自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
復活を喜び、復活を憎み
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翌日、秋は驚いていた。いや、秋だけではなくその場にいる全員がそうだったに違いない。
なぜなら、今までは部活に出ていなかった宍戸がようやく姿を現したのだ。
「滝。俺と試合しろ」
傷だらけのボロボロの姿をした彼はラケットヘッドを滝に向けて名指しで試合を申し込んだ。それはレギュラーの座を懸けたレギュラー以下に許された決闘。
レギュラーに勝てばその座を奪えることもある。だが、もし負けたら準レギュラーならその座すらも剥奪されるリスクがある。
すでに正レギュラーから外された宍戸にとってはこれ以上失うものはないだろう。しかし、滝は別だ。彼は正レギュラーの一人。負けることは絶対に許されない。特に元・正レギュラーである宍戸が相手なら尚のこと。
「……いいよ、やろうか」
にっこりと笑って宍戸の果たし合いに乗った滝に部員達はざわついた。
もちろん、秋も同じである。
(宍戸……戻って来たと思ったらいきなり試合を申し込むなんて一体どういうこと?)
ハラハラする秋はこの状況をどうするつとりなのかと、部長の跡部が近くにいないか探した。
跡部はすぐに見つかったのだが、特に止める気配はなくただ傍観に徹している様子だ。
まさか、このまま試合をさせるつもりなのかな。そう考え、どうなるか分からない不安を抱く秋。そんな彼女の一番近くにいた準レギュラーの日吉がぼそりと呟く。
「レギュラーから落ちたのに諦めの悪い人ですね」
どこか棘のある言い方だった。そんなふうに言わないであげて、と注意をしようかと思った瞬間、別の人物が日吉の言葉に反応する。
「こんのヒヨッコが! 仮にも先輩に向かってなんだよ、その言い方は!」
「!」
向日が宍戸の肩を持つように口を挟んできたのだ。
ただでさえ向日を意識し始めた秋にとってその登場だけでもドキッと胸が高鳴ってしまう。
「事実でしょう? レギュラーから外れたならそのまま大人しくするべきなんですよ、あの人は」
「じゃあ、お前はこの試合、宍戸が負けるっつーんだな?」
「部活に出ず落ちぶれた人が正レギュラーの滝さんに勝てるわけないと思いますが」
「ハッ。言ってろ。俺は宍戸が勝つに賭けるぜ。秋はどうだ?」
「え、えっ?」
まさかの向日の振りに秋は慌てた。どっちが勝つのかという話になるとは思っていなかったのでどう答えるべきかと悩んだ。
宍戸なのか、滝なのか、どっちもテニス部としては大事な部員である。しかし、向日の問いはどちらを応援するのかと問われているようなもの。
「……私はどちらも応援したい、かな。でも、宍戸には頑張ってほしいところはあるの」
今の宍戸はどん底に落ちてそれを這い上がろうとしている。彼が一体今まで何をしていたかは知らないが、怪我だらけなのと気迫ある表情で試合を申し込む姿は何かを決心をしたように思える。
全てを懸けたような、そんな宍戸の姿に秋は若干宍戸が優位になることを願っていた。
そんな思いで宍戸と滝の試合を見守ったその結果、滝はコートの上に手と膝を付き息を荒くしていた。対する宍戸は滝を見下ろしながらコートに立っている。
「ウソだろ……正レギュラーの滝さんが1ー6で敗れるなんて」
ギャラリーがざわついた。それもそのはず、レギュラー落ちした宍戸が現正レギュラーの滝をほぼ圧勝とも言える勝利を手にしたのだ。
それだけじゃない。宍戸の動きが都大会の時とは比べ物にならないほど成長していた。それは誰の目から見ても明らかであり、部員達は宍戸の強さに圧倒されていた。
「……宍戸」
スポーツはただ体力を鍛えればいいってものではない。精神状態によって当然その結果が左右される。
宍戸の場合は公式試合に1ゲームも取ることなく敗北した上に追い討ちをかけるように正レギュラーから外された。そのショックは計り知れないだろう。
それなのに宍戸はかつて同じ地位だった滝に勝利したのだ。
「何の騒ぎだ!」
コートに響く声。部員達はいっせいに聞き覚えのあるその声の主へと目を向けた。
「監督っ!!」
部員達は監督である榊太郎の姿を見て声を上げる。部員数が異様に多い氷帝男子テニス部を纏める彼はその佇まいから威厳に満ちていた。
榊は試合を終えた宍戸と滝へ一瞥すると、宍戸は期待を込めた瞳で彼を見上げる。
「滝はレギュラーから外せ!」
「!」
ビクッと身体が震える滝だったが、彼はすぐにそれを受け入れて悔しげな表情で俯く。
正レギュラーを背負っているから負けた者の末路は誰もが理解していた。
宍戸に頑張ってほしいと願っていたが、滝にレギュラーから外れてほしいと願っていたわけではないので秋の心境は複雑だった。
「代わりに準レギュラーの日吉が入る!」
続く榊の言葉を聞いて秋はハッとする。レギュラーから外れた滝の席は彼を負かした宍戸ではなく、秋のすぐ近くにいる日吉だった。
秋が準レギュラーである彼に目を向けると日吉は突然の昇級にニヤリと笑みを浮かべていた。
「はぁっ? なんでヒヨッコなんだよ!? そこは宍戸だろ!」
「監督の意向なので仕方ないでしょう? まぁ、宍戸さんには感謝しておきましょうか」
「……」
秋はどう言葉にすればいいか分からなかった。日吉が正レギュラーに昇格したのならそれを祝うべきかもしれないが、日吉が滝を負かしたわけではない。素直におめでとうを口に出来ないでいた。
なぜなら、今までは部活に出ていなかった宍戸がようやく姿を現したのだ。
「滝。俺と試合しろ」
傷だらけのボロボロの姿をした彼はラケットヘッドを滝に向けて名指しで試合を申し込んだ。それはレギュラーの座を懸けたレギュラー以下に許された決闘。
レギュラーに勝てばその座を奪えることもある。だが、もし負けたら準レギュラーならその座すらも剥奪されるリスクがある。
すでに正レギュラーから外された宍戸にとってはこれ以上失うものはないだろう。しかし、滝は別だ。彼は正レギュラーの一人。負けることは絶対に許されない。特に元・正レギュラーである宍戸が相手なら尚のこと。
「……いいよ、やろうか」
にっこりと笑って宍戸の果たし合いに乗った滝に部員達はざわついた。
もちろん、秋も同じである。
(宍戸……戻って来たと思ったらいきなり試合を申し込むなんて一体どういうこと?)
ハラハラする秋はこの状況をどうするつとりなのかと、部長の跡部が近くにいないか探した。
跡部はすぐに見つかったのだが、特に止める気配はなくただ傍観に徹している様子だ。
まさか、このまま試合をさせるつもりなのかな。そう考え、どうなるか分からない不安を抱く秋。そんな彼女の一番近くにいた準レギュラーの日吉がぼそりと呟く。
「レギュラーから落ちたのに諦めの悪い人ですね」
どこか棘のある言い方だった。そんなふうに言わないであげて、と注意をしようかと思った瞬間、別の人物が日吉の言葉に反応する。
「こんのヒヨッコが! 仮にも先輩に向かってなんだよ、その言い方は!」
「!」
向日が宍戸の肩を持つように口を挟んできたのだ。
ただでさえ向日を意識し始めた秋にとってその登場だけでもドキッと胸が高鳴ってしまう。
「事実でしょう? レギュラーから外れたならそのまま大人しくするべきなんですよ、あの人は」
「じゃあ、お前はこの試合、宍戸が負けるっつーんだな?」
「部活に出ず落ちぶれた人が正レギュラーの滝さんに勝てるわけないと思いますが」
「ハッ。言ってろ。俺は宍戸が勝つに賭けるぜ。秋はどうだ?」
「え、えっ?」
まさかの向日の振りに秋は慌てた。どっちが勝つのかという話になるとは思っていなかったのでどう答えるべきかと悩んだ。
宍戸なのか、滝なのか、どっちもテニス部としては大事な部員である。しかし、向日の問いはどちらを応援するのかと問われているようなもの。
「……私はどちらも応援したい、かな。でも、宍戸には頑張ってほしいところはあるの」
今の宍戸はどん底に落ちてそれを這い上がろうとしている。彼が一体今まで何をしていたかは知らないが、怪我だらけなのと気迫ある表情で試合を申し込む姿は何かを決心をしたように思える。
全てを懸けたような、そんな宍戸の姿に秋は若干宍戸が優位になることを願っていた。
そんな思いで宍戸と滝の試合を見守ったその結果、滝はコートの上に手と膝を付き息を荒くしていた。対する宍戸は滝を見下ろしながらコートに立っている。
「ウソだろ……正レギュラーの滝さんが1ー6で敗れるなんて」
ギャラリーがざわついた。それもそのはず、レギュラー落ちした宍戸が現正レギュラーの滝をほぼ圧勝とも言える勝利を手にしたのだ。
それだけじゃない。宍戸の動きが都大会の時とは比べ物にならないほど成長していた。それは誰の目から見ても明らかであり、部員達は宍戸の強さに圧倒されていた。
「……宍戸」
スポーツはただ体力を鍛えればいいってものではない。精神状態によって当然その結果が左右される。
宍戸の場合は公式試合に1ゲームも取ることなく敗北した上に追い討ちをかけるように正レギュラーから外された。そのショックは計り知れないだろう。
それなのに宍戸はかつて同じ地位だった滝に勝利したのだ。
「何の騒ぎだ!」
コートに響く声。部員達はいっせいに聞き覚えのあるその声の主へと目を向けた。
「監督っ!!」
部員達は監督である榊太郎の姿を見て声を上げる。部員数が異様に多い氷帝男子テニス部を纏める彼はその佇まいから威厳に満ちていた。
榊は試合を終えた宍戸と滝へ一瞥すると、宍戸は期待を込めた瞳で彼を見上げる。
「滝はレギュラーから外せ!」
「!」
ビクッと身体が震える滝だったが、彼はすぐにそれを受け入れて悔しげな表情で俯く。
正レギュラーを背負っているから負けた者の末路は誰もが理解していた。
宍戸に頑張ってほしいと願っていたが、滝にレギュラーから外れてほしいと願っていたわけではないので秋の心境は複雑だった。
「代わりに準レギュラーの日吉が入る!」
続く榊の言葉を聞いて秋はハッとする。レギュラーから外れた滝の席は彼を負かした宍戸ではなく、秋のすぐ近くにいる日吉だった。
秋が準レギュラーである彼に目を向けると日吉は突然の昇級にニヤリと笑みを浮かべていた。
「はぁっ? なんでヒヨッコなんだよ!? そこは宍戸だろ!」
「監督の意向なので仕方ないでしょう? まぁ、宍戸さんには感謝しておきましょうか」
「……」
秋はどう言葉にすればいいか分からなかった。日吉が正レギュラーに昇格したのならそれを祝うべきかもしれないが、日吉が滝を負かしたわけではない。素直におめでとうを口に出来ないでいた。