自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
復活を喜び、復活を憎み
主人公名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「━━以上だ。それでは練習を開始しろ!」
そう告げる榊に宍戸は目を見開いた。期待をしていただけに監督の言葉に納得がいかず、ラケットヘッドをコートに叩きつけた。
「監督。どうして日吉を……なぜ俺じゃない。奴を倒したのは俺だ!」
おかしい。なぜそこで日吉の名が上がるのか。もう俺はあの時の俺とは違う。そう証明したのにまだ足りないというのか。
そう思って感情的に声を荒らげた宍戸はラケットを強く握る。
「見苦しいぞ、宍戸」
「跡部っ」
そこに割って入って来たのは跡部だった。
「不動峰の橘といえども無様に負けたんだ。負けた奴を監督は二度と使わん!」
そんなこと言われなくても分かってる。分かってるけどそれで諦めることが出来たらこんな真似はしねぇよ。
跡部に言い返そうとした宍戸だったが、そこへ待ってくださいと言わんばかりに声を上げたのは鳳だった。
「宍戸さんはあれから2週間想像を絶する特訓をしてたんですよ!」
無理を言って宍戸の特訓に手伝ってくれた鳳が跡部に意見を言う。そんな後輩の言葉に宍戸は嬉しく思うも、跡部はというと「で?」と返す。
「バーカ……だったら俺に言うな。監督に直接言ってこいよ。みっともねぇ」
その言葉を聞いて宍戸はすでにこの場にいない榊を追いかけ始めた。そんな宍戸に続き鳳も走り出す。
監督っ、監督待ってください!! 周りに気にすることなく大きな声で榊を呼び、彼に追いついた宍戸は背を向く監督の前で膝と手を地面に付けて頭を下げた。
「まだ何か用か?」
「お願いします。自分を使って下さい!!」
教師の前だろうと後輩の前だろうとレギュラーに戻れる可能性があるならプライドなんてかなぐり捨てる勢いの宍戸は必死に榊に頼み込んだ。続けて鳳も監督を説得しようと口を開く。
「監督っ。自分は宍戸先輩のパートナーをつとめこの2週間……血の滲むような特訓を見て来ましたっ。自分からもよろしくお願いします」
先輩のためにレギュラーに戻れる手助けをしようとする鳳の言葉を聞いた榊は頬に指二本当てながら冷徹な言葉を彼に発した。
「では、鳳……お前が落ちるか?」
「!」
なんだよそれ。何なんだよ。なんでそこで長太郎なんだ。俺がまた公式試合に立つためには長太郎の犠牲が必要だって言うのかっ?
「……」
一時の静寂の中、鳳はそんな長くない時間で決心した。
尊敬する先輩である宍戸には何としてでも復帰してもらいたい。その一心で汗を一筋垂らしながら決意の言葉を声にしようと口を開く。
「構いませ……」
そんなことさせるかよ! そう口にするよりも宍戸は行動に移した。
「宍戸さんっ!?」
鳳が声を荒らげるのも仕方ない。なぜなら宍戸は持参していたハサミで自身の長い髪を切ったのだ。
ポニーテールに結っていた髪も、サイドに垂れる髪も。
「いったい何を!? 自慢の髪だったじゃないっスか!!」
そう。鳳の言う通り長いその髪は宍戸の自慢でもあった。男なのに女々しい、なんて言われたこともあったが髪に男も女もない。
それくらいに誇りにすら思っていた美しい髪を、過去の自分と決別するかの如く宍戸は切ったのだ。
何も決心したのは自分だけじゃないことを理解した鳳は驚きながらもただ黙って見ているしかなかった。
しばらくして宍戸はハサミを置く。雑ではあるが、そこには長髪の宍戸はおらず、かなり短く切った短髪の宍戸がいた。
「監督……そこに居る奴はまだ負けてはいない」
「跡部!?」
ザッと姿を現したのは部長である跡部だった。そして彼に続くように麻美と秋も姿を見せる。
麻美は興味本位として。秋は純粋に心配して。
「自分からもお願いします!」
そしてあの跡部が榊に頼み込む。それが引き金となったのか、秋も一歩前に出た。
「榊先生っ、宍戸は実力をみんなの前で見せました! どうか考え直してくださいっ」
「九条……」
普段は小言ばかり口にする秋とよく口論する腐れ縁の関係とも言える彼女が自分のために頭を下げた。
思えば特訓している間もずっと気にかけてくれたし、関わるなと言っても遠目から心配げに見ていたこともあったのだが、まさかここまで口を出してくれるなんて思いもしなかった。
しかし、どうやらそれだけでは終わらなかったらしい。
「監督」
誰よりも前に出たのは麻美だった。
「お前も何か言いたいようだな」
「そいつがうちの部に汚点を残したのは事実ですし、どうしたって消えないことも理解してるつもりです。ただ、そいつらの言う特訓は間違いなく成果として現れてるのもまた事実かと」
まさかのあの麻美まで榊に口添えするとは。その場にいた誰もが驚いただろう。少し前の麻美ならばそこまでしなかったはず。そんな麻美の言動に秋はどことなく嬉しげに笑い、跡部は一人ほくそ笑んだ。
「勝手にしろ」
跡部達の説得のかいあってか、榊はそれ以上反対することなく彼らに任せることにして再び背を向け去って行った。
「ちっ、余計な事を」
「は? それがお前の態度か?」
ぼそりと呟いた宍戸の言葉に反応した麻美が眉を寄せながら宍戸に睨みを利かせると彼は冷や汗を流しながら口をきゅっと結んだ。
「宍戸、他に言うことがあると思うよ?」
いつもならうるせぇと反論する秋の言葉だが、この時ばかりは宍戸も彼女の言うことが正しいと理解した。
「悪ぃ。みんな、ありがとな」
素直にお礼を口にした宍戸に秋は満足気に笑い、麻美も「言えるじゃねぇか」と溜め息混じりに言葉を漏らす。
「おい、宍戸。言っとくけど二度目はねーぞ」
「わーってるっての」
跡部に言われずとも分かっていた。こんなチャンスはもう二度とあるわけないと。
小さくフッと浮かべる笑みは随分と久しぶりだった。ずっと張り詰めていた緊張の糸が切れたようだ。鳳も宍戸が再びレギュラーに戻れることが出来て良かったと安堵の息を吐き出したその時だった。
「何が、そんなにおかしいの……?」
いつからそこにいたのか。いつもなら騒々しいだろう彼女が静かにぽつりと呟く。
「萩をレギュラーから蹴落としてレギュラー復帰したのがそんなに嬉しいのっ!?」
「西成……」
その三人目のマネージャーである遥の目は憤怒の色を宿し、宍戸を強く睨みつけた。
そう告げる榊に宍戸は目を見開いた。期待をしていただけに監督の言葉に納得がいかず、ラケットヘッドをコートに叩きつけた。
「監督。どうして日吉を……なぜ俺じゃない。奴を倒したのは俺だ!」
おかしい。なぜそこで日吉の名が上がるのか。もう俺はあの時の俺とは違う。そう証明したのにまだ足りないというのか。
そう思って感情的に声を荒らげた宍戸はラケットを強く握る。
「見苦しいぞ、宍戸」
「跡部っ」
そこに割って入って来たのは跡部だった。
「不動峰の橘といえども無様に負けたんだ。負けた奴を監督は二度と使わん!」
そんなこと言われなくても分かってる。分かってるけどそれで諦めることが出来たらこんな真似はしねぇよ。
跡部に言い返そうとした宍戸だったが、そこへ待ってくださいと言わんばかりに声を上げたのは鳳だった。
「宍戸さんはあれから2週間想像を絶する特訓をしてたんですよ!」
無理を言って宍戸の特訓に手伝ってくれた鳳が跡部に意見を言う。そんな後輩の言葉に宍戸は嬉しく思うも、跡部はというと「で?」と返す。
「バーカ……だったら俺に言うな。監督に直接言ってこいよ。みっともねぇ」
その言葉を聞いて宍戸はすでにこの場にいない榊を追いかけ始めた。そんな宍戸に続き鳳も走り出す。
監督っ、監督待ってください!! 周りに気にすることなく大きな声で榊を呼び、彼に追いついた宍戸は背を向く監督の前で膝と手を地面に付けて頭を下げた。
「まだ何か用か?」
「お願いします。自分を使って下さい!!」
教師の前だろうと後輩の前だろうとレギュラーに戻れる可能性があるならプライドなんてかなぐり捨てる勢いの宍戸は必死に榊に頼み込んだ。続けて鳳も監督を説得しようと口を開く。
「監督っ。自分は宍戸先輩のパートナーをつとめこの2週間……血の滲むような特訓を見て来ましたっ。自分からもよろしくお願いします」
先輩のためにレギュラーに戻れる手助けをしようとする鳳の言葉を聞いた榊は頬に指二本当てながら冷徹な言葉を彼に発した。
「では、鳳……お前が落ちるか?」
「!」
なんだよそれ。何なんだよ。なんでそこで長太郎なんだ。俺がまた公式試合に立つためには長太郎の犠牲が必要だって言うのかっ?
「……」
一時の静寂の中、鳳はそんな長くない時間で決心した。
尊敬する先輩である宍戸には何としてでも復帰してもらいたい。その一心で汗を一筋垂らしながら決意の言葉を声にしようと口を開く。
「構いませ……」
そんなことさせるかよ! そう口にするよりも宍戸は行動に移した。
「宍戸さんっ!?」
鳳が声を荒らげるのも仕方ない。なぜなら宍戸は持参していたハサミで自身の長い髪を切ったのだ。
ポニーテールに結っていた髪も、サイドに垂れる髪も。
「いったい何を!? 自慢の髪だったじゃないっスか!!」
そう。鳳の言う通り長いその髪は宍戸の自慢でもあった。男なのに女々しい、なんて言われたこともあったが髪に男も女もない。
それくらいに誇りにすら思っていた美しい髪を、過去の自分と決別するかの如く宍戸は切ったのだ。
何も決心したのは自分だけじゃないことを理解した鳳は驚きながらもただ黙って見ているしかなかった。
しばらくして宍戸はハサミを置く。雑ではあるが、そこには長髪の宍戸はおらず、かなり短く切った短髪の宍戸がいた。
「監督……そこに居る奴はまだ負けてはいない」
「跡部!?」
ザッと姿を現したのは部長である跡部だった。そして彼に続くように麻美と秋も姿を見せる。
麻美は興味本位として。秋は純粋に心配して。
「自分からもお願いします!」
そしてあの跡部が榊に頼み込む。それが引き金となったのか、秋も一歩前に出た。
「榊先生っ、宍戸は実力をみんなの前で見せました! どうか考え直してくださいっ」
「九条……」
普段は小言ばかり口にする秋とよく口論する腐れ縁の関係とも言える彼女が自分のために頭を下げた。
思えば特訓している間もずっと気にかけてくれたし、関わるなと言っても遠目から心配げに見ていたこともあったのだが、まさかここまで口を出してくれるなんて思いもしなかった。
しかし、どうやらそれだけでは終わらなかったらしい。
「監督」
誰よりも前に出たのは麻美だった。
「お前も何か言いたいようだな」
「そいつがうちの部に汚点を残したのは事実ですし、どうしたって消えないことも理解してるつもりです。ただ、そいつらの言う特訓は間違いなく成果として現れてるのもまた事実かと」
まさかのあの麻美まで榊に口添えするとは。その場にいた誰もが驚いただろう。少し前の麻美ならばそこまでしなかったはず。そんな麻美の言動に秋はどことなく嬉しげに笑い、跡部は一人ほくそ笑んだ。
「勝手にしろ」
跡部達の説得のかいあってか、榊はそれ以上反対することなく彼らに任せることにして再び背を向け去って行った。
「ちっ、余計な事を」
「は? それがお前の態度か?」
ぼそりと呟いた宍戸の言葉に反応した麻美が眉を寄せながら宍戸に睨みを利かせると彼は冷や汗を流しながら口をきゅっと結んだ。
「宍戸、他に言うことがあると思うよ?」
いつもならうるせぇと反論する秋の言葉だが、この時ばかりは宍戸も彼女の言うことが正しいと理解した。
「悪ぃ。みんな、ありがとな」
素直にお礼を口にした宍戸に秋は満足気に笑い、麻美も「言えるじゃねぇか」と溜め息混じりに言葉を漏らす。
「おい、宍戸。言っとくけど二度目はねーぞ」
「わーってるっての」
跡部に言われずとも分かっていた。こんなチャンスはもう二度とあるわけないと。
小さくフッと浮かべる笑みは随分と久しぶりだった。ずっと張り詰めていた緊張の糸が切れたようだ。鳳も宍戸が再びレギュラーに戻れることが出来て良かったと安堵の息を吐き出したその時だった。
「何が、そんなにおかしいの……?」
いつからそこにいたのか。いつもなら騒々しいだろう彼女が静かにぽつりと呟く。
「萩をレギュラーから蹴落としてレギュラー復帰したのがそんなに嬉しいのっ!?」
「西成……」
その三人目のマネージャーである遥の目は憤怒の色を宿し、宍戸を強く睨みつけた。