幼女戦記(二次創作)
「いやあこれは困りましたな、はっはっは」
軒先に並び立つ大柄の男は、腕に抱えた大きな紙袋から手のひらサイズの包みを取り出したかと思うと、徐に封を切り、ばりばりと乾いた音を発して何やら咀嚼し始めている。おひとつ如何ですか、と差し出された薄いビスケットを濡れた手で一枚受け取って、一口齧るターニャの視線は空を仰ぐ。今朝六時時点の雨の確率を鵜呑みにして傘を持たずに外出したのは誤りであった。この様子では暫くは止みそうにない。
「折角の休暇だというのにお互い災難だな」
「ええ、まあ」
大粒の雫が石畳の舗装路を叩き、小川となって側溝に流れていく様を眺めていると自然と溜息が漏れた。
「少佐殿、良かったらこちらも如何です?」
まだ食べ物が出てくるのかと思いノイマンを見上げると、降りてきたのは厚みのある紙袋で、中身を確認せずとも内側から漂ってくる芳醇な薫りがターニャの鼻腔を擽った。
「オマケで頂いたものなので量は決して多くはないですけど、今日び手に入るものとしては上等な部類かと」
「……」
「ところで、小官は傘を持ち合わせておりますが」
ターニャを見下ろす大男がウインクを飛ばして『如何致しますか?』と身体の陰に隠していた一本の傘をそっと見せびらかした。傘があるなら最初から言え。
「……出来るだけ早く、だ。頼むぞ」
「最善を尽くすと致しましょう」
口角を上げてニヤリと笑みを浮かべたノイマンは自身が抱えていた紙袋をターニャに預けた。そして流れるような動作でターニャの両脇を掴んで持ち上げると、太い首を挟み込む形で跨がらせて担ぎ込む。
「濡らさないように宜しくお願いしますよ少佐殿」
黒い傘を差した一際大きな人影が石畳の街路を駆け出していく。
軒先に並び立つ大柄の男は、腕に抱えた大きな紙袋から手のひらサイズの包みを取り出したかと思うと、徐に封を切り、ばりばりと乾いた音を発して何やら咀嚼し始めている。おひとつ如何ですか、と差し出された薄いビスケットを濡れた手で一枚受け取って、一口齧るターニャの視線は空を仰ぐ。今朝六時時点の雨の確率を鵜呑みにして傘を持たずに外出したのは誤りであった。この様子では暫くは止みそうにない。
「折角の休暇だというのにお互い災難だな」
「ええ、まあ」
大粒の雫が石畳の舗装路を叩き、小川となって側溝に流れていく様を眺めていると自然と溜息が漏れた。
「少佐殿、良かったらこちらも如何です?」
まだ食べ物が出てくるのかと思いノイマンを見上げると、降りてきたのは厚みのある紙袋で、中身を確認せずとも内側から漂ってくる芳醇な薫りがターニャの鼻腔を擽った。
「オマケで頂いたものなので量は決して多くはないですけど、今日び手に入るものとしては上等な部類かと」
「……」
「ところで、小官は傘を持ち合わせておりますが」
ターニャを見下ろす大男がウインクを飛ばして『如何致しますか?』と身体の陰に隠していた一本の傘をそっと見せびらかした。傘があるなら最初から言え。
「……出来るだけ早く、だ。頼むぞ」
「最善を尽くすと致しましょう」
口角を上げてニヤリと笑みを浮かべたノイマンは自身が抱えていた紙袋をターニャに預けた。そして流れるような動作でターニャの両脇を掴んで持ち上げると、太い首を挟み込む形で跨がらせて担ぎ込む。
「濡らさないように宜しくお願いしますよ少佐殿」
黒い傘を差した一際大きな人影が石畳の街路を駆け出していく。
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