バトルシーン練習習作1


 綺麗に一回転、独楽のように。
 禍々しさに顔を顰(しか)めた隼人と視線が合った、それと同時にそれは加速する。

 隼人は傘でそれの左手を受ける。
 あと一瞬反射が遅れていたら、恐らく右目をやられていただろう。
 それの左手は、肘から下が刃になっていた。

 分の悪さな、と隼人は少しだけ口先で笑う。
 それから相手の左手を弾き落とし、少し前屈みによろめいたところへ頭上から傘の柄を振り落とす。
 アスファルトに亀裂が入るほど、顔面を地面にめり込ませた。

 潰れた醜い呻き声。
 隼人はすぐに後ろへ飛び、間合いを取った。

 こんな子供騙しのような攻撃が効く相手ではないことは、もう分かっていたことだ。
 すぐにそれは飛び起きて大きく宙へ。

 隼人は傘を持っている右手の4本の指を揃えて立てて、左手の手首へ。
 そのまま爪を肌に食い込ませながら、手の甲へ向かって引っ搔いた。

 じわりと血が滲む。
 自分で付けた擦過創に傘の柄を滑らせる。

 既に隼人の髪の毛に触れそうだったそれの切っ先が、何かに阻まれて動きを止める。
 身動きの取れなくなったことを不思議に思ったのか、ギャッ、という困惑した声がした。

 傘に纏う小さな空気の渦。
 それは傘から離れるほどに大きく成長していく。
 隼人は傘を、先端を頭上に縦に構えるとそのままそれを目で捉え続けた。
 それも頭はそれほど悪くないようだ。

 急に怯え出し慌てて逃げようともがく。
 しかしそれの刃はまだ隼人の霊気の渦に捕まったまま。

 ぐ、と傘を構える両手に隼人が軽く力を込めると途端に、それの身体が爆風を受け吹き飛ぶ。
 命の危機と判断したのだろう、次は飛び掛かって来ることはせずそれは背を向けて逃げ出そうとした。

 しかしこの距離では到底逃げ切れるはずがなく。

 隼人は傘を右手だけで持ち、中腰になるように身を低く構える。
 傘を持つ右腕はやや後方へ広げ、眼前に差し出した左手でそれとの距離を測る。

 踏み込む。
 決着は刹那ほどの時間しか掛からなかった。

 まず斜め下から振り上げて一撃目、それの動きが落ちたところへ一文字を描くように二撃目。
 前方へ倒れ込むそれの身体を、脳天から真っ二つ割るための三撃目。

 それはすぐに絶命し、亀裂の入ったアスファルトの上に左右それぞれ落ちた。
 隼人は一瞥くれてから傘の先端でそれの腰辺りを着く。
 途端、それの肢体から炎が上がり、瞬きを数回する間に灰も残さず燃え尽きた。

 ふ、と周囲の空気が軽くなる。
 結界が解かれたようだ。

「何なんだよ」

 隼人は深い深い呼気を、1度吐き切る。
 ぐるりと身体を一周させ、異常が起きていないことを確認する。
 アスファルトも何事もなかったように綺麗だ。

 軽く上体を仰け反り、緊張していた筋肉を解す。

「あーあ」

 握り締めていた傘は、すっかりあられもない姿をしている。
 まぁコンビニ傘だからいいけどね。

 捨てる理由が出来たと隼人は続けて思い納得しかけたが、どのみちその辺に捨てていくことは出来ない。
 鞄を拾うと、また傘を肩に担いで歩き出した。



+++
2021.9.10

バトルシーンの練習にと思って書いたんだけど思ってたより全然動かせなかった。
畜生もっとチャンバラになる予定だった。

しかし凄い鬼滅の影響受け過ぎだろまぁそうなんですけどね!
それと急に「隼人は傘でも充分戦えるんだろうな…喧嘩殺法的なので」との妄想が出て来たので、忘れないうちにメモを…と。
難しいな。
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