自己中心の主人公1、優柔不断の主人公2、おバカキャラの主人公3の名前設定となります。
スポーツジムのプレオープンに招待された少年少女
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「あれ? ジローは来てないの?」
コンビニ帰りの麻美が氷帝レギュラー達を途中で見つけたため、スポーツジムに引き連れて来たまでは良かったが、どうやらその中に芥川の姿がなかったので秋は誰かの影に隠れてるのかと思い辺りを見回す。
「あぁ、あいつすぐに寝ちまって起きやしねーからうちの車に乗せて帰らせた」
部活じゃないから強制参加でもないしな。そう付け加えながら芥川を家に送ったと話す跡部。こういうさり気ない優しさが彼らしいなと感じた秋は芥川が無事に帰ったなら良かったと安心する。
しかし、それでも秋はもう一人レギュラーだった人物がいないことを目の当たりにして、やっぱりと思わずにはいられなかった。
(当たり前だけど、宍戸はいないね……)
まだ学校には来ているので良かったが、日に日に身体の傷が増えていっていることが気になって仕方なかった。
いまだに人を寄せつけない雰囲気にクラスだけでなく、彼の友人でさえも腫れ物を扱うかのようにそっと距離を置いている。
秋も芥川の助言もあり、お節介な気持ちを抑えて宍戸に話しかけることをやめた。
それでも彼が一体何をしてるか分からなくて不安なのも事実。このままいつまでこうしていればいいのかも分からなく、常に秋の中で宍戸の存在が片隅にいる。
「秋。どうかしたのか? 顔色悪そうだけど」
「!」
そう思い悩みながら俯く秋に気づいた向日が顔を覗き込み声をかける。
他のメンバー達はそれぞれ好きなマシンや器具などに向かって行くからてっきり向日も同じだと思っていたため、不意をつかれた秋はドキッと胸を高鳴らせ、慌てて口を開く。
「だ、大丈夫だよっ。その……ちょっと宍戸のことが気になって……」
「あー……あいつな。まぁ、今はそのままにしておくのが一番だし、秋が気にすることじゃねーって」
「そうなんだけどね、それでも心配になって。部活にも戻らないし、怪我は増えていくし……」
「宍戸が何をしてるかはさっぱり分かんねーけどさ、悪いことしてねぇのは確かだと思うぜ。あいつ、結構な負けず嫌いだからよ。とにかく今は信じとけって」
な? と、同意を求める向日の言葉を聞いた秋は彼がそう言うのならとゆっくり頷いた。
それを見て納得したのか向日は「よしっ」と呟き、ニカッと歯を見せる笑みを浮かべる。
その笑顔は前に宍戸をそっとしておこうと向日と同じようにアドバイスをした芥川の笑みと似ていた。
「……ジローもそうだったけど、岳人も同じことを言うってことはそれだけ宍戸のことを信じてるんだね」
それなのに私ときたら……と、秋は自己嫌悪する。
芥川にも宍戸のことはそっとしておくのも優しさだと言われていたのに、いまだ部活には戻ってこないし、人を寄せつけない雰囲気にいつの間にか焦れてしまっていた。
「まぁ、昔馴染みってのもあるし、何となくだけどな。っつーわけで、せっかくジムに来たんだから楽しんどかねーと損だろ? そんで元気になった宍戸に自慢してやろーぜ!」
「そ、そうだね」
向日の言葉に少しずつ元気を取り戻した秋は大きく頷く。そして二人はジムの中を探索することにした。
跡部グループが経営するだけあって大型のスポーツジムには最新マシンを揃えただけでなくスタジオもあり、ヨガやエアロビクスといったプログラムも沢山ある。
その中のひとつでもあるユーバウンドという一人用のトランポリンで音楽に合わせてエクササイズするというものがあった。
ちょうどそのスタジオに通りかかった向日と秋はその中に遥がいるのを目撃する。
本日のプレオープン招待客はレギュラーメンバーとマネージャーだけでないので他にも招待客はいるのだが、そのユーバウンドのスタジオには遥だけのようで女性インストラクターとマンツーマンであった。
それを見た向日が面白そうだと言わんばかりにすぐに突撃する。
「おい、遥! 何面白そうなことしてんだよ! 俺にもやらせろって!」
「な、なんだね君はっ! このトランポリンはあたしのだいっ!」
「いいじゃねーか! どーせお前は運動能力ないし、高く跳べねぇだろ?」
「これは高く跳ぶためのやつじゃないからね!?」
トランポリンを奪おとする向日に遥は必死に奪われまいと死守するのだが、その攻防は秋からすると仲がいいじゃれ合いのようにしか見えなかった。
(本当に仲良しだなぁ、二人とも……)
ただジッと二人のやり取りを見守る。それだけなのに秋の胸の中で少しだけ、ほんの少しだけモヤッとしてしまう。
なんだろう、これは。そう思って胸に手を当ててみるが医師でもない彼女には分からなかった。けど、確かにわだかまりのようなものを感じたのだ。
(……仲のいい二人の様子を見ただけなのにどうして気分が重くなるんだろう)
焦燥や不愉快な気持ちが小さく芽吹いた気がした。それでも秋は分からない。分からないけど、その気持ちが遥に向けていることは確かだった。
大事な友人にそんな理由の分からない感情を向けてしまうなんて。軽く首を振りながら感情ごと払拭しようとする。
「秋? どっかしたの?」
すると遥が声をかけてきた。ハッとした秋は驚きの表情をするもすぐに否定の声を上げる。
「ううんっ。なんでもないよ! その、二人は仲が良くて羨ましいなって……」
自然と口にした『羨ましい』という言葉に秋は気づいた。正体不明のモヤモヤが何だったのかを理解したのだ。
ただただ遥が羨ましいのだ。憧れの人物でもある向日と軽口を叩き合えるほどの仲の良さに。だから遥に羨望の眼差しを向けていたのだ。
「仲良く見えるなんて秋の目はどうかしちゃってると思うんだよなーあたしは」
「だってあんなに言いたいこと言い合えるんだよ? 遥が樺地くんのことを好きなのは知ってるけど、あまりにも仲良しすぎて岳人とそういう仲にも見えちゃうし……」
「ん? なんか聞いてたら秋ってばまるで向日のことが好きみたいな言い方だね?」
「もちろん岳人のことも好きだし、遥のことも好きだよ?」
「いやいや、そうじゃなくて恋してる女の子って感じ」
「えっ━━」
その瞬間、秋の思考が停止した。だってそれは一度違うと判断されたものだったから。
ジローだって言っていた。アイドルに向けるものと一緒だと。私は岳人のことを憧れていて尊敬してるだけなんだ。
最初は確かに恋愛感情としての好きだと思っていた。だけどジローの言い分は違った。
『それに誰かを好きになるってことはもっと強い気持ちになるんだよ。楽しいだけじゃなくって苦しくってしんどくて、酷い気持ちにもなることだってあるんだし』
その言葉を思い出した秋は「あ……」と小さく声を上げる。
確かに、そうだ。もっと岳人と仲良くなりたいという強い気持ちだけじゃなく、遥と仲良くしてる様子を見て酷い気持ちにもなった。そう考えた彼女はやがて確信する。
(私……やっぱり岳人のことが好きなんだ……)
自覚をすると一気に顔や身体が熱くなる。頬を両手で押えて熱を抑え込みたいと願うも自分の身体とはいえ、言うことは聞いてくれない。
今の今まで燻り、ようやく気づいた恋情は炎のように全身に包まれるような感覚だった。
熱くて、胸の鼓動が大きくなっているような気がして、ただ異性を恋い慕っているというのに感情が上手くコントロール出来ない。
「秋? なんか顔赤くない?」
「えっ、あっ! なんだか暑くなったみたいで……ちょっと涼んでくるねっ」
「えっ? ちょっと秋!?」
さすがに岳人のことを好きだと自覚したの、と本人のいる前では言えないため、遥にどう説明したらいいか分からなくなった秋はついその場から逃げ出した。
それを見ていた向日も突然スタジオを抜け出した秋に疑問符を浮かべながら女性インストラクターから新しく用意してもらった一人用のトランポリンで小さく跳ねていた。
(どうしよう、どうしよう、私これから岳人とどう接したらいいのっ?)
混乱しながらこれからの向日との接し方に悩む秋は焦りのため駆け足となる。
しかしスタジオを出てすぐの曲がり角に差しかかったところで人の影が見えて、反射的に足が止まった。
「!」
「お、っと……九条さんやん。そないに焦ってどないしたん?」
「あ、忍足……」
どうやら相手は忍足だった。知らない人とぶつかりかけるのはさすがに気まずかったので知り合いで良かったと思った……が。
「ん? なんやめっちゃ顔赤くないか?」
「! あ、えっと、ちょっと動いたから暑くなって……だからその、涼みに行く途中なの。……そ、それじゃあね!」
見るからに狼狽えていたと秋自身も自覚している。だけど向日と仲のいい彼に本当のことを話すのも気が引けるのでやはりここは逃げるしか選択はない。
忍足の返事を聞くこともなくそそくさと休憩エリアのひとつでもある外へ出るバルコニーへと秋は向かって行った。
(……あの様子やとそろそろ自覚したっちゅーことなんやろな)
人の恋愛ごとには聡い忍足は秋の様子を見て何となく察したのだった。
コンビニ帰りの麻美が氷帝レギュラー達を途中で見つけたため、スポーツジムに引き連れて来たまでは良かったが、どうやらその中に芥川の姿がなかったので秋は誰かの影に隠れてるのかと思い辺りを見回す。
「あぁ、あいつすぐに寝ちまって起きやしねーからうちの車に乗せて帰らせた」
部活じゃないから強制参加でもないしな。そう付け加えながら芥川を家に送ったと話す跡部。こういうさり気ない優しさが彼らしいなと感じた秋は芥川が無事に帰ったなら良かったと安心する。
しかし、それでも秋はもう一人レギュラーだった人物がいないことを目の当たりにして、やっぱりと思わずにはいられなかった。
(当たり前だけど、宍戸はいないね……)
まだ学校には来ているので良かったが、日に日に身体の傷が増えていっていることが気になって仕方なかった。
いまだに人を寄せつけない雰囲気にクラスだけでなく、彼の友人でさえも腫れ物を扱うかのようにそっと距離を置いている。
秋も芥川の助言もあり、お節介な気持ちを抑えて宍戸に話しかけることをやめた。
それでも彼が一体何をしてるか分からなくて不安なのも事実。このままいつまでこうしていればいいのかも分からなく、常に秋の中で宍戸の存在が片隅にいる。
「秋。どうかしたのか? 顔色悪そうだけど」
「!」
そう思い悩みながら俯く秋に気づいた向日が顔を覗き込み声をかける。
他のメンバー達はそれぞれ好きなマシンや器具などに向かって行くからてっきり向日も同じだと思っていたため、不意をつかれた秋はドキッと胸を高鳴らせ、慌てて口を開く。
「だ、大丈夫だよっ。その……ちょっと宍戸のことが気になって……」
「あー……あいつな。まぁ、今はそのままにしておくのが一番だし、秋が気にすることじゃねーって」
「そうなんだけどね、それでも心配になって。部活にも戻らないし、怪我は増えていくし……」
「宍戸が何をしてるかはさっぱり分かんねーけどさ、悪いことしてねぇのは確かだと思うぜ。あいつ、結構な負けず嫌いだからよ。とにかく今は信じとけって」
な? と、同意を求める向日の言葉を聞いた秋は彼がそう言うのならとゆっくり頷いた。
それを見て納得したのか向日は「よしっ」と呟き、ニカッと歯を見せる笑みを浮かべる。
その笑顔は前に宍戸をそっとしておこうと向日と同じようにアドバイスをした芥川の笑みと似ていた。
「……ジローもそうだったけど、岳人も同じことを言うってことはそれだけ宍戸のことを信じてるんだね」
それなのに私ときたら……と、秋は自己嫌悪する。
芥川にも宍戸のことはそっとしておくのも優しさだと言われていたのに、いまだ部活には戻ってこないし、人を寄せつけない雰囲気にいつの間にか焦れてしまっていた。
「まぁ、昔馴染みってのもあるし、何となくだけどな。っつーわけで、せっかくジムに来たんだから楽しんどかねーと損だろ? そんで元気になった宍戸に自慢してやろーぜ!」
「そ、そうだね」
向日の言葉に少しずつ元気を取り戻した秋は大きく頷く。そして二人はジムの中を探索することにした。
跡部グループが経営するだけあって大型のスポーツジムには最新マシンを揃えただけでなくスタジオもあり、ヨガやエアロビクスといったプログラムも沢山ある。
その中のひとつでもあるユーバウンドという一人用のトランポリンで音楽に合わせてエクササイズするというものがあった。
ちょうどそのスタジオに通りかかった向日と秋はその中に遥がいるのを目撃する。
本日のプレオープン招待客はレギュラーメンバーとマネージャーだけでないので他にも招待客はいるのだが、そのユーバウンドのスタジオには遥だけのようで女性インストラクターとマンツーマンであった。
それを見た向日が面白そうだと言わんばかりにすぐに突撃する。
「おい、遥! 何面白そうなことしてんだよ! 俺にもやらせろって!」
「な、なんだね君はっ! このトランポリンはあたしのだいっ!」
「いいじゃねーか! どーせお前は運動能力ないし、高く跳べねぇだろ?」
「これは高く跳ぶためのやつじゃないからね!?」
トランポリンを奪おとする向日に遥は必死に奪われまいと死守するのだが、その攻防は秋からすると仲がいいじゃれ合いのようにしか見えなかった。
(本当に仲良しだなぁ、二人とも……)
ただジッと二人のやり取りを見守る。それだけなのに秋の胸の中で少しだけ、ほんの少しだけモヤッとしてしまう。
なんだろう、これは。そう思って胸に手を当ててみるが医師でもない彼女には分からなかった。けど、確かにわだかまりのようなものを感じたのだ。
(……仲のいい二人の様子を見ただけなのにどうして気分が重くなるんだろう)
焦燥や不愉快な気持ちが小さく芽吹いた気がした。それでも秋は分からない。分からないけど、その気持ちが遥に向けていることは確かだった。
大事な友人にそんな理由の分からない感情を向けてしまうなんて。軽く首を振りながら感情ごと払拭しようとする。
「秋? どっかしたの?」
すると遥が声をかけてきた。ハッとした秋は驚きの表情をするもすぐに否定の声を上げる。
「ううんっ。なんでもないよ! その、二人は仲が良くて羨ましいなって……」
自然と口にした『羨ましい』という言葉に秋は気づいた。正体不明のモヤモヤが何だったのかを理解したのだ。
ただただ遥が羨ましいのだ。憧れの人物でもある向日と軽口を叩き合えるほどの仲の良さに。だから遥に羨望の眼差しを向けていたのだ。
「仲良く見えるなんて秋の目はどうかしちゃってると思うんだよなーあたしは」
「だってあんなに言いたいこと言い合えるんだよ? 遥が樺地くんのことを好きなのは知ってるけど、あまりにも仲良しすぎて岳人とそういう仲にも見えちゃうし……」
「ん? なんか聞いてたら秋ってばまるで向日のことが好きみたいな言い方だね?」
「もちろん岳人のことも好きだし、遥のことも好きだよ?」
「いやいや、そうじゃなくて恋してる女の子って感じ」
「えっ━━」
その瞬間、秋の思考が停止した。だってそれは一度違うと判断されたものだったから。
ジローだって言っていた。アイドルに向けるものと一緒だと。私は岳人のことを憧れていて尊敬してるだけなんだ。
最初は確かに恋愛感情としての好きだと思っていた。だけどジローの言い分は違った。
『それに誰かを好きになるってことはもっと強い気持ちになるんだよ。楽しいだけじゃなくって苦しくってしんどくて、酷い気持ちにもなることだってあるんだし』
その言葉を思い出した秋は「あ……」と小さく声を上げる。
確かに、そうだ。もっと岳人と仲良くなりたいという強い気持ちだけじゃなく、遥と仲良くしてる様子を見て酷い気持ちにもなった。そう考えた彼女はやがて確信する。
(私……やっぱり岳人のことが好きなんだ……)
自覚をすると一気に顔や身体が熱くなる。頬を両手で押えて熱を抑え込みたいと願うも自分の身体とはいえ、言うことは聞いてくれない。
今の今まで燻り、ようやく気づいた恋情は炎のように全身に包まれるような感覚だった。
熱くて、胸の鼓動が大きくなっているような気がして、ただ異性を恋い慕っているというのに感情が上手くコントロール出来ない。
「秋? なんか顔赤くない?」
「えっ、あっ! なんだか暑くなったみたいで……ちょっと涼んでくるねっ」
「えっ? ちょっと秋!?」
さすがに岳人のことを好きだと自覚したの、と本人のいる前では言えないため、遥にどう説明したらいいか分からなくなった秋はついその場から逃げ出した。
それを見ていた向日も突然スタジオを抜け出した秋に疑問符を浮かべながら女性インストラクターから新しく用意してもらった一人用のトランポリンで小さく跳ねていた。
(どうしよう、どうしよう、私これから岳人とどう接したらいいのっ?)
混乱しながらこれからの向日との接し方に悩む秋は焦りのため駆け足となる。
しかしスタジオを出てすぐの曲がり角に差しかかったところで人の影が見えて、反射的に足が止まった。
「!」
「お、っと……九条さんやん。そないに焦ってどないしたん?」
「あ、忍足……」
どうやら相手は忍足だった。知らない人とぶつかりかけるのはさすがに気まずかったので知り合いで良かったと思った……が。
「ん? なんやめっちゃ顔赤くないか?」
「! あ、えっと、ちょっと動いたから暑くなって……だからその、涼みに行く途中なの。……そ、それじゃあね!」
見るからに狼狽えていたと秋自身も自覚している。だけど向日と仲のいい彼に本当のことを話すのも気が引けるのでやはりここは逃げるしか選択はない。
忍足の返事を聞くこともなくそそくさと休憩エリアのひとつでもある外へ出るバルコニーへと秋は向かって行った。
(……あの様子やとそろそろ自覚したっちゅーことなんやろな)
人の恋愛ごとには聡い忍足は秋の様子を見て何となく察したのだった。