(なんて、な)


「はい浅海、ハッピバースデー」

 にっこりと笑いながら唯一ゆいつが差し出して来た煙草とライターのセット。
 それを睨むかのように確認した後で、浅海は視線を唯一の顔に向けた。

「……何これ」
「え? 煙草じゃん」

 怪訝な顔付きで至極真っ当な返答をした浅海とは裏腹に、唯一は心底呑気そうな表情で呼応した。
 そんなん見りゃ分かるわ、ととうとう浅海は唯一と向き合うように身体の向きを変えた。

「俺18になったとこなんだけど? 身内が堂々と渡すもんじゃないだろ」

 百歩譲って本当に誕生日プレゼントだとしてもだな、と浅海はやや警戒した素振りも見せた。
 それでも唯一は真面目に取り扱うようなこともなく、あっはっはー、と笑い飛ばす。

「やだな浅海~、煙草なんざ18で事実上解禁だよー。それに吸うでしょお前も? だからお薦め用意してきたんじゃん」
「吸う前提で話進めんな。お前のお薦めとか絶対趣味悪いだろ」

 やだ、と身を縮めるように唯一からちょっとだけ距離を取る浅海。
 唯一は表情を変えず、失礼だなー、と続けた。

「俺も親父も以前吸ってた銘柄だから、お前もイケるよ多分。体質的に」

 などと、いかにも尤もらしい理由を述べながら、唯一はそれとなく浅海の手に煙草を握らせた。
 お前な、とやや怒りを込めた声色で、浅海は煙草を押し返そうとするも、唯一の手が離れる方が早かった。

「いいから持ってろって。絶対あってよかったーってなるから」

 にこにこ、と底抜けに明るい唯一。
 しかしその笑顔が、浅海にとっては、不気味に思えてならないものでもあった。
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