幼女戦記(名前変換)
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『妊娠中の性交は禁止』と担当医師からも特に指示を受けていないけれど、そうはいっても悪阻から体調を崩しがちなサガを傍で見ていると性欲よりも庇護欲の方が
(せめて休職してくれたのなら少しは気が楽になるのだろうか)
産前休暇の前に有給休暇を使用としたとしても其れはまだずっと先の話である。既に職務量の調整と産前産後休暇でポジションに穴が空いてしまわぬように引継を始めているようだが、徐々に腹の脹らみが目立つようになってくると、無理はしてくれるなという思いが日を追う毎に強くなっていく。職業柄は勿論のことサガの人間性を考えても自分で決めた時期までは休まず遣り遂げようとするだろうが、ここ最近はゼリーしか口に出来ていないサガの身体もお腹の子供も大丈夫なのだろうか、と日に日に冷蔵庫の中で存在感を増していく山積みのゼリーを眺めて自然と息が漏れた。
「良かったら一緒に食べません?」
「唯一の栄養源を奪う非常な夫にでもなれとでも言うのか」
「私一人では何時まで経っても食べきれませんよ」
ゼリーであれば悪阻の影響が少ないと判明した日に買い込んだものの他に、其の話を聞き付けた上司同僚から後日宅配で送られてきた中元か歳暮の時期と見間違う程の量の品物がキッチンの隅に箱積みされている。幸いどれも常温保存が効く商品であるから急いで消費する必要はないし量からして先一ヶ月は安泰だろうが、流石に度が過ぎている。
「貴方が買ってきた量にも驚きましたけど、有り難いことに皆さんからもこんなに頂けるとは」
「経口補水液しか摂れていないなんて素人でもおかしいと思うからな。もしゼリーが駄目だったなら無理矢理にでも入院させるところだった」
「お陰様で元気ですよ」
「一時期に比べたら、だろ」
本来寝付きの良い彼女も妊婦特有の症状に悩まされるのは例外ではなく、今もそうであるように悪阻や生理現象で夜中に何度も目が覚めてしまうのだと言う。明日は休日ということもあるせいか朝の時間を気にしなくて良い分何時もよりも幾分顔色が良いようではあるのだが、これから幾月も続いていく華奢な身体に掛かる負担を思うとどうして代わって遣れないのだろうと胸が苦しくなる。
彼女の細い身体を抱き締めて薄い夜着から伝わる柔らかな体温を暫し感じていると、腕の中でサガが小さく声を上げて身動いだ。
「どうかしたか」
「あっ……えっと」
ぱっと顔を下を向けたサガは気不味そうに言い淀む。体勢は変えずに彼女が口を開くのを待っていると、サガは一つ熱い吐息を吐いてケーニッヒの身体に腕を回した。
「最近ナイトブラがきつくなってきて…今日は着けてないんです。っそれで、あの、……胸が擦れて」
次第に小さくなっていく語気と髪の隙間から覗いた真っ赤に染まる耳を見て、ケーニッヒはこのところ忘れ掛けていた衝動が内から沸き上がってくるのを感じた。彼女自身も先程まで其のつもりは全く無かっただろうに、不意に襲った刺激に身体はしっかりと反応してしまって、其れを誤魔化そうにも嘘の吐けぬ性分であるが為にありのままを口に出してしまったというところだろう。
直接的な表現ではないけれどサガの言葉は間違いなく夜のお誘いを意味していて、許しを乞うような表情と欲情に煽られた瞳を向けてくる彼女に、無理をさせたくないといった紳士的な理性は雄の情動に逆らえず強く揺り動かされてしまう。思い起こせば妊娠発覚当時から数えて月単位でしていなかったな、と以前からは考えられない様変わりした夫婦生活にケーニッヒは苦笑を溢した。
「…数は足りるだろうか」
ベッドサイドチェストに仕舞い込んだコンドームに未開封の箱は残っていただろうかと入籍前以来の記憶を辿ろうとしてぽつりと漏れた言葉にケーニッヒを見上げるサガの顔は真っ赤になった。わざわざ口にせずともコンドームを着けるというのは暗黙の了解であったが、これから残数を気にする程の営みが重ねられるのだと思うと戸惑わずにはいられない。
ケーニッヒに抱き抱えられてリビングを出る前に視界に入った壁時計の短針は真上から少し首を傾けたところで、これは朝になっても離してくれないかもしれないとの予感が過り、週末で良かったとサガは安堵の息を吐いた。
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