幼女戦記(名前変換)
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月経症状緩和目的で普段使いしていた低用量ピルを戦伎研究所配属になってから服用を中止していたことを深く後悔した。そもそも現代は被膜装着による避妊法がスタンダードであって誕生してから歴史の浅い経口薬への信頼は極めて薄く、緊急避妊薬の存在すら知らぬ者が多いというのが世間一般の実情である。しかしそこは流石帝国軍というべきか、管理サイドにおいても現場にとっても双方死活問題である性事情方面に万全のサポートが敷かれた体制は今のサガにとっては救いの手であったし過剰表現をするならば正に福音であった。流石のサガも緊急避妊薬は常備してはいなかったので軍医の処方が必要な訳なのだが。
(軍医にかかれば私がせずとも医務局経由で必ず上官に報告がいく。…どこまで誤魔化しがきくか分からないけれど)
報告がヴァイス大尉に留まるか、若しくは内容的にデグレチャフ中佐に直接上がるか分からないけれど、上官二人にも彼との関係を明かすつもりは無い。軍医への、上官への虚偽申告はリスキーであることは重々承知であるが、例え粗を見破られて虚偽申告だと疑われたとしても私が漏らさなければ確かめようもないことであるし、状況が状況だけに下される処罰は軽度で済むだろう。寧ろ処罰よりも一ヶ月と少し後に判明する不確かな未来の方が恐ろしく思えた。緊急用とは言え全幅の信頼を置ける程ピルの精度は高くない。出来るだけ早く軍医にかからなければと気が急く一方で、顔見知りの軍医への受診を考えると気が重くなる。
(……どうして、こうなってしまったのだろうか)
彼を責めたい気持ちは依然としてあるけれども、そもそも気が緩んでいた自分にも非があるのは確かだ。低用量でもピルの服用を続けていれば、あの時ちゃんと彼を拒めていれば、……このような事態にはならなかった筈だ。後方待機になってから規則的な日々を送れていたというのに、起床後の基礎体温を計測するという考えに及ばなかった。壁掛けのカレンダーが視界に映り込み、自身の生理周期と排卵期を殆ど無意識に照らし合わせて出た答に身が竦んでしまう。───もしかしたら、もしかするかもしれない。
今後考えなければいけないことが多すぎて眩暈を起こしそうな思考を叱責しながら、サガは濡れた衣服を漸く脱ぎ始める。本当ならこの儘シャワーも浴びたいところだけれど、ホテルのように一室毎に浴室が付いている訳でもなし、共用部を利用出来るのは数時間後になるのだと思うと溜息を吐きたくなる。『雨が全部洗い流してくれる』なんて小説の一節で使われるような都合の良いことは現実では起こり得ない。今日一日起こったことを全て無かったことになど出来るものか。タオルで拭っても情交の跡も痕も色濃く残る此の身体が不快だ、…否、不安、なのだ。必要とされるに値する功績と自信が伴ってきたところだというのに、漸く自分で自分の居場所を見付けられたというのに、手放さないといけなくなってしまうかもしれないなんて。こんな状況に溜息が出るどころか息が詰まって胸が苦しくなる。
(……考えてばかりいないで早く着替えないと)
乾いたシャツと軍服は冷えた身体には仄かに暖かく感じられてじんわりと体温が戻っていくのを感じる。一つ大きく息を吐くとほんの少しだけ肩の強張りが和らいだ気がした。
姿見で皺が寄ってないか確認しながらベルト位置を調整して軍服を撫で付ける。腰元に下りた右手が不意に止まり、鏡に反射した己の姿にサガの表情が思わず歪んだ。
(……望んでいないとあれだけ拒絶しておきながら莫迦みたい)
重怠い下腹部につい手を置いてしまう自分が嫌で嫌で堪らなかった。
(軍医にかかれば私がせずとも医務局経由で必ず上官に報告がいく。…どこまで誤魔化しがきくか分からないけれど)
報告がヴァイス大尉に留まるか、若しくは内容的にデグレチャフ中佐に直接上がるか分からないけれど、上官二人にも彼との関係を明かすつもりは無い。軍医への、上官への虚偽申告はリスキーであることは重々承知であるが、例え粗を見破られて虚偽申告だと疑われたとしても私が漏らさなければ確かめようもないことであるし、状況が状況だけに下される処罰は軽度で済むだろう。寧ろ処罰よりも一ヶ月と少し後に判明する不確かな未来の方が恐ろしく思えた。緊急用とは言え全幅の信頼を置ける程ピルの精度は高くない。出来るだけ早く軍医にかからなければと気が急く一方で、顔見知りの軍医への受診を考えると気が重くなる。
(……どうして、こうなってしまったのだろうか)
彼を責めたい気持ちは依然としてあるけれども、そもそも気が緩んでいた自分にも非があるのは確かだ。低用量でもピルの服用を続けていれば、あの時ちゃんと彼を拒めていれば、……このような事態にはならなかった筈だ。後方待機になってから規則的な日々を送れていたというのに、起床後の基礎体温を計測するという考えに及ばなかった。壁掛けのカレンダーが視界に映り込み、自身の生理周期と排卵期を殆ど無意識に照らし合わせて出た答に身が竦んでしまう。───もしかしたら、もしかするかもしれない。
今後考えなければいけないことが多すぎて眩暈を起こしそうな思考を叱責しながら、サガは濡れた衣服を漸く脱ぎ始める。本当ならこの儘シャワーも浴びたいところだけれど、ホテルのように一室毎に浴室が付いている訳でもなし、共用部を利用出来るのは数時間後になるのだと思うと溜息を吐きたくなる。『雨が全部洗い流してくれる』なんて小説の一節で使われるような都合の良いことは現実では起こり得ない。今日一日起こったことを全て無かったことになど出来るものか。タオルで拭っても情交の跡も痕も色濃く残る此の身体が不快だ、…否、不安、なのだ。必要とされるに値する功績と自信が伴ってきたところだというのに、漸く自分で自分の居場所を見付けられたというのに、手放さないといけなくなってしまうかもしれないなんて。こんな状況に溜息が出るどころか息が詰まって胸が苦しくなる。
(……考えてばかりいないで早く着替えないと)
乾いたシャツと軍服は冷えた身体には仄かに暖かく感じられてじんわりと体温が戻っていくのを感じる。一つ大きく息を吐くとほんの少しだけ肩の強張りが和らいだ気がした。
姿見で皺が寄ってないか確認しながらベルト位置を調整して軍服を撫で付ける。腰元に下りた右手が不意に止まり、鏡に反射した己の姿にサガの表情が思わず歪んだ。
(……望んでいないとあれだけ拒絶しておきながら莫迦みたい)
重怠い下腹部につい手を置いてしまう自分が嫌で嫌で堪らなかった。
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