝の生家前に立ち、少し緊張した面持ちで幼馴染みが家から出るのを待っていた。
忍足に滝としっかり話した方がいいと言われたが、昨日の今日なのでもしかしたらまだ触れてほしくないかもしれないし、またそっとしておいてと言われるかもしれない。
そうなったらどうしよう……。早く話して幼馴染みがどうしたいのかその真意を聞きたいのに。
(萩が宍戸のレギュラー復活に反対するならあたしも一緒に声を上げるからね!)
そう強い決心を秘めた遥は誰が相手でも屈するつもりはないという顔をしていた。
「!」
しばらくしてから玄関門に滝が姿を見せる。ハッとした遥がなんて声をかけるかしどろもどろしていると、彼女に気づいた滝がいつもと変わらぬ優美な笑みを遥に向けた。
「おはよう、遥。今日は早いね」
「え、あ、おはよっ、萩っ!」
想像していたよりも元気そうな幼馴染みの姿に「あ、あれ?」と戸惑うも無理に笑みを作ってるのかもしれないと考える。
「それじゃあ、行こっか」
「あ、うん……」
滝と並んで歩き出す。テニスバッグも持参しているのでどうやら相手は部活を休むことはなさそうだ。それに安心しつつも、昨日元気をなくした彼の姿を目の当たりにしたこともあり、そう簡単に気持ちが割り切れるとは思っていない。
「萩……宍戸のことなんだけど……」
「あぁ、聞いたよ。レギュラー復帰したんだよね」
そこまで知っているというのなら誰かに聞いたのだろう。それなのに彼はどこか清々しい。なぜそんな顔が出来るのか遥には分からなかった。
「や、やっぱりおかしいよねっ? レギュラー落ちしたのに復活なんてそんなの……」
「ううん、俺はそう思わないよ」
「……えっ?」
なんで、そう問いかける瞳が滝に向けられる。異例とも言われる宍戸のレギュラー落ちからの復帰に滝の表情は怒りなどなく、どこか穏やかなものだった。
「あいつはね、なるべくしてなったんだと思うよ。対戦して分かったんだ。……宍戸は強かったし、俺もあいつを侮っていたところもあったって」
「でもっ、敗者切り捨てのルールを破るようなものでしょっ? 萩を蹴落とした奴なんだよ!」
「宍戸の強さはイカサマでもなく本物だよ。強い奴を大会に起用するのは何も間違ってないからむしろこれで良かったって思ってる。……もちろん、悔しくないわけじゃないけど、全国優勝を目指すなら最強のメンバーじゃなくっちゃね」
すでに心の整理がついているのか、レギュラー落ちしたというのに不思議なほど清々しい顔をする滝を見た遥は余計に胸が痛み、歩みを止めて俯いた。
「中学最後の大会なのに……どうして納得出来るの?」
「当然のことだよ。強い奴が勝ち残る。それだけのこと」
「じゃあ、萩も宍戸みたいに特訓して負かしてやってよ! 強くてレギュラーを取り戻せるなら萩も同じことしようよ!」
滝は困ったように笑いながら悲痛に叫ぶ遥へと手を伸ばし、その頭を優しく撫でた。
「遥。関東大会だって始まるんだ。これ以上部を引っ掻き回すようなことをしたら他のメンバーのメンタルにも関わる。だから俺はこのままで構わないんだよ」
「萩……」
本当にそれでいいのだろうか。未練はないのだろうか。遥は悲しげに滝を見つめるが、彼の目は迷っているようには見えなかった。
頭を撫でるその手は暖かさと優しさも感じる。まるで彼の人柄を表しているかのよう。
本当はレギュラーでいたかったはずなのに。諦めたくないはずなのに。それなのに団体戦だからみんなのことを考えて不満を漏らさない。足掻こうとしない。
そんな降格を甘んじて受け入れる幼馴染みに遥は目頭が熱くなる。
「……最後までレギュラーでいられなくてごめんね」
その言葉を聞いて遥はハッとして顔を上げた。前に「萩も頑張って最後までレギュラーでいてね」と話していたことを思い出したから。
目の前の相手は眉を下げて本当に申し訳なさそうにしていた。そんなこと、気にしなくていいのに。そう口にしようとした遥だったが、滝は話を続けた。
「跡部や宍戸から聞いたよ。俺のために泣いてくれたんだよね? ありがとう、そしてごめん。遥の期待に応えられなくて」
「それは……あたしが勝手にしたことで……って、宍戸と話したの? あれから?」
「うん、昨夜ね。宍戸から電話がかかったきたんだ」
くすくすと笑いながら滝は昨夜のことを語った。
レギュラーの座を奪ったことを多少なりとも気にしていたのか、自分から決闘を申し込んできたのに『悪ぃ』って謝罪をしてきたのだと言う。
滝にしてみれば奪い取ったあとで謝ってくるなんてあまり気分のいいものではなかったので素直に宍戸にそう伝えた上で「間違ってると思うならその謝罪を受け入れるけど、宍戸は間違ったことをしたって思う?」と問いかけた。
その答えはもちろんNOだったのでそれじゃあ謝罪はいらないよと笑って返したのだった。
滝は自分を負かした宍戸を称えてエールを送るのだが、電話の向こうの相手は遥のことも気にしていたようであまり元気がない様子。
そこで一悶着があったことを滝は宍戸から知ることになる。後ほど跡部からも連絡が入り、より詳しい話を聞いて自分のために泣いてくれた遥に感謝と申し訳なさを抱いた。
「俺が宍戸に敵わなかっただけの話なんだ。だから宍戸には怒らないであげて。怒るなら約束を破った俺に、ね?」
「そ、そんなので怒らないよっ! あたしはただ宍戸が狡いって思って……萩をレギュラーから外した宍戸に腹が立って……!」
ボロッと我慢していた涙が大粒となってこぼれた。仲良しの幼馴染みがレギュラーから外されたことに悔しくて悔しくて仕方なく、まるで当人の気持ちになり胸も酷く締めつけられる。
そんな遥の涙を滝の人差し指が優しく拭った。
「俺の代わりに怒ったり泣いたりしてくれてありがとう。でもその感情は自分のために使ってほしいよ。俺のせいで遥を泣かせるのはとても辛いんだ」
優しく髪を撫でながらもその声はとても悲しげで、彼がそこまで言うのなら、宍戸のことを憎んでないのなら、と考えて遥は怒りと悲しみを抑えることに努めた。
宍戸がレギュラー復帰した翌朝、いつもより早く起きていつもより早く家を出た遥は滝の生家前に立ち、少し緊張した面持ちで幼馴染みが家から出るのを待っていた。
忍足に滝としっかり話した方がいいと言われたが、昨日の今日なのでもしかしたらまだ触れてほしくないかもしれないし、またそっとしておいてと言われるかもしれない。
そうなったらどうしよう……。早く話して幼馴染みがどうしたいのかその真意を聞きたいのに。
(萩が宍戸のレギュラー復活に反対するならあたしも一緒に声を上げるからね!)
そう強い決心を秘めた遥は誰が相手でも屈するつもりはないという顔をしていた。
「!」
しばらくしてから玄関門に滝が姿を見せる。ハッとした遥がなんて声をかけるかしどろもどろしていると、彼女に気づいた滝がいつもと変わらぬ優美な笑みを遥に向けた。
「おはよう、遥。今日は早いね」
「え、あ、おはよっ、萩っ!」
想像していたよりも元気そうな幼馴染みの姿に「あ、あれ?」と戸惑うも無理に笑みを作ってるのかもしれないと考える。
「それじゃあ、行こっか」
「あ、うん……」
滝と並んで歩き出す。テニスバッグも持参しているのでどうやら相手は部活を休むことはなさそうだ。それに安心しつつも、昨日元気をなくした彼の姿を目の当たりにしたこともあり、そう簡単に気持ちが割り切れるとは思っていない。
「萩……宍戸のことなんだけど……」
「あぁ、聞いたよ。レギュラー復帰したんだよね」
そこまで知っているというのなら誰かに聞いたのだろう。それなのに彼はどこか清々しい。なぜそんな顔が出来るのか遥には分からなかった。
「や、やっぱりおかしいよねっ? レギュラー落ちしたのに復活なんてそんなの……」
「ううん、俺はそう思わないよ」
「……えっ?」
なんで、そう問いかける瞳が滝に向けられる。異例とも言われる宍戸のレギュラー落ちからの復帰に滝の表情は怒りなどなく、どこか穏やかなものだった。
「あいつはね、なるべくしてなったんだと思うよ。対戦して分かったんだ。……宍戸は強かったし、俺もあいつを侮っていたところもあったって」
「でもっ、敗者切り捨てのルールを破るようなものでしょっ? 萩を蹴落とした奴なんだよ!」
「宍戸の強さはイカサマでもなく本物だよ。強い奴を大会に起用するのは何も間違ってないからむしろこれで良かったって思ってる。……もちろん、悔しくないわけじゃないけど、全国優勝を目指すなら最強のメンバーじゃなくっちゃね」
すでに心の整理がついているのか、レギュラー落ちしたというのに不思議なほど清々しい顔をする滝を見た遥は余計に胸が痛み、歩みを止めて俯いた。
「中学最後の大会なのに……どうして納得出来るの?」
「当然のことだよ。強い奴が勝ち残る。それだけのこと」
「じゃあ、萩も宍戸みたいに特訓して負かしてやってよ! 強くてレギュラーを取り戻せるなら萩も同じことしようよ!」
滝は困ったように笑いながら悲痛に叫ぶ遥へと手を伸ばし、その頭を優しく撫でた。
「遥。関東大会だって始まるんだ。これ以上部を引っ掻き回すようなことをしたら他のメンバーのメンタルにも関わる。だから俺はこのままで構わないんだよ」
「萩……」
本当にそれでいいのだろうか。未練はないのだろうか。遥は悲しげに滝を見つめるが、彼の目は迷っているようには見えなかった。
頭を撫でるその手は暖かさと優しさも感じる。まるで彼の人柄を表しているかのよう。
本当はレギュラーでいたかったはずなのに。諦めたくないはずなのに。それなのに団体戦だからみんなのことを考えて不満を漏らさない。足掻こうとしない。
そんな降格を甘んじて受け入れる幼馴染みに遥は目頭が熱くなる。
「……最後までレギュラーでいられなくてごめんね」
その言葉を聞いて遥はハッとして顔を上げた。前に「萩も頑張って最後までレギュラーでいてね」と話していたことを思い出したから。
目の前の相手は眉を下げて本当に申し訳なさそうにしていた。そんなこと、気にしなくていいのに。そう口にしようとした遥だったが、滝は話を続けた。
「跡部や宍戸から聞いたよ。俺のために泣いてくれたんだよね? ありがとう、そしてごめん。遥の期待に応えられなくて」
「それは……あたしが勝手にしたことで……って、宍戸と話したの? あれから?」
「うん、昨夜ね。宍戸から電話がかかったきたんだ」
くすくすと笑いながら滝は昨夜のことを語った。
レギュラーの座を奪ったことを多少なりとも気にしていたのか、自分から決闘を申し込んできたのに『悪ぃ』って謝罪をしてきたのだと言う。
滝にしてみれば奪い取ったあとで謝ってくるなんてあまり気分のいいものではなかったので素直に宍戸にそう伝えた上で「間違ってると思うならその謝罪を受け入れるけど、宍戸は間違ったことをしたって思う?」と問いかけた。
その答えはもちろんNOだったのでそれじゃあ謝罪はいらないよと笑って返したのだった。
滝は自分を負かした宍戸を称えてエールを送るのだが、電話の向こうの相手は遥のことも気にしていたようであまり元気がない様子。
そこで一悶着があったことを滝は宍戸から知ることになる。後ほど跡部からも連絡が入り、より詳しい話を聞いて自分のために泣いてくれた遥に感謝と申し訳なさを抱いた。
「俺が宍戸に敵わなかっただけの話なんだ。だから宍戸には怒らないであげて。怒るなら約束を破った俺に、ね?」
「そ、そんなので怒らないよっ! あたしはただ宍戸が狡いって思って……萩をレギュラーから外した宍戸に腹が立って……!」
ボロッと我慢していた涙が大粒となってこぼれた。仲良しの幼馴染みがレギュラーから外されたことに悔しくて悔しくて仕方なく、まるで当人の気持ちになり胸も酷く締めつけられる。
そんな遥の涙を滝の人差し指が優しく拭った。
「俺の代わりに怒ったり泣いたりしてくれてありがとう。でもその感情は自分のために使ってほしいよ。俺のせいで遥を泣かせるのはとても辛いんだ」
優しく髪を撫でながらもその声はとても悲しげで、彼がそこまで言うのなら、宍戸のことを憎んでないのなら、と考えて遥は怒りと悲しみを抑えることに努めた。