Confirmacion
頭が回らないんだよなぁ……。
華倉さんの隠し事の件が気掛かりなのもだけど、それともうひとつ。
「明日、担当さんから小言という体で叱咤してもらって、何とか乗り切ります」
ふうと溜め息を吐きつつ、僕はそう続けた。
しかし、え、と華倉さんが意外な反応をする。
「明日打ち合わせだっけ?」
何かの確認を取るかのように華倉さんが訊ねる。
僕はその華倉さんの反応にきょとんとしながらも、いえ、と前置きして答えた。
「明日は出版社の新年会ですよ」
前以て言ってありますけど、と僕が言うと、華倉さんは険しい表情で一時停止した。
あれ、と本当に小さな声で呟き、スマホを取り出して何かの確認。
あっ、抜けてる、と動揺した華倉さんの声が飛んできたのはその直後のことだった。
「スケジュールに記入し忘れてたんですか」
ははは、と僕は呑気に笑っていたのだけど、しかし華倉さんの表情は浮かない。
うおー、と呻き声を零しながら、肩をがっくしと落とし俯いていた。
何だ。
「どうしたんですか? 何か大事な予定でも?」
僕がそう訊ねると、華倉さんは顔を上げつつ頬杖を付き、僕を射抜くような目付きで捉えた。
えっ、何?
「……いやいやいや、今更新年会??」
華倉さんがまず、そう訊いて来た。
まぁそれは言えてる、と僕も頷きながら答える。
「新年会はその年その年によって日程動くんですって。いつもは1月中にやるんですけど、今年は年末年始に掛けて、作品が実写映画化された先生が2人もいたのでスケジュールが押しちゃったみたいです」
もはや新年度会ですよね、と最後に付けて笑った。
しかし、華倉さんの表情は変わらず厳しい。
何をそんなに、と不思議に思っている僕に、華倉さんは更に訊いてくる。
「それは何時から何時まで?」
「……えー、と、18時から……会場は20時までですけど、その後はまだ何とも」
担当さんから聞いたスケジュールを思い出しながら答える。
だよな、と華倉さんは悔しそうに頷いている。
「華倉さん、一体何をそんなに」
本気で分からなくて、僕はとうとう訊ねる。
何を気にしているんだ、と不思議そうに僕が訊くので、華倉さんが逆にちょっと驚いたように言う。
「魅耶、誕生日でしょ。明日」
……。
たんじょうび。
テレビの横に掛けられているカレンダーに目をやる。
3月、今日は7日。
……明日は3月8日、ああ、確かに。
「そうでしたね。それが何か?」
「ぅおおおおぉぉーーーーーーい!!!!」
それでも何となく話が読めず、首を傾げる僕に、とうとう華倉さんが叫ぶ。
びくっとして軽く跳ねた僕の肩に、華倉さんが両手を置いて顔を詰めた。
「何でそう他人事なの! 自分の誕生日ですよ!? もっと自分自身に興味を持てと言ってるでしょうが!!」
そう、華倉さんは僕に訴える。
確かに以前にも何度か言われて来た。
いや、こうして誕生日が来るたびに言われている気がする。
しかし、それでも僕はこう返してしまう。
「その必要性が全く感じられないんですよ」
いーじゃないですか、僕の誕生日くらいどうでも。
僕はそう考えているのだけど、華倉さんは納得が行っていない様子。
むー、と何か続けて言いたそうに僕を見詰めていたけれど、はぁ、と気持ちを切り替えるような溜め息を吐いて、僕から手を離す。
分かった、と独り言のような声量で、僕に向かって続ける。
「仕方がないよね……分かった、いってらっしゃい……有意義なコネクションを作っておいで……」
「気遣いの内容が不穏ですけど」
華倉さんの隠し事の件が気掛かりなのもだけど、それともうひとつ。
「明日、担当さんから小言という体で叱咤してもらって、何とか乗り切ります」
ふうと溜め息を吐きつつ、僕はそう続けた。
しかし、え、と華倉さんが意外な反応をする。
「明日打ち合わせだっけ?」
何かの確認を取るかのように華倉さんが訊ねる。
僕はその華倉さんの反応にきょとんとしながらも、いえ、と前置きして答えた。
「明日は出版社の新年会ですよ」
前以て言ってありますけど、と僕が言うと、華倉さんは険しい表情で一時停止した。
あれ、と本当に小さな声で呟き、スマホを取り出して何かの確認。
あっ、抜けてる、と動揺した華倉さんの声が飛んできたのはその直後のことだった。
「スケジュールに記入し忘れてたんですか」
ははは、と僕は呑気に笑っていたのだけど、しかし華倉さんの表情は浮かない。
うおー、と呻き声を零しながら、肩をがっくしと落とし俯いていた。
何だ。
「どうしたんですか? 何か大事な予定でも?」
僕がそう訊ねると、華倉さんは顔を上げつつ頬杖を付き、僕を射抜くような目付きで捉えた。
えっ、何?
「……いやいやいや、今更新年会??」
華倉さんがまず、そう訊いて来た。
まぁそれは言えてる、と僕も頷きながら答える。
「新年会はその年その年によって日程動くんですって。いつもは1月中にやるんですけど、今年は年末年始に掛けて、作品が実写映画化された先生が2人もいたのでスケジュールが押しちゃったみたいです」
もはや新年度会ですよね、と最後に付けて笑った。
しかし、華倉さんの表情は変わらず厳しい。
何をそんなに、と不思議に思っている僕に、華倉さんは更に訊いてくる。
「それは何時から何時まで?」
「……えー、と、18時から……会場は20時までですけど、その後はまだ何とも」
担当さんから聞いたスケジュールを思い出しながら答える。
だよな、と華倉さんは悔しそうに頷いている。
「華倉さん、一体何をそんなに」
本気で分からなくて、僕はとうとう訊ねる。
何を気にしているんだ、と不思議そうに僕が訊くので、華倉さんが逆にちょっと驚いたように言う。
「魅耶、誕生日でしょ。明日」
……。
たんじょうび。
テレビの横に掛けられているカレンダーに目をやる。
3月、今日は7日。
……明日は3月8日、ああ、確かに。
「そうでしたね。それが何か?」
「ぅおおおおぉぉーーーーーーい!!!!」
それでも何となく話が読めず、首を傾げる僕に、とうとう華倉さんが叫ぶ。
びくっとして軽く跳ねた僕の肩に、華倉さんが両手を置いて顔を詰めた。
「何でそう他人事なの! 自分の誕生日ですよ!? もっと自分自身に興味を持てと言ってるでしょうが!!」
そう、華倉さんは僕に訴える。
確かに以前にも何度か言われて来た。
いや、こうして誕生日が来るたびに言われている気がする。
しかし、それでも僕はこう返してしまう。
「その必要性が全く感じられないんですよ」
いーじゃないですか、僕の誕生日くらいどうでも。
僕はそう考えているのだけど、華倉さんは納得が行っていない様子。
むー、と何か続けて言いたそうに僕を見詰めていたけれど、はぁ、と気持ちを切り替えるような溜め息を吐いて、僕から手を離す。
分かった、と独り言のような声量で、僕に向かって続ける。
「仕方がないよね……分かった、いってらっしゃい……有意義なコネクションを作っておいで……」
「気遣いの内容が不穏ですけど」