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スタート(fkr)

僕の考えを悟られないように、いつも通りに話しかけた。
彼女は少し笑ったけど、笑えてなかった。
お互い忙しかった近況を少しずつ話すも会話が続かなかった。

沈黙が流れて、彼女が口を開いた。





…別れよう。




驚きのあまり、いや、彼女の雰囲気から別れを切り出される予感もなきにしもあらず
でも、なんで?としか言葉が出なかった。

涙を必死に堪えながら彼女はこの1ヶ月、会えなかった本当の理由を話しはじめた。







お父さんが倒れた。それで実家に帰ってた。脳梗塞だってさ。一命は取り留めたけど、後遺症残ってね。もう1人では生活できない。リハビリ頑張っていけばもっと動けるようになるかもしれないけど、もう仕事はできない。うちね、自営業なの。お兄ちゃんとお父さんで仕事してたの。お父さん仕事できなくなったら、倒産しちゃう。うち、お母さんも実は身体強くなくてね。お父さんの介護全部背負ったら、お母さんまで倒れちゃう。だから、私、実家に帰るね。うちの仕事、お兄ちゃんと継いで、お父さんの介護しようと思う。

だから、別れよう。ワガママ言ってごめんね。






そう彼女は言った。


だったら何も別れなくても、遠距離でもいいじゃん。それはダメなの?

そう言う僕に彼女は答えた。


遠距離しても私達に未来はないでしょ、と。


私は四国から出られない。貴方だって東京から出られないでしょ?香川には帰らない、帰れないでしょ?




そう言われて何も言えなくなった。
今の仕事、今の状況からして僕は東京から出られない。出ることもない。香川には帰らない。帰ることもない。


それは、彼女との別れを意味した。



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