結成前夜


「誘うか馬鹿!! 今は真剣にレシピを聞いてるだけ!」
「えぇっ! 兄ちゃんオレを誘惑してるんじゃなかったんかい!!?」
「アンタも何言ってんだオッサン!!」

 なので、こうなる。

 店主はすっかりその気になってしまっていたようだ。
 司佐のツッコミが店主にも入った。

 そんなコントのようなガチなやりとりが区切りよく終わった頃、忠雪が口を開く。

「……分かりました。ではリーダーに話をしてみます」
「えっ、まじ!? ということは!?」

 軽く笑って、忠雪がそう告げた。
 馨の瞳が輝く。
 そんな馨たちに、忠雪は曖昧に答える。

「そうですねー、まだ分かりませんけど……もっと貴方たちのことも知りたいかなと思っていますので」
「やったーっ! じゃあこれ俺のアドレスとー」

 ガッツポーズをして、馨は自分のケータイを取り出した。
 そんなやりとりの隣で、扇が丼を傾けてスープを一気飲みしていた。

「扇、スープ全部飲む派?」

 うわぉ、と有佐が隣で見ながら驚いている。

「めっちゃうめぇ」

 そんなにスープには興味のない扇だが、これは気に入ったようだった。

 けれど、塩分が半端無い。
 司佐が怪訝そうに呟く。

「うわ……身体に悪いよそれ」
「俺まだ若いから大丈夫」
「何それ」

 心配する司佐をよそに、扇はそう一言で切って捨てた。

 話が一段落して、ようやく馨も忠雪もラーメンを注文。
 忠雪の分は馨の奢りであった。

 連絡先を交換して、話が着いたらメールして、とその日はそこで解散になった。
 





 が。
 翌日。

「いやー、あの後大喧嘩が始まってバンド即日解散しちゃいまして。今日からお世話になります」
「まじかよ!!!?」


2017.11.17
(さすがにオチは自分で考えたやつです…多分。ヒロトさんがどういう結果アリス九號.入ったのかまでは知らん^^)
5/5ページ
スキ