幼女戦記(名前変換)
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普段から職務上の付き合いだろうとアルコールが必須の飲み会への参加は阻止してきた。今回ばかりは同窓会という事情から断らせるのは余りに酷であると思い参加を許したが、必ずアルコールは断ること、一次会後に迎えにいくので終わるタイミングで連絡を入れること二点を条件にして彼女には十二分に釘を刺していたのだが、終了予定時刻を五分過ぎても依然としてケーニッヒの携帯端末は沈黙している。
(だから嫌だったんだ)
『絶対に飲むな』と念押ししていても周囲に押し切られて飲まざるを得ない状況に陥るのが飲み会というものである。彼女は我が強い性格ではなく寧ろ押しに弱い。同窓会という距離感がおかしくなる飲み会で彼女の性格と下戸体質につけ込もうと算段する輩も少なからずいるだろう。だからこうして、終了時刻の一時間前から会場周辺のパーキングに自家用車を停めてまでして彼女を迎えに来ているというのに、送るメッセージは一向に既読にならず、発信履歴も空しく画面を覆い尽くすだけである。
雪が降り始めそうな寒空に向かいフロントドアを開け放つと、同時に車内で吐いた呼気は冷えて白く色付いた後空気中に霧散していく。今朝彼女が家に忘れていった深緑色のマフラーと自身の携帯端末の二つを手にしてケーニッヒは車外へと足を踏み出した。皮膚を刺すような外気と入れ換わりに肺に満ちた空気に、身体の内側から凍みる寒さを感じても尚『億劫』という言葉すら浮かんで来ない理由は、ただ偏に至情を捧げる対象が彼女だったから、の一言に尽きる。───『それは束縛が強いだけ』、と自分の性質を良く知る友人達に一蹴されたことをふと思い出すと、今更ながらそうかもしれないと時間が経過してから自覚するに至った己に思わず自嘲した。
男は空いた左手でチェスターコートのポケットを探りスマートキーに触れた。次に此の手が触れるのはアルコールで火照った肌になるだろうことを思うと、早く連れて帰りたい気持ちと少々遠回りをして冷えた身体を再び火照らせるのも悪くないと、同時に二つの感情が男の内側に湧いてくる。
背後で鳴るアンサーバック音を聴きながら、どちらにせよ明日の外出予定は全てキャンセルだな、とケーニッヒは口元に笑みを浮かべた。
(だから嫌だったんだ)
『絶対に飲むな』と念押ししていても周囲に押し切られて飲まざるを得ない状況に陥るのが飲み会というものである。彼女は我が強い性格ではなく寧ろ押しに弱い。同窓会という距離感がおかしくなる飲み会で彼女の性格と下戸体質につけ込もうと算段する輩も少なからずいるだろう。だからこうして、終了時刻の一時間前から会場周辺のパーキングに自家用車を停めてまでして彼女を迎えに来ているというのに、送るメッセージは一向に既読にならず、発信履歴も空しく画面を覆い尽くすだけである。
雪が降り始めそうな寒空に向かいフロントドアを開け放つと、同時に車内で吐いた呼気は冷えて白く色付いた後空気中に霧散していく。今朝彼女が家に忘れていった深緑色のマフラーと自身の携帯端末の二つを手にしてケーニッヒは車外へと足を踏み出した。皮膚を刺すような外気と入れ換わりに肺に満ちた空気に、身体の内側から凍みる寒さを感じても尚『億劫』という言葉すら浮かんで来ない理由は、ただ偏に至情を捧げる対象が彼女だったから、の一言に尽きる。───『それは束縛が強いだけ』、と自分の性質を良く知る友人達に一蹴されたことをふと思い出すと、今更ながらそうかもしれないと時間が経過してから自覚するに至った己に思わず自嘲した。
男は空いた左手でチェスターコートのポケットを探りスマートキーに触れた。次に此の手が触れるのはアルコールで火照った肌になるだろうことを思うと、早く連れて帰りたい気持ちと少々遠回りをして冷えた身体を再び火照らせるのも悪くないと、同時に二つの感情が男の内側に湧いてくる。
背後で鳴るアンサーバック音を聴きながら、どちらにせよ明日の外出予定は全てキャンセルだな、とケーニッヒは口元に笑みを浮かべた。
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