確かめ方


 そういえば、今の浅海は酷く動揺しているようにも見える。
 口数が少ないのがその表れだ。

 ごめん、と心の中で何度も呟き、裕も浅海の背中に手を回す。

 浅海が心配してくれることは、本当に嬉しかった。
 出来れば暫くこうしていたい気持ちも本当だ。

 けれど裕はどうしても、子供たちのことが頭から離れない。
 自分が安心したい気持ちと、子供たちにこれ以上隠し事はしたくない思いとが、裕の中で大きくなっていた。

 浅海、と裕は掠れる音で、浅海を呼んでみた。
 声とは言いがたい、呼気が抜けるだけのような音だった。

 けれど浅海の耳元で発したためか、浅海は気付いてくれた。

 浅海の顔は泣きそうだった。
 こちらが怖くなるほど、その瞳は感情的だった。

 本当に、もう大丈夫だから。

 何とかそれを伝えたくて、裕はじっと浅海の瞳を覗き込んだ。
 言葉が使えない状態が、こんなにもどかしいとは考えも付かなかったほどに。

「、っ」

 浅海の顔が近付く。
 初めのうちは何の違和感もなく、裕も応えていた。

 けれど、次第に深くなっていくキスは、なかなかやむ気配がなかった。
 浅海の左腕は裕の腰をしっかりと抱いて、全身を隙間なく密着させていた。

「……、んん」

 息が乱れてくる。
 一旦離せ、と抗議の意を右手に込めて、裕は浅海の背中を引っ張ってみるのだが、浅海は無視をしているのか無反応である。

 気付けば裕は壁に押し付けられていて、やっと口が離されたと思ったが、相変わらず逃げ場はなかった。
 何だ、と紅潮した顔をやや険しくさせて、裕は浅海を軽く睨んだ。

 けれど浅海は何も答えず、ただ裕をじっと見詰めて、再度キスをしてきた。
 今度は唇以外にも、所構わず、と言った様子だ。

 浅海の親指が裕の顎をなぞって、くい、と上へ押し上げる。
 そこへ唇を当てて、何かを探るように細かく場所を変えた。

 おもむろに一ヶ所に止まる。
 歯を立てて、甘く噛み付く。

 おい、と裕が言いたかったことが、喉の動きで分かる。

 すると急に浅海は顔を離して、浮かない表情を見せながら裕から少し距離を取った。

「……ごめん」

 お互い顔がきちんと確認出来る距離だが、浅海の手はしっかりと裕の手を掴んだまま。
2/3ページ
スキ