掌編まとめ
さむい。
昨日はあんなにいい陽気だったのに、何なの今日の寒さは!
お気に入りのひだまりスポットも、今日はとてもじゃないけど居られない。
わたしは伸びをして解した身体で場所を移動した。
寒さと寝過ぎでこれじゃじゅうぶん動けないわ。
どこかにいい暖房はないかな……。
がさがさと植え込みの合間をくぐり、開けた場所へ出ると、にんげんの背中を見付けた。
ラッキー!
わたしは音もなくそのにんげんに近付き、ひょい、と身軽にジャンプする。
「うわっ!?」
しゃがんで何かしていたらしいにんげんが、わたしの重みに気付いて声を上げた。
やぁね、そんなに重たくないよわたし。
のらねこは太れるほど餌に恵まれてないからね。
「ネコかー」
吃驚した、とそのにんげんはわたしを見て言う。
うー、思ったよりこのにんげんあったかい~。
決めた、今日の暖房はあんたにするね。
降りてー、と言いながらわたしの顎を撫でてくるにんげん。
でもわたしはしっかりと服に爪を引っ掛けて動くまいと掴まる。
ついでだからもっと撫でてくれていいよ、って思って、にんげんを見上げた。
「降りてくんないんかい」
タイミング的にこれの返答のように、わたしは鳴いてしまった。
にんげんは一度立ち上がると、わたしが落ちないように抱え直して笑う。
「華倉さーん、終わりましたか?」
ちょっと離れたところから、別のにんげんの声が聴こえた。
かぐら、ってのが、このにんげんの名前なのかな。
なんてちょっと考えてみたけど、わたしには関係のないことだったからそのままスルーした。
にんげんはわたしの頬を指先で撫でながら、あとちょっとなんだけど、と喋っている。
すると、いつの間にやら別の方のにんげんが、わたしたちの傍までやって来ていた。
「多分、暖を求めて俺にくっ付いて来たのかと」
今日寒いじゃん、とにんげんが笑う。
そうですねぇ、とか何とか会話が続いてたので、わたしは愛想のつもりでそっちのにんげんにも挨拶した。
ら。
思わず毛が逆立ってしまった。
それくらい凄い目付きで睨まれていたのだ。
そんな殺気向けられたらわたしだって威嚇するんだけど!! って感じの。
「魅耶、何でガン飛ばしてんの……?」
こちらのにんげんもその殺気に気付いたらしい、わたしを守るようにちょっと隠しながら、そっちの人間に訊いている。
そっちのにんげんは、済みません、と顔色ひとつ変えずに続ける。
「別にガンを飛ばしているつもりはありません。勝手に飛んだんです」
「屁理屈捏ねないで欲しい」
全くあんたは、とこちらのにんげが言えば、それはこっちの台詞です、とそっちのにんげんが返す。
仲良しなんだなぁ、と、ぼんやり思った。
「でもまぁ、そういうことなら、段ボールでも用意しますよ。このまま華倉さんを独占されても不愉快ですし」
「気遣いに見せ掛けても嫉妬が隠し切れてないぞ魅耶」
「隠すつもりはありませんー」
そこで一旦会話を切り、そっちのにんげんがどこかへ行ってしまう。
くっ付いたままだったわたしを優しく離し、にんげんはわたしを丁寧に抱っこし直して笑う。
「今ベッド用意するから、そっちで寛いでくれる?」
ごめんね、とこのにんげんは言うから、まぁ仕方ないなってなるじゃない?
結局その日は用意された段ボールでずっと過ごしてあげた。
何だかこのにんげんの傍が、気持ち良かったっていうのもあるけどねぇ。
2021.2.20