1.朝
日が昇りきり、社会が雑踏に溢れ帰り始めた頃___
人間界の最後の要である御三家の1つ、執刑人一行の隠れ家では最少年の2人は未だ布団の中。小さな寝息を立てる少女と同じ顔をした少年が相対的に何かを呟きながら幸せそうに笑顔を浮かべている。
それぞれの髪色に合わせたお揃いのパジャマの色の違いが、2人の特徴を説明しているようである。

時計の針が9:00を刺した。
その同じタイミングで、水色で統一したパジャマを着た少女が目を開けた。少女は６歳にも満たない幼さでありながら寝癖ひとつなく、真っ直ぐに切りそろえられた肩ぐらいの長さの髪を撫でる。
頭を覚醒させようと伏し目がちの目を何度か瞬きをしていると廊下から何者かの足音が近づき、ドアが開いた。
「おや、やはり起きていましたか、チャコ。おはようございます。」
入ってきたのは薄い若竹色の長い髪を右肩に流している着物の女性...否、女性の着物の着方をした男、糸間だ。彼は綺麗な髪に中性的な顔をしているが、手や顔の骨格かられっきとした男であることが分かる。
「....」
チャコと呼ばれた少女はコクリと挨拶代わりに頷く。会釈ではなく頷く所もまた彼女らしい一面である。
糸間はそれを見やった後、続けてチャコの隣で未だ寝言を呟く桃色の髪色をした幼い子の足手を当てて言った。
「ペン、貴方も起きなさい。朝ですよ。」
「椿さんなにしてあそぶの?むしとり?やったあ...」
しかし反応は寝言だった。
チャコと違いペンは年齢に見あった性格で、寝るのもまた仕事なのだ。食べることと寝ることと遊ぶことが楽しみで毎日を生きている。そのせいか簡単には起きない。
しかし例外がある。
「椿さんから今日の任務を言い渡されました。起きなさい」
「っ!!」
叩き起されたかのような速度でペンは起き上がった。寧ろ年中眠そうな目をしてる今のチャコよりも元気だ。
大きくまん丸の目をキラキラと輝かせながら寝起きとは思えない溌剌さでベッドの上をジャンプしながら跳ねるように喋る。
「おしごと!?きょうはなにするの!?」
ペンが飛び跳ねるせいでベッドのスプリングが作用して勝手に体が揺れるのを鬱陶しそうにしながらも、チャコも主である椿からの伝言を待つ。
「それは....」