君宵


 かわ。

 いやいや、それは俺じゃないっしょ。

「可愛いのは忠雪さんでしょ。俺が可愛かったら忠雪さん愛の権化ですって」

 何それ。
 自分で言ってて意味分からん。
 多分テンパってた。

 そんな俺に構うことなく、忠雪さんは俺にすりすりしてくる。

「かわいい~もう大好きです~亜貴緋くんすきー」

 ……。

 何だこの可愛すぎる生き物。

 く、と衝動と何かが膨れ上がってくる。
 駄目だ、まだ駄目だ俺。
 耐えろ。

 しかし耐えれば耐えるほど、何か無理っぽ。

「……忠雪さーん? 酔ってませんか?」

 忠雪さんの頭を撫でて、ちょっと気を紛らわそうと頑張る俺。
 しかし今のこの忠雪さんにとって、俺のなでなでは気持ちいいのほか何でもない。

 んー、と嬉しそうに目を瞑って、忠雪さんは答える。

「酔ってないです~」
「うん、酔ってるね」

 こりゃ相当酔ってるな。

 しかし妙だな。
 忠雪さんってこんなに悪酔いする人だったっけ。
 いつも外で呑むからセーブしてたのかな。

 なんていろいろ考えている俺に、忠雪さんは甘えっぱなし。
 すりすりも抱き着きもやめない。

「亜貴緋くーん」っていう甘い声が次第に蕩けて熱を帯びてくる。

 まさかとは思うけど、と俺もそろそろ我慢の限界だったので、訊いた。
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