幼女戦記(二次創作)

 自分の視界には其の小さな背中が映ることが当たり前だった日常に終わりを迎えたのは突然のことであった。
 次席指揮官という立場上、彼女の不在時に筆頭指揮官を務めたことは過去に何度もあるし、与えられた職責の義務を果たすことに違和感を感じたことは無かった。戦時中に部隊の頭がげ替わることは珍しくもないことであるが、彼女がこの部隊の指揮官から任を外れると聞かされた時は、白昼夢でも見ていたかと錯覚する程に受け止められずにいたことは未だ記憶に新しい。
 過去の自分は次席という立場に甘んじていたという意識が何処かにあったことは否定しないが、殊にあの大隊長があってこその二○三大隊を今更彼女に代わって指揮を執るなど分不相応なのではないかと思うと視線が自然と下に落ちる。
 其れと同時に止まった両足は地に縫い止められたかのように重く、廊下の明かりに照らされて前方に伸びた自分の影をじっと眺めたヴァイスは、背にした光の強さに彼女を重ねずにはいられなかった。
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