とうとう

「そう言えば華倉さん、とうとう男同士で子ども作れるみたいですよ」

 何てことのない1日の始まり。
 魅耶が至って普通のテンションで何か言い出した。
 ちょうど飲もうとしていたお茶が変なところへ入る。
 勿論むせた。

「……え、何?? それ何ていう新手のホラー?」

 魅耶の言い方が淡々とし過ぎていたので、俺は動揺を抑え込みながらそう返す。
 魅耶は時々、創作のネタについて、唐突に話すことがある。
 俺がホラー駄目なのも分かっているので、ほんと、ごくたまーに、なんだけど。
 今回もその手の内容かと考えたんだけど。

「ホラーではなく、現実の科学技術の話題です」

 今度は俺の方を真っ直ぐに見詰めて、魅耶はそう念を押すように言った。
 いや、ますます理解出来んぞ。

「……フェイクニュース的な?」

 今流行りの、なんて、ちょっと難しい顔をしてみながら、俺は続ける。
 エイプリルフールでもないのに何でこんなフェイク流す必要があるんだ、と自分へのツッコミと共に。
 しかし残念ながら、この話題はまぁまぁなリアルらしい。

「いえ、実際マウスでは成功していて、その子どもの繁殖も可能だそうで。今のところ人間で出来るかどうかは夢の話のようですけど」

 だそうだ。

 厳密に言うと、片方の男性の細胞と、別の男性の精子を掛け合わせたものを、受精卵のように扱うんだそうで。
 この方法を使うと、同一の男性の細胞と精子からも子どもが出来るらしい。
 この場合出来た子どもは、クローンではなく一卵性じゃない双子のようになるんだとか……。

「何それ怖い」
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