繰り返しだとしても


「お帰りなさい」
 慌てて戻ってきた自分が少し恥ずかしく思えるくらい、それはとても自然体のやり取りだった。
 魅耶が自分を見て、柔らかな笑みで出迎えてくれたのだ。

 魅耶の無事を理解すると、うん、と華倉は小さな、微かに震えた声色で答えた。

「可笑しな感じとかない?」

 華倉の心配そうな問い掛けに、魅耶は笑みのまま頷いて、僕は平気ですと返す。
 ただその後、目を逸らすような動きで、部屋の隅にいるふたりを気に掛けた。

「紀久ちゃん、ずっとあのまま……?」

 小声で魅耶に訊ねる華倉。
 魅耶も全部を把握しているわけではないが、自分の意識が戻った時、既にこの状態だったことを話し、恐らく、と付け加えた。

 そんなふたりのやり取りが聞こえたのか、鳳凰が顔を上げる。

「紀久なら落ち着いてはいる。安心していい」

 鳳凰の言葉を受けて、そっか、と華倉は俯き加減に頷いた。
 そのまま鳳凰は話を続ける。

「最鬼は、何とかなったのだな」

 生きて帰って来た。

 鳳凰にとって、それは勿論願ってやまない結果ではあるが、半ば「覚悟もしていた」ことだった。
 多少の傷は仕方ないにしても、命に別状も無さそうだ。

 そんなことを鳳凰が考えているとは知る由もなく、華倉は頷いて答えた。

「ほんとギリギリ、何とかなった、って感じだけど。鳳凰にもらった奴がなきゃ駄目だったかも」
「……そうか」

 華倉からの報告に、鳳凰は一瞬目を見開く。
 予想外の内容だった、とでも言いたそうな表情だった。

「あれは結局何だったの?」

 効果があったことは本当に助かったのだが、華倉にはまだあの小瓶に入った液体の正体が分からない。
 華倉が再度鳳凰に訊ねると、鳳凰はようやく教えてくれた。

「……最鬼の細胞から作り出された薬だ。骨と筋繊維を溶かすもの、らしい」
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