こびりつく後ろめたさ


 裕の言葉は、痛いほど理解出来た。
 だから同時に華倉には、いつまでも「過去」に振り回されて生きなければいけない身の上が、そんな自分が憎たらしくなる。


 一体いつまで、その「過去」の尻ぬぐいをさせられるのか。


「済みません戻りました」

 はぁ、と盛大な溜め息を零しつつ、魅耶が帰ってきた。
 お帰り、と出迎える華倉は、魅耶の疲れた横顔に気付く。
 また締切早まったの、と訊いた華倉に、魅耶は首を横に振る。

「……浅岡先生からでした」
「は?」

 は~~~、と行き場のない怒りにも似た長い溜め息を吐く魅耶。
 浅岡先生が冴山さんのスマホから掛けてきたんです、と説明する魅耶に同情し、華倉は苦笑いを浮かべた。

「何? お子さんの悪戯とか?」

 事情をよく知らない裕には、そう思えたらしい。
 しかし言ってみればそんな感じかも知れない。
 そうかもなー、と適当に頷く華倉だったが、その隣から魅耶が言葉を被せてくる。

「ですね。まぁ僕らより年上ですけどね」
「えっ」

 その一言は裕を動揺させるには充分だった。


2020.5.30
4/4ページ
スキ