確かめ方
子供たちは自分の実家へ預けているらしい。
裕は帰り掛けにそのまま迎えに行くものだと思っていたのだが、一旦二人だけで自宅に戻っていた。
浅海が言うには「裕も埃まみれだから」とのことだ。
裕自身は、自分のことなど二の次で構わないのだが、冷静になるにつれ、やはりワンクッション挟むのが正解だった気がして来る。
至っていつも通りに家を出て、残業があったとはいえ普段通りに帰宅するはずだった。
けれどいきなり最鬼が現れて、戦いに巻き込まれて。
命に別状はないとしても、服も汚れ、自身も傷を負い、はては声が出ないときた。
これでは子供たちに何をどう説明すればいいのだろうか、悩んでしまうところだ。
一旦頭を冷やすという意味では、この対処は正解なのだろう。
いきなり祖父母の許へ、何の説明もなしに預けられた彼らには申し訳なさでいっぱいだが、と裕は軽い罪悪感を抱く。
シャワーを浴びてさっぱりした頭で、何とかここまで建設的な考えをまとめることが出来た。
なるべく手早く身支度を済ませ、浅海が待つリビングへ戻る。
離れた場所から呼び掛けることが出来ないため、裕はやや雑にドアを開けた。
物音で気付いてもらえるようにである。
しかし浅海の姿はソファーにあるものの、動きはない。
気付かなかったのかな、と裕はドアを閉める手を一旦止める。
大袈裟に音を立てて閉めるという手段もあったけれど、さすがに時間帯を考えて静かに閉めた。
それに、ひょっとしたら寝てるのかも知れない、と裕は考えを続けた。
浅海の傍まで近付き、肩を叩く。
浅海は起きていた。
顔を上げ、裕の顔をじっと見詰めた。
「……変なとこない?」
浅海がそのままの体勢で訊ねて来た。
裕は頷いて、大丈夫、という意味を持たせた笑みを返す。
それから、早く子供たちを迎えに行こう、と口の動きで浅海に伝える。
浅海は一旦視線を足元に落とし、それから静かに立ち上がった。
けれど、出掛けようと玄関に向かう裕を呼び止めた。
裕は振り向いて首を傾げる。
浅海が動こうとしないので、仕方なくそちらへ向かった。
どうした、と言いたげな裕。
そんな裕の手を取り、浅海は音も立てずに抱き締める。
……ここまで不安にさせていたのか。
浅海の腕に大人しく捕まったまま、裕は改めて思う。